30秒で読める危機管理コラム

危機管理のプロの観点から時事ニュースを考察しました。

技術革新とリスクアペタイト

口座動態情報やインターネットを利用して完全非対面で事業性融資に踏み切る動きが広がっている。さらには、非対面取引における本人確認手続きのあり方についての検討も始まった。それらを可能にするのがFintechをはじめとする技術革新だが、技術革新には正の面だけでなく、必ず負の側面もある点を忘れてはならない。IMFは、Fintechに関する報告書の中で、ビットコインなどの仮想通貨や新たな送金、決済サービスが「国際的な支払いの利便性を改善する」と評価した一方で、匿名性がマネー・ローンダリングのリスクを高めると警告した。「悪意を持った者」の高度な技術によるなりすまし、偽装等を匿名性の高いシステムから完全に排除できるのか、新たな技術の開発には、「新しいリスク」に対する「慢心」を排除し、負の側面に十分配慮した慎重な取り組みが不可欠だ。(芳賀)

災害時は避難生活が不可避。防災対策の中で避難時のリスク想定や対策・検討も行うべき

大雨被害が各地で発生している。防災・BCPの観点から留意したいのは、避難所における避難の過酷さである。西日本新聞では、空調がなく、熱中症の懸念がある中での過酷な避難生活の様子が報道されているが、これは今回の災害に限ったことではない。首都直下地震や東海・南海トラフ地震等の発生時にも多くの避難者が出るが、停電が伴えば、あるいは施設によっては、空調が全く効かない中での避難生活を余儀なくされる。特に夏場は、熱中症や食中毒の可能性も高く、衛生状態の悪化に伴う感染症や害虫、皮膚病、それによる睡眠不足等に悩まされる。水3日分の備蓄では炎天下で避難することを考えると到底足りない。社内待機や帰宅困難者の在館でも問題の本質は同様である。防災訓練等の中で、避難時のリスクも検討し、準備(意識)しておくことが重要である。(西尾)

中小企業のリスクマネジメント 2016全国社長の年齢調査(東京商工リサーチ)より

16年度の社長の平均年齢は、前年より0.3歳上昇し61.19歳に達し、団塊世代の社長交代が進まず高齢化が顕著になった。事業者の99.7%は中小企業であり、深刻な後継者不足により事業承継を先送りしている結果だ。年齢分布は70歳以上では11年は19.38%だったが、16年は24.12%と4.7ポイント上昇し、70代以上の増加が目立つ。これは業績との相関関係が鮮明で、70代以上は減収企業率、赤字企業率とも各年代比較でワーストだ。結果的に経営者が交代していない企業より、交代した企業の方が収益力は高い。稼げる中小企業は計画的かつ積極的投資を行ない、リスクへの備えも行っており、攻守両面を強化している。情報セキュリティや事業継続マネジメントなどのリスクへの対策は、業務の効率化や人材育成、売上の拡大につながるよう平時の経営改善の一環として取り組むべきだ。(伊藤)

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