30秒で読める危機管理コラム

危機管理のプロの観点から時事ニュースを考察しました。

犯罪インフラ対策にAIの活用を

診療報酬制度は、膨大な数の審査に忙殺されて不正を完全に見抜くのが難しいという構造的な問題が以前から指摘されている。その脆弱性が突かれ、指定暴力団住吉会系組長らによる療養費や診療報酬の不正請求事件では数億円が暴力団の資金源となった。制度自体が、医師の真っ当な診療行為を前提として成り立っている現状では、このような「悪意」を早い段階で見抜くことが難しいことも事実だが、「不審な請求等を検知する、性悪説に基づく制度設計」への見直しが急務だろう。そのような中、当該審査業務を、AIを活用してほぼ自動化する試みが始まるという。AIは定型的な業務を大幅に効率化する分野で特に力を発揮するが、「不審な請求等を検知する、性悪説に基づく制度設計」に向けて、AIによる不正検知機能の搭載とその精度向上を期待したいところだ。(芳賀)

ヒアリ問題はもはや国難の認識で対応を

ヒアリがついに東京湾でも確認された。ヒアリは「世界の侵略的外来種ワースト100」に分類され、家畜ばかりか人間をも死に至らしめる猛毒を有する。温帯での生息が可能で、女王アリは1日に卵を1000個以上産むという繁殖力のため、定着・拡散してしまった場合には根絶が事実上不可能になりかねない。米国ではヒアリにより年間100名もの人命が奪われ、経済損失は年間6千億円超という試算もある。映画「シン・ゴジラ」への喩えも突飛ではなく、もはや国難であるとの認識が必要だ。将来の長きにわたる国民の生命・財産の保全に向け、国と自治体は予算と要員を惜しまず直ちに投入し、広域調査に基づく早期駆除や新たな上陸を許さない徹底した対策を講じなければならない。新種の危機発生に際し迅速な対策でリスクを極小化するのが危機管理の要諦に他ならない。(高森)

IoTへのサイバー防衛が急務

5月、6月に世界を襲った大規模なサイバー攻撃は、あらゆるモノがネットに繋がるIoTの危うさを浮かび上がらせた。目立つのが監視カメラや映像を一時記録するレコーダー、ネット接続用ルーターへの攻撃と感染だ。情報通信機構(NICT)によると、サイバー攻撃に関わる通信はIoT機器を狙うものが全体(1,281億件)の64%を占めており、昨年から26%増加している。IoTは工場のほかエネルギー・交通などの社会インフラにも普及しており、ひとたび攻撃を受けると産業や社会の混乱につながり、実社会や人命にまで多大な影響が及ぶ可能性が少なくない状況である。IoTは生産性と利便性向上など大きな可能性を秘めているが、そのリスクにも注意を払う必要があり、IoTの所有者・提供者ともに、その脅威をあらためて認識し、最優先でセキュリティ対策に取り組まなければならない。(佐藤)

ドラッグストア成長加速 コンビニ猛追

ドラッグストア(DS)が小売業における存在感を増している。16年度の売上高では、6兆4916億円、同店舗数1万8874店とコンビニの売上の約6割、店舗数で約3割強を占め、店舗数純増の勢いは逆転した。売上構成比は主力の医薬品は安定しているものの30%強に留まる一方、食品が上昇している。高齢者をターゲットに小商圏の競争に参戦してきた結果だ。スーパーやコンビニ、調剤薬局との垣根を壊してきた「範囲の経済」が成長の源泉だ。一方で、華々しい成長に経営リスクも影を落とす。化粧品や医薬品などの高額商品の組織的窃盗被害は業界の共通した問題だ。推進する24時間営業には、強盗や顧客対応のノウハウも必要だ。どのような業務に取り組み、どのようなリスクをどこまで取り、どの位収益をあげるかというリスクアペタイトを明確にする必要があろう。(伊藤)

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