お知らせ 2020/05/18

【コラム】暴排トピックス 2020年5月号/「コロナ禍と犯罪組織」

執筆者:主席研究員 芳賀恒人

【もくじ】―――――――――――――――――――――――――

1.コロナ禍と犯罪組織

2.最近のトピックス

(1)薬物を巡る動向

(2)AML/CFTを巡る動向

(3)特殊詐欺を巡る動向

(4)テロリスクを巡る動向

(5)犯罪インフラを巡る動向

(6)その他のトピックス

・暗号資産(仮想通貨)を巡る動向

・IRカジノ/依存症を巡る動向

・犯罪統計資料

(7)北朝鮮リスクを巡る動向

3.暴排条例等の状況

(1)暴排条例に基づく逮捕事例(愛知県)

1.コロナ禍と犯罪組織

今、世界は新型コロナウイルス感染拡大の脅威に晒されています。その脅威は、身体的な脅威にとどまらず、人間の心理の深い部分にまで影響を及ぼしているほか、社会・経済のあり方を根底から覆すような悪魔的な破壊力を持っています。そして、今、人類は、そのような自然の脅威を相手にその叡智の限りを尽くして立ち向かっています。そのような中、反社会的勢力や特殊詐欺グループなど犯罪組織は、未曾有のコロナ禍でさえ「稼ぎの場」と捉え、立ち向かう市民をあざ笑っています。否、あざ笑うどころか、不安や恐怖、混乱の中にいる市民や事業者の心理を巧みに突いた新たな手口を次々と繰り出しながら、大きく稼いでいる実態があります(その陰には、必ず、経済的にも心理的にも大きく傷ついた被害者が存在するのです)。コロナ禍は犯罪組織との闘いでもあり、決してその跋扈を許してはなりません

例えば、資金繰りに苦しむ事業主らの不安につけこみ、政府系金融機関から融資を受けられるよう斡旋するなどと金融庁職員をかたって高額な手数料を請求する犯罪が増えているといいます。その背後に反社会的勢力の関与も疑われる事例も散見されています。助成金を巡っても同様の構図が見られ、始まりだした現金給付も「貧困ビジネス」に悪用されかねないリスクを孕んでいます。融資や助成金の利用申し込みが急増する中、金融機関や行政が、膨大な件数の相談をこなしながら不正を見抜くのは容易ではありません。本当に苦しむ事業者に必要な資金を行き渡らせることが緊急事態における金融機関や行政の役割であり、次々と打ち出される諸政策も理解できまるところ、膨大な事務処理に時間的圧迫が重なり審査が形骸化すれば、犯罪組織を助長しかねません(本当に必要な事業者のもとに必要なだけの給付金が間違いなく届くように、迅速さの中にも的確な審査が求められますが、「言うは易く行うは難し」です。国税当局や警察などと連携し、事後的にでも相当数の無差別サンプリング調査を実施するといった方針をあらかじめ示すなど、不正をけん制し、実効性を少しでも高める工夫をすることが必要だといえます)。あるいは、コロナ禍が拡大する中、欧州諸国の医療・研究機関へのサイバー攻撃が相次いでいます。治療薬として特例承認された米の「レムデジビル」製造会社もターゲットとなりました。卑劣なのは、感染者を治療する病院やワクチンの研究所がサイバー攻撃で機能が停止するなどの被害を受ければ、コロナ禍の収束が遅れる恐れがあり、金銭を支払ってでもコンピューターの復元を選ばざるを得ない状況が突かれている点です。国内でも、事業者や消費者の不安や窮状につけ込むような休業店舗への窃盗事件や詐欺事案が多発、新型コロナウイルスに効くとうたって健康食品や薬を不正に販売する事例や違法広告が後を絶ちません。外出自粛で路上販売が難しくなった一方でインターネット通販に活路を見出した薬物販売は不安を抱える若者に浸透し、その問題の根深さと反比例するかのように、犯罪組織は莫大な収益を手にしています。イラクでは治安部隊が外出禁止令などのコロナ対策に追われるなどの混乱に乗じて、イスラム教スンニ派過激組織「イスラム国」(IS)の復活が現実味を帯びています。また、EUで新設された欧州検察庁のコベシ長官は、巨額の新型コロナウイルス対策に対する監視が不足すれば、詐欺や不正行為の急増につながる恐れがあるとの見方を示しています(2020年5月13日付ロイター)。EUの新型コロナウイルス対策の詳細はまだ調整中のところ、今後数週間の間に、最大2兆ユーロ規模の対策が講じられると見込まれています。当然ながら、受給者からは迅速な給付を確保するため柔軟性の向上を求める声が出ているものの、コベシ長官は柔軟性を高めれば詐欺や不正行為など意図しない結果につながりかねないと指摘、また新型コロナウイルス対策が公開入札のない契約など透明性に欠ける慣行を招いている兆候がすでにあるとし、これは組織犯罪や汚職が横行している一部の加盟国の話ではなく、加盟27カ国全体に見られる現象だと指摘、コロナ禍において監視不足が不正行為を招いている現状に警告を発しています。まさにコロナ禍は犯罪組織との闘いであることを実感させられますが、やはりその跋扈は許されるものではありません。

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