小売業における労働生産性(2017.12)

2017/12/19 / 総合研究室 上級研究員/課長 伊藤 岳洋 プリント

 皆さま、こんにちは。

 本コラムは、消費者向けビジネス、とりわけ小売や飲食を中心とした業種にフォーカスした経営リスクに注目して隔月でお届けしております。

小売業における労働生産性

 日本における小売業の労働生産性は、全業種平均と比べて約3割低くなっています。1年間の労働生産性(*1)(従業員1人当たりの付加価値額)は、小売業が344万円と製造業の607万円と比較して6割弱となっています(平成24年経済センサス)。


 小売業の生産性が低い原因は、市場における事業者数が多く、競争環境が激しいことに加えて、多くの従業員を労働集約的に業務に投下しているにもかかわらず、作業の効率を測り改善することに製造業に比べて無頓着だったことなどが挙げられます。つまり、業務や作業のなかにいわゆる、ムリ・ムダ・ムラが発生しており、ロスにつながっているといえます。今後も生産年齢人口の減少が加速していくなか、多くの従業員の投下を前提としたビジネスモデルを継続することは難しくなるでしょう。そのため、今後は従業員の業務や作業の負担を軽減して、労働時間を短縮する、もしくは、同じ労働時間で多くの付加価値を生み出すように改善していくことが求められます。

 そこで今回は、小売業のなかでも大手小売業のように最先端のシステム導入をしていない小規模・中堅小売業を想定し、業務におけるロスに起因する生産性にかかわる経営課題の解決の参考になればという視点で考察を進めていきます。


 生産性改善の手順としては、職場環境の整備という土台をしっかりと固めるべきです。効率化に取り組む環境が整備されていなければ、その後の取り組みも効率的に進まず、場合によっては頓挫してしまいます。そして業務効率化は実行と検証を重ねて効果を測定できれば最善でしょう。その先には、接客・サービスを底上げすることで生み出す付加価値の最大化を目指すというプロセスがあります。

 まず、今回は職場の環境整備について考察を進めていきたいと思います。

 生産性向上の取り組みは、最終的には現場の従業員が中心となって行なうべきものです。しかしながら、実際に活動を推進して成果につなげるためには従業員だけでは難しい部分もあります。経営者が積極的に関わることで、ヒト・モノ・カネを費やす活動が必要になった場合にもすぐに決裁できるので即座に実行できます。また、他の店舗にも取り組みを水平展開する場合にも、経営者の指示により円滑に進めることが可能です。

 一方で、生産性向上の取り組みを阻害する要因として、現場の従業員が多忙であり、本来業務に加えての取り組みに積極的になる動機を保ち難いということがあります。本来業務が効率化されれば従業員の負担は減るわけですが、その改善プロセスは大きな負荷が伴うため、強い動機を維持しなければ継続は困難です。その動機付けは経営者自らが自身の言葉で行なうべきです。活動の意義を直接語ることで「本気」を伝えることができます。さらに、現場の抱える問題や企業理念と結びつけることで、その活動は「自分事」として認識されます。

 本来は生産性向上に関する重要需要業績評価指標(KPI)は1人当たりの生産性の変化をみていくことが望ましいですが、現場では便宜的にそれに代わって一人時当たりの売上高と総労働時間をKPIとしても構いません。ただし、生産性向上の取り組みはすぐに結果が出るものではないため、単にKPIを目標にしてしまうと達成の実感が得られない懸念があります。取り掛かりとしては、6ヶ月など取り組みの期間を限定して、まずは集中して取り組めるようにすることが重要です。成果があがった場合には、あらためて目標値を設定することを検討すればよいでしょう。集中して取り組む環境にすることがポイントです。

 小売業の職場環境の整備として整理、整頓など5Sの徹底は欠かせません。以前のトピックスでも述べたように5Sは職場環境を改善するための手法です。5Sとは、以下に分類されます。


  1. 整理
    「いるもの」と「いらないもの」を区分して「いらないもの」は捨てること。
  2. 整頓
    「いるもの」を素早く取り出せるように置き場所、数量、置き方を決めること。
  3. 清掃
    置き場所を清掃し、ゴミないし、汚れなしの状態にして、同時に点検すること。
  4. 清潔
    ゴミなし、汚れなしの状態を保つこと。

  5. 整理・整頓・清掃・清潔が計画通りに実行され、習慣となること。

 また、5Sを徹底することで4つのムダをなくすことができます。

  1. スペースのムダ
    5Sを徹底しなければ、作業スペースや在庫を収納するスペースがなくなります。
  2. 時間のムダ
    何がどこにあるかを決めて、そのルールを守らないとそれを探す時間を浪費します。
  3. 間違えるムダ
    5Sが徹底されていない結果、消費期限の切れた商品や品質の劣化した商品を提供してしまったり、それがお客様からのクレームになったりといった問題が生じかねません。
  4. とりに行くムダ
    頻繁に使用するにも関わらず遠くに置いてあると、その分だけ移動する時間が発生してしまいます。単なる移動は価値を生み出しません。

 このように5Sは単なる片づけとは異なり、生産性の向上に直接寄与します。


 5Sのなかで最も重要なのは、最初の整理と整頓です。仕入れた時点ではどれも「いるもの」のはずです。それが時間の経過や市況の変化によっていつしか「いらないもの」になっていきます。整理とは、何が「いらないもの」になりつつあり、または、既になったのかを明らかにする行動です。その際の判断基準もあらかじめ明確にして共有しておく必要があります。そして、その変化を確認するサイクルも決めておく必要があります。「いらないもの」と「いつか売れるもの」はほぼ同義です。したがって、期限を設けて処分する基準を明確にしておくとよいでしょう。たとえば、季節性がある商品の場合は1年以上ニーズのないものは処分する、季節性がない商品の場合は、3ヶ月以上ニーズのない商品は処分するなどです。商品を備品と置き変えてもその考え方は当てはまります。

 そして「いらないもの」は例外なく処分します。一次的には仕入に要した資金がムダになるように感じるかも知れませんが、「いらないもの」を保管するために掛かっているコストの方が割高になります。「いらないもの」は、将来的にも売上というお金に変わる可能性が極めて低いからです。サンクコストを意識し過ぎると、ロスがかえって大きくなってしまいます。むしろ、「いらないもの」を処分することで、あらたなものを整頓するスペースができたり、ものを置く以外の用途でスペースを有効活用することができたりするので、付加価値の創造に貢献できる可能性が高まります。

 次の整頓とは、「いるもの」を素早く取り出せるように置き場所、数量、置き方を決めることです。それらを決めて誰にでもわかるように明示することが重要です。具体的には、「3定」を決めることが必要です。

  1. 定位
    置く場所を明示する(地図を作る、独自の番地をつけるなど)。
  2. 定品
    置いてあるものが何かを明示する(名札を棚に貼るなど)。
  3. 定量
    置くべき量を明示する(最大量、最小量などを記載するなど)。

 特に置く場所については、従業員の動きを勘案してよく使うものは、手前に置くなどの配慮をするとムダな移動が減ります。


 このように誰にでもわかるように「視える化」することで生産性は改善されますが、それは商品や備品に限ったことではありません。情報についても定位、定品を実施して「視える化」を徹底すべきです。たとえば、本部からの発信事項、店舗としての取り組みの推移(売上やクレーム件数など)、店長からの発信や連絡事項など掲示するエリアをそれぞれ区分することです。そして、情報についても「いるもの」と「いらないもの」を区分して、鮮度の切れた情報は処分します。本当に必要な情報を伝えるには情報も「視える化」することが必要です。バックルームや倉庫に鮮度の切れた情報と必要な情報を混在して貼り付けるだけの状況は、弊社の監査でよく目にする光景です。運営方針や取り組み事項が店舗全体に浸透し、実行の徹底力の高い店舗は、情報の「視える化」に加えてさらにコミュニケーションによる意思統一をしていることがひとつの特徴です。特に店舗の従業員はシフトによる勤務体制を取っている場合が多いので、シフト毎に意思統一を図る場面を作る必要があります。情報にプラスしてダイレクトコミュニケーションによる「意思」と「意図」「魂」を込めないと発信者の思いは伝わりませんし、その結果、徹底力にも大きな差が生まれるものです。このような「意思統一」を苦手に思ったり、後回しにする店長が実際には多いように思いますが、本来は優先順位の高い店長の仕事といえます。


 整理、整頓、清潔、清掃の定着度を定量的に量るため、チェック表を作成して定期的(月1回程度)に複数の目(経営者、店長、担当者など)で進捗管理していく方法も一案です。「3定」の状況や「視える化」の状況を項目化して何段階かで採点します。徹底できていない項目が明らかになり、かつ、時系列で評価することができます。このあたりのバックチェックは定着を高めるためには必要です。

 躾は、これらの実行と確認のサイクルを設定して、着実に実施できる(習慣となる)体制を整えて結果をレビューすることです。そのためには、当事者を明確にすることも必要です。できれば、意欲の高いリーダーを専任の担当者として置くことが望ましいでしょう。ある程度、活動に時間を費やせる環境が理想です。複数の部門があるような組織の場合は、さらに部門横断的に担当者を専任してリーダーだけに任せるのではなく、チームとして取り組む体制にすることが重要です。習慣となってくれば、生産性を図る指標を目標として設定し、その進捗管理を行なっていきます。また、レビューした結果は、全社的に共有して水平展開する土台としていくことも必要です。このようなステップを踏めば、少なくとも職場環境の整備は改善が進みます。


 今回は、小売業における生産性改善の手順の最初である職場環境の整備についての取り組み方を具体的に示してきました。その中心である5Sの徹底については、理屈のうえではわかるが、いざ実行しようとすると何からはじめてよいかわからない場合が多いと思います。業態や扱う商品によって多少のアレンジは必要ですが、その本質は変わりませんので、ひとつのやり方として参考にして頂ければと思います。次回は、効率化や接客やサービスの向上によって付加価値の最大化を目指し、結果として生産性の改善につなげることを取り上げたいと思います。

注目トピックス

無人レジ実験、ローソン省力化で人手不足対応

 コンビニエンス・ストアのローソンが深夜のレジを無人にする実験を2018年春にも始めると発表しました。大手コンビニエンス・ストアチェーンにとってオペレーションの効率化による競争力が人手不足の深刻な環境において優位性につながるとの判断が背景にあります。コンビニエンス・ストア市場は大手3チェーンによる市場占有率が9割を超え寡占化が進み、大手チェーン同士の拡大競争は質と規模の両面を追求するというあらたなステージに移行しています。フランチャイズシステムを採用するコンビニエンス・ストアチェーン本部にとってフランチャイジーである加盟店の人手不足への対応(従業員の採用は加盟店の経営の範疇)はあらたなステージにおいて最早、本部として取り組むべき、優先順位の高い施策になっています。加盟店の採用に関する直接的な支援は各チェーンほぼ同様ですが、オペレーションの効率化による省力化ではチェーンの考え方に違いが表れています。例えば、最大手のセブンイレブンはお客様に影響しない範囲での効率化を進めています。主に深夜の時間帯に行なわれるおでんや揚げ物の什器の洗浄をする食洗機を18年2月までに約2万の全店に導入し効率化するものです。これまでの洗浄作業は什器の分解、洗浄、組み立てを伴い、人の手を介して行なわれるため非常に時間を要するオペレーションの代表格でした。また、セブンイレブンはさらに本トピックス10月号で取り上げたICタグを導入し、納品時の検品作業を減らす実験も始めています。こちらのICタグの導入は前号で述べたとおり、経済産業省が推し進めている施策であるため、早晩コンビニチェーンに導入されることが予想されます。また、ファミリーマートは24時間営業を見直しの検討を始め、実証実験を行ない、売上や経費などへの影響を検証するとしています。また、グーグルと提携し発注や店舗開発を人工知能(AI)に学習させる実験も開始しています。


 一方でローソンは、午前0時から5時までレジを無人にして、従業員は商品の陳列やフェイスアップなどの作業に集中するというものです。最大3時間分のレジ作業の労働力を減らせるのではないかと分析しているようです。しかしながら、お客様への案内や説明などは従来どおり、従業員が対応するため完全には無人になるわけでなく「無人コンビニ(*2)」とは異なります。また、決済はお客様のスマートフォンを用いる方法であるためスマートフォンを所持していなければ利用出来ない欠点があります。さらにいえば、お客様が自身で1品ずつ商品のバーコードをスマートフォンにかざして読み取りを行なわなければならず、お客様に手間を掛けさせることになります。お客様に決済という流通の一部を担わせるという点では、スーパーマーケットなどのフルセルフレジと同様ですが、フルサービスやセミセルフの決済方法が選べないという点では、このような手間がお客様に受け入れられるか懸念が残ります。ここ数年のレジのトレンドはセミセルフです。商品スキャンと精算を切り分けたところがポイントで、お客様は煩わしい商品スキャンをせずに済み、従業員は金銭授受から開放され、金銭授受に関するトラブルの回避や接客サービスに集中できるという双方にとってのメリットが受け入れられた結果だと考えられます。尚且つ待ち時間が短縮される点がお客様にとって何よりのサービスだとして支持される理由でしょう。


 お客様に手間を掛けさせることに加え、防犯面でも懸念があります。フルセルフタイプのレジでは、商品スキャンをしない(スルーさせる)ことで支払いを免れる不正が危惧されます。実際にフルセルフレジ普及初期にはこの手の不正が多発して多くのロスを発生させました。現在では商品の重さを少量でも量れるようにセンサーの感度を高めることで不正を防いでいるようです。

 中国の「無人コンビニ」で活用されているようなAIやITなどの新技術を利用したシステムに比べて、その一部の技術をレジに限定して利用することには「中途半端な組み合わせ」にならないように検証をする必要がありそうです。ご承知のとおり、このような技術は日進月歩であり、先にも触れたRFID技術を利用したICタグが普及すると複数の商品を瞬時に読み取ることで手間の掛からない精算が可能になります。また、昨年12月に可決された店舗のクレジットカードの読み取り端末のIC化を義務付ける「改正割賦販売法」をきっかけとして、クラウド型マルチ決済サービス端末が拡大しつつある新しい流れもあります。これは、おサイフケータイ機能のアップルペイやラインペイのほか、中国のアリペイ、ウィーチャットペイなどへの対応も予定しています。したがって、ローソンもこのような技術の普及の具合や環境に応じてシステム導入の可否を判断すべきでしょう。検討中のシステムに関する様々なサンクコストを意識し過ぎると消費者のニーズから外れた選択をしてしまうことがありますので注意が必要です。

生鮮宅配、移動販売のあらたな競争ステージ

 いなげやは10月26日から軽トラックを使った移動販売事業を始めました。これは、全国で同事業を展開するとくし丸からノウハウの提供を受け、まず東京都の小平市、東大和市で高齢者宅などへの巡回販売を行なうものです。

 ノウハウを提供したとくし丸は、日本全国のスーパーマーケットと提携し、いわゆる移動販売の「移動型スーパーマーケット」の仕組みをフランチャイズ方式で提供する事業を展開しています。42都道府県で101社スーパーマーケットと提携(とくし丸HP、12/6、この1年半でほぼ倍増)し、主な利用客は70代、80代の「買い物難民」といわれる方々です。「移動型スーパーマーケット」といっても軽トラックにボックス型のコンテナを載せ、そこに400アイテム、1200~1500個の商品を収納してコンテナの側面を開けるとそのまま販売什器になる、極めてコンパクトな形態です。

 移動販売が拡大する背景には、日本における人口・世帯の変化があります。国立社会保障・人口問題研究所の予測によれば、少子高齢化は今後も進展すると予想されており、2030年には、高齢化率(高齢人口の総人口に対する割合)は31.6%と国民の約3人に1人が65歳以上の高齢者となる見込みです。こうした人口構成の変化に伴い、世帯構成にも変化が見られます。「単身世帯」および「ひとり親と子からなる世帯」の構成比の伸びが著しい一方で、「夫婦と子からなる世帯」は減少すると予想されています。


 そのような人口の変化の進展により、特に地方では人口減少や高齢化に伴い、市場の縮小や買い物困難者のさらなる増加が予想されます。商圏の需要が縮小してさまざまな小売業で奪い合う構図となり、より多くの需要を取り込む必要がある地方の大型商業施設は成立が難しくなる可能性が高くなってしまいます。売り場面積の大きい食品スーパーや大型店がより厳しい条件に直面するということです。

 それは従来の来店促進型小売経営形態の限界を示しています。そこで従来の流通システムで対応できていない需要の取り込みや潜在需要の掘り起こしという視点で、ネットスーパーなどの宅配サービスや移動販売、店舗への移動手段の提供などの新しい試みがなされているのです。


 「買い物」という日常生活で当たり前の行為が、高齢化を契機に身体的にも経済的にも対応が困難になり、高齢者を中心に深刻な問題となっていることを初めて指摘したのは杉田(2008)『買物難民』という著書です。同書において、「商店街の衰退や大型店の撤退などで、その地域の住民、特に車の運転ができない高齢者が、近くで生活必需品を買えなくて困っている状態」と定義しています。2014年の「日本創成会議」による「地方消滅」が提起されたこともあり社会問題として認識されるようになりました。問題の本質は、単なる買い物先の消滅に留まらず、弱者切捨ての構図、すなわち社会的排除問題にあると理解でき「買物難民問題」に加えて、「フードデザート問題」と表現することも可能な状況にあり、問題の深刻度が高まっています。

 食料品等の買物がしたくても買物施設・店舗にアクセスできない人たちは「買物弱者」、「買物難民」、あるいは「フードデザート」などの多様な用語で表現されますが、表面的には同一の現象を対象にしているものの、その意味合いは異なります。用語の意図する点を整理してみましょう。まず、「買物難民」は消費者の都合というよりも規制緩和(流通政策の規制緩和によって大型店舗の都市郊外出店の加速により中心市街地や過疎地の中小小売店が衰退した)に適応した企業側の都合により、既存店舗の撤退によって買物が困難になった場合に呼称されています。また、「買物弱者」は、消費者の体力的な低下や自動車運転免許の返上、さらには買物時間の不足によって生じる買物が困難になった場合に呼称されています。さらに、「フードデザート」は、生鮮食料品の購入先のみならず医療や公共交通機関の減少、社会福祉の切り詰め、家族やコミュニティの欠如や孤立によって、栄養価のある食料品にアクセスすることが困難なことを主たる要因として生じる、買物が困難になった場合に呼称されています。


 国としても対策を検討しています(食品アクセスマップ(農林水産政策研究所)、買物弱者・フードデザート問題等の現状及び今後の対策のあり方に関する調査(経済産業省))。買い物弱者対策の取り組みとして、(1)家まで商品を届ける、(2)近くに店を作る、(3)家から出かけやすくする、の他に(4)コミュニティを形成する、(5)物流を改善・効率化するとことなどを指摘しています。具体的には、(1)の家まで商品を届ける取り組みには、買い物代行や宅配などのサービスを含んでいます。(2)の近くに店を作る取り組みには、移動販売や買い物場の開設が含まれています。(3)の家から出かけやすくする取り組みには、コミュニティバスや乗り合いタクシー等、買い物のための移動手段が含まれています。(4)のコミュニティを形成することは、間接的な取り組みと言えますが、人が集まって会食をすることが含まれているそうです。(5)の物流を改善・効率化する取り組みには、物流におけるIT利用等が含まれています。


 このような取り組みは買い物困難者への対応として示唆に富んでいますが、小売業者として買い物困難者への対応を図るには、小売業の継続性の困難度が高い商圏を前提とする必要があることに加え、主として高齢者に食料品を継続的に提供し続けることになり、小売業として事業継続性の難易度が高いことは明らかです。

  したがって、そのような試みの中で成功しているモデルは少ない状況です。とくし丸やコープ札幌は、高齢者にターゲットを絞って成功している数少ない事例でしょう。一方あらたな動きとして、セブンイレブンなどコンビニエンス・ストア各社が移動販売事業に取り組み始めています。セブンイレブンは、17年7月末の移動販売車両は地方都市周辺を中心に1都24県で43台です。それを18年度には46都道府県105台まで拡大させる計画です。ローソンも17年度末までに現状の3倍の全国100台まで拡大させる計画です。ファミリーマートは生協と組んで拡大する方針です。しかしながら、フランチャイズ加盟店のオーナーが事業主体のコンビニエンス・ストアでは、本部からの車両の貸与や燃料費の支援があったとしても加盟店の採算があうかどうか懸念があります。ただし、全国に展開する店舗網は移動販売が社会インフラとして発展する潜在力は大きく、行政の後押しが必要でしょう。

 ネットスーパーなどの生鮮宅配事業では、有力小売業の多くが参入していますが、物流費の上昇に加えて雨の日に需要が集中するという構造が業務の平準化の障害となるなどから、採算が厳しい企業が多くを占めています。その中で注目を集めているのは、セブン&アイ・ホールディングスとアスクルの生鮮品の宅配サービス「IYフレッシュ」です。共働き世帯などのニーズを見込み、カット野菜や調理キットなど約5000品目を扱います。東京の新宿区と文京区でスタートし、18年度に東京23区全域、20年度に首都圏に拡大する予定です。IYフレッシュはアスクルの通販サイト「ロハコ」内に出店します。配送がタイムリーでないというネットスーパーへの不満を解消すべく、午後2時までの注文で翌日の午前9時以降、午後2時から11時の注文で翌日午後4時以降の受け取り時間を1時間刻みで指定できます。配送料は1回350円で、ロハコの商品を含む購入金額が4500円を超えると無料になる設定です。生鮮宅配ではアマゾンが17年4月から「アマゾンフレッシュ」を展開しており、競争が激しくなっています。有料の「プライム会員」対象のサービスで東京都内の18区と神奈川県や千葉県の一部が対象エリアです。午前8時から深夜0時まで2時間ごとに配送時間が選べます。アマゾンプライムの会員料金(3900円)に加えて、月額500円の会費が必要です。配送料は1回500円ですが、6000円以上の注文で無料になります。アマゾン・エフェクトの言葉に代表されるようにネット通販の巨人が生鮮宅配事業に参入するインパクトは大きく、後発の「IYフレッシュ」のサービス内容に影響を与えたことは想像に難くありません。「アマゾンフレッシュ」は対抗策として初回購入限定2000円引きの販促を延長しています。矢野経済研究所によると2015年度の国内の食品通販市場は3兆3768億円で、電話注文時代から長く市場を握ってきた生協がなお4割を占めますが、最近はネット通販の伸びが市場を押し広げています。新規参入組よりさらに生鮮宅配事業で先行しているカット野菜と調理キットを広めたオイシックやらでぃっしゅぼーやも含めて、伸びしろの大きい市場での競争は、ネットで食品を購入する習慣の拡がりを喚起しさらなる市場の拡大を期待する面もありそうです。

 移動販売や生鮮宅配は、現状では顧客ターゲットや展開エリアに違いがあるものの、買物困難者対策に一役買っていることは事実です。それぞれの得意な特徴は、事業の棲み分けをすると同時に、社会のインフラとしてみた場合、それぞれの欠点を補完しあっているともみて取れます。弱者を切り捨てない社会を目指すためには、それぞれの企業が工夫をして事業を継続する前提に加えて、行政との積極的な連携が欠かせないでしょう。

ロスマイニング®・サービスについて

 当社では店舗にかかわるロスに関して、その要因を抽出して明確化するサービスを提供しております。ロスの発生要因を見える化し、効果的な対策を打つことで店舗の収益構造の改善につなげるものです。

 ロス対策のノウハウを有する危機管理専門会社が店舗の実態を第三者の目で客観的に分析して総合的なソリューションを提案いたします。店舗のロスに悩まされてお困りの際には是非ご相談ください。


【お問い合わせ】

株式会社エス・ピー・ネットワーク 総合研究室

Mail:souken@sp-network.co.jp

TEL:03-6891-5556

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----------【参考資料】------------

(*1)労働生産性=従業員1人当たり売上高×付加価値率
=付加価値額/従業員数=(売上高/従業員数)×(付加価値額/売上高)本文へ戻る

(*2)中国では17年は「無人コンビニ元年」と呼ばれ、AIやITなどの新技術を利用した「無人コンビニ」業態の開発が活発です。象徴的存在は、アリババグループの開発した「無人コンビニ」で入店するお客様はアリババ傘下のモバイル決済システムの実名アカウント持つ会員である必要があり、入店する際にスマホでアプリを開き、QRコードをスキャンして入店します。この段階において店舗入り口のカメラで顔が認識され、顧客のアカウント情報と一緒に顧客情報システムに登録されます。お客様は欲しいものを自由に手に取ってそのまま店を出ると決済システムのアカウントで代金が自動的に精算される仕組みです。各社の販売形態は2種類に分けられます。1つは通常の店舗同様に商品がオープン陳列されているもの、もう1つは大型の自動販売機型店舗です。最新技術が活用されている点は共通ですが、特に注目を集めているのはTakeGoの実験店舗がアマゾンGoの利便性を上回ったとされた点です。顧客自身の手のひらを識別する技術の利用でスマホやアプリを全く使わずに入店し、そのまま店を出ることができ、決済も自動的に済ませられる仕組みです。(出典:激流2017年10月号)本文へ戻る

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