特集 2020/06/08

【コラム】暴排トピックス 2020年6月号/「コロナ禍と特殊詐欺」

執筆者:主席研究員 芳賀恒人

【もくじ】―――――――――――――――――――――――――

1.コロナ禍と特殊詐欺

2.最近のトピックス

(1)暴力団情勢

(2)薬物を巡る動向

(3)AML/CFTを巡る動向

(4)テロリスクを巡る動向

(5)犯罪インフラを巡る動向

(6)その他のトピックス

・暗号資産(仮想通貨)を巡る動向

・IRカジノ/依存症を巡る動向

(7)北朝鮮リスクを巡る動向

3.暴排条例等の状況

(1)暴排条例に基づく逮捕事例(神奈川県)

(2)暴力団対策法に基づく中止命令事例(福岡県)

1.コロナ禍と特殊詐欺

新型コロナウイルスの感染拡大で社会活動が大きく制限されている中、特殊詐欺グループをはじめとする詐欺グループ等の犯行が活発化しています。外出自粛によって、高齢者自身が在宅している時間が長期化していること、不安や混乱が広がる現状は、詐欺グループにとって絶好の機会ともなっているのです。それ以外にもコロナ禍は、特殊詐欺グループにとっての「おいしい構図」を創り出しており、今まさに、私たちは被害防止のために「知恵を絞る」ことが求められています。

そもそも、特殊詐欺の被害防止においては「確証バイアス」(無意識のうちに自分に都合のいい情報、自分の主張を後押しするような情報ばかりを集める傾向のこと、思い込み)からいかに逃れられるかがポイントの一つとなります。残念ながら、警察庁の調査によれば、「自分は被害に遭わないと思っていた」と回答した割合は、被害者が78.2%、事業者の協力により被害に遭わなかった者が78.0%、家族・親族が見破り被害に遭わなかった者が71.5%と、自ら見破った者の56.8%よりも高い値を示すなど、被害にあう可能性を過小評価する傾向があります。また、被害者、事業者の協力により被害に遭わなかった者、及び家族・親族が見破り被害に遭わなかった者については、その約7割が通話中に犯人側からトラブルの内容を聞かされる前にすでにだまされており(電話を受けた時点でだまされているということです)、だまされた理由として「声がそっくりだったから」が最も高い割合を占めているといいます。確証バイアスの怖さは、「自分はだまされるわけがない」との強い思い込みから、子どもや孫以外の人間であるにもかかわらず「脳内で変換されて」本人であると思い込んでしまうところにあり、そもそも電話を受けた段階で本人と信じてしまう点が真に恐ろしい部分でもあります。さらに、だましの電話を受けた際の心理状況について、被害者、及び事業者の協力により被害に遭わなかった者の大半が「自分がお金を支払えば息子を救えると思った」、「親族が起こしたトラブルを聞いて、驚いた」、「『今日中に』などと時間を区切られたので焦ってしまった」などと回答しており、だましの電話を受けた際に冷静な判断ができなくなっていることがうかがわれます。これらを踏まえると、だましの電話を受けた際に確実に見破ることは難しく、また、いったんだまされてしまうと冷静な判断が十分に期待できないことから、犯人からの電話に出ないことが最も重要だと言えます。具体的な対策として、迷惑電話防止機能(過去の迷惑電話をブロックする、「録音しています」とメッセージが流れるなど)を有する機器の活用等が有効です。また、渦中に直接耳に情報を届けるのではなく、自分のペースでスピーカーを通して録音を聞くことで冷静な判断が可能になるといい、それに加え、録音設定にしておくことで、犯人側からみれば証拠が残り、録音を嫌う傾向にあることから、そもそものアプローチを遮断することにもつながります。とっさの場合や確証バイアスに囚われている人間に何を言ってもその「思い込み」を排除させるのは難しく、犯人側もその心理状態を見越して畳み掛けてくる状況を鑑みれば、そもそも「怪しい電話には出ない」ことが最善の策であり、留守番電話設定にしておくことが対策として有効です。なお、特殊詐欺被害防止の実績としては、本コラムでもコンビニの取組みを紹介するケースが多いのですが、直近では、以下のような阻止事例がありました。

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