危機管理おやじのつぶやき~凶悪・多発するストーカー対策について~

2014/04/02 / 代表取締役副社長 熊谷 信孝 プリント

 昨今、ストーカー行為による凶悪・悪質な事件の報道が数多く聞かれる。昨年の資料ではあるが、警察庁統計によると、平成24年は前年比36.3%増加の5302件であり、ストーカー規制法施行後、最多の件数となっている。 今回は、このように増加の一途をたどっているストーカー問題への対策についてつぶやいてみたい。

1.ストーカーという言葉は良く使われますが、いわゆるストーカーを取締るための法律、「ストーカー規制法」については良く知らない人も多いと思います。そこで、まずこの「ストーカー規制法」について簡単に内容を確認しておきましょう。

 まず、規制の対象となるのは、「つきまとい等」(8類型)と「ストーカー行為」の2つです。「つきまとい等」とは

      1. 付きまとい、待ち伏せ、押しかけ(尾行、通勤経路での待ち伏せ、職場への来訪等)

      2. 監視していることを告げる行為(帰宅直後に「おかえり」の電話、当日の服装などをメールしてくる等)

      3. 面会・交際などの要求(拒否しているのに交際や復縁を迫る、贈り物の受け取りを求める)

      4. 乱暴な言動(大声で罵声、家の前で大声を出す、クラクションをうるさく鳴らす等)

      5. 無言電話、連続した電話・ファックス、電子メール(無言電話、拒否しているのに何度も電話メールをしてくる)

      6. 汚物などの送付(汚物や動物の死骸を自宅や職場に送る、自転車等に糞尿をつける等)

      7. 名誉を傷つける(名誉を傷つけるような文章を送る、インターネットに掲載する等)性的羞恥心の侵害(わいせつな写真を送りつける、インターネットに掲載する等)

を言います。

 そして、同一の対象者に対して、上記の「つきまとい等」を繰り返して何度も行うことが「ストーカー行為」となります。但し、上記①~④の行為については「身体の安全が害されるかもしれない」とい不安を覚えさせる方法により行われる場合(行為の態様上、被害者の身近に行為者がいると考えられるため、つまり、命の危険や怪我させられる恐怖を感じた場合)にストーカー行為となります。

2.次にストーカー行為に関する警察相談の流れについて簡単にお話ししましょう。

 被害者から、相談を受けた警察は、まず「ストーカー行為等に該当」(ストーカー規制法に該当する場合)と「他の刑罰法令に抵触」(刑法、迷惑防止条例等に該当する場合)、「刑罰法令に抵触しない相談」という基準で判断を行います。

 そして、「ストーカー行為等に該当」した場合、上記1の「つきまとい等」、「ストーカー行為」の何れに当たるかを判断します。

 ①~⑧の「つきまとい等」」に該当する場合、対象者に対して警告を求めるか否かについて相談者の意向を確認し、「警告・仮命令」を対象者に発し、公安委員会による意見・聴聞を経て公安委員会による禁止命令を出します。それでもなお、行為者が禁止命令に反した場合(禁止された「つきまとい等」「ストーカー行為」を繰り返した場合)懲役又は罰金(例えば、警告を根拠とする場合は、1年以下の懲役又は100万円以下の罰金)とされます。

 一方、「ストーカー行為」と判断された場合には、上記よる対応の他、相談者により告訴(被害届とは異なり、行為者の処分を求める意思表示を含むもの)が可能であり、この場合は、直接的にストーカー規制法違反により懲役・罰金の処分か下されます(6か月以下の懲役又は50万円以下の罰金)。

 なお、いずれに該当する場合でも、相談者が告訴や警告ではなく、援助を受けたい旨の申出の場合は、警察による援助対応となります。

 この他に、「他の刑罰法令に抵触」(刑法、迷惑防止条例等)する場合はそれらの法令を適用して対処します。

3.読者の中には、自分はストーカーには無縁だし、殺したりする事案はともかく、そうでなければ、そこまで騒ぐ話なのかな、とお考えの方もいるかもしれませんが、ストーカー行為によるリスクは決して軽視すべきものではありません。

 例えば、ストーカーの被害に遭うことで考えられるリスクとしては、次のようなものがあります。

①恐怖感やストレスからひきこもりや精神疾患を誘発する可能性がある

②プライベートが必要以上に暴露され、私生活や仕事、就職等な影響がでる

③嫌がらせ的行為がエスカレートすると、近隣等に迷惑かが掛かり引っ越しを余儀なくされたり、転職をせざるを得なくなる。

④家族や友人に対してストーカー行為が影響して、人間関係等が悪化し、他人にも迷惑がかかる。

⑤最近、多く発生しているように最悪の場合、殺人や傷害事件に発展する可能性がある。

 このようにストーカーの被害を受けることは、私生活において非常に大きな不利益をもやたらします。ストーカー被害に遭っている社員がいたとすれば、そのストレスや恐怖から仕事は手につきませんし、業務上のミスをしてもやむを得ない精神状態に追い込まれることになるのです。

 大半の人は、「自分には関係ないこと」と思ってしまいがちですが、自分だけでなく身内や友人、同僚、後輩等にいつ何時このようなストーカー行為が向けられるか分からないという意識を持っておかなければなりません。企業に勤める私たちも、特に経営者や管理職等、部下の業務や勤務態度を注視する立場にある者は、ストーカーにより従業員が陥りかねないリスクについて十分に留意しておく必要があります。被害者の多くは女性とされていますが、被害者は女性とは限らず男性のケースも少なからず実在するということも忘れてはいけません(警察庁の統計でも、平成23年以降、男性のストーカー被害は、全体の10%を超えているのです)。

4.それでは、どのような人がストーカー行為者になりやすいのでしょうか。

 一概に明確な基準を立てることはできませんし、次にあげる項目の一つに該当するからと言って、必ずしも「ストーカー」になるわけではありませんが、ストーカー事案は、時として命にかかわる重大な事件に発展しかねないため、あえてその傾向を読み解くとすれば、種々の情報を総合すると、下記のような傾向が見られます。一つのリスク因子として、参考にして下さい。

①やたらとプライベートなことをつい質問したり、聞き出そうとする

②交際相手の有無や特徴、理想のタイプなどを執拗に聞く

③通勤経路や居住地域、休日の行動などを執拗に聞く

④話の内容を自分の都合よく解釈したり、わがままを通そうと声を荒げたり、粗暴行為を行ったりする

⑤自分の趣味等を押し付けようとする

⑥断っても執拗に交流を申し込んでくる

⑦自分の要求が通らないと、何かにつけて言いがかりやクレームをつけて困らせる

⑧自慢話や他人の批判が目立つ

⑨話を合わせないと自暴自棄になったり、激高する

 自分の面倒を見てほしいとか、自分を特別扱いすることを強く望む言動が多い接点をもってから上記のような傾向がある場合はストーカー行為者になる可能性があるので十分に注意してください。

5.では、ストーカーによる被害を防止するためにはどのような点に気を付けたらよいのでしょうか。

 まず、つきまとい行為やストーカー行為については、いつ何時、自分が被害者になるか分からないという「他人事ではない」ということを十分に認識することです。そして、ストーカー被害によるリスクを十分に理解し、一人で悩まず、早い段階で親族はもちろん警察、弁護士、専門家に相談し、早い段階から対応していくことが重要です。

 また、日頃から、曜日ごとの自宅周辺状況に注意しておき、例えば日曜日のこの時間に自宅周辺では見かけない車や人がいるような時など何時もと違う環境変化を感じることによって、異常にいち早く気付いたり、自分の生活パターンや行動を読まれたりしないように注意し、もちろんゴミ等を捨てる時も「ゴミは持ち帰られる」という意識のもと個人情報や趣味・嗜好が分かるものの取扱いは十分に注意することが重要です。

 そして、最近は特に注意しなくてはならないのは、人気を集めているSNS、例えば、FacebookやTwitter、ブログ、LINE等でのプロフィールやライフログの情報開示です。このようなSNSでは、素性や意図のわからない人物と知り合い(インターネット上での知り合いを含む)になるケースが少なくありませんが、SNS上で自ら発した何気ないメッセージや画像等が自分の意図に反して、相手が好意的に受け取って、勝手な幻想を増大させるばかりではなく、必要以上に個人情報を開示することで、行動パターンや勤務先、自宅、交友関係(親族含む)を特定され、被害を拡大・助長しかねないことを十分に認識しておかなければなりません。ストーカー被害の防止には、SNSの使い方も意識しておくことが不可欠なのです。

6.最後に、実際にストーカー行為が行われた場合の対策についてお話ししましょう。

 つきまとい・待ち伏せ監視行為等がある場合、まずそのような行為が本当に行われているか否かについて、専門家による状況確認と証拠保全を行い、対象者がいる場合、その対象者の特定を行うと共に、タクシー等での送迎・身辺警護・自宅周辺警備、盗聴器等調査を実施して、自らの身の安全を確保しながら、警察相談を行うことが重要となります

 面会・交際要求・乱暴な言動等の行為がある場合は、まずは警察相談を行ったうえで、つきまとい行為の時の対策と同じく、警備等において自身の安全を図ると共に、対象者とのやり取りの録音・録画等の証拠保全・住民票等の閲覧制限等を警察へ要請(ストーカー規制法でいう援助申請)するほか、風評チェック等、ネツトモニタリングなども有効です。

 ストーカー事案は、被害者と対象者が何かしらの関係(夫婦、恋人等)を有している(有していた)ケースが多く(ストーカー規制法は、恋愛関係(「好意感情」)の縺れ(もつれ)に伴う「つきまとい等」「ストーカー行為」を禁止するものであり、それ以外の目的の場合は迷惑防止条例や刑法等の適用が検討されます)、警察も被害者の意思を尊重しながら、各種法令の限界内での対応を余儀なくされており、残念なことに近年の重大・凶悪ストーカー事件を未然に阻止することが出来ていない状況です。厳しいようですが、もともとの恋愛感情により、「話せばわかる」「処罰までは可哀そう」「私が面倒を見てあげないと・・・」という被害者側の意思により、ストーカー行為の防止に必要な「告訴」や「警告」がなされない(警察としても、「告訴」も「警告」も被害者側にその意思があることが前提となるため)ことが、痛ましい被害を生んでしまっている現実があるのも事実です。

 被害者対策だけでなく、対象者に対する複数回の面談(カウンセリング)等による警告による更なる行為のエスカレートの防止と事件の未然防止に向けた対策も考えられてきておりますが、実際に被害にあっている被害者に対して寄り添って対応支援を行えるような仕組みが整っていない状況です。

 なお、ストーカーによる重大な事件報道等の影響で、警察に相談することが却ってストーカー被害を生んでいるようにも見えますが、実際は、警察の警告により、8割のストーカーが「つきまとい等」や「ストーカー行為を止めている」とも言われており、ニュース性の高いセンセーショナルな事件、殺人や傷害に至る重大な事件がニュースとして報道されているものは氷山の一角であるというメディアの特性を踏まえつつ、警察相談を躊躇することのないように注意しなければなりません。

 もちろん、自分は大丈夫という「正常性のバイアス」もストーカー被害のリスクを歪める危険な思い込みとなりかねないことに注意が必要です。

 ストーカーによる殺人や傷害等の重大な被害は防がなければなりませんし、企業としても従業員がストーカーの被害に遭うことのリスクを考えれば、単に個人的問題(恋愛関係・異性関係にだらしない奴)で終わらせることなく、まずは、自身や社員の安全と安心を少しでも確保できるよう支援していくことが求められます。

 そこで、当社でも、警備・調査・派遣・コンサルティング等の危機管理のトータルサポートができる強みと警察出身社員の有する刑事・事案対応に関する知見の融合により、ストーカー対策に関する具体的対策支援業務を今年から本格的に支援していきます。既に本年1月に「プライベートセキュリティ」という身辺警護を中心に、証拠保全や警察対応支援、盗聴器発見等を融合させたストーカー対策サービスをリリースさせていただいておりますが、その他、ストーカー被害の防止に向けた各種社員研修・啓蒙活動、防犯診断など様々なサービスを展開しています。

 安全への関心の高まりから、単なる警備サービスに留まらない「プライベートセキュリティ」サービスには、既にSPクラブ会員企業はじめ、複数の企業からお問い合わせいただいておりますが、皆さんの身近で何かお手伝いできることがございましたら、何なりとご相談ください。

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