三匹の社労士・HRリスク相談室(5)「働き方改革に向けて 長時間労働問題への対応」(2018.9)

2018/09/26 / 総合研究部 プリント

三匹の社労士・HRリスク相談室(5)
「働き方改革に向けて 長時間労働問題への対応」

 エス・ピー・ネットワークに生息する三匹(?)の社労士が、職場における、「人」にまつわる様々なお悩みの解決を目指し、初動対応や法的な責任、再発防止など、三匹それぞれの観点からコメントします。


【プロフィール】

イヌ社労士:
 公認不正検査士という顔も持ち、自慢の嗅覚で「事件」の裏側を読み解く(やや偏屈)。来月から旅に出ます。

クマ社労士:
 鮭をもらった恩は一生忘れない。法律も大事だけど・・・義理とか人情とかも好き。 そろそろ冬眠の仕度。

ネコ社労士:
 猫なで声と鋭い爪をあわせ持ち、企業内での人事実務経験が豊富。産業カウンセラーでもある。 そろそろこたつで丸くなりたい。



今月のお悩みは、こちら。

人事担当者ですが、困ってしまったのでアドバイスをお願いします。

 会社として現在推進中の「働き方改革」について衛生委員会で議論したのですが、非管理職の委員からは「同じ仕事量なのに残業を減らせと言われてもムリ。これではハラスメントだ」との反発があり、管理職である委員からも「役職者へのしわ寄せが大きい」との不満が出て、積極的な意見が全く得られませんでした。「働き方改革」の必要性は分かるのですが、当社の実情では長時間労働問題を刺激するばかりのようで非常にやりづらいです。今後、どのように進めていったら良いのか、教えてください。

【ネコ社労士】

 「働き方改革」って、表向きには、働く人にとって「良いこと」ばかりのように見えるけれど、実際に実現しようと思うと・・・かえって負担に思う人が多いように感じます。働く人にとっては、「働き方改革=無茶な残業時間削減」のように思っている人もいるのではないかしら。「働き方」は、働く人が主語となって改革すべきもののはず。しかし、労基署の指導も厳しくなり、会社として労働時間を適正に把握するよう、今まで以上に厳密な管理を求められるようになったけれど、モノやサービスの質を落とすわけにはいかず、人を採ろうにも思うように人が集まらない!そんな現実の中で、「働き方改革をしろ!」と言われても・・・「やらされている感」しか感じられませんよね。そう思うと、「働き方改革」の成功は、いかに「自分にとってのメリット」を実感できるかにかかっているのではないかしら。社労士としては、法律や労基署からの指導の強化などについ目が向いてしまうけれど、働き方改革を成功させるには、ただ厳しく「残業を減らせ!」「サービス残業禁止!」と叫ぶばかりでなく、もっと具体的で、前向きになれるような策が必要よね?


【目指すべき姿】

 まず、「働き方改革」関連の法律を眺めると、会社に課される義務がずらずら並んでいることがわかります。会社に課された「働き方改革」なのですから、会社「全体」で取り組む必要があります。つまり、残業を減らすように、「各自で」とか「部署で」の対策ばかりを論じていても、すぐに限界が来てしまうこと、「やらされ感」をぬぐえないことを、ぜひ経営者の皆様にも感じ取ってもらいたいものです。

 「残業を減らせ!」の号令だけでも、昔ながらの「付き合い残業」のようなムダは削れるかもしれませんが、常に仕事に追われている、本当に忙しい人たちの長時間労働は減りません。まずは、経営者が本気で「会社全体の最適」を目指す意志を示し、会社として目指す「未来」を、そこで働く人たちと一緒に考えながら、形にしていくことが「改革」につながるのではないかと思います。「部分最適」ではなく、「全体最適」を目指すための意思統一が必要です。

 よく、「残業代を全部払っていては、会社が立ち行かなくなる」などとぼやく経営者さんもいらっしゃいますが、「残業時間を適正に抑え、きちんと残業代を払っても、健全な経営を続けられる会社」を目指さない限り、会社に未来はありません。経営者が「今までと同じ」にこだわっていては、「働き方改革」の成功などあり得ませんし、「人」という財産がどんどん流出してしまいますよ。


【何から手をつけるか?】

 もし今、残業代が払われている・いないに関わらず、各部署・各人が実際にどれくらいの時間数働いているかが把握できていないならば、まずは労働時間の適正な把握が必要かと思います。例えば、管理職だからと、タイムカードを打刻していなかったり、勤務表がなかったりしませんか?たとえ残業代のカウント上は問題がなかったとしても(「名ばかり管理職」ではないことが前提ですが)、健康や安全に配慮する観点からは、管理職の労働時間も把握されていて当然です。現に、労働安全衛生規則第52条の2で、長時間労働に関する産業医の面接指導の対象者が定められていますが、管理職だからといって除外はされていません。ということは、管理職だって、労働時間は把握されてしかるべきなのです。

 労働時間が把握できれば、どこに無理がかかっているかが見えてきます。全部署・全従業員の労働時間が、会社全体の「平均値」であることは滅多にないはずです。どこかの部署の残業は異常に多く、どこかの部署では手待ち時間ができている、同じ部署内でも、ある人は残業が多く、ある人は(特別な事情もなく)暇を持て余しているなどという現象は、意外と現実に起こっているものです。

 「活用しきれていない人材」は、宝の持ち腐れです。せっかく入った新入社員を、「教える時間がない」「自分でやった方が早い」と、育成せずに放置していませんか。自分と同じことができないからと、「期待外れ」だったと決め付けて、そのまま放置していませんか。人材は、活用しようとしなければ、やる気も会社に対する信頼も失ってしまうものです。活用できていない人材の掘り起こしと、再配置を検討する可能性を探ってみてください。


【改革は、「~しない」より「~する」の発想で!】

 負荷のかかっている部署がわかれば、その部署の業務内容を、詳しく調べていくのが次のステップです。もし、その部署でなくてもできる仕事、むしろ他部署で行うべき仕事が混ざっていれば、会社として、業務分担の見直しを検討すべきでしょう。「本来はどうあるべきか」の視点が必要です。

 ほとんど活用されていない資料作りや、目的が見失われた作業が残っているならば、それは廃止を検討することになりますが、その際、ひとつ配慮いただきたいのは、その業務を担当している人の気持ちです。今まで自分が時間を費やし、ミスをしないよう一生懸命行っていた業務が、いきなり「意味がないから廃止」と言われたら、どんな気持ちになるかを考えてみてください。自分が担当していた業務がなくなれば、自分の雇用が脅かされるのではないかと不安になれば、働き方改革に非協力的になっても不思議はありません。

 「要らないもの」を探すよりも、「もっと必要になるにはどうしたらよいか」を考えてみてはいかがでしょうか。例えば、現状では「不要」と判断された資料でも、元々は何か「目的」を持っていたはずです。目的に立ち返り、今ならば、どんな資料にすればもっと活用されるかを考えていけば、「本来あるべき仕事」への置き換えができます。自部署にとっては「仕事が増えた」ように映っても、それが会社全体の効率化につながるならば、「働き方改革」は進んでいきます。

 自分の仕事が誰かの役に立つということは、喜ばしいことではありませんか!「働き方改革」は、各人が、自分の仕事をもっと意義のあるものにするように、主体的に考え、実行することで果たせるはずです。経営者・管理職は、各人が考えたプランを、会社全体の最適に照らして、実行するか修正してもらうかを判断する役割を担うことになります。

 「~しない」ばかりにとらわれず、「~する」へと発想を切り替えることで、「働き方改革」への取組が、少しでも前向きに捉えられるようになると良いのですが。いかがでしょう。


【クマ社労士】

 ご承知のように「働き方改革」には、表裏の関係に着目して「休み方改革」(労働時間と労働時間以外の時間)や「働かせ方改革」(労働者と使用者)といった側面があります。結論は【ネコ社労士】と同じになりますが、今回は「働かせ方改革」という視点を意識的に用いたいと思います。言葉自体の良し悪しは別として、視点の違いとしてご認識いただければありがたいです。


【働かせ方改革】

 言うまでもありませんが、「ひとが働く」ということに着目するならば、私たち労働者は労働の対価として賃金を得ていますし、使用者は労働力を適切に配分して生産活動を行い、売上・利益の拡大を図ります。このことは学生のアルバイトであっても「感覚的に」理解しているのではないでしょうか。「働かせ方改革」の中に「使用者」の視点を含めるのであれば、「適切な配分」が鍵になることでしょう。何万人もの社員を雇用する大企業であっても、数十人、数人規模の組織であっても、根本的な部分では共通していると言えます。


【多様性が当たり前の組織】

 「働かせ方改革」について、私の経験から申し上げられることは、コンビニエンスストア(以下、「コンビニ」)での店長(約10年前)としての内容くらいです。私が新卒で入社した会社は、コンビニのフランチャイズ本部であり、入社直後の数年間は、直営店で勤務します。その中の「店長」としての位置づけになります。

 入社試験で選抜した正社員を数十人、数百人と束ねるような経験ではありませんが、コンビニの店長として過ごした期間は、(当時の体力面の過酷さを除けば)実りある経験です。比較的容易に想像してもらえると思いますが、コンビニのスタッフは、男女問わず幅広い年齢層、様々な働く目的、多様なスキル・経験、言い換えれば個性だらけの環境と言えます。

 可能な限りシンプルに表現するならば、こうしたスタッフの労働時間・作業内容を「適切に配分」して、24時間365日の営業を維持しつつ売上・利益の拡大を図ることが、原始的な意味での「働かせ方改革」でしょう。小売業に従事される皆さまには釈迦に説法だとは思いますが、営業時間に始まりと終わりが「ない」からこそ、かえって時間を区切ることに重きを置くようになります(スタッフのシフトの区切りに連動するとも言えます)。

 当時、私が店長として着任した店舗は雪国にあり、過疎化が深刻でした。前任の店長からは「考え得るあらゆる手段を用いて採用活動をしたが、若者は集まらなかった」と引継ぎを受け、実際に私も着任直後は副店長と深夜勤務(22:00~翌6:00)を1週間交代で実施する必要に迫られました。副店長と打ち合わせができるのは、朝、副店長が出勤して私が帰宅するまでの15分程度(毎日ではない)であり、お互いレジ接客や清掃など作業をしながらでした。こうした場合に生じ得る問題として、お互いに「見えない時間帯」のスタッフの動き(作業の結果とその背景にある管理)を懐疑的に見てしまうという点が挙げられます。すなわち、深夜勤務をしている間は、昼間のスタッフの動き、日中勤務をしている間は、深夜のスタッフのそれが目についてしまい、同時にその時間帯を管理している相棒(私から見れば副店長)の管理を疑ってしまいがちです(実際私は副店長を疑っていたことを猛省しました)。「なぜ22:00に私が出勤した段階で●●ができていないのか」といった具合です。そして、こうした雰囲気は容易にスタッフへ伝わります。言葉の端々に出てしまうのでしょう。それが遠回りで耳に入ることでさらに疑念を抱くという悪循環です。


【この組織に必要な"働かせ方改革"とは】

 悪循環からの脱却は途方もない道のりに思えました。そもそもこのまま勤務していても、いずれ昇進試験をクリアすればスーパーバイザー(店長の上位職)になって抜け出せるのではないかとも思いました。つまり「脱却する必要性自体あるのか」と。しかし、私自身、もう少し楽しく働きたいし、副店長やスタッフにも有意義な時間にしてほしいという最後の砦は、かろうじて破られていませんでした。

 まず取り掛かったのは(というよりはこれしか実施していませんが)、「見える化」です。見えない時間帯の店舗の流れを「見える化」するために、15分刻みの作業割当(誰が何をするのかといったスケジュール、割り振り)を作りました。するといろいろなことがわかります。おでんの鍋を洗う時間はどれくらい必要なのか、お店の窓ガラスを掃除するにはどれくらいの時間が必要なのか、商品や備品の発注業務にはどれくらいかかっているのか、といったことです。当然、これらは「誰が」実施するのかによって変動します。最終的には時間を揃えるのではなく、クオリティを揃えたうえで、所要時間を均一化していくことが教育・指導の目的なのだと考えました。

 結果、この作業割当は完成した段階で古くなり始める、言い換えれば常に改変が必要なものだと理解しました。当然、おでんの鍋の数は、寒い時期において「複数」ですが、暖かくなり始めると「1つ」です。初夏以降は、早朝、窓ガラスに張りついたカエルを優しく水で流す作業時間を加えなければなりません(冬はカエルが張りついていないのでスムーズに進みます)。発注業務は、売場のレイアウトや発注者の習熟度に大きく影響されます。

 最終的に得られたことは、作業割当の「作り方」と「改変の仕方」の輪郭が見えたことです。そして、少しずつ「ムリ・ムダ・ムラ」の改善に進んだことでした。「なぜ22:00に私が出勤した段階で●●ができていないのか」の答えは、季節の変わり目(商品構成の変わり目)に適合した作業割当になっておらず、属人的な作業「見込み」に依拠した運営であったことが原因と判明しました。つまり、副店長の管理、スタッフの動きの前提となる24時間の作業スケジュール(作業割当)の不備という店長としての私自身に問題があったと気付いたのです。また、こうした「ムリ・ムダ・ムラ」の改善によって「手を動かす時間」の一部を「頭を動かす時間」に振り分けることができるようになりました。すなわち、レジ接客、品出し、清掃で忙殺されていた状況から、将来(明日、明後日、来週、来月)の販売戦略、売場政策を検討する時間を捻出することに繋がったのです。これはとても大きいことでした。常に後手後手になっていた施策が、事前に打てるようになると余裕ができます。その余裕は不測の事態に対応する時間にも使えますし、打った施策を検証する時間にもすることができます。

 とりとめなくコンビニの話をしてしまいましたが、「働かせ方改革」として【クマ社労士】の申し上げたいことをまとめると以下のようになります。

  1. 「働かせ方改革」には、その動機が不可欠であり、外的要因に端を発した動機ではなく、自らその必要性を痛感した管理者による主体的な行動が不可欠。
  2. 「働かせ方改革」の手始めは、現状把握(例えば猜疑心や「ムリ・ムダ・ムラ」)。
  3. 「現状把握」をしたら、それを改善するための手段を地道にやってみる(例えば15分刻みの作業割当)。
  4. 「手段」は一つの形として完成することはなく、定期的な見直しが必要になる。
  5. 「(おおげさですが)改革の成果」とは、手を動かす時間の一部を「頭を動かす時間(戦略を練る時間)」にできること。
  6. 「成果」を共有することで、次への動機となる。

 一方、上記の内容は、「入社試験で選抜した正社員」には通用しないのでしょうか。決してそのようなことはありません。何より①に示した動機があれば前に進むはずです。ぜひ、「時代がそうだから」「会社に言われたから」以外の目的を見つけることが、「働かせ方改革」のスタート地点と認識していただければ幸いです。そして人事部門の方には、「動機設定」の確立にお力添えをお願いしたいのです。


【イヌ社労士】

 うーん...確かに【ネコ社労士】の呟きどおり、社労士としてはついつい法律や労基署からの指導強化などに目が行ってしまいますが、少し目先を変えて、そもそも「働き方改革」、中でも残業時間の削減という議論の背景は何なのかといったところから、社内での推進に当たってのポイントなどを探って行きたいと思います。


【「働き方改革」の目的】

 唐突ですが皆さん、「働き方改革」という言葉は、長時間労働の抑制やらダイバーシティやら労働生産性向上やらと多義的・多面的に議論されるため、「今この話題ではどの点を指しているのか」が分かりづらくありませんか? こうしたズレは、「いったい何のための労働時間短縮なのか」という目的が不鮮明になり、社内での議論さえすれ違いにさせ、何か改革を行ってもすぐに形骸化しかねないため注意が必要です。

 そもそも「働き方改革」は、極論すれば2つの大きな側面を持っています(実際にはひとつの施策に両面ないしは更に多面的な目的が込められているケースも多いですが、あくまで極論です)。

そのひとつは「1億総活躍社会の実現」を通じて労働力減少に向かう日本経済を維持・活性化して行こうという動きであり、出産・育児支援を通 じた「希望出生率1.8」や「女性活躍推進」、介護支援を通じた「介護離職ゼロ」、あるいは外国人人材の活用等のダイバーシティ社会の実現などが挙げられ、この点は安倍晋三総理自ら「単なる社会政策ではなく、究極の成長戦略」と力説しているほどです。こちらの観点では、長時間労働対策は結果としての労働生産性向上、余暇増加による消費拡大、多様な働き方による労働力増大等が目的となってきます。

 他方の社会政策的な目的としては、65歳までの継続雇用、障害者雇用促進、同一労働同一賃金などが挙げられますが、最も重視されている目的のひとつがはやり長時間労働対策であり、特に重点的には「ワークライフバランス」の健全化にとどまらない、「過労死等ゼロ」の緊急対策という深刻な課題となっています。厚生労働省が2016年12月に取りまとめた「『過労死等ゼロ』緊急対策について」では、その第一の柱として「違法な長時間労働を許さない取組の強化」を掲げ、労働時間の適正把握や長時間労働事業場への指導強化などの徹底方針が示されているのです。

 このように、長時間労働対策にもまた大きく2つの目的があり、これを企業としての捉え方で言うならば、一方は事業の生産性向上による持続的成長に向けた取り組み、他方は従業員の心身の健康保持と労災防止に向けた取り組みと考えられるでしょう。そして、こうした区分以外にも、企業によって様々な目的(得ようとする成果)があるはずです。

「働き方改革」の推進に当たっては、「働き方改革」とその議論自体が有するこうした多義性を理解した上で、各社の実情に応じた優先課題、重点問題などの目的設定を明確化して臨むことが不可欠です。例えば「人材難の克服に向けた既存従業員の労働環境改善と新規雇用促進対策」など、まずは時短化の先に何を実現しようとしているのかの共有が重要という意味です。


【改革成功のためのポイントを3つほど】

 残業時間の削減については、結局は経営側による賃金コストの抑制がホンネなのだろうと見られがちで、ご相談のように一般の従業員はおろか管理職からも反発しか生じないという事態が生じやすいと思います。そのような中で、少しでも意味のある改革が進展するよう発想のポイントをいくつか挙げさせていただくので、ひとつでも参考にしてみてください。


①ゴールの共有

 これは先ほども述べたとおり、「何を実現しようとする改革なのか」という明確な目的の共有ということになりますが、もうひとつ加えるならば「誰のための改革なのか」が欲しいところです。同一の労働量における残業削減は業務負荷を高める一方で、残業代削減という経済的なデメリットまで生じさせるため、従業員が進んで協力する余地がありません。多様な働き方が推奨され進展すれば、誰かの柔軟な働き方の「しわ寄せ」を受ける従業員は「割を食った」と感じることでしょう。けれどもこれらは全てではありません。【ネコ社労士】や【クマ社労士】が例示したようなやり方で、苦労してでも時短に成功した先に何を実現するのか(例えば新しい賃金システムなど)を示すことで、成果が自分たちに返ってくるという未来像が描けます。多様な働き方にしても、人生における様々なライフイベントにより、いつ自分自身も柔軟な働き方が必要になるか分かりません。現在の「しわ寄せ」は未来に向けた貯蓄とも言えるわけです。そうした中長期視点での魅力あるゴールを掲げることが大切です。


②「過度なワクワク感」より「小さな成功体験」

 これは一見、①と矛盾するようですが、ゴール設定における注意点です。改革を進めていった先にあるビジョンを示していくことは重要ですが、なかなか辿り着けない目標というものは人に無力感を与えがちなものです。うまくいく施策もある反面、つまずく失敗例も出て来て壁にぶつかると、途端にあきらめムードが漂うこともあります。政府や自治体が積極的に推奨するテレワークのように、それが利用できる職場・職種がもともと限られていて、一部の人しか恩恵を享受できないケースも多々あるでしょう。こうした無力感・倦怠感・失望感というものは、改革が一度頓挫してしまうとトラウマ化して再チャレンジを困難にしてしまう恐さもあるので、そのためにも組織は予め、「働き方改革」の具体的施策の一つひとつは地味なものであり、その成功度合いも部分的になりがちで、失敗することも多いものだと覚悟しておく必要があるのです。そこで、魅力ある将来を掲げる一方では、細かなゴールも設定しながら、皆で小さな成功体験を共有して行くことが求められます。これが次の一歩へのステップ(動機づけ)になることは【クマ社労士】の話にもあった通りだと思います。


③働く人の主体性

 それから、「働き方改革」の主役はあくまで働く人であるとの自覚を持ってもらうことが挙げられます。まず、どのように時短化を図り生産性を高めるか、作業のどこに無駄があって効率化しても支障がないのかなどは、実務に携わる働き手にしか分からないことが多いですよね。多様な働き方にしても、いろいろな働き方の従業員をどのように組み合わせればうまくいくのかは、働く人の知恵にかかってきます。「やらされ感」は不満と反発しか生まず、こうした知恵を生み出してくれないものです。「小さな成功体験」をチームで競ったり、会社が表彰したりといった工夫で自主的な改革案を引き出したいものです。一方では、改革成功の責任もまた働く人が負うべきでしょう。多様な働き方を受け入れ、時間短縮を図るに際しては、交替可能な仕事の体制が有効であり、属人的な仕事の仕方が一番の障害となります。一人ひとりが仕事の見える化と共有に努め、管理職は仕事の標準化を図るなどの責任を分担することで、裁量と責任を併せ持った主体性につながって行きます。

 ゴールと小さな成功の共有も含め、要は皆が主体性を持つことこそが「働き方改革」成功に不可欠なポイントと言えるでしょう。


 「HRリスク」とは、職場における、「人」に関連するリスク全般のこと。組織の健全な運営や成長を阻害する全ての要因をさします。

 「HRリスク」の低減に向けて、三匹の社労士は北へ、南へ。


 また、どこかの街でお会いしましょう。

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