30秒で読める危機管理コラム

危機管理のプロの観点から時事ニュースを考察しました。

平成29年犯罪収益移転危険度調査書から

調査書は、仮想通貨について、「利用者の匿名性が高く、その移転が国際的な広がりを持ち、迅速に行われる」「仮想通貨に対する規制が各国において異なる」「犯罪に悪用された場合には、当該犯罪による収益の追跡が困難」などと指摘、悪用される危険性が高いと評価した。さらに「偽造の身分証明書を使い、仮想通貨交換所で架空名義のウォレットを開設した上で、不正に入手した他人名義のクレジットカードを使って仮想通貨を購入し、その後、同交換所で日本円に換金し、架空名義の口座に振り込ませた事例」からは、「非対面取引」の持つ脆弱性と相まって危険度が増幅される構図も読み取れる。一方、「地面師」の問題は「対面取引」ですら「なりすまし」を見抜けない現実を突きつけた。厳格な本人確認なくして健全なビジネスはあり得ないということだろう。(芳賀)

高齢者の振り込め詐欺被害、次なる対策を

警察庁によると、昨年の振り込め詐欺の被害件数は1万3605件だったが、今年は9月までですでに1万2964件に達している。詐欺の危険性はこれだけ認知されているはずにもかかわらず、特に高齢者らの被害は後を絶たない。相手はいわば詐欺のプロであり、家族を思う人の気持ちに付け込んで、不安をあおり、通常の判断ができない状態に追い込んで騙しにかかる。とても詐欺にあってお金を騙し取られた人を非難することはできない。行員や警察による声がけも重要だが、これ以上の詐欺被害の解決を目指すには、高齢者の財産管理で信託商品のセキュリティ型信託などを活用するなど、違うアプローチも必要だ。資金を事前に決めておいた親族の同意がなければ引き出せない仕組みにすることが、本人の冷静さを取り戻す手立ての一つとして詐欺対策になることを期待したい。(佐藤)

小売・飲食業におけるKPI(重要需要業績評価指標)は1人当たりの生産性に

厚労省発表の10月の有効求人倍率は1.55倍と、43年9か月ぶりの高い水準となった。職業別(含パート)にみると「事務的職業」は0.46倍と低い一方で「販売の職業」は2.14倍、「接客・給仕の職業」は3.91倍、「飲食物調理の職業」は3.31倍と小売業や飲食業の深刻な人手不足を反映した結果だ。統合業務パッケージ(ERP)導入によって省力化を進めるオフィス業務やファクトリーオートメーション(FA)化により国内回帰した製造業とは対照的に両業種は労働集約的で1人当たりの生産性が低い。今後の生産年齢人口の減少に鑑みれば、調理、配膳、発注、棚卸、精算等、業務のシステムによる効率化は待ったなしだし、回転寿司やアパレルなど先進技術を導入する業界もある。重要なのは業務プロセスにおける非効率を抽出して「ロス」として認識し改善結果はKPIで見える化する事だ。(伊藤)

いま一度テレワークの基本的な考え方を見直す

雇用契約を結んだ労働者が自宅等で働くテレワークを「雇用型テレワーク」と言う。平成27年JILPTによる調査によれば、労働者のメリットとして、生産性・効率性向上(54.4%)、メリットは特にない(18.1%)、通勤の負担軽減(17.4%)、顧客サービスの向上(16.5%)、ストレス軽減(15.2%)が上位に挙げられている。だが、本当の意味でテレワークを理解しているかと言えば、違和感が否めない。「テレワークによって」生産性や効率性・顧客サービスが向上し、あるいはストレスが軽減するのであれば、それは現状の職場環境・業務フローに問題があることの表れであり、テレワークに名を借りた逃避(問題のすり替え)に他ならないのではないか。本来、自律した労働者が適切なIT機器により職場と異なる環境で同様の成果を上げるための制度であることを忘れてはならない。(新飯田)

そのソフト・情報機器は本当に安心?──ロシア製ソフト使用禁止相次ぐ

今月2日、ロシアのセキュリティ企業が提供するウィルス対策ソフトについて、イギリス政府は「政府機関における使用を禁止」した。米国政府も「安全保障上の脅威」のもと同様の通達を発しており、当該企業とロシア政府との関係が懸念されたようだ。このように、国際関係上のリスクが情報セキュリティにも全面的に投影される時代であり、我が国も例外ではない。たとえば一昨年には、中国のソフト会社が日本向けに提供するPC・スマートフォン向けソフトにおいて、入力内容が不正に「盗聴」されていたことが発覚し、背景に中国政府の存在を見る識者もいた。中国はすでに先端産業でも製造業でも日本を凌駕しつつあるが、地政学上、日本との対抗はある意味必然だ。事業者もまた、固有のカントリーリスクをふまえた取引先管理・調達管理を考える必要があろう。(山岡)

Back to Top