特集 2020/09/07

【コラム】暴排トピックス 2020年9月号/「実効性ある反社チェックのために(3)」

執筆者:主席研究員 芳賀恒人

【もくじ】―――――――――――――――――――――――――

1.実効性ある反社チェックのために(3)

(1)反社チェックのあり方

(2)反社チェックの具体的な手法(調査範囲)

(3)最近の暴力団情勢

2.最近のトピックス

(1)AML/CFTを巡る動向

(2)特殊詐欺を巡る動向

(3)薬物を巡る動向

(4)テロリスクを巡る動向

(5)犯罪インフラを巡る動向

(6)誹謗中傷対策を巡る動向

(7)その他のトピックス

・暗号資産(仮想通貨)を巡る動向

・IRカジノ/依存症を巡る動向

・犯罪統計資料

・忘れられる権利を巡る動向

(8)北朝鮮リスクを巡る動向

3.暴排条例等の状況

(1)暴排条例に基づく公表事例(静岡県)

(2)暴力団関係事業者に対する指名停止措置等事例(福岡県)

1.実効性ある反社チェックのために(3)

新型コロナウイルスの感染拡大で、外出を控えた消費者のインターネット通販利用をめぐるトラブルが増えているとして、消費者庁の有識者検討会は、デジタル・プラットフォーム上で取引の場を提供する企業に対する規制強化に向けて、「場の健全性」を確保するための本人確認手続きの強化などについて検討する方向性を示しました(この件については、AML/CFT(アンチ・マネー・ローンダリング/テロ資金供与対策)を巡る動向の項であらためて取り上げます)。一方、気候変動リスクへの対応、資源を巡る紛争や人権問題の解決を後押しする有力な手段として、ESG投資(環境・社会・企業統治)への期待が高まる中、サプライチェーンから「人類の幸福への侵害行為」に関与する取引先を排除することがより厳しく求められるようになっています。企業の実務からいえば、取引先を選定する基準として、もはや相手の「与信」「反社チェック」「逮捕情報」などだけでは十分でなく、サプライチェーンや取引の場における「健全性」の確保、そのための「KYCC」(Know Your Customer’s Customer)の視点や取引選定基準の多様化・厳格化、手法の高度化がより一層求められているといえます。

(1)反社チェックのあり方

実効性ある反社チェックを実施していくにあたっては、以下のような視点が必要となります。

  • 反社チェックとは、日常業務の中から「疑わしい」端緒を把握し、それを基に組織的に見極め、排除に向けて取り組むことに他なりません。現場の端緒を軽視しデータベース(DB)に依存することだけでは反社チェックの精度を十分に確保することは難しいし、現場における「暴排意識」や「リスクセンス」の向上なくしては、反社会的勢力の実質的な排除、あるいは、その前提となる見極めすら期待できません。
  • 反社チェックとは、別の言い方をすれば、当該対象者=「点」とつながる関係者の拡がりの状況や「真の受益者」の特定といった「面」でその全体像を捉えることで、その「点」の本来の属性を導き出す作業です。表面的な属性で問題がないと思われる「点」が、「面」の一部として背後に暴力団等と何らかの関係がうかがわれることをもって、それを反社会的勢力として、「関係を持つべきでない」排除すべき対象と位置付けていく一連の作業だといえます。
  • たとえば、DBスクリーニングのような手法に依存するしかない「入口」審査においては、日常業務における端緒情報の不足の問題、およびDBの限界と相まって精度が不十分となる(すなわち、不完全)こと、結果として、反社会的勢力がすり抜けて入り込んでいることを強く認識した業務運営を行う必要があります。したがって、「入口」審査の限界をふまえた「事後チェック」(中間管理)の精度向上の視点が重要となります。

反社チェックの具体的な手法については、DBスクリーニング以外にも、「取引経緯や取引途上の特異事項等の把握(日常業務における端緒情報の把握)」、さらには、「風評チェック(リアル/ネット)」、「登記情報の精査」、「実体・実態確認」といった複数の手法があり、それらを可能な限り複数組み合わせることによって、多面的に分析していくことが重要となります。さらには、法人の反社チェックにおいては、商号変更されている場合は、現在の商号だけでなく、以前の商号もチェック対象に加える、現任の役員だけでなく、既に退任した役員までチェック対象に含めるといった時系列的な観点からのチェック対象の拡大、また、経営に関与しうるとの観点からは、重要な取引先や株主、顧問や相談役などにまで対象を拡げることすら検討していく必要があります。

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