30秒で読める危機管理コラム

危機管理のプロの観点から時事ニュースを考察しました。

2018年のリスク管理のキーワード「プロアクティブ」

金融庁が金融行政のあり方を大きく転換する。新たな方針案は、「従来の検査・監督のやり方のままでは、重箱の隅をつつきがちで重点課題に注力できないのではないか。バブルの後始末はできたが、新しい課題に予め対処できないのではないか。金融機関による多様で主体的な創意工夫を妨げてきたのではないか」との強烈な自省から始まる。そこから「実質・未来・全体」へと視野を広げ、「安定、保護、公正・透明」と「活力」の融合を図るとする。「変化が加速し続けている今日の経営環境においては、最低基準を守ることを目指すだけでは、時代に遅れ、最低基準の趣旨すら実現できなくなる」「ベスト・プラクティスを追求する努力を続けることが変化を生き延びるために不可欠」との指摘は、リスクの多様化・高度化への対応を迫られる事業者の指針ともなろう。(芳賀)

施行まで秒読み、一般データ保護規則(GDPR)

今年5月からEUが適用を開始する一般データ保護規則(GDPR)は、欧州経済領域(EEA)と個人データをやり取りする日本のほとんどの企業や機関・団体が適用対象となり、同規則への違反行為には高額の制裁金が科されるリスクがある。GDPRの対応を検討する際、どうしても域外適用という特殊性や重い制裁金のみに目が向いてしまう。単なる法制度対応だと高を括り、文書策定等の形式的な対応に終始し、最低限のコストで済ませがちだ。だが、これはEUからの要請というだけでなく、自社の現状の運用に向き合う機会と捉えて体制を整えることが望まれる。預かっている個人情報やプライバシーを適切に保護するという、今の企業にとって重要な使命であり、法対応だからという消極的な姿勢ではなく、企業としての信頼性を高めるための取り組みだと位置づけることが重要だ。(佐藤)

「チリチリ頭の黒塗り」を笑えるガラパコス、世界水準のダイバーシティほど遠く

昨年末に放映されたテレビ番組でお笑いタレントが「顔を黒塗りにしてアフリカ系アメリカ人に扮した」ことが、人種差別として内外から批判を浴びている。こういった演出は「ミストラル・ショー」と呼ばれ、欧米では人種差別として受け取られるものだが、国内からは「差別ではない」「過剰反応だ」といった声があがり、国外との温度差が浮き彫りとなった形だ。日本人はこれまで人種間の緊張と困難に瀕した経験に乏しく「単一民族」意識も強いため、文化的・人種的な複雑性に想像力が及ばない傾向にある。しかしながら(本件でも明らかなとおり)国際社会がこんにち要請するコンプライアンスやダイバーシティは、日本で一般的なレベルを上まわるところにある。事業者も国内のガラパゴスに甘んじることなく、グローバル・スタンダードへの対応が急がれよう。(山岡)

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