2024/07/22

危機管理トピックス

【省庁別記事(前半)】

【首相官邸】

【2024年7月】

首相官邸 北朝鮮による拉致問題について
  • 私(官房長官)から1件ございます。北朝鮮による拉致問題は、拉致被害者御家族も御高齢となる中で、時間的制約のある、ひとときもゆるがせにできない人道問題です。国内では、御家族はもとより、国民の皆様の間に差し迫った思いが強まっておりますが、拉致問題の解決を願う国民の皆様から政府に対し、令和6年6月30日現在で、1,821万9,830筆(注)の署名を頂いております。これらの署名は、政府にとって大変心強い後押しになります。一つ一つに込められた思いをしっかりと受け止め、引き続き全ての拉致被害者の一日も早い御帰国を実現すべく、全力で果断に取り組んでまいります。私(官房長官)からは以上です。
    • (注)会見では「1,821万9,380筆」と発言しましたが、正しくは「1,821万9,830筆」です。

【2024年6月】

首相官邸 外国人材の受入れ・共生に関する関係閣僚会議(第19回)
▼ 資料1 外国人との共生社会の実現に向けたロードマップ(令和6年度一部変更)(案)(概要)
  • 目指すべき外国人との共生社会のビジョン(三つのビジョン)
    • 安全・安心な社会
      • これからの日本社会を共につくる一員として外国人が包摂され、全ての人が安全に安心して暮らすことができる社会
    • 多様性に富んだ活力ある社会
      • 様々な背景を持つ外国人を含む全ての人が社会に参加し、能力を最大限に発揮できる、多様性に富んだ活力ある社会
    • 個人の尊厳と人権を尊重した社会
      • 外国人を含め、全ての人がお互いに個人の尊厳と人権を尊重し、差別や偏見なく暮らすことができる社会
  • 取り組むべき中長期的な課題(四つの重点事項)
    • 円滑なコミュニケーションと社会参加のための日本語教育等の取組
    • 外国人に対する情報発信・外国人向けの相談体制の強化
    • ライフステージ・ライフサイクルに応じた支援
    • 共生社会の基盤整備に向けた取組
  • 重点事項に係る主な取組
    • 円滑なコミュニケーションと社会参加のための日本語教育等の取組
      • 都道府県等が行う日本語教育を強化するための総合的な体制づくりを着実に推進するとともに、市区町村が都道府県等と連携して行う日本語教育を含めて支援【文科省】
      • 「日本語教育の参照枠」に示された教育内容やレベル尺度等に対応した分野別教育モデルの開発・普及【文科省】
      • 生活オリエンテーション(日本で生活するための基本的な情報提供、初歩的な日本語学習)動画の作成・活用等により社会制度等の知識を習得できる環境(来日前を含む。)を整備【法務省】
      • 生活場面に応じた日本語を学習できるICT教材の開発・提供等【文科省】
      • 来日前に円滑なコミュニケーション力を身に付けるための海外における日本語教育環境の普及【外務省】
      • 日本語教育機関認定の開始及び登録日本語教員の資格制度の円滑な運用【文科省】
    • 外国人に対する情報発信・外国人向けの相談体制の強化
      • 「生活・就労ガイドブック」及び「外国人生活支援ポータルサイト」の掲載方針を作成、公表【法務省】
      • マイナポータル等を通じた情報の迅速な入手及びオーダーメイド型・プッシュ型の情報発信の検討【法務省】
      • 外国人受入環境整備交付金の見直し等による一元的相談窓口の設置促進【法務省】
      • 多言語翻訳技術について、実用レベルの「同時通訳」の実現及び重点対応言語の21言語への拡大に向けた取組【総務省】
      • 外国人支援を行う地域の関係機関による合同の相談会の実施等【法務省】
      • やさしい日本語の普及に向けた研修の実施等【法務省】【文科省】
    • ライフステージ・ライフサイクルに応じた支援
      • 子育て中の親子同士の交流や子育て中の不安・悩みを相談できる場の提供等を行う地域子育て支援拠点事業の実施【こども家庭庁】
      • 住民基本台帳システムと学齢簿システムとの連携により、外国人の子どもの就学状況の一体的管理・把握を推進【文科省】
      • 外国人材にとって魅力的な子供の教育環境のモデルの開発及び全国の自治体や学校等への横展開の実施【文科省】
      • 公立高等学校入学者選抜において外国人生徒を対象とした特別定員枠の設定及び受検に際しての配慮の取組を推進【文科省】
      • 高等学校において、日本語の個別指導を教育課程に位置付けて実施する制度の活用【文科省】
      • ハローワークの外国人雇用サービスコーナーにおける専門相談員や通訳の配置による適切な職業相談の実施、外国人の雇用管理に関する周知・啓発【厚労省】
      • 定住外国人を対象とした、日本語能力に配慮した職業訓練の実施【厚労省】
      • 年金制度に関する周知・広報の継続・充実【厚労省】
      • 「在留外国人に対する基礎調査」等による実態把握等【法務省】
    • 共生社会の基盤整備に向けた取組
      • 外国人との共生に係る啓発月間の創設、各種啓発イベント等の実施【法務省】
      • 学校における、異文化理解・多文化共生の考え方に基づく教育の更なる普及・充実を推進【文科省】
      • 在留外国人統計等を活用し、国籍、在留資格、業種別等の外国人の生活状況の実態把握が可能な新たな統計表を作成・公表【法務省】
      • 外国人労働者の労働条件等の雇用管理、労働移動等の実態把握のための統計調査の実施【厚労省】
      • 民間支援団体が行う外国人に対するアウトリーチ支援の取組の支援事業実施【法務省】
      • 在留資格手続上の利便性向上と正確な情報に基づく円滑な審査の実施による適正な在留管理を目的とした関係機関間の情報連携に向けた取組【法務省】
      • 在留資格手続のオンライン申請等における完全オンライン化の実現及び利便性向上【法務省】
      • マイナンバーカードと在留カードの一体化による利便性向上【法務省】
      • 外国人支援人材の育成や、専門性の高い支援人材の認証制度等に係る検討【法務省】
      • 育成就労制度の創設等に伴う外国人材の受入れ環境の整備【法務省、厚労省】
      • 事案に応じた送還形態の一層の充実等による送還及び自発的な出国の促進【法務省】
  • 有識者からの主な指摘事項
    • ロードマップ全般について、各KPI指標がどのように結びつくのかを意識してKPI指標を設定してほしい。
    • 昨年度よりもアウトプット指標が明確になっているが、アウトプット指標が曖昧なものについては年度評価が難しいため、KPI指標をより具体的に設定できるようにしていただきたい。
    • アウトカム指標を設定し、施策を通してどのような変化があったのかということを示す必要がある。
    • 政府の調査はKPI指標として使える調査結果が多くあるので、ロードマップのモニタリングのための重要なツールとして、引き続き数値を取っていただきたい。
    • 施策を実行するには、「実態把握」と「政策効果の検証」という観点から、データや統計の整備が必要であるため、是非とも統計等の整備にこれまで以上に力を入れてほしい。

首相官邸 「令和6年版水循環白書」をとりまとめました~健全な水循環における上下水道の役割を特集~
▼ 資料1 令和6年版水循環白書の概要
  • 我が国における上下水道の歴史と街の発展への寄与
    • 我が国の上下水道は、明治時代に各地で整備されて以降、その時々の社会のニーズに対応しながら、都市や経済の発展に大きく寄与。
    • 現在は全国で面的な整備が進んでいるが、普及促進時代に整備されたインフラが老朽化し、更新が急がれる等の新たな課題に直面。引き続き、持続可能なインフラとして維持することが重要。
  • 現在の上下水道の課題
    • 経営に関する課題 組織
      • 人口減少による水道料金及び下水道使用料収入の減少。
      • 昨今の原油価格の上昇等による運営コストの高騰が事業経営に影響。
    • 人材に関する課題
      • 上下水道事業を支える職員数の減少による執行体制の脆弱化、上下水道サービスの低下が懸念。
    • 施設に関する課題
      • 上下水道施設の老朽化が進行し、断水や漏水が発生する恐れ。
      • 大規模な災害発生時に断水が長期化するリスク。
    • 気候変動に関する課題
      • 気候変動の影響の深刻化により、災害リスク増大、水量減少、水質悪化が懸念。
      • 循環資源の水を利用・処理する上下水道に大きな影響。
  • 今後の上下水道の展望
    • 効率的で将来にわたって持続可能な事業運営を実現するため、あらゆる関係者が協力し、課題解決に向けた取組を実施。
    • 引き続き、政府として、マニュアル作成や優良事例の横展開等の取組を行い、地域の実情に合った導入を推進。
      • 老朽施設への対策(アセットマネジメント)
        • 上下水道施設を資産と捉え、施設状態を的確に把握し、将来にわたって事業の経営を安定的に継続するため、長期的視野に立って計画的に資産管理。
        • 【水道】1,393事業者のうち、1,248事業者(89.6%)がアセットマネジメント計画策定済み(R4.3)。
        • 【下水道】1,575事業者のうち、1,317事業者(83.6%)がストックマネジメント計画策定済み(R3.3)。
      • 広域化
        • 職員確保や経営面でのスケールメリットをいかした効率的な管理が可能となるよう、都道府県単位で広域化を検討する動き。
        • 【水道】全ての都道府県において水道広域化推進プランを策定済み。
        • 【下水道】全ての都道府県において広域化・共同化計画を策定済み。
      • 技術開発
        • AI等の先端技術を活用した管理による業務の効率化・高度化。
        • 下水汚泥資源の肥料利用を促進する技術開発。
      • 官民連携
        • 優れた新技術や運営ノウハウ等、民間企業の創意工夫の活用。
        • 上下水道事業の持続性の向上に資するウォーターPPPの導入促進。
  • 水道行政の移管による効果
    • 国土交通省が水道行政と下水道行政を併せて所掌することにより、水道・下水道の共通する課題に一体的かつ効率的に取り組むことが可能。
    • 国土交通省が有するインフラ整備・管理に関する知見や地方整備局等の現場力・技術力をいかし、老朽化が進む水道施設の効果的なメンテナンスや災害復旧の支援体制を強化(令和6年能登半島地震において、水道行政の移管を見据えて、政府全体で上下水道一体の復旧)。
    • 環境省が水質基準の策定等を所掌することにより、水質管理に関する調査・研究の充実等、水質や衛生の面でも機能強化。
  • 政府が講じた水循環に関する施策
    • 流域連携の推進等
      • 流域マネジメントの基本方針等を定める「流域水循環計画」は全国で78計画まで増加。
    • 地下水の適正な保全及び利用
      • 地下水マネジメントを進める地域で観測・収集された地下水位、水質、採取量等のデータを、関係者が相互に活用することを可能とする「地下水データベース」の運用を令和5年6月に開始。
    • 水の適正かつ有効な利用の促進等
      • 令和6年能登半島地震では、水インフラに甚大な被害が発生。被災自治体等を迅速かつ的確に支援することなどを目的に人員を派遣。
      • 水インフラの復旧支援等を行うとともに、官民連携により、水の確保等を実施。
      • 能登半島の被災地では、緊急用の生活用水として井戸(地下水)や雨水が有効活用。利用状況等を調査し、結果をウェブサイト等で情報発信することで、災害時に備えた井戸(地下水)や雨水の活用を推進。
    • 健全な水循環に関する教育の推進等
      • 水循環教育に関する教員等のスキルアップを目的とした「水循環教育スキルアップ講座」を実施。
    • 民間団体等の自発的な活動を促進するための措置
      • 水循環に対する企業からの関心を高めるため、「企業連携水循環ウェビナー」を開催。積極的に水循環の取組を行っている飲料業界各社の協力の下、「飲料業界における水循環施策に資する取組に迫る」 等を発信。

首相官邸 犯罪対策閣僚会議
▼ 国民を詐欺から守るための総合対策 概要
  • 現在の情勢
    • 特殊詐欺等に対しては、「オレオレ詐欺等対策プラン」(令和元年6月25日犯罪対策閣僚会議決定)及び「SNSで実行犯を募集する手口による強盗や特殊詐欺事案に関する緊急対策プラン」(令和5年3月17日犯罪対策閣僚会議決定)等に基づき官民一体となった対策を講じてきた一方で、令和5年中の詐欺被害は約1,630億円と前年から倍増。
    • 近年、SNSやキャッシュレス決済の普及等が進む中で、これらを悪用した犯罪の手口が急激に巧妙化・多様化。それによって引き起こされる詐欺等の被害が、加速度的に拡大する状況。
      1. 特殊詐欺
        • 令和5年被害額は約452億円
        • 前年から約80億円増加
      2. SNS型投資・ロマンス詐欺
        • 令和5年下半期から急増
        • 同年被害額は約455億円
        • 令和6年1~3月被害額は約279億円
      3. フィッシングによる被害
        • インターネットバンキングに係る不正送金被害が急増(令和5年約87億円)
  • 総合対策の策定
    • こうした情勢の中、変化のスピードに立ち後れることなく対処し、国民を詐欺の被害から守るためには、官民一体となって、一層強力な対策を迅速かつ的確に講じることが不可欠。
    • 従来のプランを発展的に解消させ、特殊詐欺、SNS型投資・ロマンス詐欺及びフィッシング等を対象に、総合的な対策を取りまとめ、政府を挙げて対策を推進。
  • 「国民を詐欺から守るための総合対策」における主な施策
    1. 「被害に遭わせない」ための対策
      1. SNS型投資・ロマンス詐欺対策
        • 被害発生状況等に応じた効果的な広報・啓発等
          • 不審なアカウントとのやり取りを開始する時など、詐欺の被害に遭う場面を捉えて利用者に個別に注意喚起を行うよう、SNS事業者に要請
        • SNS事業者等による実効的な広告審査等の推進
          • プラットフォーム上に掲載される広告の事前審査基準の策定・公表、審査体制の整備(特に、日本語や日本の社会等を理解する者の十分な配置)、広告出稿者の本人確認の強化等をSNS事業者に要請
          • 捜査機関から提供された「詐欺に使用されたアカウント」等の情報に着眼した、広告の迅速な削除等をSNS事業者に要請
        • なりすまし型偽広告の削除等の適正な対応の推進
          • なりすまし型の偽広告等に関し、SNS事業者に対し、利用規約等に基づき、詐欺広告の削除等の措置を講ずるよう、事業者団体に通知
          • インターネットで拡散する偽・誤情報や、なりすまし型偽広告への対応等について、国際的な動向を踏まえつつ、制度面も含む総合的な対策を推進
        • 大規模プラットフォーム事業者に対する削除対応の迅速化や運用状況の透明化に係る措置の義務付け等
          • インターネット上の違法・有害情報への対応として、削除対応の迅速化や運用状況の透明化を大規模プラットフォーム事業者に義務付ける情報流通プラットフォーム対処法を速やかに施行するとともに、違法情報への該当性に関するガイドラインを迅速に策定
        • 知らない者のアカウントの友だち追加時の実効的な警告表示・同意取得の実施等
        • SNSの公式アカウント・マッチングアプリアカウント開設時の本人確認強化
        • 新たに開始された金融教育における被害防止に向けた啓発
          • 金融経済教育推進機構(J-FLEC)による関係省庁と連携した金融経済教育の提供等を通じた金融リテラシーの向上
    2. フィッシング対策
      • 送信ドメイン認証技術(DMARC等)への対応促進
        • 利用者にフィッシングメールが届かない環境を整備するため、インターネットサービスプロバイダー等のメール受信側事業者や、金融機関等のメール送信側事業者等に対して、送信ドメイン認証技術の計画的な導入を要請
      • フィッシングサイトの閉鎖促進
      • フィッシングサイトの特性を踏まえた先制的な対策
        • フィッシングサイトが有する、1つのIPアドレス上に複数のサイトが構築されるなどの特性を踏まえ、いまだ通報がなされていないフィッシングサイトを把握して、ウイルス対策ソフトの警告表示等に活用するなどを検討
    3. 特殊詐欺等対策
      • 国際電話の利用休止申請の受付体制の拡充
        • 国際電話番号を利用した詐欺の被害を防止するため、国際電話の利用休止を一括して受け付ける「国際電話不取扱受付センター」を運営する電気通信事業者に対して、申請受付体制の更なる拡充を要請
      • SMSの不適正利用対策の推進
        • SMSの悪用を防止するため、SMSフィルタリングの活用の拡大等を推進
      • 携帯電話を使用しながらATMを利用する者への注意喚起の推進
  • 「犯行に加担させない」ための対策
    • 「闇バイト」等情報に関する情報収集、削除、取締り等の推進
    • 青少年をアルバイト感覚で犯罪に加担させない教育・啓発
  • 「犯罪者のツールを奪う」ための対策
    • 本人確認の実効性の確保に向けた取組
      • 携帯電話等の契約時の本人確認をマイナンバーカード等を活用した電子的な確認方法へ原則一本化
    • 金融機関と連携した検挙対策の推進
      • 金融機関において、詐欺被害と思われる出金・送金等の取引をモニタリング・検知する仕組み等を構築するとともに、不正利用防止の措置を行い、疑わしい取引の届出制度の活用をはじめ、不正な口座情報等について警察へ迅速な情報共有を実施
    • 電子マネーの犯行利用防止対策
      • 詐取された電子マネーの利用を速やかに発見するためのモニタリングの強化、発見した場合の電子マネーの利用の停止、警察への情報提供の体制について検討
    • 預貯金口座の不正利用防止対策の強化等
      • 法人口座を含む預貯金口座等の不正利用を防止するための取引時確認の一層の厳格化等の推進
    • 暗号資産の没収・保全の推進
  • 「犯罪者を逃さない」ための対策
    • 匿名・流動型犯罪グループに対する取締り及び実態解明体制の強化
    • SNS事業者における照会対応の強化
      • SNS事業者に対し、捜査機関からの照会への対応窓口の日本国内への設置、迅速な照会対応が可能な体制の整備等を要請
    • 海外拠点の摘発の推進等
    • 法人がマネー・ローンダリングに悪用されることを防ぐ取組の推進
      • 実態のない法人がマネー・ローンダリング等の目的で利用されることを防ぐための新たな方策について検討
    • 財産的被害の回復の推進
      • 被害回復給付金支給制度及び振り込め詐欺救済法のきめ細やかな周知など効果的な運用の促進

首相官邸 食料安定供給・農林水産業基盤強化本部(第7回)議事次第
▼ 資料2 食料・農業・農村基本法改正を受けた政策の進め方
  • 食料・農業・農村基本法の改正案の国会成立を受けて、基本計画の改定を行う。
  • また、基本計画の改定を待たずに打つべき施策は打つなど、食料安全保障の強化に向けて施策を集中実施。
  • 合理的な価格の形成、人口減少下における土地改良の在り方などの関連法案については、令和7年中の国会提出を視野に法制化を検討。
  • 食料システムの持続性の確保に向けた合理的な価格の形成等(法制化)
    • 関係者の協議によるコスト指標づくりを推進しつつ、持続的な食料供給に必要な合理的なコストを考慮する仕組みを新たに法制化
    • 食料システムの持続性の確保に向けた食品事業者の取組促進(環境・人権、農業者との連携等)等
  • 人口減少下における農業用インフラの保全管理(土地改良法制の見直し)
    • 人口減少に対応し、基幹的な用排水施設について、申請がなくても更新等を行えるよう手続の簡素化
    • 末端インフラの適切な保全のため、土地改良区と地域の関係者による議論・体制づくりを推進
    • 災害リスクの増大に対応するため、緊急的な防災事業について、事業目的に地震・豪雨対策に加え老朽化対策を追加
  • 環境負荷低減の取組推進
    • 農水省関係の補助金受給に際し、適正な化学農薬・肥料の使用など、環境負荷低減に取り組むこと等を要件とするクロスコンプライアンスの実施(令和6年度から試行実施中)
    • 更に先進的な環境負荷低減の取組を行う場合に交付金を交付する仕組みの創設(令和9年度以降を想定)
    • 消費者理解醸成に向けた環境負荷低減の取組の見える化、J-クレジットによる民間資金の活用 等
  • 食料供給困難事態への対応
    • 民間在庫を含めた国の潜在的な食料供給確保量の把握
    • 上記を踏まえて民間在庫も組み合わせた総合的な備蓄方針の明確化
    • 具体的な局面を想定した食料供給困難事態の対処方針の明確化 等
  • 人・農地の確保
    • 令和7年3月末までの各地における地域計画の策定
    • 地域計画を踏まえた担い手の育成・確保と農地の集積・集約化、ほ場整備
    • 令和7年中に、食料安全保障の強化に必要な農地面積の明確化 等
  • スマート農業技術の開発促進と生産・流通等の方式の変革
    • 令和6年中に、スマート農業技術の重点開発目標の設定(基本方針の策定)
    • 農研機構の施設供用等を通じたスタートアップ支援
    • リース方式、サービス事業体等を通じたスマート農業機械の普及と、生産現場での栽培方式等の変革促進 等

首相官邸 サイバー安全保障分野での対応能力の向上に向けた有識者会議
  • 令和6年6月7日、岸田総理は、総理大臣官邸で第1回サイバー安全保障分野での対応能力の向上に向けた有識者会議に出席しました。
  • 会議では、サイバー安全保障分野での対応能力の向上に向けた有識者会議について議論が行われました。
  • 総理は、冒頭の挨拶で次のように述べました。
    • 本日は、サイバー安全保障分野での対応能力の向上に向けた有識者会議にお集まりいただきまして、誠にありがとうございます。我が国のサイバー対応能力の向上は、現在の安全保障環境に鑑みますとき、ますます急を要する課題です。このため、国家安全保障戦略では、サイバー安全保障分野での対応能力を欧米主要国と同等以上に向上させることを目標に掲げ、その柱として能動的サイバー防御を導入することといたしました。
    • この会議は、能動的サイバー防御の実現を始めとする我が国のサイバー安全保障分野での対応能力の向上をいかにして実現するか御議論をいただくため、河野大臣の下に幅広い分野から17名の有識者の方々にお集まりをいただいたものです。有識者の皆様におかれては、それぞれの御知見を発揮され、闊達な御議論をいただき、成果を御報告いただきたいと存じます。
    • また、河野大臣においてはこの会議の成果を踏まえ、関係大臣とも協力の上、可能な限り早期に関連法案を取りまとめてください。我が国の安全保障をサイバー空間からも確実なものとしていくため、有識者の皆様のお力添えをよろしくお願い申し上げます。

首相官邸 第57回 経協インフラ戦略会議 議事次第
▼ 資料 【概要】2030年を見据えた新戦略骨子
  • 背景
    • 従来のインフラの概念を超え、新たな領域においても、政策対応を講じつつ、官民が連携して挑戦し、我が国と相手国双方の成長につなげていく必要。
    • 世界のインフラ市場は過去5年間で構造的に変容すると共に、今後も伸張見込。我が国企業に強みのある設計・調達・建設(EPC)や運営・維持管理(O&M)にとどまらず、これまで必ずしも強みとはいえなかった上流や下流の段階、そして、新たな領域においても、我が国企業の存在感を高めていく必要。
    • インフラ市場の構造的変化と今後の潮流
      • (1)顧客ニーズの変化とビジネスモデル
        • 社会資本整備(ハード・インフラ)→複雑化する社会課題の面的解決・仕組みの構築
        • ハード(港湾、鉄道等)の売り切りモデル→ソフト(運営・維持管理)による継続的なサービスモデルの受注拡大が道半ば
      • (2)プレーヤー
        • ODA対象国からの卒業・中進国の増加
        • 新興国の現地企業の飛躍的成長・競争激化・市場の囲込
      • (3)パワーバランス
        • 新興国の人口増加と経済発展
        • G7のシェア低減
        • 経済安全保障
  • 新戦略の骨子(2030年のあるべき姿と実現に向けた政策対応)
    • 2030年のあるべき姿
      • 我が国の「稼ぐ力」と国際競争力を高め、相手国のニーズに応え、従来のインフラ概念を超えた新領域を含めた事業を共に創り、共に切り拓く世界の経済的繁栄
      • 同志国・グローバルサウスと緊密に連携したサプライチェーン・経済安全保障・国益の確保
      • 大きな成長市場・チャンスとなるグリーン・デジタル等の社会変革への機動的対応を通じた我が国と世界の持続可能な成長の実現
    • (1)相手国との共創を通じた我が国の「稼ぐ力」の向上と国際競争力強化
      • 相手国のニーズを踏まえた「懐に入る」対応:
        • 「選ばれる」国となるため、「質の高いインフラ投資に関するG20原則」に基づくインフラへの信頼を深化させ、「オファー型協力」等を通じた積極的な事業提案・支援を推進。
        • スマートシティ、公共交通指向型都市開発(TOD)等の複合的で多様なまちづくりやインフラ・サービスについて、積極的に相手国に提案し具体的案件を獲得。
        • トップセールス等の強化(※PALM、ブラジルG20、TICAD等)、我が国が優位性を持つ技術等の紹介、国際開発金融機関(MDBs)・在京大使館等との連携強化、相手国へのビジネス環境改善等の継続的働きかけ。
        • 相手国の地方都市を含めた「グローカル」な連携のため、地方を拠点とした企業の海外展開を地方自治体や地域金融機関等と連携し積極的に支援。
      • PPPを含めた案件形成の上流への積極的参画支援と提案力の強化:
        • 経済広域担当官の新たな設置や日本側関係機関が有するネットワークの強化・連携に向けた「共創プラットフォーム」の構築。
        • 日バングラデシュ・ジョイントPPPプラットフォーム等の二国間や多国間の政策協議や官民プラットフォーム等の戦略性・実効性を高め、官民の適正なリスク分担や公的資金活用によるPPPの戦略的取組を推進。
        • F/Sやマスタープラン等上流へのODA等支援と企業の関与を強化。概念実証(PoC)や国際実証、二国間クレジット制度(JCM)等を活用した支援を、グローバルニーズに適した形で強化。
        • 案件形成の初期において、同志国・MDBs等と連携し、案件の採算性向上とリスクコントロールを強化。
      • スタートアップ、ユーザーサービス等、案件の付加価値を高める下流への参画支援:
        • 長期資金供給支援を通じ、スタートアップが世界のインフラ市場に挑戦できる環境を整備。
        • 我が国とASEAN・太平洋島嶼国等のスタートアップ・エコシステム(スタートアップの発展を支える仕組み)を構築。
        • O&M等を通じた案件への継続的関与とユーザーニーズに応じた付加価値創出の取組を支援。
    • (2)経済安全保障等の新たな社会的要請への迅速な対応と国益の確保
      • 経済安全保障上、重要なインフラへの積極的関与:
        • 資源・エネルギー・食料の安定供給等を確保し、カントリーリスクの高まりに対応し、我が国企業の産業競争力維持・向上に資するサプライチェーン強靱化等を公的金融により支援。貿易保険のリスク対応能力強化を通じ、我が国企業のグローバルな挑戦を支援。上流から下流の民間主導の案件形成を推進。先進国を含む地域間の連結性向上に必要なインフラを面的に支援。
        • 5G/Open RAN、光海底ケーブル、電力・金融・宇宙インフラ等、広い視点での国益・経済安全保障や次世代市場の獲得上、重要なインフラの受注を戦略的に獲得し、必要な人材育成等も支援。
        • ウクライナ等における案件形成支援。
      • 同志国・グローバルサウスと迅速かつ緊密に連携した案件形成と事業化支援:
        • 我が国企業の「勝ち筋」の見える国・分野等を踏まえ、優先度に応じ戦略的かつ集中的に支援。同志国等と緊密に連携し、重要案件の形成と事業化を推進。
        • 国益を意識し「分断と対立」から「協調」への移行を目指し、「アウトリーチ型の外交」を通じて、グローバルサウスの成長市場を取込む。
    • (3)グリーン・デジタル等の社会変革をチャンスとして取り込む機動的対応
      • 新たな市場とルール整備の主導:
        • 新たな市場を生み出す国際標準化や現地国・地域での法制度整備等のルールメイキングを推進。
        • アジア・エネルギー・トランジション・イニシアティブ(AETI)等を通じた、アジア・ゼロエミッション共同体(AZEC)構想の実現、公正なエネルギー移行パートナーシップ(JETP)等を推進。
        • 二国間クレジット制度(JCM)のパートナー国拡大等を通じ、質の高い炭素市場の構築に貢献。
        • 気候変動の適応策(防災等)と緩和策の推進、水素社会推進法に基づいた環境整備。
        • 課題先進国としての知見が活かせる保健医療分野等の海外展開。
        • 広島AIプロセス等を通じた安全、安心で信頼できるAIの実現に向けた取組を推進。
      • グリーンフィールドにおける公的機関による積極的なリスクテイク:
        • 資源開発、新技術・ビジネスモデルを活用した事業等への官民ファンドを含むOOF(※JBIC、NEXI、JICT、JOIN等)支援を拡大し、長期資金供給・出資機能等の積極的リスクテイクを推進。
        • 経済安全保障上、重要なインフラについて、積極的リスクテイクにより同志国等との連携を強化。
        • 公的資金と民間資金を適切に組み合わせるブレンデッド・ファイナンス等の仕組みの構築。
      • 新たな市場に対応する現地及び本邦人材の育成と交流:
        • インフラ整備・O&M事業等を通じた現地人材育成、国内における外国人材の積極的活用、外国での事業運営等を担える本邦人材の育成。
        • グローバルサウス未来産業人材育成等事業や日越大学構想等の事業を我が国の強みや相手国ニーズを踏まえ推進し、グローバルサウスの人材を取込む。
        • 研究機関等により、国際標準化等のルールメイキングを活用した海外ビジネス展開の促進に必要な人材育成の仕組みを整備

首相官邸 農福連携等推進会議(第3回)
▼ 資料2 農福連携等推進ビジョン(2024改訂版)(案)の概要
  1. 農福連携等が実現を図る社会
    • 農福連携は、農業と福祉が連携し、障害者の農業分野での活躍を通じて、農業経営の発展とともに、障害者の自信や生きがいを創出し、社会参画を実現する取組農福連携の更なる推進には、「知られていない」「踏み出しにくい」「広がっていかない」といった課題に加えて、地域ごとの状況(農繁閑期の農業と福祉の需給ギャップ等)に応じたマッチング等の現場で生じている課題に的確に対応していく必要
    • 地域に生きる一人ひとりの社会参画を図るため、高齢者、生活困窮者、ひきこもりの状態にある者、犯罪をした者等の社会的に支援が必要な者にも対象を広げ、また、林業、水産業と福祉の連携に広げていくことも重要
    • 農福連携等を通じて、全ての人々が地域で暮らし、多様な形で社会に参画し、生きる力や可能性を最大限に発揮できる地域共生社会の実現に貢献
    • 改正食料・農業・農村基本法に農福連携が位置づけられたことも踏まえ、本ビジョンに掲げられた取組を官民挙げて実践
  2. 農福連携等の意義
    • 社会的に支援が必要な者にとっての意義
      • 個々の特性に合った農作業により、賃金・工賃の向上、職業能力の開発・向上等も期待でき、社会的に支援が必要な者の就労・社会参画支援や立ち直り支援に貢献・コロナ禍を通じて、孤独・孤立や生活困窮の問題に直面する者の存在が浮き彫りとなる中で、地域全体で働きづらさや生きづらさを感じている者を支援することが必要
    • 農業経営体等と農村にとっての意義
      • 今後、農村地域で人口減少・高齢化が急激に進行することが見込まれる中で、多様な人々の活躍を通じた地域農業の振興や地域共同活動の継続が重要
      • 農作業の見える化・標準化や働き手の確保による農業経営へのプラス効果が期待
    • 企業や消費者にとっての意義
      • 農福連携等の商品の販売・消費等を通じた企業価値の向上や新たな需要の創出
  3. 農福連携等の現状と課題
    • (1)認知度の向上(2)取組のきっかけと定着(3)取組の拡大と成長の分野ごとに取り組んできたが、以下の課題への対応が必要
      • 農福連携等に関する地域ごとの課題を地域内で共有・相談・解決できる場の創出
      • 障害者等が働きやすいソフト・ハードの環境整備
      • 農業の担い手や新規就農者の農福連携等に取り組む意欲の喚起
      • 企業、消費者などターゲット別のプロモーション
      • 地域内外の多様な連携により、販路の開拓や付加価値の向上
      • 地方公共団体、農業団体、福祉団体、経済団体等の協力促進
  4. 農福連携等の推進に向けた新たなアクション
    • 農福連携等に取り組む主体数を12,000以上、地域協議会に参加する市町村数を200以上とすることを目標とする
      • 地域で広げる~点的な取組から地域への広がりへ~
        • 地域単位での仕組みづくり
          • 都道府県段階での農業と福祉のマッチングを支援
          • 関係省庁が連携して、地域協議会や伴走型コーディネーターによる支援などの活動を通じて、地域単位での農福連携の推進体制づくりを後押し
        • 障害者等が働きやすい環境の整備
          • 生産施設等の整備、障害者等の農業技術の習得等を支援
          • 農業法人等への障害者の就職等の推進と実践的な研修の推進
          • 障害者の作業をサポートするスマート農業技術等の活用
        • 地域における多様な連携の推進や専門人材の育成と活躍の場の確保
          • ノウフクJASの認証取得を推進
          • 障害者就労施設等と企業との連携によるノウフク商品のブランド化
          • 福祉事業所や障害者等の地域共同活動への参画促進に向けた事例収集・横展開
          • マッチングを行うコーディネーターや農福連携技術支援者等の育成と活動支援
      • 未来に広げる~未来の担い手の育成と新たな価値の発信~
        • 農福連携等の強みの発信と未来の担い手の育成
          • 農業の担い手に対するセミナー等を通じて、農福連携等の意義や効果を普及
          • 特別支援学校における実技・実習に農業者が協力・支援を行うよう働きかけ
        • 新たな価値の発信とユニバーサルな取組への進化
          • 11月29日を「ノウフクの日」に設定し、関係団体・企業等が連携した普及啓発を推進
          • 農福連携等応援コンソーシアム会員が連携して商品開発等を行う仕組みを構築
          • エシカル消費に関心のある若年層向けにSNS等による情報発信
      • 絆を広げる~ユニバーサル農園の拡大と「農」「福」の広がりへの発展~
        • ユニバーサル農園の普及・拡大
          • ユニバーサル農園の事例やノウハウを取りまとめて普及
          • 農業での就労を目的としたユニバーサル農園の開設や施設等の整備を支援
        • 社会的に支援が必要な者の農福連携等への参画の推進
          • ハローワーク等の関係機関が連携し、農業分野での障害者等の雇用を促進
          • 犯罪をした者等の就農意欲喚起等に向けた農業実習等を推進
        • 林福連携・水福連携の推進
          • 林業及び水産業において、傾斜地、海上等の特殊な環境での作業もあることにも留意しつつ、マッチング、研修の促進、経営発展を目指す取組の推進

首相官邸 知的財産戦略本部会合 議事次第
▼ 資料1 「知的財産推進計画2023」(案)概要
  • 基本認識 ~多様なプレイヤーが世の中の知的財産の利用価値を最大限に引き出す社会に向けて~
    • イノベーションの国際ランキング(WIPO「グローバルイノベーション指数)が低迷。13位 韓国6位、中国11位(2022年)
    • マークアップ率が低水準で推移しており、知財・無形資産の活用による差別化が行われていない。
    • 特許の創出力とグローバルなブランド価値を持つ新事業創出力がアンバランスな状況。
    • 競争力や新たな価値創出に結実する知財戦略が必要。
    • 製品の高度化、製品サイクルの短期化が進む中、自社の経営資源に依存した垂直統合モデルに限界。
    • 外部の知識や技術を積極的に取り込んでいくオープンイノベーションによる持続的な価値創造が必要。
    • 画像や文章などを生み出す生成AI技術が急速に進歩
    • 新たなAI技術の活用促進と社会全体の知的財産の創造インセンティブの維持の両立が喫緊の課題
    • デジタル化の進展に伴うコンテンツの国民経済上の重要性の高まり コンテンツ産業の構造転換と
    • 競争力強化、クリエイターへの対価還元の拡大、制度インフラ・ITインフラの整備等を推進。
  • スタートアップ・大学の知財エコシステムの強化
    • スタートアップによる大学の最先端の研究成果のスピーディーな社会実装に向けた環境整備が必要。
    • 大学が研究成果の社会実装機会最大化を図るための環境整備が必要。
    • 大学の知財マネジメントの課題例と解決方策
    • 大学が共有特許をスタートアップ(SU)にライセンスするには企業の同意が必要。同意が得られない場合、研究成果が社会実装されない。
    • 共同研究先の企業が、一定期間内に、具体的な目標を正当な理由なく達成しない場合、大学の判断で第三者に実施許諾することができる旨事前に合意。
    • SUが大学からライセンスを受ける際の対価支払に、SUの株式・新株予約権が十分に活用できていない。
    • 大学は、適切と判断する事案につき、ライセンス対価としてSUの株式・新株予約権を選択肢として積極的に検討。
    • 上記に加えて、特許の質の管理、知財マネジメントの体制、人材スペック、予算確保等、大学の知財ガバナンス向上に必要な事項を示す、「大学知財ガバナンスガイドライン」を2023年3月に内閣府・文部科学省・経済産業省が策定・公表。
    • 「大学知財ガバナンスガイドライン」を、「産学官連携ガイドライン」の附属資料として位置づけたこと等に伴い、「産学官連携ガイドライン」等を踏まえた体制等の整備を要件としている国際卓越研究大学制度との連携や、地域中核・特色ある研究大学強化促進事業との連携等を通じ、全国の対象大学に浸透させる。
  • 生成AIと著作権
    • AIをめぐる最近の動向として、「生成AI」の技術が急激に発展。画像生成、文章作成等の分野で急速に普及。
    • 生成AIがオリジナルに類似した著作物を生成するなどの懸念や、著作権侵害が大量に発生し、個々の権利者にとって紛争解決が困難となる等のおそれも指摘。
    • AI技術の発展とクリエイターの権利保護等の双方の観点に留意しながら、必要な方策を検討。
    • 整理すべき論点
      • AI(学習済みモデル)を作成するために著作物を利用する際の、著作権法第30条の4ただし書に定める「著作権者の利益を不当に害する場合」についての考え方
      • AI生成物が著作物と認められるための利用者の創作的寄与に関する考え方
      • 学習用データとして用いられた著作物と類似するAI生成物が利用される場合の著作権侵害に関する考え方
  • 「知財・無形資産の投資・活用促進」の実現に向けて
    • 激しい国際競争を勝ち抜いていくためには、知財・無形資産の投資・活用の戦略の構築・実行とその開示が不可欠。投資家・金融機関の適切な評価を受け、企業価値の向上、更なる知財・無形資産への投資資金の獲得という好循環を加速化するメカニズムの構築が必要。
    • 業と投資家・金融機関の思考構造のギャップを埋め、投資家・金融機関に期待される役割を整理して示すために、知財・無形資産ガバナンスガイドラインを今回改訂。
    • スタートアップ等においても、知財・無形資産を活用した融資を受けられるよう、知財・無形資産を含む事業全体を対象とする担保制度(事業成長担保権)について、関連法案の早期国会提出を目指す。
  • 標準の戦略的な活用/データ流通・利活用環境の整備
    • 総合的な標準戦略を策定・推進するとともに、有識者・専門家(政府CSO)が評価・指導を行う体制を整備。
    • 我が国の企業が、事業戦略の策定、国際標準化、事業展開といった事業プロセス全体の中で、国際標準戦略を使いこなす能力を高めていく、エコシステムの整備が必要。支援機関・企業等の支援能力が強化される環境を整備。
    • データ流通を推進する上で課題となるデータ流用やプライバシー侵害などステークホルダーの懸念・不安を払拭するため、「プラットフォームにおけるデータ取扱いルールの実装ガイダンス」を策定(昨年3月)し、コントローラビリティの確保を中心に対応策を提示。⇒ 準公共分野や相互連携分野等の重点分野において、プラットフォーム等の構築、ルール実装を推進。
  • デジタル時代のコンテンツ戦略
    • デジタル化・グローバル化の進展等により、コンテンツはデジタル経済の主要な中間財となり、成長産業の中核の一つに。
    • ボーダレス化により、海外プラットフォーマーの支配力が高まり、内外の競争は激化。一方、世界に売り込む機会も提供。
    • 日本のコンテンツ産業は、国内向けのビジネスモデルが主流。世界市場を前提として業態を超えた構造転換が不可欠。
    • クリエイターの活発な創作活動がカギ。我が国が持つコンテンツ資産をフル活用できる環境の構築に向け官民一体となった戦略推進が必要。
    • デジタル時代のコンテンツ戦略・対応
      1. コンテンツ産業の構造転換・競争力強化とクリエイター支援
        • 民間の構造改革姿勢を引き出し、コンテンツ産業の強靭化や構造改革を官民一体となって進めるための、官民連携による協議の場の設置
        • 民間の変革方針を踏まえつつ、優れたクリエイター等の発掘・育成とその活躍の機会拡大、制作・プロデュース・マネジメント・DX化人材などの人材育成支援等
        • 「世界で売れる」作品づくりに向けた制作システムへの抜本的転換、国際販売力強化の民間側の取組具体化、府省庁を越えた関連施策一体推進
      2. クリエイター主導の促進とクリエイターへの適切な対価還元
        • クリエイターへの適切な対価還元に向け、プラットフォーマーの果たす役割やコンテンツ流通の媒介者である通信関係事業者の役割等も考慮に入れ、必要な対応を検討
      3. メタバースなど新技術の潮流への対応
        • メタバース上の法的課題への対応に関するガイドラインの作成・公表
      4. 著作権制度・政策の改革
        • 簡素で一元的な権利処理の実現【2023年通常国会で改正著作権法成立】
        • 未管理著作物裁定制度等のための窓口組織の整備
        • 分野横断権利情報検索システムの構築推進
          • コンテンツの創作・利用のサイクルを活性化し、価値増殖を加速させるデジタル時代の新たな社会インフラ整備
      5. デジタルアーカイブの拡充・利活用促進
        • デジタルアーカイブ政策の推進体制の見直し・拡充 等
      6. 海賊版対策・模倣品対策の強化
        • 民間との連携を強化しつつ、関係省庁一体となった海賊版対策の推進
  • デジタル時代に対応した著作権制度・関連政策の改革
    • デジタル時代のスピードに対応し、権利処理にかかる手続コスト・時間コストを大幅に削減
      • →「創作」と「利用」の循環による価値創造を加速・拡大
      • →権利者への対価還元拡大
    • 分野を横断する一元的な窓口組織を活用した新しい権利処理の仕組みを創設
      • →著作権者等が不明の場合や意思表示のない著作物の利用が可能に
    • 分野横断権利情報検索システムを構築し、これを活用した権利者等の探索を実施
    • 可能な限りデジタルで完結する仕組みを目指す
    • 多様な個人・プレーヤーが社会に蓄積されたコンテンツを最大限に活用し、新たな価値創出を促進していくよう、膨大かつ多種多様な著作物について、簡素で一元的な権利処理が可能となる制度を創設【2023年通常国会で改正著作権法が成立】
    • 改正法に基づく未管理著作物裁定制度の運用に必要な体制を整備
      • 簡素で一元的な権利処理のための窓口組織の円滑な整備に向けた取組
      • 分野横断権利情報検索システムの構築推進
        • ※コンテンツの創作・利用のサイクルを活性化し、価値増殖を加速させるデジタル時代の新たな社会インフラ整備
      • →幅広いステークホルダー(権利者・利用者・通信関係事業者等)の理解と協力を得ながら推進を図ることが必要
  • クールジャパン戦略の本格稼働と進化
    • 「アフターコロナ」を迎え、インバウンドの回復や農林水産品等の輸出増など明るい兆し、日本のコンテンツへの高い関心
    • 2025年大阪・関西万博は、クールジャパンを世界に向けて発信する絶好のチャンス
    • 訪日外国人は「リアル・オーセンティックな日本」を求めている
    • 日本の魅力を高める3つの方向性
      1. 「埋もれた魅力」の発掘
        • 変化への柔軟な対応を怠れば、「クール」でなくなる
        • 外国人(留学生・ALT)の活用
        • Z世代(大学生等)の活用
        • アカデミアと連携
        • 既にある魅力の革新を怠らず、身の回りにある「埋もれた魅力」の発掘・磨き上げ
      2. 地方「オンリーワン」の魅力の磨き上げ
        • NYタイムズの「2023年に行くべき52か所」で盛岡が2番目に掲載
        • 他の地方都市にも大きなチャンス:地方都市には、長年培われた文化、伝統など独自で多彩な魅力
        • 地方のポテンシャルを活かし、外からの視点を取り入れつつ魅力を磨き上げ、世界中から「行くべき」と思われるようにする
      3. CJの担い手同士のネットワーク構築
        • 担い手によるネットワーク構築がCJの最重要課題
        • オンライン・ネットワーク構築
        • 幅広い関係者を巻き込みネットワークを拡大(大学、金融機関、放送局、自治体等)
        • 多様なコミュニティの形成・持続的な活動へ
    • 日本の「埋もれた魅力」を発掘し、地方のオンリーワンの魅力を磨き上げるとともに、CJの担い手同士のネットワークを構築し、持続的なCJの取組を確立
      • ⇒2025年大阪・関西万博をターゲットに力を結集し、日本の魅力を世界へ発信!
  • 知的財産推進計画2023の全体像
    1. スタートアップ・大学の知財エコシステムの強化
      • 大学における研究成果の社会実装機会の最大化
      • 知財を活用した大企業とスタートアップの連携促進
    2. 多様なプレイヤーが対等に参画できるオープンイノベーションに対応した知財の活用
    3. 急速に発展する生成AI時代における知財の在り方
      • 生成AIと著作権
      • AI技術の進展を踏まえた発明の保護の在り方
    4. 知財・無形資産の投資・活用促進メカニズムの強化
    5. 標準の戦略的活用の推進
    6. デジタル社会の実現に向けたデータ流通・利活用環境の整備
    7. デジタル時代のコンテンツ戦略
      • コンテンツ産業の構造転換・競争力強化とクリエイター支援
      • クリエイター主導の促進とクリエイターへの適切な対価還元
      • コンテンツ創作の好循環を支える著作権制度・政策の改革
    8. 中小企業/地方(地域)/農林水産業分野の知財活用強化
    9. 知財活用を支える制度・運用・人材基盤の強化
    10. クールジャパン戦略の本格稼働と進化
▼ 資料4 「新たなクールジャパン戦略」(案)本文
  • クールジャパンのリブート(再起動)
    • クールジャパンに着目した政策は、2010年頃の経済産業省の取組から始まるが、2012年12月にクールジャパン戦略担当大臣が置かれて以降は、内閣府知的財産戦略推進事務局が司令塔となって、関係省庁等における様々な取組と連携しながら、全体的な取りまとめを行う形で進められている。
    • すなわち、内閣府知的財産戦略推進事務局では、2015年12月に「クールジャパン官民連携プラットフォーム」を設立し、官民一体となってクールジャパンを深化させつつ取り組む体制を構築した。また、2019年9月には「クールジャパン戦略」(2019年9月3日 知的財産戦略本部)を策定し、取り組むべき施策の方向性を示した。
    • しかし、この直後から、新型コロナウイルス感染症の拡大により、飲食、観光、文化芸術、イベント・エンターテインメントなど、クールジャパン関連分野が大きな打撃を受けた。政府は関係業界と協力しながら各種支援策を講じ、クールジャパン関連分野の存続、そこで活躍する人々の就労機会の確保や活動の継続を図ってきた。
    • その後、水際措置の緩和などアフターコロナを迎え、クールジャパンを取り巻く環境は大きく変化し、新たなフェーズに移ってきている。
    • 第一の環境変化としては、アニメやゲームを中心に日本のコンテンツの人気が世界中で非常に高まっていることが挙げられる。
    • 具体的には、世界的に動画配信サービスが普及していく中で、日本のアニメやマンガが、海外において一部の層だけでなく、一般的な多くの若者を惹きつけている。アニメそのものに限らず、これを実写化したドラマやテーマソングも人気を博している。家庭用ゲームも、元々競争力があったが、デジタル配信に適応して海外展開がさらに伸びている。ゲームのキャラクターを活用した映画や長らく難しいとされてきた字幕付の実写映画も大ヒットしている。
    • このことでコンテンツ産業は、輸出額などの海外展開において鉄鋼産業に匹敵し、半導体産業に迫る勢いの4.7兆円規模と大きなビジネスとなり、多くの外貨を獲得する基幹産業として位置付けられるようになってきている。
    • また、訪日外国人がアニメ作品等に登場した場所や原作者の出身地等を訪問する「ゆかりの地巡り」も盛んになり、コンテンツ人気がインバウンドにも大きな波及効果をもたらしている。
    • 第二の環境変化としては、外国人の日本の「食」への期待・関心が高まっていることが挙げられる。
    • 日本の「食」は最大の来日動機となっており、これまで典型的であった寿司や天ぷら等のみならず、ラーメン、カレー、焼肉やおにぎりなどにも人気が広がっている。また、地域産品で「おもてなし」をする地方のオーベルジュには、交通難の地域であるにもかかわらず、訪日外国人がそのためだけにやってくることも多い。
    • 第三の環境変化としては、インバウンドにおいて、訪日経験が2回以上の外国人(リピーター)が増えるとともに、滞在期間も長期化するなど、訪日外国人の多様化・深化が見られることが挙げられる。
    • 初めて訪日する外国人は、いわゆる「ゴールデンルート」(東京、京都、大阪)を訪れたり、有名な観光地を巡ったりすることが多い。他方、何回も訪日している外国人は、様々な場所を訪問するよりも、1つの場所・地域を長期間かけて「ありのままを味わう」あるいは「非日常的な体験をする」という「体験」に価値を見出し、対価を支払うようになっている。
    • このほか、米国と中国の対立、ロシアのウクライナ侵攻など世界的に安全保障を巡る環境が厳しくなっている。このような状況の中、世界中の日本ファンを増やし、日本の文化等の魅力で世界を惹きつける「ソフトパワー」を高めていくことは、日本の政治外交や安全保障にも貢献するものとして、その重要性を増している。
    • こうした環境変化の潮目を捉え、更なる高みを目指して、クールジャパンを「リブート」(再起動)すべき時期が到来した。
    • 日本には、コンテンツ、多様でおいしい食、様々な地域の自然・伝統など、広義の意味での知的資産(IP)が既に数多く存在している。これらIPを活用して、デジタル化が進展する中、新たな技術も取り入れて「イノベーション」を起こしながら、多様化・深化した「日本ファン」に対して高い「体験価値」を提供し、高い利益をあげて外貨を獲得し、それを関係者による再投資に回していくという好循環を確立できる絶好の機会に立っている。
    • このためには、中核となるコンテンツ産業の国際競争力の強化、クールジャパンの担い手の育成や外国人を含めた多様な人材の活用、新しい技術の活用も含めたデジタル化・DX化を推進していくことが重要である。
    • 今回は、前回策定した「クールジャパン戦略」で示した基本的なコンセプトやアプローチを踏まえつつ、中核であるコンテンツ産業に関する戦略も含め、クールジャパンを取り巻く環境の変化に対応した実効的なアクションプランベースで「新たなクールジャパン戦略」を策定することとした。
  • クールジャパンを取り巻く環境の変化
    1. アフターコロナにおける「日本ファン」の拡大、多様化・深化
      • 日本のコンテンツや食の人気が世界的に本格化するとともに、インバウンドの回復などクールジャパンに対する世界の需要が高まっており、日本ファンは拡大し、多様化・深化している。
      • コンテンツ分野では、デジタル配信の世界的な拡大により、消費行動が変化し(動画配信、音楽配信におけるサブスクリプション視聴の増加など)、世界のコンテンツ市場が大きく拡大しており、高い成長が見込まれている。これらの変化に応じて、現在のアニメ、マンガ、ゲーム人気を足掛かりに、成長する世界市場を獲得し、さらにこれを拡大していくため、海外市場に対応したビジネスモデルへの構造改革が求められている。
      • インバウンドにおいても、需要が急速に回復17する中において、ディープな日本ファンへの対応として、高い「体験価値」の提供、日本独自のラグジュアリーな価値の提供などが求められている。
      • 農林水産物・食品の輸出は、コロナ禍においても好調であったが、日本の食・食文化に対する外国人の関心は大きく高まっており、訪日時における日本食の体験や外国での日本の食・食文化の拡大を通じ、更なる海外展開を図っていく大きな機会となっている。
    2. デジタル化・DX化の推進、新たな技術の活用
      • 世界のあらゆる分野において、デジタル化・DX化が進んでいるが、日本のクールジャパン関連分野におけるデジタル化・DX化の取組は遅れている。
      • コンテンツ分野におけるデジタル配信への対応や制作体制のDX化、生成AIを活用したクリエイションの支援や効率化、ライブ・イベント等におけるチケット販売のデジタル化・インターフェースの改善、インバウンド等におけるデジタル化・DX化による生産性の向上、Web3やVR/メタバースなどの新たな技術を活用した「価値体験」の創出や流通の仕組みを構築することが重要になっている。
    3. 国際的な政治・経済情勢リスクの高まり
      • 米国と中国の対立、ロシアのウクライナ侵攻、中東における紛争の拡大など日本の安全保障を取り巻く環境が厳しくなるなど国際的な政治・経済情勢リスクが高まっている。こうした中で安全保障の観点からも、世界から「共感」を得て日本ファンを拡大するクールジャパンの重要性が高まっている。
      • また、リスクが顕在化する場合に備えて、輸出先等を一部の国・地域に過度に依存せず、様々な海外市場から成るポートフォリオを構築することが重要になっている。
    4. 「サステナブル」に続く「ウェルビーイング」などの意識の高まり
      • 世界的にSDGsをはじめ『サステナブル』という価値は、あらゆる分野において共通語になったと言っても過言ではなく、加えて、『トランスフォーマティブ』、『ウェルビーイング』といった意識が高まっている。インバウンドで訪日する外国人の中には、人間と自然が調和した里山など、日本のありのままの姿、『オーセンティック』な魅力を求めていることも多い。
      • 世界から「共感」を得て、日本ファンを拡大するとともに深化させていくには、このような価値・意識を念頭に置き、海外からの借り物ではない日本独自の「体験価値」を訴求しながら、クールジャパンの取組を進めることが重要である。
    5. 2025年大阪・関西万博
      • 来年(2025年)に日本国際博覧会(大阪・関西万博)が開催され、開催期間中に350万人の訪日外国人の来場が見込まれている。・また、会場外においても、様々なイベントの開催が見込まれるとともに、地方公共団体との交流19なども含めて、大阪・関西以外にも全国各地に外国人が訪れることが見込まれる。
      • 大阪・関西万博は、日本のテクノロジーだけでなく、日本の魅力を世界に向けて発信する絶好のチャンスであり、会場外や開催期間前後における関連イベント等を含め、これを活用しながら、更なる日本ファンの拡大、ソフトパワーの強化を図っていくことが重要である。

【衆議院/参議院】

※現在、該当の記事はありません。

【内閣府】

【2024年7月】

内閣府 中央防災会議 第44回議事次第
▼ 資料1 防災基本計画修正案(概要)
  • 防災基本計画
    • 災害対策基本法に基づき、中央防災会議が作成する我が国の防災に関する総合的かつ長期的な計画で、指定行政機関や指定公共機関が作成する防災業務計画や、自治体が作成する地域防災計画の基本となるもの
  • 主な修正項目
    • 最近の施策の進展等を踏まえた修正
      • 新たな総合防災情報システムの運用開始
        • 防災情報の総合防災情報システム(SOBO-WEB)への集約
      • 水害対策の強化
        • 道路のアンダーパス冠水等を踏まえた対策の強化
      • 避難所以外で避難生活を送る避難者等への支援
        • 自治体、保健師、福祉関係者等の間で連携した状況把握の実施
        • 在宅避難者、車中泊避難者に対する支援に係る拠点の設置や、被災者支援に係る情報の提供
    • 関連する法令の改正を踏まえた修正
      • 活動火山対策特別措置法の改正
        • 活動火山対策の強化
        • 火山調査研究推進本部の設置
        • 「火山防災の日」を活用した防災知識の普及
        • 登山届等を容易に提出できる仕組みへの配慮
      • 医療法の改正
        • 災害支援ナースの充実・強化
      • 水防法及び気象業務法の改正
        • 国が取得した指定洪水予報河川に関する予測水位情報について、都道府県の求めに応じた提供の実施
      • 災害対策基本法施行令の改正>
        • 緊急通行車両確認標章等の事前交付
    • 令和6年能登半島地震を踏まえた修正
      • 被災地の情報収集及び進入方策
        • 車両や資機材の充実・小型化・軽量化
        • 無人航空機、SAR衛星、衛星インターネット等の活用
        • 海路・空路を活用した道路啓開に向けた調整
        • 道路管理者と生活インフラ事業者との連携強化
      • 自治体支援
        • 派遣職員が現地で自活できる資機材や装備品の充実
        • 応援職員等の宿泊場所として活用可能な施設やスペース等のリスト化
      • 避難所運営
        • パーティション、段ボールベッド等の避難所開設当初からの設置
        • 避難所における生活用水の確保
        • トイレカー等のより快適なトイレの設置への配慮
        • 高齢化の進展を踏まえた福祉的な支援の充実・明確化
        • 保健医療福祉に係る支援者(JRAT、JDA-DAT等)の明確化
      • 物資調達・輸送
        • 運送事業者等との連携による、物資輸送拠点の効率的な運営に必要な人員、資機材等の速やかな確保
      • 長時間継続する津波の見通し等に関する解説
      • より実態に即した液状化リスク情報の提供

内閣府 重要経済安保情報保護活用諮問会議
▼ 別紙3 重要経済安保情報保護活用法の施行に向けた検討
  • 今後の主な論点
    • 重要経済安保情報の指定・管理・解除
      • 重要経済安保情報の範囲
        • 「重要経済基盤保護情報」
        • 「秘匿の必要性」
      • 重要経済安保情報の保護・管理のための措置
      • 重要経済安保情報の指定の解除
      • 独立公文書管理監による検証・監察
    • 適性評価・調査、目的外利用の禁止
      • 適性評価(調査を含む)の具体的な業務の在り方
      • 評価対象者の範囲
      • 個人情報の取扱い
      • 適性評価後の事情変更の取扱い
      • 苦情の申出の取扱い
      • 目的外利用の禁止(評価対象者の保護)を担保するための方策
      • クリアランス保有者であることの対外的な証明
    • 適合事業者の認定
      • 適合事業者の認定の具体的な業務フロー
      • 適合事業者の認定基準
      • 適合事業者との契約に盛り込むべき事項
      • 適合性認定後の事情変更があった場合の取扱い
    • その他
      • 関係省庁や適合事業者に対する研修 など

内閣府 月例経済報告 令和6年6月
▼ 月例経済報告等に関する関係閣僚会議資料
  • 日本経済の基調判断
    1. 現状
      • 【判断維持】景気は、このところ足踏みもみられるが、緩やかに回復している。
      • (先月の判断)景気は、このところ足踏みもみられるが、緩やかに回復している。
    2. 先行き
      • 先行きについては、雇用・所得環境が改善する下で、各種政策の効果もあって、緩やかな回復が続くことが期待される。ただし、欧米における高い金利水準の継続に伴う影響や中国経済の先行き懸念など、海外景気の下振れが我が国の景気を下押しするリスクとなっている。
      • また、物価上昇、中東地域をめぐる情勢、金融資本市場の変動等の影響に十分注意する必要がある。さらに、令和6年能登半島地震の経済に与える影響に十分留意する必要がある。
    3. 政策の基本的態度
      • 「経済財政運営と改革の基本方針2024~賃上げと投資がけん引する成長型経済の実現~」等に基づき、物価上昇を上回る賃金上昇の実現や官民連携投資による社会課題解決と生産性向上に取り組む。
      • 「デフレ完全脱却のための総合経済対策」及びその裏付けとなる令和5年度補正予算並びに令和6年度予算を迅速かつ着実に執行する。また、足元の物価動向の中、年金生活世帯や中小企業にとっては厳しい状況が続いており、まずは、早急に着手可能で即効性のある対策を講じるなど、二段構えでの対応を行っていく。
      • 「被災者の生活と生業(なりわい)支援のためのパッケージ」に基づき、令和6年能登半島地震の被災者の生活、生業の再建をはじめ、被災地の復旧・復興に至るまで、予備費を活用し切れ目なく対応する。
      • 日本銀行には、経済・物価・金融情勢に応じて適切な金融政策運営を行うことにより、賃金と物価の好循環を確認しつつ、2%の物価安定目標を持続的・安定的に実現することを期待する。
      • 政府と日本銀行は、引き続き緊密に連携し、経済・物価動向に応じて機動的な政策運営を行っていく。
      • こうした取組により、デフレからの完全脱却、成長型の新たな経済ステージへの移行を実現していく。
    4. 今月のポイント・指標
      • 賃金の動向
        • 実質賃金を就業形態別にみると、雇用者の3割を占めるパート労働者は、昨年秋以降、時給ベースで前年比1%弱のプラスに。7割を占めるフルタイム労働者は、時給ベースでは前年比でゼロ近傍まで回復しており、月給ベースでもマイナス幅が着実に縮小。一方、パート労働者比率は上昇傾向が続いており、平均の賃金上昇率を下押しする要因に。
        • フルタイム労働者の所定内給与の伸びは、2024年4月は2.3%と1994年10月以来の高さ。30人以上の事業所で賃金上昇が先行。経営側の集計における定昇込みの春闘賃上げ率は、大企業の5.58%に対し、中小企業は3.62%。今後、中小事業所に春闘賃上げを波及させるためには、サプライチェーン全体での適正な価格転嫁の促進が重要。
        • フルタイム労働者の所定内給与は、医療・福祉、教育といった公定価格分野以外では着実な増加傾向。医療・福祉は、診療報酬改定等が反映される6月以降の賃上げに期待。教育に含まれる学校教員等は、地方公務員の4割弱を占め、12月に反映される公務員給与の改定が鍵に。
        • 23年度の地方公務員一般行政職の給料月額の平均伸び率は0.1%程度。公務員給与のGDP比が高い県では、賃上げによる波及効果も高い。公務員の月例給勧告率は、過去は民間ベアと同様であった一方、近年は民間ベアを下回る
      • 雇用と労働時間
        • パート労働者の時給は増加する一方で、年収の壁の範囲内で収入を抑える就業調整もあって、労働時間は緩やかな減少傾向が継続し、現金給与総額の上昇が抑制。女性の有配偶就業者の年収分布を学歴別にみると、年収200万円未満の割合は、高校卒では6割、専門学校・短大卒では5割、大学卒では4割弱となっており、能力発揮により世帯所得を向上させる余地。
        • 一定の仮定を置いた試算では、妻が年収の壁を超えて働く場合、世帯の生涯可処分所得として、給与所得分に加え、年金所得分の増加が、配偶者手当等の減少を大きく上回る(3図)。人手不足への対応という観点に加え、世帯の生涯可処分所得の向上という観点からも、女性が年収の壁を超えて働くことをためらうことがないような情報の周知と環境整備が重要。
      • 物価の動向
        • 消費者物価は、年一回の再エネ賦課金改定の影響はあるが、引き続き2%台で推移。電気・ガスの激変緩和措置は一旦終了するが、今夏の一時再開により、消費者物価上昇率を抑制。ガソリンの激変緩和措置の継続も物価上昇率の抑制に寄与。
        • コメ価格は、昨夏の猛暑の影響により上昇傾向。生鮮野菜も生育不良により一部の品目で5月に平年比を大きく上回るなど、天候不順の影響には注意。また円安も相まって、輸入物価の上昇が国内物価を押し上げるリスクには留意が必要
        • 物価と収入・賃金に関する最新のアンケート結果(2024年4月)によれば、(1)消費者は、約半数が「物価と収入がともに緩やかに上昇する状態」を望ましいとする、(2)企業も、業種・規模によらず、7割超が「物価と賃金がともに緩やかに上昇する状態」を望ましいとする。安定的な物価上昇とこれを上回る継続的な賃金・所得の増加を実現することが極めて重要。
        • 日米欧の消費者物価を比較すると、欧米では財価格の伸びは縮小し、サービス価格が安定的にプラス。日本もその姿に近づきつつある。サービス物価は、BtoB、BtoCともに、人件費比率が高い品目の伸びが徐々に高まる傾向にある。
      • 消費の動向
        • 名目個人消費は、総雇用者所得とともに緩やかに増加の一方、実質消費は、実質所得が伸び悩む中、力強さを欠く。
        • 消費者マインドは、円安の影響もあり家計の予想物価上昇率の上昇を背景に足踏み。年収別のばらつき拡大にも留意。
        • 近年、GDPには原則として計上されない中古品消費が6兆円規模にまで拡大。中古車に加え、衣服やブランド品での利用が多い。節約志向のほか、CtoCアプリの取引市場の発展や環境志向等が背景にあるとみられる。
      • 企業収益・生産・投資の動向
        • 企業収益は経常利益、営業利益ともに過去最高を更新し、企業部門は好調。生産は、半導体製造装置を含む生産用機械を含め持ち直しの動き。ただし、新たに発生した自動車メーカーの不正事案に伴う生産停止の影響が懸念される。
        • 名目設備投資は過去最高水準。知的財産投資や建設投資が増加の一方、機械投資は足踏みがみられていた。先行指標の機械受注は持ち直し傾向に転じており、今後の機械投資の回復に期待。
      • 公共投資の動向
        • 6月に公表された「建設総合統計」の公共工事出来高は過去に遡って改定(建設工事受注動態統計の訂正の反映分を含む)。5月の月例経済報告ではその時点で利用可能であったデータを踏まえ、堅調に推移していると判断。改定後のデータでは、高水準で底堅い姿にあり、2024年4月の出来高は、年初来増加に転じた受注等を反映し、大きく増加。
        • 2023年後半以降、都道府県発注工事等で出来高が減少していたが、足下では、市区町村を含め地方政府発注の公共事業の進捗がみられる。ただし、都道府県工事は契約率が近年低下しており、引き続き、公共工事の円滑な執行が重要
      • アメリカ経済の動向
        • アメリカでは高い金利水準が継続し、その長期化が懸念されている。物価上昇率の下げ止まりが背景。身近な財・サービス価格は、一部でコロナ禍前と比較して3割程度高くなっており、低所得者層を中心に個人消費への影響が懸念。
        • 支持政党別の消費者マインドは大統領選前後で逆転する傾向。政治情勢が個人消費に与える影響にも留意が必要。
        • 先月発表された中国からの輸入品に対する関税引上げの影響は、2026年以降に本格化する可能性
      • 欧州経済の動向
        • 2023年秋以降、ドイツ経済は弱含んでいたものの、2024年1-3月期には、輸出がけん引し、景気は持ち直しの兆し。フランス経済は、輸出に加え家計消費も景気をけん引。
        • 2024年6月、ECBは消費者物価上昇率の低下を受け、政策金利を引下げ。フランス下院総選挙をめぐる財政への警戒感からフランス長期金利は上昇傾向。一方、ドイツ長期金利は、政治的なリスク回避の動きから低下。

【2024年6月】

内閣府 令和6年版高齢社会白書を公表しました
▼ 令和6年版高齢社会白書(概要版)
  • 高齢化率は29.1%
    • 我が国の総人口は、令和5年10月1日現在、1億2,435万人。
    • 65歳以上人口は、3,623万人。総人口に占める65歳以上人口の割合(高齢化率)は29.1%。
    • 「65~74歳人口」は1,615万人、総人口に占める割合は13.0%。「75歳以上人口」は2,008万人、総人口に占める割合は16.1%で、65~74歳人口を上回っている。
    • 令和52(2070)年には、2.6人に1人が65歳以上、約4人に1人が75歳以上。
  • 「高齢者」とは
    • 高齢者の用語は文脈や制度ごとに対象が異なり、一律の定義がない。「高齢社会対策大綱」(平成30年2月閣議決定)では、便宜上、一般通念上の「高齢者」を広く指す語として用いている。本白書においても、各種の統計や制度の定義に従う場合のほかは、一般通念上の「高齢者」を広く指す語として用いることとする。
    • なお、高齢者の定義と区分に関しては、日本老年学会・日本老年医学会「高齢者に関する定義検討ワーキンググループ報告書」(平成29年3月)において、75歳以上を高齢者の新たな定義とすることが提案されている。
    • また、「高齢社会対策大綱」においても、「65歳以上を一律に『高齢者』と見る一般的な傾向は、現状に照らせばもはや現実的なものではなくなりつつある。」とされている。
  • 将来の平均寿命は男性85.89年、女性は91.94年
    • 我が国の平均寿命は令和4年現在、男性で81.05年、女性で87.09年。
    • 今後男女ともに平均寿命は延びて、令和52年には男性で85.89年、女性で91.94年となり、女性は90年を超えると見込まれている
  • 65歳以上の就業者数及び就業率は上昇傾向
    • 65歳以上の就業者数及び就業率は上昇傾向であり、特に65歳以上の就業者数は20年連続で前年を上回っている。
    • 就業率は10年前の平成25年と比較して65~69歳で13.3ポイント、70~74歳で10.7ポイント、75歳以上で3.2ポイントそれぞれ伸びている。
  • 65歳以上の一人暮らしの者が増加傾向
    • 65歳以上の一人暮らしの者は男女ともに増加傾向。
    • 昭和55年には65歳以上の男女それぞれの人口に占める割合は男性4.3%、女性11.2%であったが、令和2年には男性15.0%、女性22.1%となり、令和32年には男性26.1%、女性29.3%となると見込まれている。
  • 我が国の高齢化率は29.1%(令和5年10月1日現在)となっており、今後更に上昇する見込みとなっている中で、安心して高齢期の生活を送るためには、生活の基盤となる住まいの確保や、良好な生活環境の整備が重要である。
  • 一方で、今後、単身高齢者の増加が見込まれるなど、住まいの確保に困難を抱える高齢者の増加も懸念されている。また、コロナ禍も踏まえたライフスタイルの変化や、地方における過疎化の進行、自然災害の激甚化・頻発化等、高齢期の暮らしを取り巻く環境は大きく変化している。
  • 住宅や居住地域の満足度と幸福感の程度は相関が大きい
    • 居住している住宅や地域の満足度と幸福感の程度には、強い正の相関関係があり、良好な住宅・生活環境の整備が重要。
  • 現在の住宅について、老朽化や防災・防犯面での不安等を問題に感じている人が多い
    • 現在の住宅の問題点について、老朽化や防災・防犯面での不安等を挙げた人の割合が特に高い。持家の場合は賃貸住宅の場合と比べ、住宅が広すぎることや部屋数が多すぎること、防災・防犯面での不安を挙げた人の割合が特に高い。賃貸住宅の場合は持家の場合と比べ、家賃等の経済的負担の重さや、台所・浴室等の住宅設備の使いにくさを挙げた人の割合が特に高い。住宅のリフォーム支援や高齢者向け住宅の供給促進等、高齢者の生活上のニーズと住宅のミスマッチの解消が課題となっている。
  • 地震などの災害に備えている人の割合の上昇とひとり暮らし高齢者への配慮
    • 前回調査(平成30年度)と比べて、避難場所の事前決定やハザードマップ等の防災情報の入手等を始め、備えをしている人の割合は大きく上昇した。
    • 一方で、ひとり暮らしの高齢者については、それ以外の高齢者と比べ、「特に何もしていない」と回答した人の割合が高く、また多くの項目において対策している人の割合が低い。家具の転倒防止対策等の高齢者一人での作業が困難な対策へのサポートや災害時の避難支援を始め、今後更なる増加が見込まれるひとり暮らしの高齢者に配慮した対策の推進が重要。
  • 人付き合いの変化とそれを踏まえた孤独・孤立対策等の推進
    • 前回調査(平成30年度)と比べて、親しい友人・仲間がたくさん又は普通にいるという人の割合は大幅に低下した。また、毎日人と話をするという人の割合も大幅な低下がみられ、ひとり暮らしの人についてはその傾向が顕著となっている。
    • コロナ禍による影響等も踏まえつつ、望まない孤独・孤立に陥らないようにするための対策の推進が必要であるとともに、今後更にひとり暮らしの高齢者の増加が見込まれる中で、従来家族等が担ってきた日常生活等における様々なサポート等について、地域や社会においてどのように担っていくかについても更なる検討が必要である。
  • 生活環境について、医療・介護へのアクセスや、移動等の利便性を重視する人の割合が高い
    • 地域の生活環境について重視することとしては、医療・介護へのアクセスや、移動や買い物の利便性を挙げる人の割合が高く、特に女性は男性に比べて、住宅が高齢者向けに設計されていることや、親しい友人や知人が近くに住んでいることを挙げる人の割合が特に高い。
    • 他方で、それらに不便を感じている人の割合も高く、地域で医療・介護・予防・住まい・生活支援が包括的に確保される地域包括ケアシステムの構築や、地域での日常生活における移動ニーズに対応する施策の更なる充実を図っていく必要がある。
  • 60歳以上の約3割が住み替えの意向を持っている
    • 60歳以上で住み替えの意向がある人(状況次第で将来的に検討したいという人も含む。)の割合は全体の約3割に上る。
  • 健康・体力面での不安や住宅の住みづらさ等が、住み替えを考える契機となっている
    • 住み替えの意向を持つようになった理由について、健康・体力面での不安や現在の住宅の住みづらさ、買い物や交通の不便を挙げる人の割合が高い。
  • 住み替えに向けたサポートとしては、費用面での支援や物件・支援制度等の情報提供に関する支援のニーズが大きい
    • 住み替えに向けた望ましいサポートとしては、住み替え費用の支援、物件や支援制度の情報提供に関する支援、住宅の確保に関する支援等を挙げた人の割合が高く、地域の実情に応じて、転居費用の補助や、住み替えに係る相談窓口の整備、高齢者向けの住宅の供給等の施策の更なる充実が求められる。一方で、例えば、75歳以上の人は見守りや買い物等の身の回りの生活支援のニーズが大きい、持家に居住している人は現住居の処分に関する支援のニーズが大きいなど、属性によって状況やニーズは様々であり、きめ細やかな支援の充実が必要

内閣府 障害者白書
▼ 令和6年版障害者白書 概要
  • 「つなぐ窓口」による相談対応の基本的な流れ
    • 「つなぐ窓口」では、「障害者差別解消法」に関する説明を行うとともに、相談者の希望等に応じて、適切な自治体・各府省庁等の相談窓口と調整を行い、事案の取次を行っている
  • 「つなぐ窓口」での相談件数
    • 相談対応件数(2023年10月16日~2024年3月31日:1,163件)(うち、障害のある人やその家族等817件、事業者209件、自治体等52件、その他85件
    • 上記のうち、自治体等取次案件:121件
  • 障害者差別に関する主な相談内容の例
    • 事業者から差別的な対応をされたため、対応を改め謝罪を求めたい。
    • 事業者に合理的配慮の提供を求めたが、対応してもらえなかったため、対応するよう事業者と調整してほしい。
    • 「改正障害者差別解消法」の施行により合理的配慮の提供が義務化されると聞いたが、具体的に何をすればよいのか教えてほしい
  • 特別支援教育の充実
    • 障害のある子供については、その能力や可能性を最大限に伸ばし、自立や社会参加に必要な力を培うため、一人一人の教育的ニーズに応じ、多様な学びの場において適切な指導や必要な支援を行う必要がある。
    • 2023年3月13日に公表された「通常の学級に在籍する障害のある児童生徒への支援の在り方に関する検討会議」報告において示された方向性を踏まえ、特別支援学校と小・中・高等学校のいずれかを一体的に運営するインクルーシブな学校運営モデルを創設することが「障害者基本計画(第5次)」に明記されたところであり、2024年度から新規事業として実施すべく関連予算を計上している。
  • 障害のある子供に対する福祉の推進
    • 2023年12月に、全てのこどもと子育て世帯をライフステージに応じて切れ目なく支援していくこと等を基本理念として掲げ、若い世代が希望どおり結婚し、希望する誰もがこどもを持ち、安心して子育てできる社会、こどもたちが笑顔で暮らせる社会の実現に向けて、「こども未来戦略」が閣議決定された。
    • その中で障害児支援については、多様な支援ニーズを有するこどもの健やかな育ちを支え「誰一人取り残さない」社会を実現する観点から、地域における支援体制の強化やインクルージョンの推進を図ることとされた。
  • 障害のある人の雇用の場の拡大
    • 2023年の民間企業(2023年は常用雇用労働者数43.5人以上規模の企業:法定雇用率2.3%)が雇用している障害者の数(2023年6月1日現在、以下同じ)は約64.2万人(前年同日約61.4万人)で、20年連続で過去最高となった。また、雇用している障害者の割合は2.33%(前年同日2.25%)であり、初めて実雇用率が報告時点の法定雇用率を上回った。
    • 国の機関(2023年は法定雇用率2.6%)に在職している障害者の割合、勤務している障害者数はそれぞれ2.92%、9,940.0人で、全ての機関において法定雇用率を達成している。
  • 総合的支援施策の推進
    • 障害のある人の多様な働き方の推進や、通勤が困難な者等の雇用機会の確保の観点から、ICTを活用したテレワークを障害のある人の雇用においても普及することが重要である。このため、好事例集の作成やフォーラムの開催により、先進事例やノウハウを周知している。2024年度は、障害のある人のテレワーク雇用の導入を検討している企業等に対して、導入に向けた手順等の説明を行うセミナーや、個別相談による支援の実施も予定している。
  • 利用者本位の生活支援体制の整備
    • 「障害者総合支援法」及び「児童福祉法」では、障害のある人に必要なサービスが提供されるよう、将来に向けた計画的なサービス提供体制の整備を進める観点から、「障害福祉サービス等及び障害児通所支援等の円滑な実施を確保するための基本的な指針」(以下「基本指針」という。)に即して、市町村及び都道府県は、数値目標と必要なサービス量の見込み等を記載した「障害福祉計画」及び「障害児福祉計画」を策定することになっている。
    • 2023年5月には、2024年度を始期とする「第7期障害福祉計画」及び「第3期障害児福祉計画」の策定に係る基本指針について改正を行った。
  • 在宅サービス等の充実
    • 障害のある人が地域で暮らしていくためには、在宅で必要な支援を受けられることが必要となる。このため、市町村において「障害者総合支援法」に基づき、利用者の障害の程度や必要な支援の内容等に応じ、居宅介護、重度訪問介護、同行援護、行動援護及び重度障害者等包括支援を実施している。2023年に「地域におけるこどもの発達相談と家族支援の機能強化事業」を開始し、地域の保健、子育て、福祉等と医療機関との連携体制を構築し、こどもの発達相談を実施するとともに、必要な発達支援や家族支援につなぐなど、こどもや家族の支援ニーズに適切な時期に対応できる体制整備を進めている。
  • 障害の原因となる疾病等の予防・治療
    • 疾病等の早期発見のための健康診査、障害の原因となる疾病等を予防し、健康の保持増進を図るための保健指導を行っているほか、難病の患者に対する良質かつ適切な医療の確保及び難病の患者の療養生活の質の維持向上などを図っている
  • ユニバーサルデザインの考え方を踏まえたバリアフリー施策の推進
    • バリアフリー整備目標について、障害当事者団体や有識者の参画する検討会において議論を重ね、ハード・ソフト両面でのバリアフリー化の一層の推進、聴覚障害及び知的障害・精神障害・発達障害に係るバリアフリーの進捗状況の見える化、「心のバリアフリー」の推進等を図るとともに、新型コロナウイルス感染症による影響への対応等も考慮して、2020年11月に最終取りまとめを公表し、「移動等円滑化の促進に関する基本方針」を改正して5年間の新たなバリアフリー整備目標を2021年4月に施行した。現在の同整備目標は、2021年度から5年間を目標期間としているものであり、2026年度以降の新たな整備目標の策定に向けて、2024年度以降、検討を開始する。
  • 公共交通機関、歩行空間等バリアフリー化の推進
    • 公共交通機関、歩行空間等のバリアフリー化の推進に関し、2023年度に実施した主な施策等は次のとおり。
      • 公共交通機関の旅客施設・車両等・役務の提供に関する移動等円滑化整備ガイドラインの改訂
      • 「道路の移動等円滑化に関するガイドライン」の改定
      • 「人・ロボットの移動円滑化のための歩行空間DX研究会」の活動としてのシンポジウムの開催
      • 旅行会社が商品造成時に観光施設に求めるバリアフリー情報を検証する実証事業の実施及び障害の種別等に応じた旅行商品造成に資するノウハウ集の作成
  • 防災、防犯対策の推進
    • 東日本大震災以降、防災対策における障害のある人などの「要配慮者」に対する措置の重要性が一層高まっている中、市町村が要配慮者にも配慮した、避難所、避難路等の整備を計画的、積極的に行えるようにするための支援や、要配慮者の安全かつ迅速な避難が可能となるよう、防災情報システム等の整備強化等の取組を推進している。
    • また、障害のある人の犯罪・事故被害の防止のため、身近な犯罪や事故の発生状況、防犯上のノウハウ等の安全確保に必要な情報の提供などの取組を進めている。
    • 令和6年能登半島地震においては、障害者等要配慮者の避難先となる福祉避難所を設置するとともに、一般の避難所においてもニーズの把握を行い、福祉避難スペースを設けるなどの必要な対応を行うよう被災自治体に対して通知した。
    • 特に障害のある児童生徒等への対応に当たっては、令和6年能登半島地震の被災地域に対し、「令和6年能登半島地震における被災地域の児童生徒等の学習の継続について(事務連絡)」等を発出し、障害のある児童生徒等も含め、就学機会の確保とともに、発達障害のある児童生徒等の障害の状態等に応じた配慮事項や、自立活動の継続、個別の教育支援計画・個別の指導計画の活用について周知した。
  • 国際協力等の推進
    • 障害者施策は、福祉、保健・医療、教育、雇用等の広範な分野にわたっているが、我が国がこれらの分野で蓄積してきた技術・経験などを政府開発援助(ODA)などを通じて開発途上国の障害者施策に役立てることは、極めて有効であり、かつ、重要である。我が国は、有償資金協力、無償資金協力、技術協力のほか、国際機関等を通じた協力等を行っている。
    • 無償資金協力においては、障害者関連援助として「一般文化無償資金協力」、「草の根・人間の安全保障無償資金協力」等を実施した。
    • 技術協力の分野では、独立行政法人国際協力機構(JICA)を通じて、研修員の受入れや専門家及びJICA海外協力隊の派遣など幅広い協力を行っており、2023年度においては、就労を希望する障害者が円滑に労働市場に参入できるよう労働-福祉行政機関の連携に基づく就労支援サービスを立案・実現する「スリランカにおける障害者の就労支援促進プロジェクト」や、開発途上国の障害のある人たちが自国で「障害者権利条約」をどう実践していくかを学ぶ研修「障害者権利条約の実践のための障害者リーダー能力強化」などを実施している。

内閣府 令和6年版交通安全白書を公表しました。
▼ 概要
  • 高齢者の交通事故防止について
    • 令和5年中の道路交通における交通事故死者数は2,678人と,過去最多であった昭和45年の死者数である1万6,765人と比較すると,6分の1以下にまで減少したところであるが,今なお多くの尊い命が交通事故で失われていることに変わりなく,痛ましい交通事故が後を絶たない。
    • 交通事故死者数に占める65歳以上の者の割合は,5割を超える高い水準で推移しているほか,高齢運転者による交通死亡事故が発生するなど,交通事故情勢は依然として厳しい状況である。
    • 政府においては,高齢者の交通事故を防止するため,第11次交通安全基本計画や交通対策本部等で策定された交通事故防止対策,交通事故の発生状況等に基づき,各種施策に取り組んでいるところである。
    • 本特集では,高齢歩行者等と高齢運転者が関係する交通死亡事故の状況や特徴を分析するとともに,国と地方公共団体,関係機関・団体等が連携し,取り組んでいる高齢者に係る交通事故防止対策について紹介することとし,高齢者の交通事故を防止する一助とする
  • 高齢者の交通事故死者数及び割合
    • 65歳以上の死者数が全体に占める割合は,5割を超えている。
    • 65歳以上の死者数のうち,歩行中及び自転車乗用中が占める割合の合計は,6割を超えている
  • 高齢歩行者の交通死亡事故の特徴
    • 事故類型別の分析
      • 65歳以上の者は,65歳未満の者と比較して道路横断中が占める割合が高く,年齢層が高くなるとともに増加。
      • 年齢層が高くなるとともに横断歩道以外横断中が占める割合が増加し,85歳以上は約6割で最も高い
    • 道路横断中の交通死亡事故における歩行者の違反別の分析
      • 65歳以上の者は,65歳未満の者と比較して横断違反が占める割合が高く,年齢層が高くなるとともに増加傾向。
      • 違反なしが占める割合は,65歳以上の者は全年齢層において,65歳未満の者より高い
    • 道路横断中の交通死亡事故における昼夜別・車両進行方向別の分析
      • 65歳未満の者,65歳以上の者ともに,単路で夜間に左からの進行車両と衝突する死亡事故が多発。
      • 夜間に左からの進行車両と衝突する死亡事故件数は,年齢層が高くなるとともに増加し,85歳以上が最多
  • 高齢者の自転車乗用中の交通死亡事故の特徴
    • 65歳未満の者,65歳以上の者ともに出会い頭の死亡事故が占める割合が最も高く,65歳以上の者は,年齢層が高くなるとともに割合が増加しており,85歳以上は約5割と最も高くなっている
  • 高齢運転者による交通死亡事故の状況
    • 65歳以上の運転者は,年齢層が高くなるとともに工作物衝突,路外逸脱等の車両単独事故が占める割合が増加。
    • 車両相互事故における出会い頭や正面衝突による死亡事故が占める割合も高い
    • 65歳以上の運転者は,年齢層が高くなるとともにブレーキとアクセルの踏み間違いやハンドル操作不適等の操作不適による死亡事故が占める割合が増加しており,特にブレーキとアクセルの踏み間違いによる死亡事故が占める割合は,65歳未満の運転者と比較して大きく増加し,80~84歳が最も高い
  • 高齢者の交通事故防止対策の必要性
    • 高齢歩行者
      • 年齢層によって割合に違いはあるものの,道路横断中に死亡した高齢歩行者に横断違反が多いことも,道路横断中における交通死亡事故が多い要因の一つとして考えられる。
      • 道路を横断する際に,左右から進行してくる車両に対する安全確認が十分に行えていない可能性があるほか,安全に横断できると判断して横断し始めても,加齢による身体機能の変化等により思うように歩くことができず,横断し終わる前に左右から進行してくる車両と衝突している可能性が考えられる。
    • 高齢の自転車利用者
      • 出会い頭の交通死亡事故が多いことから,交差点等を進行する際に,一時停止等が十分に行えていない可能性があるほか,一時停止等を行っていても左右の安全確認が十分に行えていない可能性が考えられる。
      • 安全確認を行い,安全に進行できると判断して進行し始めても,加齢による身体機能の変化等により思うように進行することができず,交差点等を通過し終わる前に出会い頭に車両と衝突している可能性が考えられる
    • 高齢運転者
      • 個人差はあるものの,一般的に加齢により身体機能や認知機能が低下するとされており,こうした身体機能や認知機能の変化が運転行動に影響を及ぼし,車両単独事故による交通死亡事故や,車両相互事故の出会い頭及び正面衝突による交通死亡事故の割合を高くしている可能性が考えられる。
      • このほか,ハンドル操作の誤りや,ブレーキとアクセルの踏み間違いといった運転操作自体に要因がある交通死亡事故の割合を高くしている可能性が考えられる。
    • 対策
      • 歩行中における正しい横断方法等や自転車を利用する際の交通ルールの遵守,加齢に伴う身体機能の変化等を自覚した行動,夜間等における反射材用品の着用等が行われるよう,効果的な交通安全教育,広報啓発等を行っていく必要がある。
      • 高齢歩行者や高齢の自転車利用者が安全に通行できる道路交通環境の整備を推進する必要がある
      • 加齢に伴う身体機能や認知機能の低下を踏まえた高齢運転者対策の強化や教育の充実,高齢運転者の交通事故防止に資する先進安全技術の開発や普及促進,安全に運転できる道路交通環境の整備,運転に不安を覚える高齢者への支援,自らの運転によらなくても安心して移動できる手段の確保等に取り組んでいく必要がある
  • 令和5年度交通事故の状況及び交通安全施策の現況
    • 65歳以上の者(以下「高齢者」という。)におけるの人口10万人当たりの交通事故死者数は引き続き減少しているものの,交通事故死者数のうち高齢者は1,466人であり,その占める割合は54.7%と依然として高い。
    • 令和5年中の交通死亡事故発生件数を事故類型別にみると,正面衝突等※が最も多く,次いで歩行者横断中,出会い頭衝突の順で多くなっており(「人対車両その他」を除く。),この3類型を合わせると全体の約6割を占めている。
    • 状態別交通事故死者数は,歩行中が最も多く,次いで自動車乗車中が多くなっており,両者を合わせると全体の約7割を占めている。
    • 歩行中死者数(人口10万人当たり)については,高齢者で多く,特に80歳以上では全年齢層(0.78人)の約4.2倍の水準となっている。
  • 道路交通環境の整備
    • 生活道路については,最高速度30キロメートル毎時の区域規制とハンプや狭さく等の物理的デバイスとの適切な組合せにより交通の安全の向上を図ろうとする区域を「ゾーン30プラス」として設定し,全ての人が安心して通行できる道路空間の確保を図っている。
    • また,生活道路においては,これまでのゾーン30(ゾーン30プラスとして整備している地区を含む。)の整備を含め,低速度規制を実施した。
    • 令和3年度末までに全国で整備したゾーン30において,整備前年度の1年間と整備翌年度の1年間における死亡重傷事故発生件数を比較したところ,全死亡重傷事故発生件数及び対歩行者・自転車事故件数はいずれも減少(それぞれ29.2%減,26.5%減)するなど,交通事故抑止及びゾーン内における自動車の通過速度の抑制に効果があることが確認された
  • 交通安全思想の普及徹底
    • 交通安全教育指針(平10国家公安委員会告示15)等を活用し,幼児から成人に至るまで,心身の発達段階やライフステージに応じた段階的かつ体系的な交通安全教育を実施した。特に,高齢化が進展する中で,高齢者自身の交通安全意識の向上を図るとともに,他の世代に対しても高齢者の特性を知り,その上で高齢者を保護し,また,高齢者に配慮する意識を高めるための啓発指導を強化した。さらに,自転車を使用することが多い小学生,中学生及び高校生に対しては,交通社会の一員であることを考慮し,自転車利用に関する道路交通の基礎知識,交通安全意識及び交通マナーに係る教育の充実に努めた。
  • 鉄道交通事故の動向
    • 鉄道交通における運転事故は,平成15年に862件であったものが,平成25年には805件,令和5年には682件となっており,長期的に減少傾向にあるものの,令和3年以降増加傾向にある。
    • 運転事故による死者数は307人,乗客の死者数はゼロであり,平成17年に発生したJR東日本羽越線列車脱線事故以降,運転事故による乗客の死者は発生していない。
    • 踏切事故は,踏切保安設備の整備等により,平成15年に438件であったものが,平成25年には297件,令和5年には243件となっており,長期的に減少傾向にある。
    • 令和5年の人身障害事故は,396件で前年比23.8%増,死者数は200人で前年比14.3%増であった。このうちホームから転落して又はホーム上で列車と接触して死傷する事故(ホーム事故)は,長期的に減少傾向にあるものの,令和4年から増加傾向に転じている。
    • なお,ホーム事故のうち,酔客による事故件数は68件で,全体の約45.3%を占めている。
  • 海難等の動向
    • 我が国の周辺海域において,交通安全基本計画の対象となる船舶事故隻数の推移をみると,第9次交通安全基本計画期間(平成23年度~27年度)の年平均では2,256隻であったものが,令和5年では1,790隻となっており,約2割減少した。
    • 船舶事故による死者・行方不明者の数は,第9次交通安全基本計画期間の年平均で91人であったものが,令和5年では57人となっており,約4割の減少となった。また,令和5年における,ふくそう海域における大規模海難の発生数はゼロであった。
  • 令和5年中の海難等及び海難救助の状況
    • 令和5年の船舶事故による死者・行方不明者数は,46.7%が貨物船,22.2%がプレジャーボートによるものである。また,船舶からの海中転落による死者・行方不明者数は,61.3%が漁船,14.5%がプレジャーボートによるものである。
    • 令和5年の小型船舶の事故隻数は1,385隻であり,前年より90隻減少した。これに伴う死者・行方不明者数は22人であり,前年より8人減少した。
    • 第11次交通安全基本計画では,海難における死者・行方不明者を減少させるために,救助率※を95%以上とする目標が定められており,海上保安庁において,救助・救急体制の充実強化,民間救助組織等との連携・協力に努めた結果,令和5年の救助率は96.6%であった。
    • 令和5年は,海難船舶の乗船者7,472人の中で自力救助の4,156人を除いた3,316人のうち3,271人が救助され,自力救助を除く海難船舶の乗船者に対する救助された人数の割合は98.6%であった。
    • 令和5年は,プレジャーボート等の海難船舶の乗船者2,449人の中で自力救助の773人を除いた1,676人のうち1,663人が救助され,自力救助を除くプレジャーボート等の海難船舶の乗船者に対する救助された人数の割合は99.2%であった。
  • 近年の航空事故の状況
    • 我が国における航空事故の発生件数は,令和5年は16件,これに伴う死亡者数は1人,負傷者数は4人である。
    • 近年は,大型飛行機による航空事故は,乱気流等気象に起因するものを中心に年数件程度にとどまり,小型飛行機等が事故の大半を占めている。
  • 航空輸送事業者における安全上のトラブル
    • 我が国の航空運送事業者に対して報告を義務付けている事故,重大インシデントに関する情報は,令和5年に6件報告された。
    • なお,我が国の特定本邦航空運送事業者(客席数が100又は最大離陸重量が5万キログラムを超える航空機を使用して航空運送事業を経営する本邦航空運送事業者)の乗客が死亡した事故は,昭和60年の日本航空123便の御巣鷹山墜落事故以降発生していない

内閣府 令和6年第8回経済財政諮問会議
▼ 資料1 経済財政運営と改革の基本方針2024原案
  • デフレ完全脱却の実現に向けて
    • 我が国経済は、現在、デフレから完全に脱却し、成長型の経済を実現させる千載一遇の歴史的チャンスを迎えている。本年の春季労使交渉では、1991年以来33年ぶりの高水準の賃上げが実現し、足下の企業の設備投資は史上最高の水準にある。こうした前向きな動きを中小企業・地方経済等でも実現し、二度とデフレに戻らせることなく、「コストカット」が続いてきた日本経済を成長型の新たなステージへと移行させていくことが、経済財政運営における最重要課題となっている。
    • 岸田内閣は、これまで、「新しい資本主義」を掲げ、「成長と分配の好循環」及び「賃金と物価の好循環」の実現に向け、日本銀行と連携し、適切なマクロ経済運営を行うとともに、官民連携による賃上げや社会課題の解決を成長につなげる投資の促進に向けた取組などを進めてきた。こうした「新しい資本主義」の考え方は、新たな経済ステージへの移行に当たっての基盤となるものである。これらにより、30年間上がらなかった賃金や物価が動き出し、企業の成長期待や投資の見通しも高まっている。今は、日本経済への「期待」を現実のものとしていくときである。
    • 現状では、物価上昇が賃金上昇を上回る中で、消費は力強さを欠いており、また、海外経済の下振れによるリスク等も残っているが、今後は、景気の緩やかな回復が続く中で、賃金上昇が物価上昇を上回っていくことが期待される。
  • 新たなステージへの移行のカギとなるのは、賃上げを起点とした所得と生産性の向上である。まずは、春季労使交渉における力強い賃上げの流れを中小企業・地方経済等春季労使交渉以外の分野でも実現し、物価上昇を上回る賃金上昇を達成し、定着させる。安定的な物価上昇の下で、賃上げに支えられた消費の増加及び投資の拡大が、企業収益を押し上げ、その成果が家計に還元され、次の消費の増加につながる。企業はその収益を原資として成長分野に更に投資を行うことによって、企業の生産性と稼ぐ力が強化される。成長分野への円滑な労働移動も可能となり、新たな成長を生み出す好循環が実現する。
    • あわせて、社会課題の解決と持続的な経済成長の実現に向け、官民が連携して投資を行う。グリーン、デジタル、科学技術・イノベーション、フロンティアの開拓、経済・エネルギー安全保障等の分野において、長期的視点に立ち、戦略的な投資を速やかに実行していく。こうして人材や資本等の資源を成長分野に集中投入することによって、経済全体の生産性を高め、日本経済を「成長型の新たな経済ステージ」へと移行させていく。
    • 本年の春季労使交渉では、労務費転嫁のための指針が周知されたこと等もあり、労使交渉の結果、力強い賃上げの流れが生み出された。これに加え、本年6月から実施している定額減税等によって、可処分所得を下支えし、物価上昇を上回る所得の増加を確実に実現する。そして、この流れを来年以降も持続させるため、あらゆる政策を総動員して賃上げを後押しし、国民一人一人の生活実感を高めていく。このため、重層的な取引構造となっている業種を含め、サプライチェーン全体で適切な価格転嫁が行われるよう、官民双方で取組を更に強化するとともに、企業の稼ぐ力を強化することによって、来年以降、物価上昇を上回る賃上げを定着させていく。
    • 賃上げについては、労務費の転嫁円滑化に加え、商慣行の思い切った見直しを含め、業種・事業分野の実態に応じた価格転嫁対策に取り組むほか、医療・福祉分野等におけるきめ細かい賃上げ支援や最低賃金の引上げを実行する。あわせて、三位一体の労働市場改革を進め、全世代を対象とするリ・スキリングの強化に取り組む。個々の企業の実態に応じたジョブ型人事(職務給)の導入を促進するとともに、雇用政策の方向性を、雇用維持から成長分野への労働移動の円滑化へとシフトしていく。
    • 企業の稼ぐ力については、人手不足への対応として、業績改善にもつながるデジタル化や省力化投資の取組を支援するとともに、生産性の持続的な向上に向けて、中堅・中小企業の設備投資、販路開拓、海外展開等の取組を後押しする。GX、経済安全保障など、社会課題の解決に向けた官民連携の投資、デジタル技術の社会実装、宇宙・海洋等のフロンティアの開拓、海外からの人材・資金の呼び込み等の取組によって、成長分野における国内投資を持続的に拡大し、経済全体の生産性を向上させる。
    • 日本銀行は、本年3月19日、それまでのマイナス金利政策やイールドカーブ・コントロール等を変更し、金融政策は、新しい段階に入った。安定的な物価上昇率の下での民需主導の持続的な経済成長の実現に向け、政府は、引き続き、日本銀行と密接に連携し、経済・物価動向に応じた機動的なマクロ経済政策運営を行っていく。
    • 政府は、競争力と成長力強化のための構造改革に取り組むとともに、持続可能な財政構造を確立するための取組を着実に推進する。日本銀行には、経済・物価・金融情勢に応じて適切な金融政策運営を行うことにより、賃金と物価の好循環を確認しつつ、2%の物価安定目標を持続的・安定的に実現することを期待する。
    • こうした取組によって、長期にわたり染み付いた「デフレ心理」を払しょくし、社会全体に、賃金と物価が上がることは当たり前であるという意識を定着させ、デフレからの完全脱却、そして、経済の新たなステージへの移行へとつなげていく。
  • 経済財政諮問会議においては、今後とも、賃金、所得や物価動向を含む経済・財政の状況、金融政策を含むマクロ経済政策運営の状況、経済構造改革の取組状況等について、定期的に検証していく。
  • 豊かさと幸せを実感できる持続可能な経済社会に向けて
    • 足元の人手不足の大きな要因でもある人口減少は、2030年代に加速することが見込まれており、現状のまま生産性上昇率が高まらず、労働参加の拡大や出生率の向上も十分でないという前提に立てば、我が国の潜在成長率は長期にわたりゼロ近傍の低成長に陥りかねない。
    • 将来的に人口減少が見込まれる中で長期的に経済成長を遂げるためには、生産性向上、労働参加拡大、出生率の向上を通じて潜在成長率を高め、成長と分配の好循環により持続的に所得が向上する経済を実現する必要がある。これらを通じて、少子高齢化・人口減少を克服し、国民が豊かさと幸せを実感できる持続可能な経済社会を実現していくことをミッションとして掲げ、官民挙げて総力を結集し経済成長のダイナミズムを起こし、これまでの延長線上にない、熱量あふれる日本経済の新たなステージへの移行を確かなものとしていかなければいけない。
    • 経済・財政・社会保障の持続可能性の確保を図るには、人口減少が本格化する2030年代以降も、実質1%を安定的に上回る成長を確保する必要がある。その上で、更にそれよりも高い成長の実現を目指す。このため、今動き始めているDX、GXを始めとする投資の拡大、欧米並みの生産性上昇率への引上げ、高齢者の労働参加率の上昇ペース継続や女性の正規化促進など、我が国の成長力を高める取組が必要である。こうした経済においては、2%の物価安定目標の持続的・安定的な実現の下で、2040年頃に名目1,000兆円程度の経済が視野に入る。
    • 人口減少が本格化する2030年度までが、こうした経済構造への変革を起こすラストチャンスである。このため、本基本方針第3章に記載されている「経済・財政新生計画」に基づき、以下に述べる「新たなステージを目指すための5つのビジョン」からバックキャストしながら、今後3年程度で必要な制度改革を含め集中的な取組を講じていく。
    • 社会課題解決をエンジンとした生産性向上と成長機会の拡大
      • 人口減少を機会と捉え、DX、新技術の徹底した社会実装、フロンティアの開拓等によりイノベーションを促進するとともに、成長分野への人材や資金の流入を加速させることにより、生産性を向上させて供給力を高めていく。また、脱炭素、経済安全保障、ヘルスケア等の生活の質向上、人口減少・高齢化といった社会課題解決を通して需要を開拓し、次世代技術や新しいビジネスモデルを用いた付加価値の高い解決策を生み出すことで新たな市場を創出・拡大し、民需主導の経済構造を構築していく。こうした需給両面での成長を支えるため、官民挙げて積極果敢な国内投資を行い、企業部門を貯蓄超過から投資超過へとシフトさせるとともに、新技術の社会実装を担うスタートアップを始め、ソーシャルビジネス、NPO等の新しいプレイヤーの活躍を支えるエコシステムを形成する。
    • 誰もが活躍できるWell-beingが高い社会の実現
      • 需要の創出に加え、家計が可処分所得の継続的な増加を通じて成長の恩恵を実感できるよう、構造的な賃上げを社会に広げ定着させるとともに、全世代型社会保障制度を構築していく。意欲のある人が年齢・性別にかかわらず、自由で柔軟に活躍できる社会を構築する。さらに、若者が安心して結婚・出産・子育てに取り組めるよう若年世代の所得向上を図るとともに、健康意識の向上を図り、自らのキャリア設計の下で希望に応じて働くことで生涯所得を拡大させ、潜在的な支出ニーズを顕在化させていく。こうした「賃金と物価の好循環」や「成長と分配の好循環」の拡大・定着を通じて、希望豊かなWell-beingの高い社会の実現を目指す。
    • 経済・財政・社会保障の持続可能性の確保
      • 高齢化率は継続的に上昇し、医療費や介護費への影響が大きい75歳以上や85歳以上の人口は長期にわたって段階的に増加する一方、生産年齢人口は減少が見込まれる。こうした中で、経済・財政・社会保障を一体として相互に連携させながら改革を進め、経済社会の持続可能性を確保していく。
      • 上述した持続的な経済成長や成長と分配の好循環の実現は、財政や社会保障の給付と負担のバランスの改善に寄与する。社会保障もまた、健康で生涯活躍できる社会の実現、セーフティネット機能による暮らしの安心確保を通じた消費の押し上げ、保険料負担の上昇の抑制による可処分所得の引上げなど、成長と分配の好循環を支える重要な役割を担い、給付と負担のバランスの確保は財政健全化にも欠かせない要素である。財政についても、EBPMによるワイズスペンディングを徹底しつつ、官民連携による投資促進等の成長力強化を図るとともに、財政の信認を確保していくことは、民需主導の経済成長を支える重要な基盤となる。
      • 以上の方向性に沿った改革を進め、人口減少が深刻化する2030年代以降も、実質1%を上回る経済成長を実現するとともに、これまでと同様に医療・介護給付費対GDP比の上昇基調に対する改革に取り組み、一定幅でのPBの黒字基調を維持していくことができれば、長期的な経済・財政・社会保障の持続可能性が確保される。こうした長期のあるべき姿からバックキャストして、今後の中期的な経済財政運営を進めていく。
    • 地域ごとの特性・成長資源をいかした持続可能な地域社会の形成
      • 2050年にかけて、都市部では高齢人口が増加する一方、地方部では人口減少が深刻化するなど、人口動態の変化の現れ方は自治体や地域ごとに異なる。また、老朽化により更新時期を迎えるインフラ・公共施設が一斉に増加するとともに、人口減少の更なる進展に伴って、担い手不足や一人当たりでみた公共サービス維持のコスト増が顕在化し、個々の自治体だけでは持続可能性を確保できない地域も出現する可能性がある。こうした中で、地方創生の新展開を強力に推進して、地域の人口減少や東京一極集中に対応し、地域の特性や魅力を活かした自律的な地域社会を創出していく。また、広域化・共同化により公共サービスやインフラの選択と集中を進めるとともに、DXや新技術の社会実装により地域機能やサービスの高度化を図り、新しい生活スタイルへ移行させていく。
    • 海外の成長市場との連結性向上とエネルギー構造転換
      • 国際情勢の不確実性やエネルギー・資源制約の高まり等に対処し得る国際競争力の強化と経済安全保障の強靱化の必要性が高まっている。こうした中で、人口減少下で資源に恵まれない我が国が持続的な経済成長を実現するため、成長市場との連結性を高め、海外の人材・資金を積極的に呼び込み、我が国の投資拡大やイノベーション向上につなげていく。
      • また、エネルギー自給率の大幅な向上によりエネルギー安全保障を確保し、脱炭素とコスト削減の両立により国内産業の稼ぐ力を強くするエネルギー構造に転換していく。我が国は、世界全体の課題である気候変動対策などの分野において、先端を切りひらき、その解決に貢献していく。
    • ビジョン達成に向けた政策アプローチ
      • これらのビジョンを達成するため、以下に掲げる5つの政策の方向性に沿って、デフレ完全脱却の実現に向けた足元の政策対応から一気通貫で、包括的かつ分野横断的な政策アプローチを集中的に講じることにより、速やかに新たなステージに引き上げ持続可能な経済社会への軌道に乗せていくとともに、成長の恩恵を国民に着実に還元していく。
        • 新技術の社会実装によって社会課題の解決を経済成長に結び付けていく観点から、人的投資、研究開発投資、企業の新陳代謝の向上等を通じて付加価値生産性を高める。くわえて、社会課題と新技術をマッチングする機会の拡大や、政府調達や規制改革による一体的な支援を通じ、スタートアップによる新技術の社会実装を加速する。
        • 性別や年齢にかかわらず意欲のある人が生涯活躍できる社会を実現するため、全世代型リ・スキリングや若年期からの健康管理を促す全世代型健康診断等のプロアクティブケア、働き方に中立的な社会保障制度の構築を進める。また、構造的な賃上げの定着に加え、能力に応じた若年世代の待遇改善や、仕事と子育ての両立支援、女性活躍、男女賃金格差の是正、ジェンダーギャップ解消等を推進し、若年世代の安心と結婚・出産・子育ての希望を高め、その希望がかなう結果として出生率が向上する社会を構築する。
        • EBPMによるワイズスペンディングを徹底しつつ、将来の成長につながる分野において、官民連携の下で民間の予見可能性を高める中長期の計画的な投資を推進するとともに、歳出改革に取り組み、金利のある世界に備え財政の信認を確保する。社会保障を持続可能なものとするため、応能負担の徹底を通じて現役世代・高齢世代などの給付・負担構造を見直し、国民の安心につながる効率的で強靱な医療・介護の提供体制を実現するなど、全世代型社会保障制度の構築を進める。
        • 地域における新技術の社会実装や、地域ごとの実情に応じた少子化対策を進めるため、モデル地域を形成し、規制・制度改革や施策間・地域間連携等を通じて先駆的な取組の実践と横展開を進める。また、広域での住民の意見集約の下での都市圏のコンパクト化や、東京一極集中の是正等による強靱な国土構造の形成を推進するとともに、地域経済の活性化や広域連携、自治体DX等により地方行財政基盤を強化する。
        • 高い成長が見込まれるグローバル・サウス等の海外活力を取り込むため、モノ、カネ、ヒトの観点からグローバル戦略を抜本的に強化する。また、脱炭素・低コスト・安定供給を両立させるエネルギー需給構造を実現するため、我が国の強みをいかした革新的エネルギーの技術開発とその社会実装・海外展開を推進する。
    • 国民意識の変革と行動喚起
      • 日本経済を新たなステージに移行させ、中長期のミッションを達成していくためには、我が国が直面する人口減少がもたらす不可避的な課題とそれを解決するビジョンについて、世代を越えて個人、組織、地域社会が議論を通じて広く共有し、国民意識の変革や国民を巻き込んだムーブメントを巻き起こしつつ、一人一人が社会づくりにコミットして行動に移すことが重要となる。こうした行動が積み重なり、やがて大きな社会変革の動きにつながり、「国民が希望を創り、ともに実現する国」や「世界一暮らしやすく、働きやすい国」へと導かれる。今こそ日本経済が潜在的に有する活力を集結するときであり、過去の常識の殻を勇気と熱意をもって打ち破り、「これまで」ではなく「これから」の経済社会を築く好機を逃してはならない。このため、本方針に示された中長期の政策運営の基本的考え方や政策アプローチについて、関係省庁と連携しながら積極的に発信し、国民、民間企業、自治体等の具体的な行動へとつながる効果的な展開を図る
  • 安全・安心
    • 良好な治安を確保するため、テロの未然防止、サイバーセキュリティ対策、有事に備えた国民保護施策、多国間の枠組みを通じた取組を含むマネロン・テロ資金供与・拡散金融対策等を推進する。
    • 羽田空港での航空機衝突事故等を踏まえ、運輸分野の安全対策に取り組む。自動車メーカー等の不正防止、高齢運転者等の事故防止や自動車事故による被害者の支援を行う。著名人になりすました偽広告の詐欺に対してプラットフォーム事業者に迅速に削除対応させることを含め、「国民を詐欺から守るための総合対策」97に基づき、抑止・対処能力を強化する。
    • 「第二次再犯防止推進計画」98に基づく施策を推進する。国内外の予防司法支援機能や総合法律支援の充実、司法分野・司法試験のデジタル化、インターネット上の人権侵害への対策の強化、法曹人材の確保及び法教育の推進等の人的・物的基盤の整備を進めるとともに、「第4次犯罪被害者等基本計画」99等に基づき、施策を強化する。司法外交閣僚フォーラム100の成果を展開し、法の支配の推進に向けた国際協力・司法外交を外交一元化の下で推進するほか、仲裁機関の認知度向上も含め官民が緊密に連携した国際仲裁の活性化や法令外国語訳の推進等に取り組む。
    • 信頼性の高い機能性表示食品制度の構築に取り組む。食品寄附促進を含め食品ロス削減を図るため、2024年度内に、基本方針101を改定する。デジタル化等を踏まえ、2024年度内に、公益通報者保護制度の改革、消費生活相談DXの推進等を含め、新たな「消費者基本計画」を策定する。
    • カスタマーハラスメントを含む職場におけるハラスメントについて、法的措置も視野に入れ、対策を強化する。
    • 「花粉症対策の全体像」102等に基づき、約30年後の花粉発生量の半減を目指し、スギ人工林伐採重点区域における伐採・植替えを含む発生源対策等に取り組む。熱中症特別警戒情報の活用等の熱中症対策を推進する。
    • クマによる人身被害等を防ぐため、「クマ被害対策施策パッケージ」103に基づき、人の生活圏への出没防止等を推進する。
    • 新型コロナウイルス感染症のり患後症状やワクチンの副反応についての実態把握に資する調査・研究等を進める。全面改定後の「新型インフルエンザ等対策政府行動計画」に基づき、次なる感染症危機への対応に万全を期すとともに、2025年4月に、国立健康危機管理研究機構を創設し、質の高い科学的知見を迅速に提供する。
    • 狂犬病予防法105関連手続きのオンライン化等の人獣共通感染症対策を推進する。

内閣府 第2回 孤独・孤立対策推進本部 配布資料
▼ 資料1-1:孤独・孤立対策に関する施策の推進を図るための重点計画(案)のポイント
  • 重点計画の意義
    • 本年4月1日に施行された孤独・孤立対策推進法(令和5年法律第45号)に基づき、孤独・孤立対策推進本部において決定。
    • 孤独・孤立対策に関する施策についての基本的な方針、孤独・孤立対策に関し、政府が総合的かつ計画的に講ずべき施策等を定め、重点計画に定める施策については、原則として、具体的な目標及びその達成の期間を定めることとされている(推進法第8条)。
  • 現状認識等
    • コロナ禍後も、今後我が国では単身世帯や単身高齢世帯の増加が見込まれ、問題の深刻化が懸念。社会問題の背景に孤独・孤立問題の存在が指摘される。
    • 関係府省庁、地方公共団体及びNPO等が有機的に連携し、社会のあらゆる分野に孤独・孤立対策の視点を入れることを徹底。
    • 推進法に基づき、総理・担当大臣のリーダーシップの下、推進本部を中心に総合的な取組を強化・深化していく。
  • 基本理念(推進法第2条)
    • 孤独・孤立双方への社会全体での対応
    • 当事者等の立場に立った施策の推進
    • 社会との関わり及び人と人との「つながり」を実感できるための施策の推進
  • 孤独・孤立対策の基本方針
    1. 孤独・孤立に至っても支援を求める声を上げやすい社会とする
      • 孤独・孤立の実態把握
      • 支援情報が網羅されたポータルサイトの構築・タイムリーな情報発信
      • 声を上げやすい・かけやすい環境整備
    2. 状況に合わせた切れ目のない相談支援につなげる
      • 相談支援体制の整備(電話・SNS相談の24時間対応の推進等)
      • 人材育成等の支援
    3. 見守り・交流の場や居場所を確保し、人と人との「つながり」を実感できる地域づくりを行う
      • 居場所の確保
      • アウトリーチ型支援体制の構築
      • 施策の相乗効果を高める分野横断的な連携の促進
      • 地域における包括的支援体制等の推進
    4. 孤独・孤立対策に取り組むNPO等の活動をきめ細かく支援し、官・民・NPO等の連携を強化する
      • NPO等の活動の支援
      • NPO等との対話の推進
      • 連携の基盤となるプラットフォームの形成
      • 行政における孤独・孤立対策の推進体制の整備
  • 特に重点を置いて取り組むべき事項
    • 地方公共団体及びNPO等への支援
      • 連携の基盤となる地方版官民連携プラットフォームや孤独・孤立対策地域協議会の立ち上げ段階の伴走支援、設置の促進。
      • 交付金を活用した支援に加え、活動事例の周知・横展開により地域の実情に応じた対策が実施されるよう支援。
    • 孤独・孤立状態の予防を目指した取組強化
      • 悩みや困りごとが深刻化・複雑化する前に対応する、孤独・孤立状態の予防の観点が重要。
      • 「孤独・孤立に至っても支援を求める声を上げやすい・声をかけやすい社会」の実現に向けた普及・啓発活動の実施。
      • 身の回りの人に関心をもち、できる範囲で困っている人をサポートする一般市民「つながりサポーター」の養成。
    • 重点計画に定める施策のエビデンスに基づく評価・検証を通じた取組の推進

内閣府男女共同参画局 男女共同参画白書
▼ 令和6年版男女共同参画白書 概要版
  • 仕事と健康の両立~全ての人が希望に応じて活躍できる社会の実現に向けて~
    • 全ての人が希望に応じて、家庭でも仕事でも活躍できる社会「令和モデル」の実現に向けて、基盤となるのが「健康」である。
    • 女性と男性では、健康課題の内容も課題を抱えやすい時期も異なる。
    • 女性がキャリアを継続し、キャリアアップしていくためには、仕事と家事・育児等の両立支援に加えて、女性特有の症状を踏まえた健康への理
  • 解・支援等が求められる。
    • 団塊の世代が後期高齢者に差し掛かりつつある現在、認知症への対応も含め、仕事と介護の両立も重要な課題。働きながら介護をしている
  • ワーキングケアラーが増加する中、介護の課題を個人で抱えるのではなく、社会全体で支えていくことが必要。
    • 企業における従業員の健康支援は必要不可欠であり、健康経営に関する取組を大企業だけでなく中小企業等へも拡大させることが必要。
    • 女性が健康課題を抱えながらも働きやすい社会は、男性も含めた全ての人々にとっても働きやすい社会になることが期待される。柔軟な働き方など、両立を実現できるような働き方への変革が重要。
    • 自らの理想とする生き方と仕事を両立することが可能となれば、キャリア継続、キャリアアップのモチベーションとなる。理想とする生き方の実現のために、自らが健康であることや健康課題と上手に付き合うこと、家族等周囲の健康・介護を社会で支えることが重要である。
    • 職業生活における「健康」の維持・増進は、男女ともにウェルビーイングを高め、企業の生産性を向上させることが期待できる。社会全体で健康課題に取り組むことで、人々の労働参画や地域活動などへの参画が拡大し、日本経済の成長や地域を含めた社会全体の活力向上につながるであろう。
  • 社会構造の変化と男女で異なる健康課題
    • 男性特有の病気は50代以降で多くなる傾向にあるが、女性特有の病気は20代から50代の働く世代に多い。
    • 日本型雇用慣行が形成された昭和時代と現代では、人口構造・就業者の構成が変化。女性就業者が増加する一方、就業者全体が高齢化。また、非就業の高齢者も増加。一人一人が希望に応じて、自らの個性と能力を発揮するために、健康維持・増進が重要な課題。
    • 女性の正規雇用比率は、20代後半をピークに年代が上がるとともに低下するL字カーブを描く。出生コーホートで世代による変化をみると、近年は、出産・育児によるとみられる女性の正規雇用比率の低下幅は縮小しており、今後も女性の正規雇用比率の高まりが期待される。
    • 近年、未就学児の育児をする者及び家族の介護をする者に占める有業者の割合が上昇。育児・介護ともに、依然として担い手は、男性よりも女性の方が多い。
  • 仕事、家事・育児等と健康課題の両立
    • 気になる症状への対処法として「休暇・休憩をとる」「市販の薬やサプリメント等を飲む」「病院等に行く」を挙げる割合が高いが、「特に対処していない」とする割合も3~4割。
    • 子育て中の正規雇用労働者の女性は「仕事や家事・育児等で忙しく病院等に行く時間がない」「病院が空いている時間に行けない」ため、気になる症状に十分に対処できていないことが多い。
    • 気になる症状があったときのプレゼンティーイズム※損失割合は、仕事よりも家事等の方が高い。健康課題を抱えていると、仕事よりも家事・育児等に影響が及ぶと認識していることがうかがえる。 ※プレゼンティーイズムとは、何らかの不調を抱えた状態で出社し本来のパフォーマンスが発揮できない状態を指し、出来がどの程度か(生産性)をアンケートによる自己評価等を用いて測定する。なおここでは、家事・育児・介護についても、体調不良を抱えた状態での出来(生産性)という意味で用いている。
    • 小学生以下の子供と同居している有業の女性は、仕事と家事等のプレゼンティーイズム損失割合が同程度となっており、健康課題により仕事にも家事・育児等にも影響が及ぶと自身で認識していると推測されるため、両立支援が重要
    • 月経のある女性の8割が月経不調により生活(仕事や家事・育児・介護)への「支障がある」 。特に20代・30代女性では9割が生活への支障があり、うち4割は「かなり支障がある」。
    • 更年期障害の自覚のある女性の9割、男性の6割が、生活への「支障があると思う」。
    • 職場において、月経に関して困った経験については、「経血の漏れが心配で業務に集中できない」「生理用品を交換するタイミングを作りにくい」「立ち仕事や体を動かす業務で困難を感じる」「生理休暇を利用しにくい」を挙げる割合が高い
    • 更年期障害に関わる症状への対処法をみると、女性では市販薬等の服用の割合が最も高い。一方で、男性の7割、女性の5割は特に対処していない
    • 男女ともに健康認識が高い方が、昇進意欲が高い傾向
    • 男女ともに最も気になる症状に対処できているとする方が、昇進意欲が高い傾向
    • 企業規模にかかわらず、勤務先が健康経営※に取り組んでいる方が、体調が悪い日の頻度が低い。
    • 健康経営により、プレゼンティーイズム年間損失日数を年間4~7日程度減らすことができ、女性の方が減少日数も多い。 ※健康経営とは、従業員等の健康管理を経営的な視点で考え、戦略的に実践すること。経済産業省の健康経営度調査では、任意健診・検診の受診勧奨や受診率向上のための取組、従業員等の健康意識向上のための教育の実施、女性特有の健康課題に対する取組等を調査している。
    • 20~39歳女性では、「生理休暇を取得しやすい環境」「出産・子育てと仕事の両立支援」、40~69歳女性では、「病気の治療と仕事の両立支援」「更年期障害支援」「介護と仕事の両立支援」を職場に求める割合が高い。
    • 男性は年代にかかわらず、経営陣・トップ、男性上司、男性社員の理解を挙げる割合が高い
  • 両立支援は新たなステージへ
    • 管理職として働く条件として、男女、年代を問わず「管理職でもきちんと休暇がとれること」の割合が最も高い。
    • 20~39歳女性では「出産・子育てとの両立支援」「育休等によってキャリアが中断されない体制・配慮」「育児等を配偶者と分担できること」が、40~69歳女性及び男性に比べて高い
    • 人生100年時代において、男女ともに自らが健康であり、自らの能力を発揮できる環境が重要。
    • 少子高齢化の進展の中で、労働力の確保・労働生産性の向上のためにも健康支援は必要不可欠。
    • これらが、持続可能な形で自らの理想とする生き方と仕事の両立を可能にする要素になり得る。
  • 家族の姿の変化
    • 人生100年時代を迎え、我が国における家族の姿は変化し、人生は多様化。
    • 昭和60(1985)年には全世帯の4割を占めていた「夫婦と子供」の世帯は、令和2(2020)年時点では全体の25%となり、単独世帯とひとり親世帯が全体の約半数を占めるようになった。
  • 正規雇用比率(L字カーブ)の推移
    • 女性の正規雇用比率は、20代後半をピークに、年代が上がるとともに低下するL字カーブを描いている。
    • 一方、近年、20代から40代を中心に女性の正規雇用比率が上昇している。

内閣府 令和6年版防災白書
  • 「火山」を知る、そして備える
    • 我が国は、111の活火山を抱える世界有数の火山国である。火山は、私たちの生活に恵みを与えてくれる一方で、噴火に伴って発生する火砕流や大きな噴石等は、避難までの時間的猶予がほとんどなく、生命に対する危険の高い災害をもたらすおそれがある。平成26年(2014年)の御嶽山噴火では、予測困難な水蒸気噴火(火山の地下にある水が加熱され、又は減圧により、急激に水蒸気となって膨張することを駆動力とする噴火)が突如発生し、火口周辺に滞在していた多くの登山者が被災した。
    • 我が国においては、宝永4年(1707年)の富士山の宝永噴火や大正3年(1914年)の桜島の大正噴火など、これまでにも大規模な火山噴火が発生してきた歴史がある。大規模な火山噴火が発生した場合には、周辺地域が壊滅的な打撃を受け、その影響が長期にわたって続く可能性も考えられる。
    • 火山国に暮らす私たちは、過去の災害から学び、いつ起きるか分からない火山災害への備えを事前に進めておく必要がある。
    • 令和5年(2023年)に、噴火災害が発生する前の予防的な観点から、活動火山対策の更なる強化を図るため、「活動火山対策特別措置法」(昭和48年法律第61号。以下「活火山法」という。)の一部が改正され、これにより火山調査研究推進本部の設置や「火山防災の日」を制定することなどが新たに定められた。本改正法は、令和6年(2024年)4月に施行され、今後、より一層の火山防災対策の強化・充実が図られることとなる。
  • 災害時におけるインターネット上の偽・誤情報対策
    • 災害時におけるインターネット上の偽・誤情報の流通・拡散は、迅速な救命・救助活動や円滑な復旧・復興活動等の妨げになりかねないものであり、また犯罪にもつながり得るものであることから、救命・救助、復旧・復興などの対応と併せて、当該問題への対応は重要である。
    • 令和6年能登半島地震においては、「不審者・不審車両への注意を促す不確実な投稿」「存在しない住所が記載されるなど、不確かな救助を呼びかける投稿」といった真偽の不確かな投稿が流通したと指摘されている。総務省では、SNSの活用等により、偽・誤情報に惑わされないよう注意喚起を行っているほか、主要なSNS等のデジタルプラットフォーム事業者に対して、明らかに事実と異なり、社会的に混乱を招くおそれのある情報の削除など、利用規約等を踏まえた適正な対応をとっていただくよう総務省を通じて要請を行った。
    • また、「被災者の生活と生業(なりわい)支援のためのパッケージ」において、「被災地におけるネット上の偽・誤情報対策」として、被災地の住民を始めとする国民の皆様に対する様々な広報手段を複層的に組み合わせた注意喚起の実施、偽・誤情報対策に係る技術の活用などの施策を推進している。
    • なお、総務省では、「デジタル空間における情報流通の健全性確保のあり方に関する検討会(座長:宍戸常寿 東京大学大学院法学政治学研究科教授)」において、国際的な動向を踏まえつつ、表現の自由をはじめとする様々な権利・利益に配慮しながら、デジタルプラットフォーム事業者を含む幅広い関係者の意見を踏まえて、総合的な対策を検討しているほか、啓発教育教材「インターネットとの向き合い方~ニセ・誤情報に騙されないために~」を作成・公表している。
  • 国民の防災意識の向上
    • 我が国ではその地形や気象などの自然的条件により、従来から多くの自然災害を経験してきた。このため、平常時においては堤防の建設や耐震化など災害被害の発生を防止・軽減すること等を目的としたハード対策と、ハザードマップの作成や防災教育など災害発生時の適切な行動の実現等を目的としたソフト対策の両面から対策を講じて、万が一の災害発生に備えている。また、災害発生時には、災害発生直後の被災者の救助・救命、国・地方公共団体等職員の現地派遣による被災地への人的支援、被災地からの要請を待たずに避難所や避難者へ必要不可欠と見込まれる物資を緊急輸送するプッシュ型の物資支援、激甚災害指定や「被災者生活再建支援法」(平成10年法律第66号)等による資金的支援など、「公助」による取組を絶え間なく続けているところである。
    • しかし、今後発生が危惧される南海トラフ地震や日本海溝・千島海溝沿いの巨大地震、さらに近年激甚化・頻発化する気象災害等によって広域的な大規模災害が発生した場合において、「公助」の限界が懸念されている。
    • 阪神・淡路大震災では、生き埋めになった人の約8割が家族も含む「自助」や近隣住民等の「共助」により救出されており、「公助」である救助隊等による救出は約2割程度に過ぎなかったという調査結果がある。
    • 市町村合併による市町村エリアの広域化や地方公共団体の公務員数の減少など、地方行政を取り巻く環境が厳しさを増す中、高齢社会の下で配慮を要する者は増加傾向にある。このため、国民一人一人が災害を「他人事」ではなく「自分事」として捉え、防災・減災意識を高めて具体的な行動を起こすことにより、「自らの命は自らが守る」「地域住民で助け合う」という防災意識が醸成された地域社会を構築することが重要である
    • 防災・減災のための具体的な行動とは、まずは「自助」として、地域の災害リスクを理解し、家具の固定や食料の備蓄等による事前の「備え」を行うことや、避難訓練に参加して適切な避難行動を行えるように準備すること、台風の接近時などに、住民一人一人に合わせて、あらかじめ時系列で整理した自分自身の避難行動計画(マイ・タイムライン)を作成することなどが考えられる。また、発災時における近所の人との助け合い等の「共助」による災害被害軽減のための取組が必要である。
    • 内閣府が令和4年9月に実施した「防災に関する世論調査」の結果によると、「自助」の重要性の認識や具体的な対策を講じる動きは、阪神・淡路大震災、東日本大震災といった大災害を経て、着実に国民の間に浸透している。しかし、熊本地震が発生し、大きな被害をもたらしたにもかかわらず、その後に実施した平成29年の調査では、例えば「家具等の固定」が40.6%となるなど、「自助」の取組の実施率は頭打ち傾向にある。また、直近の令和4年の調査は、平成29年までの個別面接聴取法と異なり郵送法で実施しているため、従前の調査結果との単純比較はできないものの、総じて取組の実施率は高まっていないおそれがある。その背景として、多くの国民にとっては、災害の被害状況等を報道で見聞きするだけであり、自らが被災者となる実感が得られないことから、災害の発生を契機とした国民の防災意識の高まりが得られにくくなっているとも考えられる。
    • 令和4年の調査では「自然災害への対処などを家族や身近な人と話し合ったことがない」と回答した者(全体の36.9%)に対して、その理由を新たに聞いたところ(複数回答方式)、「話し合うきっかけがなかったから」の回答選択率が圧倒的に高かった(58.1%)。このことから、着手の一歩を踏み出せていない国民に働きかける取組を強化していくことが求められる。
    • 「共助」についても、令和元年東日本台風における長野県長野市長沼地区等のように、平時より地域の防災リーダーが主体となり、避難計画の作成や避難訓練等の「共助」の取組を行っていた地域においては効果的な避難事例がみられ、「共助」の重要性が改めて認識されたところである。
    • 行政が「公助」の充実に不断の努力を続けていくことは今後も変わらないが、地球温暖化に伴う気象災害の激甚化・頻発化、高齢社会における支援を要する高齢者の増加等により、突発的に発生する激甚な災害に対して既存の防災施設等のハード対策や行政主導のソフト対策のみで災害を防ぎきることはますます困難になっている。行政を主とした取組だけではなく、国民全体の共通理解の下、住民の「自助」・「共助」を主体とする防災政策に転換していくことが必要である。現在、地域における防災力には差が見られるところであるが、防災意識の高い「地域コミュニティ」の取組を全国に展開し、効果的な災害対応ができる社会を構築していくことが求められている。
  • 事業継続力強化に向けた企業向け簡易パンフレット等の発信
    • 南海トラフ地震や首都直下地震など我が国の経済活動に甚大な影響をもたらす大規模災害の発生が切迫しているとされている。このような大規模災害が発生した場合、被害や影響は被災地に留まらず、全国に広がることが想定されている。特に、各産業はサプライチェーンを通じて相互依存関係にあり、1社の事業中断が、全国へと連鎖的に広がり、国内外の関連企業や産業全体に影響が波及することが懸念される。
    • こうした事業活動に及ぼす甚大な影響をできる限り回避するためには、これまで取組を進めてきた事業所の耐震化や安否確認、食料等の備蓄などに加え、事業継続計画の策定、仕入先の複数化、企業間や業種を超えた連携等の「事前の備え」が不可欠である。このため内閣府では、令和5年12月に、BCP策定の重要ポイントとして、重要業務の選定、目標復旧時間の設定、必要リソースの確保を明確化するなど、BCPの策定方法を分かりやすくまとめた簡易パンフレットを作成したほか、実際にBCPを策定している企業における取組やその効果などをまとめた取組事例集を作成した。
    • 切迫する大規模地震を乗り越えるため、今後も、経済団体や業界団体と連携し、我が国における事業継続の取組を強化していく。
  • 緩和策と適応策は気候変動対策の車の両輪
    • 近年の平均気温の上昇や大雨の頻度の増加など、気候変動及びその影響が世界各地で現れており、気候変動問題は人類や全ての生き物にとっての生存基盤を揺るがす「気候危機」とも言われている。
    • 個々の気象現象と地球温暖化との関係を明確にすることは容易ではないが、今後、地球温暖化の進行に伴い、このような猛暑や大雨のリスクはさらに高まることが予測されている。
    • 我が国では、2050年ネットゼロと整合的で野心的な目標として、2030年度に温室効果ガスを2013年度から46%削減することを目指し、さらに、50%の高みに向けて挑戦を続けることとしている。しかしながら、2050年ネットゼロ実現に向けて気候変動対策を着実に推進し、気温上昇を1.5℃程度に抑えられたとしても、極端な高温現象や大雨等の発生リスクは増加すると予測されていることから、現在生じている、又は将来予測される被害を回避・軽減するため、適応の取組が必要となる

内閣府 令和6年第7回経済財政諮問会議
▼ 資料1 中期的な経済財政の枠組みについて(有識者議員提出資料)
  • これまで政府は、「経済あっての財政」との考え方の下、「新経済・財政再生計画」(2018年6月決定)に基づいて、機動的な政策対応と継続的な歳出効率化等に取り組んできたが、その結果、コロナ禍に直面しつつも、高い成長と歳出改革の継続を前提に、2025年度PB黒字化の達成が視野に入る状況にある。
  • こうした中、我が国は、33年ぶりの高水準の賃上げ、史上最高水準の企業の設備投資など、デフレから完全に脱却する絶好のチャンスを迎えている。新たな中期的枠組みにおいては、こうしたチャンスをつかみ、我が国を「新たなステージ」へと移行させることにより、経済の規模を拡大させつつ、経済再生と財政健全化を両立させる歩みを前進させていくことが重要。こうした認識の下、以下提案する。
  • 新たな枠組みは、人口減少が本格化する2030年度までを期間として、持続可能な経済社会の実現を軌道に乗せるべく、必要な経済・財政・社会保障を一体とした政策の基本方針を定める。
  • 長期推計で確認した経済・財政・社会保障の持続可能性確保へとつながるよう、「実質1%を上回る成長」、「財政健全化目標の旗を下ろさない」、「歳出改革努力の継続」の3つを柱に、必要な政策方針をまとめるべき。
    • 実質1%を安定的に上回る成長の実現に向けて、生産性向上、労働参加拡大、出生率向上等に取り組む。さらに、需給両面で成長を支えるため、GX、経済安全保障、人への投資等について、官民連携の下で、民間の予見可能性を高める中長期の計画的な投資を推進する政策運営を行い、積極果敢な民間投資を喚起。財源も一体的に検討し多年度でバランス。
    • 金利のある世界への移行や大規模な政策対応を必要とする有事への備えが必要となる中、財政に対する市場の信認が揺るがぬよう、現行の財政健全化目標(2025年度の国・地方を合わせたPB黒字化を目指す。同時に債務残高対GDP比の安定的引下げを目指す。)の旗は下ろさない。
    • PB黒字化後も、財政の信認が損なわれることのないよう、ストック目標を維持しつつ、次の観点も勘案した、新たな計画期間中における適切なフロー目標を設定し、財政健全化努力を継続。
      • 引き続き「経済あっての財政」の下で経済再生と財政健全化のバランスを両立させる。
      • 2030年代以降の長期的な経済・財政・社会保障の持続可能性確保へとつなげる。
      • 一時的な景気の下押しへの機動的な対応を可能とする柔軟性をもたせる。
    • これまでの3年間、財源を確保した上で計画的な支出増に対応しつつ、歳出の目安に沿った予算編成を実施してきたところ、今後も歳出改革努力をしっかりと継続。
      • その際、物価安定目標の持続的・安定的な実現の下で、経済・物価動向等を適切に反映。
      • 新技術の社会実装、DXによる生産性向上、公的サービスの広域化・共同化や産業化による公的部門の効率化等、成長力強化と親和的なワイズスペンディングの方策を更に推進・強化。
      • 成長と分配の好循環を拡大させる中で、歳出構造を平時に戻す。
    • 経済再生と財政健全化の両立のため、EBPMを強化し、財政の質を改善。
      • 改革の着実な推進に向け、予算要求に合わせてEBPM強化の対象選定とエビデンス整備の方針を策定し、年末までにEBPMの強化策及び改革工程の具体化を図り、毎年改革の進捗管理・点検・評価を実施。
▼ 資料3 経済財政運営と改革の基本方針2024骨子案
  • 第1章 成長型の新たな経済ステージへの移行
    • デフレ完全脱却の実現に向けて
    • 豊かさと幸せを実感できる持続可能な経済社会に向けて
  • 第2章 社会課題への対応を通じた持続的な経済成長の実現~新たな経済ステージの実現~
    1. 豊かさを実感できる「所得増加」及び「賃上げ定着」
      • 賃上げの促進
      • 三位一体の労働市場改革
      • 価格転嫁対策
    2. 豊かさを支える中堅・中小企業の活性化
      • 人手不足への対応
      • 中堅・中小企業の稼ぐ力
      • 輸出・海外展開
    3. 投資の拡大及び革新技術の社会実装による社会課題への対応
      • DX
      • GX・エネルギー安全保障
      • フロンティアの開拓
      • 科学技術の振興・イノベーションの促進
      • 資産運用立国
    4. スタートアップのネットワーク形成や海外との連結性向上による社会課題への対応
      • スタートアップの支援・ネットワークの形成
      • 海外活力の取り込み
      • 大阪・関西万博の推進
    5. 地域における社会課題への対応
      • デジタル田園都市国家構想
      • デジタル行財政改革
      • 地方活性化及び交流の拡大(交通・物流、観光 など)
      • 農林水産業の持続可能な成長及び食料安全保障
    6. 幸せを実感できる包摂社会の実現
      • 共生・共助社会づくり
      • 安全・安心で心豊かな国民生活の実現(文化芸術・スポーツ など)
    7. 持続的な経済成長の礎となる国際環境変化への対応
      • 外交・安全保障
      • 経済安全保障
    8. 防災・減災及び国土強靭化の推進
      • 防災・減災及び国土強靭化
      • 東日本大震災、能登半島地震等からの復旧・復興
  • 第3章 中長期的に持続可能な経済社会の実現
    • 新たなステージにおける経済財政政策
    • 中期的な経済財政の枠組み
    • 主要分野ごとの基本方針と重要課題
      • 全世代型社会保障の構築
      • 少子化対策・こども政策
      • 教育・研究活動の推進
      • 戦略的な社会資本整備
      • 地方行財政基盤の強化
    • 改革推進のためのEBPM強化
  • 第4章 当面の経済財政運営と令和7年度予算編成に向けた考え方
    • 当面の経済財政運営について
    • 令和7年度予算編成に向けた考え方

内閣府 総合科学技術・イノベーション会議(第73回)議事次第
▼ 資料1-1統合イノベーション戦略2024(案)(概要)
  • 科学技術・イノベーションを取り巻く情勢
    • 科学技術・イノベーションは、我が国の経済成長における原動力であり、社会課題の解決や災害への対応等においてもその重要性が一層増している。
    • ウクライナ情勢やイスラエル・パレスチナ情勢など、世界の安全保障環境が厳しさを増す中で、先端科学技術等を巡る主導権争いは激化し、世界規模でのサプライチェーンの分断も起こっている。
    • 一方で、相対的な研究力の低下やエコシステム形成の遅れは、我が国の経済成長や将来的な雇用創出への大きな影響が懸念される。
  • 統合イノベーション戦略2024の方向性
    • グローバルな視点で研究力や産業競争力、経済安全保障への対応を一層強化していくことが重要であり、G7を含む同盟国・同志国やASEAN・インドを含むグローバル・サウスをはじめとする国際社会との連携を強化していく。
    • 国内では、人手不足の深刻化に伴い、AI・ロボティクスによる自動化・省力化が急務であり、また、頻発する災害への備えや対応も喫緊の課題となっている。これらに科学技術・イノベーションが果たす役割は一層重要となっており、テクノロジーの社会実装を加速していく。
  • 3つの強化方策と3つの基軸
    • 3つの強化方策として、「重要技術に関する統合的な戦略」、「グローバルな視点での連携強化」、「AI分野の競争力強化と安全・安心の確保」を推進していく。
    • 併せて、従来からの3つの基軸である「先端科学技術の戦略的な推進」、「知の基盤(研究力)と人材育成の強化」、「イノベーション・エコシステムの形成」について、引き続き着実に政策を推進していく。
  • 重要技術に関する統合的な戦略
    • コア技術の開発、他の戦略分野との技術の融合による研究開発(産学官の連携、AI・ロボティクス・IoT等による研究開発推進等)
    • 国内産業基盤の確立、スタートアップ等によるイノベーション促進(ユースケースの早期創出、拠点・ハブ機能の強化等)
    • 産学官を挙げた人材の育成・確保(産業化を担う人材、市場開拓を担う人材、研究開発を担う人材の育成・確保等)
  • グローバルな視点での連携強化
    • 重要技術等に関する国際的なルールメイキングの主導・参画(開発・利用の促進、安全性確保、プレゼンスの確保等)
    • 科学技術・イノベーション政策と経済安全保障政策との連携強化(国際協力・国際連携を含めた戦略的な研究開発、技術流出防止等)
    • グローバルな視点でのリソースの積極活用、戦略的な協働(国際頭脳循環の拠点形成、国際科学トップサークルへの参画等)
  • AI分野の競争力強化と安全・安心の確保
    • AIのイノベーションとAIによるイノベーションの加速(研究開発力の強化、AI利活用の推進、インフラの高度化等)
    • AIの安全・安心の確保(ガバナンス、安全性の検討、偽・誤情報への対策、知財等)
    • 国際的な連携・協調の推進(広島AIプロセスの成果を踏まえた国際連携等)
  • 先端科学技術の戦略的な推進
    • 重要分野の戦略的な推進
      • AI、フュージョンエネルギー、量子、バイオ、マテリアル等の研究開発等
      • デジタル社会インフラとしての半導体生産基盤確保・研究開発、情報通信インフラ整備、Beyond 5G(6G)等の推進
      • 健康・医療、宇宙、海洋、食料・農林水産、環境エネルギー分野の推進
    • 経済安全保障等に係る取組強化
      • K Programによる継続的な支援
      • 大学や研究機関における研究セキュリティ・インテグリティの確保
      • シンクタンクの本格的な設立準備をはじめとする調査研究機能の強化
    • 研究開発・社会実装の推進
      • 総合知を活用した価値創造の推進
      • 自動化・省力化や防災・減災に資する科学技術の社会実装の推進
      • SIP第3期とBRIDGEの一体的運用による研究開発・社会実装の加速、ムーンショット型研究開発制度の推進
  • 知の基盤(研究力)と人材育成の強化
    • 大学ファンド、地域中核大学等
      • 国際卓越研究大学の認定、10兆円規模の大学ファンドの運用益による助成、次回公募の開始
      • 地域中核・特色ある研究大学総合振興パッケージによる支援
      • 国研の機能強化に向けた研究基盤・人材の充実、国研間の連携強化等
      • 研究に打ち込める研究環境の実現、大学等の基盤的経費や科研費等の競争的研究費を通じた研究力強化
    • 研究施設強化、オープンサイエンス
      • 先端大型施設の高度化、産学による活用の推進
      • 公的資金による学術論文等のオープンアクセス、研究データの管理・利活用等の推進
    • 人材育成、教育の充実
      • 若手・女性研究者及び博士人材の活躍促進・場の創出、博士課程学生支援
      • 教育・人材育成政策パッケージに基づく探究・STEAM教育を社会全体で支えるエコシステムの確立等
  • イノベーション・エコシステムの形成
    • 研究開発型スタートアップ支援
      • SBIR制度等を通じた支援の充実
      • スタートアップからの公共調達の促進
    • 都市・地域・大学等の連携
      • グローバル・スタートアップ・キャンパス構想の具体化
      • スタートアップ・エコシステム拠点都市への支援、グローバル化
      • 大学の知財ガバナンスの向上
      • 産学官連携、オープンイノベーション等の促進
    • 人材・技術・資金の好循環促進
      • CxOを始めとする経営・イノベーション人材等の発掘・育成
      • 大企業等からスタートアップへの人材・技術・資金の流動化の促進
      • 官民の研究開発投資の拡大

内閣府 「再生可能エネルギー等に関する規制等の総点検タスクフォース」に関する調査結果について
▼ 報告書本文
  • 懇談会等行政運営上の会合としての在り方
    • 「懇談会等行政運営上の会合の開催に関する指針」(以下「指針」という。)では、懇談会等行政運営上の会合(本タスクフォース)については、審議会等とは異なりあくまでも行政運営上の意見交換、懇談等の場として性格付けられるものとされているが、本タスクフォースでは、事務局である内閣府規制改革推進室が用意した再生可能エネルギー等に関する規制等について検討すべきテーマ等も踏まえ、構成員が具体的な規制・制度上の論点を挙げて、本タスクフォースに出席する各省庁に対し政策対応を求めるなど、同指針の趣旨に必ずしも沿わず審議会等である規制改革推進会議と同様の運営を行ってきたと認められる。また、出席する関係省庁も本タスクフォースに対し、規制改革推進会議と同様の対応を行ってきたことが確認された。
  • 規制改革推進会議の中間答申に「参考」として本タスクフォースにおける当面の規制改革の実施事項が記載されたこと等について
    • 規制改革推進会議の中間答申に掲載された「参考」は、本タスクフォースの意見等ではなく、本タスクフォースの議論を踏まえ、内閣府規制改革推進室が府省庁と調整し合意した規制改革事項であること、規制改革の取組を一覧性のある形で国民に分かりやすく示す観点から、中間答申の「参考」として記載することについて規制改革推進室から岡田規制改革担当大臣(当時)、河野規制改革担当大臣に提案し、規制改革推進会議の委員に説明した上で、記載されたことが確認されたが、中間答申の文書と一体で規制改革推進会議に配布されており、規制改革推進会議の答申の一部と誤解されるおそれがあったことは否定できない。
  • 構成員提出資料に中国国家電網公司のロゴが掲載されていた経緯等
    • 大林氏は2016年に財団主催のワークショップで中国国家電網公司からロゴ(白字)が入ったパワーポイントを入手し、その後当該ファイルの一部を引用した際、気付かないまま同氏のマスタースライドにロゴが残り続け、本タスクフォースに構成員が提出した資料の一部にロゴが混入した事務的な誤りであったことが確認された。また、本タスクフォース提出資料のロゴが入っていた全てのページについて出所を確認したところ、中国の団体を出所とする資料はなく、中国について言及されている資料はいずれも国際比較に中国が含まれているものにとどまることが確認された。
  • 大林氏と中国政府・中国国家電網公司との関係
    • 2016年3月に設立されたGEIDCOにおいて財団が理事会メンバーを務めてきたことから、2016年から2018年にかけてGEIDCO総会・理事会と同時に開催されるGEIDCO主催のシンポジウムに傍聴者の一人として参加するなど計6回の渡航が確認されたが、2018年3月を最後に中国国家電網公司やGEIDCOに関する渡航は行われていない。それ以外の中国(香港含む。)への渡航(5回)は、中国国家電網公司やGEIDCOとは関係のない調査や様々な会議への参加を目的とするものであることが確認された。また、大林氏は中国政府等から資金提供を受けておらず、会食費用の負担や送迎などの便宜も受けたことがないことが確認された。
  • 高橋氏と中国政府・中国国家電網公司との関係
    • 高橋氏は20年以上中国に渡航しておらず、中国国家電網公司との交流についても財団主催のシンポジウム前の打合せやシンポジウム後のレセプションに限られていた。高橋氏が中国政府等から資金提供を受けた事実も確認されなかった。
  • 財団と中国政府・中国国家電網公司との関係
    • 孫財団会長がGEIDCO副会長、財団がGEIDCOの理事会メンバーを務めてきたことから、2016年から2018年を中心としてGEIDCO総会・理事会、中国国家電網公司・GEIDCOが主催するシンポジウムなど計9回の渡航が確認されたが、2019年11月を最後に中国国家電網公司やGEIDCOに関する渡航は行われていない。それ以外の中国(香港含む)への渡航(11回)も中国国家電網公司やGEIDCOとは関係のない様々な会議等への参加や調査を目的とするものであることが確認された。
    • また、財団へのヒアリングによれば、中国政府等から財団に資金提供が行われていないこと、職員への旅費は財団から全て支給されていることが確認された。このように財団が中国政府等から不当な影響力を行使され得る関係性を有していた事実は確認されなかった
  • 調査結果を踏まえた今後の対応の方向性
    • 本タスクフォースの在り方について
      • 指針では、懇談会等行政運営上の会合については、法令により付与された所掌事務と権限に基づき政策の調査審議や意見具申等を行う審議会等とは異なり、あくまでも行政運営上の意見交換、懇談等の場として性格づけられるものとされている。
      • これに対し、本タスクフォースでは事務局である内閣府規制改革推進室が用意した再生可能エネルギー等に関する規制等について検討すべきテーマ等も踏まえ、構成員が具体的な規制・制度上の論点を挙げて、各省庁に対し政策対応を求めるなど、同指針の趣旨に必ずしも沿わず規制改革推進会議と同様の運営を行ってきたと認められる。また、出席した関係省庁も本タスクフォースに対し、規制改革推進会議と同様の対応を行ってきたことが確認された。
      • また、中間答申に掲載された「参考」については、本タスクフォースの議論を踏まえ、内閣府規制改革推進室と制度所管省庁が調整した規制改革の実施事項であるが、中間答申の文書と一体で規制改革推進会議に配布されており、規制改革推進会議の答申の一部と誤解される恐れがあったことは否定できない。
      • 本調査の結果を踏まえ、本タスクフォースについてはその運営の在り方を含め規制改革担当大臣が適切に判断することが必要であると考えられる。また、本タスクフォースにとどまらず、同指針の趣旨に沿った懇談会等行政運営上の会合の運営について政府内での周知が必要であると考えられる。
    • 政府の審議会等における人選について
      • 第213回国会で成立した「重要経済安保情報の保護及び活用に関する法律」案審議では、政府の政策決定プロセスに外国勢力等の不当な影響が及ぶことがないよう留意する旨の附帯決議34がなされている。
      • 今回の事案では、財団と大林氏が2016年から2019年にかけてGEIDCO総会・理事会、GEIDCO主催のシンポジウムに参加するなどの交流があったが、2019年を最後に中国国家電網公司やGEIDCO関係の中国への渡航は行われておらず、これら以外の中国への渡航は、GEIDCO等とは関係のない会議等への参加等が目的であったことが確認された。また、財団、大林氏、高橋氏のいずれも中国政府等からの資金提供の事実は確認されなかった。このように両氏や財団が中国政府等から不当な影響力を行使され得る関係性を有していた事実は確認されなかった。
      • 今回の事案を契機として、経済関係の懇談会等行政運営上の会合であってもその人選に留意が必要と考えられる。政府の審議会等及び懇談会等行政運営上の会合の有識者等の人選に当たっては、大臣等が当該会議の目的等に応じて、有識者等の識見などを総合的に判断しその責任において行うこととされている中で、会議の趣旨や有識者等の選定理由等について適切に説明できるようにするとともに、今後、引き続き、政府の政策決定プロセスに外国勢力等の不当な影響が及ぶことがないよう留意することが重要であると考えられる。

内閣府 男女共同参画会議(第72回)議事次第
▼ 資料2 説明資料
  • 企業等における女性活躍の一層の推進 ~活躍する女性人材と企業等で取組を推進する人材の育成~
    • 企業における女性の採用・育成・登用の強化
      • 女性役員登用目標の達成に向けた各企業の行動計画策定の促進、役員候補となる女性人材のパイプライン構築、女性登用の意義や必要性についての企業における理解の浸透を図る。
      • 行動計画策定ガイドの作成・周知や好事例の横展開を行う。
      • ロールモデルとなる女性役員等の事例集の作成等、啓発コンテンツの作成や情報提供を行う。
      • 取引所・機関投資家・先進的な取組を行う企業等と連携し、全てのプライム市場上場企業に対する啓発(セミナー開催)等を行う。
      • 女性活躍や子育て支援に積極的に取り組む企業を支援する。
      • 各府省の補助金等において、補助目的に鑑みつつ、取組に積極的な企業に対する加点の優遇措置の拡大・促進に取り組む。
    • 科学技術・学術分野における女性活躍の推進
      • 理工系分野を目指す女子生徒等の育成に向けて、各地域の大学・高専で理工系の魅力を発信する機会の増加を図る。
      • 若手ロールモデルによる授業等の実施手順の事例等を示した「理工チャレンジ」のプログラムを作成・周知し、地域の各大学・高専における取組を促す。
      • プログラミングに関する教育の充実を図る。
      • 中学校技術・家庭科(技術分野)や高校情報科の指導体制の充実を推進するとともに、プログラミング教育に関する教員対象の研修会等を実施する。
      • 大学・高専における文理を問わず幅広い学生を対象としたプログラミング教育を含む数理・データサイエンス・AI教育を推進する。
    • 女性起業家の支援
      • 起業家ネットワークへのアクセスが限定的、資金調達が難しいなどの課題を抱える女性起業家を支援する。
      • 金融機関や地域中核企業など様々なステークホルダーを巻き込みつつ、全国各地で女性起業家に対して一貫した支援を提供するネットワークを構築し、事業計画に対する助言を行うとともに、支援者とのマッチングに向けた支援プログラムを実施する。
  • 女性の所得向上・経済的自立に向けた取組の一層の推進 ~全国各地の女性が経済的に自立するための力の育成とこれを支える人材の育成~
    • 所得向上、リスキリングの推進
      • 出産を契機に多くの女性が非正規雇用化する、いわゆる「L字カーブ」の解消に向けて、正規雇用の女性の就業継続を支援するとともに、初職から非正規雇用で働く女性や、過去に妊娠等を契機に非正規雇用となった女性を正社員転換するための取組を進める。
      • 拡充された非正規雇用労働者の正社員転換及び処遇改善を進める事業主に対する助成の利用を後押しするとともに、非正規雇用労働者に対するリスキリング支援や就職支援に取り組む。また、同一労働同一賃金の遵守の徹底を進める。
      • 在職中の非正規雇用労働者等に配慮した様々な受講日程、実施手法等の職業訓練を試行的に実施することにより、非正規雇用労働者等のキャリアアップに効果的な職業訓練の検証を行う。
      • 就労に直結するデジタルスキルの習得支援・デジタル分野への就労支援を推進する。
      • 「女性デジタル人材育成プラン」に基づき、スキル取得からマッチングまで一体的に支援するなど着実に就労に結び付けることが期待される地域の取組を地域女性活躍推進交付金等で重点的に後押しするとともに、就労に結びついた実績のある優良事例を事例集により周知・啓発し、全国への横展開を図る。
      • 男女間賃金差異の公表・分析を一層推進する。男女間賃金格差の大きい業界に着目した取組を進める。
      • 女性活躍推進法に基づく男女の賃金差異に係る情報公表について、義務対象を常用労働者の数が101人以上300人以下の一般事業主への拡大を検討する。
      • 賃金差異分析ツールの開発に取り組むなど、各企業等における自主点検の促進を図る。
      • 男女間賃金格差の大きい業界に着目し、各業所管省庁等を通じた実態把握・分析・課題の整理を踏まえ、対応策を検討するとともに、各業界における取組を進める。
      • いわゆる「年収の壁」を意識せずに働くことを可能にする。
      • 短時間労働者への被用者保険の適用拡大や最低賃金の引上げ等に取り組むことと併せて、「年収の壁・支援強化パッケージ」を着実に実行し、さらに、次期年金制度改正において制度の見直しに取り組む。
    • 仕事と育児・介護の両立の支援
      • 柔軟な働き方の推進や男性の育児休業取得の促進等により、男女問わず育児・介護とキャリア形成との両立を図るとともに、女性への育児負担の偏りを解消する。
      • 柔軟な働き方を実現するための措置や、男性の育児休業取得率の公表義務の拡充等を盛り込んだ改正育児・介護休業法及び次世代育成支援対策推進法の円滑な施行のため、周知・理解促進、助成金や労務管理の専門家による支援等を行う。
      • 育児・介護休業法の説明会等の機会を捉えて、育児休業の他にも両立支援制度があることや性別によらず利用が可能であること、制度利用時のみならず制度利用後もワーク・ライフ・バランスのとれた働き方が重要であることについて経営層や管理職も含めた周知・啓発を行う。
      • 中小企業事業主が、育児休業や育児短時間勤務中の業務を代替する周囲の社員に応援手当を支給する場合や、育児期の柔軟な働き方に関する制度の導入、円滑な介護休業の取得・職場復帰のための取組等を行った場合の助成措置を講じる。
      • 多様な正社員制度や選択的週休3日制に関する好事例の周知や導入支援など、労働者のニーズに応じた多様な働き方の環境整備を推進する。
      • 企業が福利厚生として家事支援サービスを提供する取組を促進する観点から、広報等を行う。
    • 仕事と健康課題の両立の支援
      • 働く女性の月経、妊娠・出産、更年期等、女性のライフステージごとの健康課題に起因する望まない離職等を防ぎ、女性の活躍を支援する。
      • プウライバシーに十分配慮した上で、労働安全衛生法に基づき事業主が行う健診において、月経随伴症状や更年期障害等の早期発見に資する項目を問診等に加え、その実施を促進する。
      • 企業等におけるフェムテック製品・サービスの活用を促進し、好事例の横展開を行う。
      • 健康経営銘柄、健康経営優良法人、なでしこ銘柄等において、女性の健康課題に取り組み、成果をあげている企業や健康保険組合の好事例を集め、他の企業等にも広く周知する。小規模事業者にも取組が広まるよう、健康経営優良法人制度中小規模法人部門の要件緩和等を検討する。
      • 令和7年度末に期限を迎える女性活躍推進法の延長・改正に向けた検討において、事業主が女性特有の健康課題に取り組むことなど、更なる女性活躍推進に向けた検討を行う。
      • 企業における従業員に対する性差に応じた健康課題への理解を促進するためにも、全府省において、職員向けの健康教育に率先して取り組む
    • 地域における女性活躍・男女共同参画の推進
      • 地域の企業における女性活躍を推進し、その担い手を育成する。
      • 日本商工会議所や全国商工会連合会、(一社)全国銀行協会、(一社)全国地方銀行協会等と連携しながら、地域において女性の活躍を推進・支援しているリーディングカンパニーにおける取組の把握を含め、各地域の企業の好事例の周知・啓発を行う。
      • 男女共同参画センター(センター)が地域の企業や経済団体、学校、NPO等と連携し、地域の女性活躍・男女共同参画の推進の担い手を育成できるよう、国立女性教育会館(NWEC)が、センターの協力を得て、センターの職員の専門性向上に資する研修の実施や、センターが企業や経済団体等への研修で用いる研修プログラムや教材の開発に向けて情報の収集や検討を進める。
      • 就労状況など統計データの整理、全国各地のセンターからの地域における男女共同参画に関する状況と課題等の集約、その分析結果の全国のセンター等への提供など、NWEC及び全国のセンター相互間で必要な知見及びノウハウの共有を可能とするため、情報プラットフォームを新たに構築するための効果的な実施手法等に関する調査研究を行う。
      • 地方公共団体における取組の推進の鍵となる地域リーダーの意識醸成・育成を推進する。
      • 男性首長の「輝く女性の活躍を加速する男性リーダーの会」への参加を拡大し、地域シンポジウム等を通じて自治体における女性活躍推進の好事例の横展開を図る。
      • 地域の女性活躍・男女共同参画を推進するリーダー・担い手を育成するため、地域女性活躍推進交付金を活用して、女性の登用のほか、自治会長や地方公共団体の防災会議委員等の地域の女性リーダー育成の取組に対する支援、防災委員への女性登用の好事例の横展開を行う。
      • 地方議会における女性の政治参画に資する先進的な取組事例を横展開する。
      • 各地域において、人々の中にある固定的な性別役割分担意識や無意識の思い込み(アンコンシャス・バイアス)の解消と、企業等の広報担当や人事・業務管理に携わる管理職、さらには経営層の意識改革と理解の促進を図り、性別役割分担にとらわれない働き方を推進する。
      • 「オールド・ボーイズ・ネットワーク」の存在についてのホームページ・SNS等の様々なコンテンツを活用した情報発信、地方公共団体や経済団体等を対象としたワークショップの開催等の啓発活動を実施する。
  • 個人の尊厳と安心・安全が守られる社会の実現 ~男女共同参画の視点に立った防災・復興、配偶者暴力や性犯罪・性暴力の被害者等を支える人材の育成~
    • 男女共同参画の視点に立った防災・復興の推進
      • 今般の能登半島地震における災害対応を検証し、今後の対応に活用する。
      • 「男女共同参画の視点からの防災・復興ガイドライン」を踏まえた災害対応について調査を行い、今後に向けた課題や取組を整理し、報告書を取りまとめる。
      • 防災の現場等における女性の参画拡大とこれを推進するリーダー層の意識醸成、国民への啓発を推進する。
      • 平常時からの防災・危機管理担当部局への女性職員の配置により、災害時、女性と男性で異なる支援ニーズに適切かつ迅速に対応することが可能となることから、国や地方公共団体の災害対応の現場への女性の参画を促進する。
      • 指導的立場にある者を含む防災関係者に対し、男女共同参画の視点からの防災・復興に係る研修を充実させる。
      • 災害の各段階において受ける影響やニーズが女性と男性で違うことや地域防災力を高めるためには女性の参画やリーダーシップが重要であることの理解促進を図るため、こどもの発達段階に応じた防災教育を行う。
    • 配偶者等からの暴力や性犯罪・性暴力への対策の強化
      • 改正配偶者暴力防止法や女性支援新法等の関係法律の施行状況等も踏まえ、配偶者等からの暴力の防止、被害者の保護及び支援、相談体制の整備及び周知等の一層の強化を図る。
      • 改正配偶者暴力防止法や女性支援新法等の関係法律の施行状況等も踏まえ、多様な被害者がためらうことなく相談できる体制の整備、法定協議会の活用等も含めた配偶者暴力相談支援センター、警察、児童相談所、民間団体、医師会や医療関係者、法テラス等の連携の強化等に取り組む。
      • 被害者支援の一環としての加害者プログラムについて、都道府県等の担当者等の理解促進のための研修や交付金等により、各地域における実施を推進する。
      • 「相手の同意のない性的な行為は性暴力」であること等の認識を社会全体で共有し、性犯罪・性暴力の根絶のための取組や被害者支援を強化する。
      • こども、若年層、男性等を含む多様な相談者が利用しやすいよう、都道府県等への交付金等により、ワンストップ支援センターの運営の安定化、相談員の支援能力・専門性の向上や様々な相談方法の活用を図るとともに、こども・若者の性被害防止に向けた総合的な対策を推進する。
      • 改正刑法の施行後の適用状況を的確に把握するとともに、附則規定に基づく被害申告の困難さ等の性的な被害の実態に係る調査の速やかな実施に向け、着実に検討を進める。
    • 困難な問題を抱える女性への支援
      • 令和6年4月に施行された女性支援新法に基づき、困難な問題を抱える女性一人ひとりのニーズに応じて、包括的な支援を実施する。
      • 女性相談支援センターや女性自立支援施設の機能強化、女性相談支援員の人材の養成・処遇改善、民間団体と地方公共団体との協働等を推進する。
    • 生涯にわたる健康への支援
      • 生理の貧困への対応、フェムテックの推進と更なる利活用、緊急避妊薬の利用に向けた検討、スポーツ分野における女性の参画・活躍、女性医師に対する支援等を推進する。
      • 女性の健康ナショナルセンター(仮称)における診療機能の充実を図る。また、同センターを中心として、女性の生涯にわたる健康課題に関わる研究等に取り組むとともに、「ジェンダード・イノベーション」を推進し、性差に応じ更年期などにおける健康を支援する取組を推進する。(総合対策の確立)
      • 医療従事者(内科、精神科(うつ)、整形外科(骨粗鬆症)等)に対する女性の健康課題に関する研修・啓発の実施、プレコンセプションケアなど、性差に応じた健康を支援するための取組を推進する
  • 女性活躍・男女共同参画の取組の一層の加速化 ~あらゆる分野の政策・方針決定過程に参画する女性人材の育成~
    • 男女共同参画の視点に立った政府計画の策定等の推進
      • あらゆる分野の政策・事業の計画等において、男女別の影響やニーズの違いを踏まえた検討・立案を行う。その前提として、男女の性差を考慮するとともに、関連するデータの男女別の把握に取り組む。
      • あらゆる分野における政策・方針決定過程への女性の参画を促進する。
    • 政治・行政分野における男女共同参画の推進
      • 女性の政治参画への障壁について、より実態に即した把握に資するよう、政治に参画する上での課題等についてより詳細な調査を行い、その結果に基づき周知・啓発を行う。
      • 地方議会における女性の政治参画に資する先進的な取組事例を横展開する。
      • 各府省において、各役職段階に占める女性の割合に関する数値目標を定める。目標や取組内容、実施状況については、各府省において公務員を志望する女性等に分かりやすい形で公表する。

内閣府 第19回規制改革推進会議
▼ 資料2-1 規制改革推進に関する答申(案)(概要資料)
  • 革新的サービスの社会実装・国内投資の拡大
    1. 交通
      • 地域の移動の足不足の解消
        • モニタリングと自家用車活用事業の不断の制度改善(雨天やイベント対応等) 【6年度】
        • 自家用有償旅客運送等の更なる改善。 【措置済・6年度検討】
        • ロボタクシーの運行管理のタクシー事業者以外への外部委託。 【6年度】
    2. 物流
      • 災害時のドローンの更なる活用 【6年】
        • (昨年末のレベル3.5飛行の制度化※に加え)災害時における飛行禁止空域でも医薬品や食料品等の輸送等は許可を受けず飛行できることを明確化。(注)能登半島地震の際にドローンによる物資輸送は主要会社で10件程度にとどまる(ドローン活用の大部分は空撮)。
      • 物流、在宅医療の円滑化のための駐車規制見直し等 【6年度等】
        • 駐車許可の一括オンライン申請、許可基準(枠組み)の全国統一、除外標章対象に(医師に加え)看護師等を追加、一定の共同住宅に荷捌駐車場必置とする標準駐車場条例の改正
    3. 観光
      • 簡易宿所(古民家、別荘等)の設置要件の緩和、インバウンド受入体制整備 【6年度】
        • フロントや駆付け人員を求める設置要件(人手確保が困難)につき、一定のコールセンター等の選択肢を設ける(自治体向け通知改正)。(参考)旅館・ホテル数は過去7年で横ばい。
    4. 公共
      • 死亡・相続手続のデジタル化 【7年度等】
        • 生命保険会社等による死亡情報へのアクセス、戸籍証明書のオンライン請求・デジタル交付、マイナポータル上での法定相続情報証明。
      • 地方公共団体の窓口業務の官民連携による集約化・効率化 【6年度】
        • 「住民票の写し等の交付」「住民異動届」などの窓口業務を一定の条件下で職員常駐なしに民間事業者に委託することが可能であることを通知で明確化。
      • 社会保険手続のデジタル化 【6年度】
        • 年金受取口座の変更、生活者支援給付金の申請など社会保険に係る手続につき、申請者の利便性向上のため、マイナポータル上でオンラインフォームによる申請を可能とする。
      • 地方公共団体に対する申請様式等のローカルルールの原則廃止 【6年度から】
        • 事業者等が複数の自治体に毎年度行う全ての申請等の手続様式等は、新設・改正時に国が法令等で規定し、ローカルルールを原則廃止。
      • 商業施設の廃棄物の施設外分別等(運搬・機械分別等の実施要件明確化) 【6年度】
    5. 医療
      • デジタルによる薬剤師等不在店舗での一般用医薬品販売【6年結論・速やかに措置等】
        • 早朝・深夜や過疎地などの薬剤師非常駐の店舗(受渡店舗)でも、薬剤師が常駐する店舗(管理店舗)からのデジタルによる管理・販売により、一般用医薬品を入手可能とする。
      • 「総合診療科」の標榜可能化 【7年結論】
        • 学会意見を踏まえ、標榜可能な診療科名(内科、外科等)に「総合診療科」の追加を検討。
    6. 介護
      • デジタル、AI等を活用した要介護認定の迅速化等【6年度検討開始・8年度結論・速やかに措置等】
        • 法定処理期間(原則30日)を超過する認定が常態化しているため、(1)審査会簡素化の範囲拡大、(2)要介護度判定における、在宅・通所等の介護の手間を反映した最新データの活用・認知症対応の認定調査項目等の検討、(3)要介護認定業務のデジタル化、AI活用。
      • 介護・保育・障害福祉分野の合併・事業譲渡手続の明確化・ローカルルール防止【7年度等】
        • 介護・保育・障害福祉分野の合併、事業譲渡等の円滑化・手続負担軽減のため、ガイドライン等の策定、標準様式等の作成、ローカルルールの公表等。
    7. 通信
      • 真の5G普及に向けた規制・制度の見直し 【6年度】
        • 新しい5G普及目標の下、ミリ波・Sub6等に係る基地局を整備し、スマホ画面では4G転用と区別して表示。公益事業特権の付与をインフラシェアリング事業者にも検討。
  • スタートアップの成長基盤の整備(人材、資金、初期需要)
    1. 定款認証の見直し、公証人への民間登用※ 【6年度等】
      • スタートアップ支援の観点からの手数料半減、面前確認の原則廃止、公証人の民間登用拡大(公証人待遇の透明化、公務員化の是非を含む検討)
    2. 新技術等の開発を促進する政府調達機会確保/自治体調達手続のデジタル化【6年度早期等】
      • 高度・独自の新技術を有するスタートアップ等との随契を可能とする調達手法の創設。
      • 物品・役務調達の入札参加資格の申請手続を全自治体共通化等。
    3. 買収対価を株式とするM&Aの活性化 【6年度】
      • 金銭でなく株式を対価とする買収方法(株式交付)の活用拡大(外国会社も買収可に)。
    4. 非上場株式の発行・流通の活性化 【6年度】
      • 調達規模に比して過大な開示負担がスタートアップ等の資金調達の制約になっているため(1億円を閾値に要監査の有価証券届出書の提出が必要)、調達金額の規模に応じた段階的な負担となるよう改善を検討
    5. 株式報酬の無償交付の活用拡大※(従業員等に対する無償交付実現) 【6年度】
    6. 規制改革関連制度(特区、サンドボックス、グレーゾーン等)の連携強化 【6年度等】
      • 事業者・地域単位の成果の全国展開の推進、グレーゾーン制度の透明化・迅速化等。
  • 良質な雇用の確保、高生産性産業への労働移動
    1. フリーランス・ギグワーカーの保護、偽装請負の防止 【6年度等】
      • 労働者-自営業者の判断基準(労働者性の有無)につき、AI上の指示も人(使用者)の指示と同様である旨明確化。また、安全目的のAI・人による業務連絡によって労働者と認定されやすくなるか否かを明確化(少なくとも上限就業時間の注意喚起は影響しない)。
    2. 競業避止義務と副業・兼業の両立 【6年度】
      • 情報漏洩への事後処罰(不競法)等を踏まえ、漏洩を防止したいノウハウ等の特定がない、抽象的な競業避止義務は適切でない等の意見を踏まえガイドラインで明確化。
    3. 副業・兼業における割増賃金の支払いに係る労働時間通算管理の検討※ 【6年度】
      • (注)健康管理に係る労働時間の通算管理は検討の対象外

内閣府 月例経済報告等に関する関係閣僚会議資料(令和6年5月)
  • 日本経済の基調判断
    • 現状 【判断維持】
      • 景気は、このところ足踏みもみられるが、緩やかに回復している。
      • (先月の判断) 景気は、このところ足踏みもみられるが、緩やかに回復している。
    • 先行き
      • 先行きについては、雇用・所得環境が改善する下で、各種政策の効果もあって、緩やかな回復が続くことが期待される。ただし、世界的な金融引締めに伴う影響や中国経済の先行き懸念など、海外景気の下振れが我が国の景気を下押しするリスクとなっている。また、物価上昇、中東地域をめぐる情勢、金融資本市場の変動等の影響に十分注意する必要がある。さらに、令和6年能登半島地震の経済に与える影響に十分留意する必要がある。
    • 政策の基本的態度
      • 30年来続いてきたコストカット型経済から持続的な賃上げや活発な投資がけん引する成長型経済へ変革するため、新しい資本主義の取組を加速させる。
      • このため、「デフレ完全脱却のための総合経済対策~日本経済の新たなステージにむけて~」及びその裏付けとなる令和5年度補正予算並びに令和6年度予算を迅速かつ着実に執行するとともに、「経済財政運営と改革の基本方針2024(仮称)」等を取りまとめる。
      • また、「被災者の生活と生業(なりわい)支援のためのパッケージ」に基づき、令和6年能登半島地震の被災者の生活、生業の再建をはじめ、被災地の復旧・復興に至るまで、予備費を活用し切れ目なく対応する。
      • 日本銀行には、経済・物価・金融情勢に応じて適切な金融政策運営を行うことにより、賃金と物価の好循環を確認しつつ、2%の物価安定目標を持続的・安定的に実現することを期待する。
      • 政府と日本銀行は、引き続き緊密に連携し、経済・物価動向に応じて機動的な政策運営を行っていく。
      • こうした取組を通じ、デフレに後戻りしないとの認識を広く醸成し、デフレ脱却につなげるとともに、新たな成長型経済への移行に向け、あらゆる政策手段を総動員していく。
  • GDPの動向
    • 2023年度のGDP成長率は、名目で5.3%、実質で1.2%。名目成長率は1991年度(5.3%)以来の高い伸び。
    • 2024年1-3月期のGDP成長率は、名目においては前期比プラス0.1%と2四半期連続のプラスとなり、名目GDPの実額は599兆円と過去最高を更新した一方、実質では前期比マイナス0.5%と2四半期ぶりのマイナスとなった。
    • 景気の動きによるものとは言えない各種特殊要因が影響。具体的には、令和6年能登半島地震の影響のほか、一部自動車メーカーの生産・出荷停止事案の影響もあって、実質前期比で、個人消費はマイナス0.7%、設備投資もマイナス0.8%に。輸出は、前期のサービス輸出の大幅増の反動もあって、実質前期比でマイナス5.0%。
  • 個人消費の動向
    • 2024年1-3月期は、耐久財では、一部自動車メーカーの生産・出荷停止の影響で大幅に減少(実質GDP成長率への寄与度で-0.6%)したものの、消費の過半を占めるサービスは、外食等を中心に増加傾向が継続。
    • 4月の状況をみると、一部自動車メーカーの出荷の再開が徐々に進む中、新車販売台数は持ち直しの動き。家電販売は、平年比高めの気温もあり、エアコン販売に例年より早めの動き。1月に落ち込んだ携帯電話も4月は増加。
    • 外食売上高は、コロナ禍を経て、店舗数は減少傾向の一方、一店舗当たりの売上は増加、構造変化もみられる。
  • 賃金の動向
    • 新たなビッグデータ(給与計算代行サービス)から、本年4月の賃金上昇率をみると、昨年同様、若年層の伸びが高いことに加え、昨年は横ばいだった40代でも伸び。33年ぶりの高い伸びとなった今年の春闘賃上げの広がりがみられる。
    • 初任給も、幅広い産業で増加させる企業が増え、伸び率も昨年を大きく上回る。夏季ボーナスも、連合集計では平均支給月数が前年を上回り、上場企業では、支給金額が前年比4.6%と昨年を上回る伸び。
    • 労働需給のひっ迫に加え、昨年10月の最低賃金引上げもあって、パート・アルバイトの募集時の時給は、全国平均で1,141円、前年比で3%台半ばの伸び。最低賃金引上げと募集時の時給には正の相関が見られる。
  • 物価の動向
    • 消費者物価上昇率はピーク時(2023年1月4.3%)から低下し、2023年11月以降は2%台で推移。
    • 他方、円安により、円ベースの輸入物価に上昇圧力。中東情勢の不安定化や中国経済の持ち直し期待によって、原油や銅価格は上昇傾向、小麦など穀物価格も気候要因もあって上昇の兆し。これらが、国内物価を押し上げるリスクに留意。
    • BtoBのサービス価格は、過去は1%程度以下で推移してきたが、ここ1年ほどは2%台にレベルシフト。人件費比率が高い分野で顕著に上昇。広告では、インターネット広告の価格が大きく伸びるなど構造に変化。
  • 企業収益・生産の動向
    • 上場企業の経常利益は1-3月期として過去最高、産業計で年度でも過去最高。企業の現預金の水準は他国より高く、増加傾向。2000年代後半以降、総資産に対する比率も上昇。企業部門の資金を賃金や投資に回していくことが重要。
    • 製造業の生産活動は、一部自動車メーカーの生産・出荷停止事案により、輸送機械を中心に低下していたが、生産再開に伴い、3月以降持ち直しの動き。設備投資に含まれる貨物車(トラック、バン等)の登録台数も、3月以降徐々に持ち直し
  • 建設投資の動向
    • 設備投資の25%を占める建設投資は、着工ベースの工事費予定額では、昨年秋以降増加傾向にあるが、進捗ベースの工事出来高の増加は途上。手持ち工事高は積み上がっており、今後これらが進捗し、投資につながることが期待。
    • 公共投資については、進捗ベースの公共工事出来高は、防災・減災、国土強靱化予算の執行の効果もあり、増加が続いており、堅調に推移。手持ち工事高も高水準で増加傾向にあり、引き続き、投資としての発現が期待。
  • 輸出入の動向
    • 財の輸出は、自動車や建設用・鉱山用機械は、供給制約もあって軟調である一方、世界的な半導体需要の回復に伴い、半導体製造装置は持ち直し傾向が続く。
    • 鉄鋼輸出は、日本は緩やかな減少傾向の一方、中国が供給過剰を背景に、アジア向けを中心に低価格品の輸出を増大。
    • サービス収支は、旅行では黒字の一方、大宗を占めるその他サービスでは、デジタル関連や保険等で赤字が拡大。
  • アメリカ経済の動向
    • アメリカは、個人消費主導で景気は拡大。金融引締めが続く中でも高成長が続く背景には、移民流入の上振れや、半導体法等による設備投資の緩やかな増加。
    • 労働需給は緩和傾向にあり、名目賃金上昇率に一服感がみられるものの、依然として高水準。
    • 物価上昇率は、前月比でみると、財の寄与が縮小する中で、サービスを中心に緩やかに上昇。
  • 欧州経済の動向
    • EUは、1980年代以降市場統合が進展。2004年には東欧諸国が加盟するなど拡大し、中国と同程度の経済規模。
    • 実質GDPは、2023年秋以降、ドイツを含むユーロ圏で弱含むものの、底入れに向かうことが期待される。
    • 2023年第3四半期以降、消費者物価上昇率の低下を受け、実質賃金はプラスで推移。
    • 英国は2020年にEUを離脱。サービス業が経済成長をけん引。経常収支は赤字傾向。広告・専門的コンサル等のサービス貿易は黒字傾向である一方、財貿易は赤字傾向。所得収支は、証券投資による収益(株式配当、債券利子)の赤字額が直接投資による収益の黒字額を上回り、赤字傾向。
    • ユーロ圏で急速に存在感を高めているアイルランド経済は、製薬、IT企業を積極的に誘致し高い経済成長を実現。英国のサービス貿易相手国としても重要。

【公正取引委員会】

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【金融庁】

【2024年7月】

金融庁 金融活動作業部会(FATF)による「暗号資産:FATF基準の実施状況についての報告書」の公表について
▼ 2024年「暗号資産:FATF基準の実施状況についての報告書」要旨(仮訳)
  • 2019年、金融活動作業部会(FATF)は、マネー・ローンダリング及びテロ資金供与対策(AML/CFT)に関する国際基準の適用対象を、暗号資産(VA)及び暗号資産サービスプロバイダー(VASP)へ拡大した。勧告15(15)の実施を強化するため、FATFは2023年2月にロードマップを採択し、その一環として、FATF加盟国及び重要なVASPの活動がある法域の一部を含む法域におけるR.15の実施状況一覧を本年3月に公表した。FATFとVACGは、R.15の世界的な遵守を支援するためのアウトリーチと支援の提供を継続し、2025年に当該一覧表を更新する予定である。
  • 本報告書は、第5回目のターゲット報告書として、トラベル・ルールを含むVA及びVASPに関するFATF基準の実施状況と、この分野におけるエマージングリスク及び市場の動向に関する最新情報を提供するものである。2023年の調査結果と比較すると、重要なVASPの活動があるいくつかの法域を含め、AML/CFT規制の導入が進展しているか、またはその過程にある。しかし、関連するFATF基準の実施が世界的に見れば引き続き不十分であることは、VA及びVASPが依然として悪用されやすく、基準の相対的な実施が他の金融セクターに比べて遅れていることを意味する。このような背景から、本報告書では、官民両セクターに向けた主な改善点と提言を示す。
  • 主な調査結果
    • 一部の法域では規制の導入が進んでいるが、世界的な導入は依然として相対的に不十分である。2024年の調査結果では、15の実施に関する多くの要素について、法域間でわずかな改善しか見られていない。しかし、調査結果では、VASPを実際に登録または免許を付与する法域の数など、2023年以降に進展が見られる特定の分野も特定されている。
    • 2019年にVA及びVASPsに関する基準が採択されて以来、2024年4月時点で、130のFATF相互審査及びフォローアップ報告書が作成され、FATFウェブサイトで公表されている(2023年4月以降、15を評価した32のMER及びFURが追加で公表された)。4分の3の法域(75%、130法域中97法域)は、R.15を部分的にしか遵守していないか、または遵守していない。この割合は、2023年4月の割合(75%、98法域中73法域)と同一である。
    • 法域は、15の基礎的要件の実施に引き続き苦慮している。R.15の実施に関する2024年の調査の回答者147法域(2023年は151法域)のうち、29%(147法域中42法域)が暗号資産のリスク評価を全く実施しておらず、相互評価とフォローアップ報告の結果、75%(130法域中97法域)の法域が適切なリスク評価を実施していないことが示された。
    • 調査へ回答した法域の4分の1以上(27%、147法域中39法域)は、VASPセクターを規制するかどうか、またどのように規制するかをまだ決定していない。規制手法を決定した法域のうち、60%(147法域中88法域)はVA及びVASPsを許可し、14%(147の法域のうち20の法域)はVASPsを部分的または明示的に禁止することを選択したと報告している。なお、2023年のターゲット報告書の調査結果と同様に、相互審査とフォローアップ報告書は、VASPの効果的な禁止規制は困難であることを示している。部分的または明示的な禁止規制を施行した法域のうち、二つの法域のみが、FATF要件を概ね遵守していると評価され、残る半数超は部分的または不遵守と評価された。VASPを禁止する政策判断がどの程度、綿密なリスク評価に基づきなされたかは依然として不明であり、禁止措置を講じた法域の20%はリスク評価を実施していなかったと報告されている。
    • 法域は、トラベル・ルールの実施に関して十分な進展を見せていない。VASPsを明示的に禁止している法域(VASPsを部分的に禁止している法域を含む)を除くと、調査へ回答した法域のほぼ3分の1(30%、94法域中29法域)は、トラベル・ルールを実施する法律を可決していない。VA/VASPsを高リスクと評価し、明示的な禁止アプローチをとっていない法域の3分の1(33%;33法域中11法域)は、トラベル・ルールを実施する法律をまだ可決していない。トラベル・ルールを実施する法律を可決した法域であっても、監督及び行政対応の実施数は依然として低く、トラベル・ルールの遵守に焦点を当て、VASPに対して検査指摘を発出したり、行政処分またはその他の監督上の措置を講じたりした法域は3分の1未満(26%、65法域のうち17法域)である。
    • VAは、大量破壊兵器の拡散を支援するためだけでなく、詐欺犯、テロリスト集団、その他の違法な行為者によっても引き続き利用されている。北朝鮮は、被害者から暗号資産を盗み、又はゆすり続けており、不正な収益を洗浄するためにますます高度な方法を用いるようになっている。VAはテロリスト集団、特にアジアのISILやシリアのグループによってますます利用されるようになってきており、また、暗号資産を利用しているテロリスト集団は、ステーブルコインを利用したり、匿名性を高める暗号通貨での隠匿を試みることが多い。
    • VACGとの対話に際し、民間セクターの関係者は、ML、TF及びPF目的でのステーブルコインの利用の増加や、分散型金融(DeFi)アレンジメントの継続的なハッキングなどを含む、市場の進展について報告した。また、スマートコントラクトを活用したリスク低減措置に一定の進展が見られた。いくつかの法域では、ステーブルコイン・サービスプロバイダーに対するトラベル・ルール要件を含むAML/CFT/CPF規制の導入、DeFiアレンジメントに対する規制・執行措置の実施、ピアツーピア(P2P)取引を含むDeFi及びアンホステッド・ウォレットのリスク評価の実施など、規制、監督、執行における進展が報告された。
  • 公共セクター及び民間セクターへの提言
    • これら報告の文脈において、法域は遍く、この中でも特に、重要なVASPの活動がある法域は、VA及びVASPsに関するFATFの要件を完全に実施するために迅速に行動することが極めて肝要である。次に掲げる提言は、本報告書の調査結果に基づいてすべての法域が緊急に講じるべき措置、及びFATFとVACGの次のステップを明らかにするものである。
  • 公共セクターへの提言
    • VASPsに対するリスク評価及び政策アプローチ
      • 各法域は、もし実施未了であるならば、VA及びVASPsに関連するML及びTFリスクを特定及び評価し、特定された規制・監督上の課題への対策を含むリスク軽減策を講じるべきである。
      • 各法域は、VAとVASPの使用を許可する、あるいは、VAとVASPの使用を部分的または明示的に禁止するといった、VASPsに対する法域のアプローチを定め、実施すべきである。いずれのアプローチを採用した場合も、広範なVASPを母数としてモニタリングまたは監督し、義務を遵守しないVASPへの処分を含め、違反に対する取り締まりを執行すべきである。
  • VASPへの登録・免許制及び監督
    • 各法域は、15完全履行の確保を含む、VA及びVASPsに関連するML、TF及びPFリスクの軽減措置を直ちに講じるべきである。当該法域が、暗号資産の禁止アプローチをとっていない場合は、VASPsへの登録・免許制導入、VASPsへの監督上の検査実施、及びVASPsに対して必要に応じて執行措置または監督処分を講じることが含まれるべきである。
    • VASPsへの登録・免許制の枠組みを策定する際、法域はオフショアVASP(すなわち、法域内に法人化されていない、または物理的に拠点を置いていないVASP)に伴うリスクを考慮し、適切なリスク軽減措置を登録・免許制度に組み込むことが奨励される。
  • トラベル・ルールの施行・監督
    • トラベル・ルール実施の法制/規制をいまだ導入していない法域は、早急に導入すべきである。
    • トラベル・ルールを導入した法域は、違反行為に対する実効的な監督や行政執行を含め、迅速に運用すべきである。
    • 各法域は、勧告13及び勧告16に沿った取引相手デュー・ディリジェンスを促進するために、AML/CFTの目的で容易に利用できる方法で、その法域で登録または免許を受けたVASPに関する情報を整備、公表することが強く奨励される。
    • 各法域は、VASPセクターと連携して広範に用いられるトラベル・ルール・コンプライアンス・ツールを特定し、これらのツールがすべてのFATF要件を満たしていることを確認することを含め、これらツールに関する詳細な知見を深めるべきである。
  • ステーブルコイン、DeFi、P2P取引を含むアンホステッド・ウォレット、NFTなどのエマージングリスクや、増大するリスクへの対処
    • ステーブルコインの採用や犯罪者による使用の増加、及びステーブルコインが他の暗号資産同様にP2Pで移転できる機能性を踏まえ、各法域は、市場の動向をモニタリングし、金融犯罪リスクを評価し、適切なリスク軽減措置を講じるべきである。
    • 各法域は、DeFiの仕組みに関連する不正資金リスクを評価・モニタリングし、VASPの定義に該当する可能性のある主体を特定し、責任主体を捕捉するための規制的枠組みを策定し、適切な監督・執行措置を講じ、事例や残課題はVACGメンバーと共有すべきである。
    • 各法域は、市場の発展状況をモニタリングするとともに、P2P取引を含むアンホステッド・ウォレット及びNFTに関連するML/TF/PFリスクを評価し、データ収集及びリスク軽減策を含め、その経験を共有すべきである。
  • 民間セクターへの提言
    • 暗号資産交換業者及びトラベル・ルール・ツールの提供者は以下の事項を行うべきである:
      • トラベル・ルール・ツールを検証し、プロバイダーは、ツールがFATFの要件を完全に遵守できるようにする。
      • VASPによるトラベル・ルールの効果的な実施を促進し、疑わしい取引やFATF要件に準拠しない取引を検出・防止するためのVASPの制裁スクリーニング及び取引モニタリングを支援するために、トラベル・ルール・ツール間の互換性を向上させる(ツール間の互換性強化を可能にする技術的進歩、互いに互換性のあるツールの連結を可能にする仕組みの開発など)
    • ML、TF及びPFに関連する持続的かつ重大な脅威に照らして、民間セクター、特にVASPsは、15に沿った適切なリスク特定及び軽減措置が実施されていることを確保すべきであり、必要に応じてさらなるリスクベースの措置を採用すべきである。これには、ステーブルコイン、DeFi、NFT、及びP2P取引を含むアンホステッド・ウォレットに関連するリスクの考察と低減策、並びに共通のリスク理解を深めるため、公共セクターの関係者との連携が含まれるべきである。
  • 次のステップ
    • 2023年2月、FATFは15の実施を強化するため、2024年6月までのロードマップを採択した。ロードマップの一部として、FATFは、FATFメンバー法域及び重要なVASPの活動がある法域におけるR.15の実施状況(例えば、リスク評価の実施、VASPを規制するための法律の制定、監督上の検査の実施等)を示す表を公表した5。本表の目的は、FATFネットワークが、資金洗浄・テロ資金供与対策の目的のためにVASPを規制・監督する上でこれらの法域を最善の形で支援できるようにすること、及び重要なVASPの活動がある法域がR.15を適時に完全に実施することを奨励することにある。FATF及びVACGは、FSRB事務局及びグローバル・スタンダードを設定し、あるいは支援と研修を提供する関連国際機関と協力して、R.15の遵守を奨励し支援するために、特にキャパシティが低く、かつ、重要なVASPの活動がある法域に対して、アウトリーチを実施し、支援を提供し続ける。
    • 加えて、FATF及びVACGは、DeFi及びP2P取引を含むアンホステッド・ウォレットに関連するものを含め、15の実施に関する知見、経験及び課題を引き続き共有し、FATFのさらなる作業が必要となる可能性のある顕著な進展について、この分野の市場動向を監視する。2024年2月のFATF本会合で決定されたとおり、FATFメンバー及び重要なVASPの活動がある法域によるR.15の実施状況は、2025年に更新・公表される予定である。

金融庁 バーゼル銀行監督委員会による市中協議文書「健全なサードパーティリスク管理のための諸原則」の公表について
▼ バーゼル委員会、第三者リスクの適正管理に関する原則について諮問(グーグル翻訳)
  • バーゼル委員会は、第三者リスクの健全な管理のための原則に関する諮問を公表しました。
  • 提案された原則は、銀行と健全性監督当局に効果的な第三者リスク管理に関するガイダンスを提供し、業務の混乱に耐える銀行の能力を高め、深刻な破壊的事象の影響を軽減することを目的としています。
  • 提案された原則に対するコメントは、2024年10月9日までに求められます。
  • バーゼル銀行監督委員会は本日、銀行セクターにおける第三者リスクの健全な管理のための原則を提案する諮問文書を公表しました。
  • デジタル化の進展により、銀行セクターでは革新的なアプローチが急速に採用されています。その結果、銀行は、これまで引き受けていなかったサービスについて、第三者への依存度が高まっています。従来のアウトソーシングの範囲を超えた第三者への依存度の高まりは、サプライチェーンの拡大と集中リスクの高まりと相まって、2005年のジョイントフォーラムの論文「金融サービス、特に銀行セクターにおけるアウトソーシング」の更新を必要としています。
  • この諮問文書は、第三者の取り決めによるリスクを効果的に管理・監督するためのガイダンスを銀行や監督当局に提供する12のハイレベルな原則で構成されています。この原則は、サードパーティのライフサイクルの概念を導入し、臨界度や比例性などの包括的な概念を強調しています。さらに、サプライチェーンリスクと集中リスクのトピックを掘り下げ、セクターや国境を越えた監督上の調整と対話の重要性を強調しています。
  • この原則は、金融安定理事会(FSB)の2023年報告書「金融機関と金融当局のためのツールキットである第三者リスク管理と監視の強化」を補完し、拡張するものです。これらの原則は、主に国際的に活動する大手銀行とその健全性監督機関を対象としていますが、すべての管轄区域の小規模な銀行や当局にも利益をもたらします。これらは、第三者のリスク管理に関する銀行と監督当局の共通のベースラインを確立すると同時に、管轄区域全体で進化する慣行と規制の枠組みに対応するために必要な柔軟性を提供します。
  • 幅広い技術への適応性と適用性を維持するために、原則は技術中立の立場を維持しています。その結果、人工知能、機械学習、ブロックチェーン技術などの最近のトレンドに、明示的に言及されていなくても適用できます。

金融庁 「気候変動リスク・機会の評価等に向けたシナリオ・データ関係機関懇談会 課題と関係者の今後の取組への期待」の公表について
▼ (別添1)気候変動リスク・機会の評価等に向けたシナリオ・データ関係機関懇談会 課題と関係者の今後の取組への期待
  • 課題等を踏まえた今後期待される対応のあり方
    • 気候予測・観測データの創出・提供
      • 気候予測・観測データについては、長年にわたり国内の研究機関等において、様々なデータを創出・提供してきた蓄積がある。一方、こうしたデータの具体的な項目、利用上の留意点、応用可能な分野等を、実務者や気候分野以外の研究者等にとって分かり易い形で提供し、理解を得ることが重要となる。
    • (参考1)気候変動に係る気候予測データについて
      • 大気中の温室効果ガスの増加等によって、気温や降水等の長期的な変化が起きる「気候変動」については、国内外の研究機関において、スーパーコンピュータ等を活用して、将来の複合的な気候予測研究を行っている。
      • 特に、「気候予測データ」は、「気候変動に関する政府間パネル」の評価報告書の基盤や、あらゆる気候変動対策の科学的な基盤・根拠として活用されるなど、重要性が高い。また、「気候予測データ」は、気温、降水量、風速等の地球大気や海洋・陸地の状態を数式化した「気候モデル」を用いて総合的に算出された、100年後、200年後等の将来の気候予測情報を提示することが一般的であり、「気候モデル」の構築にあたっては、国際的な学会等で合意された共通理解が存在する。我が国では、「気候変動予測先端研究プログラム」等において、「気候予測データ」を創出している。
      • 気候変動に係る適応・リスク低減の評価等に気候予測データを利用する場合には、個別の町村、山地、海流等の個別領域のデータを必要とする場合も多く、通例、地球全体を対象とした「全球気候モデル」を用いた「全球気候予測データ」から、特定の地域を対象とした「領域気候モデル」を用いて「ダウンスケーリング」4を行い「領域気候予測データ」を創出する。
      • なお、「気候モデル」には、温室効果ガスの濃度など社会経済活動に伴う係数が考慮されており、これらは特に長期間の予測等が容易でない点を踏まえて、政策動向や経済活動等について一定の仮定を置いた複数の「シナリオ」を作成し、「気候モデル」に反映している。
    • (参考2)研究機関等が提供する気候予測・気候変動影響予測データについて
      • 文部科学省では、平成18年度より、人工衛星、船舶、地上観測等により得られる、地球規模や地域の降水量、海水温、河川水位等の地球観測データや「気候変動予測先端研究プログラム」等において創出された気候予測データを蓄積・統合・解析・提供する「データ統合・解析システム(DIAS)」を整備・運用7するとともに、DIASの計算機能を用いて、それらのデータと社会経済データ等を統合・解析し、気候変動等の地球規模課題の解決に貢献する研究開発を、企業等との共同研究も含め、取り組んでいる。
      • 環境省では、「気候変動影響評価」を概ね5年ごとに実施し、我が国の気候変動影響について、「農業・林業・水産業」、「水環境・水資」「自然災害」「健康」「自然生態系」など7つの分野に分けて取りまとめているほか、「気候変動影響予測・適応評価の総合的研究」8で、最新の気候変動影響予測データの創出・提供を行っている。
      • 国土交通省では、「気候予測データ」を活用して気候変動を踏まえた河川整備計画を策定し、対策に取り組んでいる。また、任意地点での河川氾濫による浸水深等の情報をウェブサイトで提供しており9、企業等の気候変動による洪水リスク評価に活用できる。
      • 国立環境研究所では、気候変動適応情報プラットフォーム(A-PLAT)において気候変動影響予測等のデータを公表し、地方自治体や企業等のエンドユーザーや研究者向けに情報の提供を行っている。
      • 気候予測・観測データの創出・提供については、自然科学等に関する専門的な知見等が必要であるところ、気候変動に伴う気象災害や農作物、漁業資源、水資源、自然生態系、健康等に及ぼす影響に関する可能性について、近年、研究開発が幅広く進捗し、特に国内影響については、情報の幅が広がっている。
      • こうしたデータや研究成果等の有効な利活用を一層促すために、上記の研究機関等が創出するデータについて、分かり易く、統合的に発信し、理解を得る取組を継続的に行っていく必要がある。特に、データユーザー側からみて、データが理解し易く提供され、利活用につながる形となっているか、継続的に状況・ニーズ把握等を行っていくことが重要である。
      • このため、例えば、令和5年6月に公表した「気候変動の物理的リスク評価等に資するデータ一覧」1を含めて、データを扱う上での留意点、分かりやすい概要文、その他の補足情報等を利用者の意見を取り入れながら充実を図る、「気候変動リスク産官学連携ネットワーク」を通して幅広い事業者から継続的にデータの利用し易さ等について意見を得る、といったことが考えられる。
      • また、この他にも、網羅的な内容であるが資料が膨大で全体像が理解しづらい、具体的な内容を伴うが記述が専門的で理解が難しい、又は分かり易い記述だが具体的な項目の記述がないなど、様々な障壁がある可能性があり、分野ごとの説明会・議論を気候変動リスク産官学連携ネットワークで図っていくなど、多様な機会の確保が重要である。
    • 事業関連データの創出・提供、経済影響予測データの創出・提供
      • 気候予測・観測データを活用して、各産業、企業、地域等への影響を観測・評価し、自社の適応・リスク低減策等に活用していくには、通例、気温、降水量、海面高度や、その他各分野への影響予測等の気候予測・観測データから、自らの産業・企業特性等に合わせて、例えば農作物の収量や漁獲量、工場等への浸水可能性や水位の予測、地下水の利用可能性など、自社の事業に係る具体的データを推計していくことが必要となる(事業関連データの創出・提供)。
      • さらに、同データから、実際の経済影響がどのように及ぶか、例えば、農作物収量の増減により変化する売上高、漁獲量の増減により変化する自社加工製品の生産量、洪水等により被災する設備の被害額、被害によって生じる営業停止による損害額など、自社への影響額を試算することが想定される(経済影響予測データ)。
      • このような、事業関連・経済影響等に係るデータは、気候予測・観測データに、自社の事業領域の特性等と併せて統合的に分析を行う必要があり、気候予測・観測データを他のどの様なデータと組み合わせて分析することが可能か、また有益か、他の分析事例も必ずしも判然としない中で、理解・対応することは必ずしも容易でない。
      • 農漁業、工業立地等の社会や事業に関するデータは、創出・保有・利用者が様々で、データの有無を含め状況が全般に必ずしも明瞭でない。さらには、こうした社会や事業に係るデータを、気候予測・観測データのどの項目と如何に掛け合わせれば、有効な適応・リスク低減策等につながる試算を行えるか、各分野で行い得る影響評価試算の手法や可能性が明瞭なものとなっていない。
      • データ整備に係る課題もある。例えば、気候変動を踏まえた原料農産物等の将来価格は、当該原料の産地の地理的条件や生産方法等により影響が異なるが、例えば、懇談会では、最終メーカーから、原料調達は卸売商社等に委ね、産地等は必ずしも把握しておらず、このため将来試算に必要な前提データが自社で不詳な場合がある等の指摘があった。
      • 災害リスクについても、例えば、高潮によって港湾が被災したことによる自社サプライチェーンへの影響額を試算したい場合、同港湾内に施設や在庫を保有する企業がサプライチェーン内にあるか、ない場合にも港湾を通常利用しており物流等に影響が及ぶか、といった情報が必要となるが、こうした情報を包括的に整備している企業等は必ずしも多くはないと想定される。
      • このため、例えば、企業・業界団体等と関係省庁において対話を深め、気候予測・観測データと社会や事業に係るデータを結びつける具体的な手法、データ事例、論文等について相互に理解を深め、データの有効な利用の可能性を模索していくことが重要と考えられる。
      • 例えば、地域別の生産量や漁獲量、産地毎の生産量等のデータの気温に対する感応度分析の研究結果を、関連する企業・業界団体に対話の一環として共有し、活用の可能性や活用に当たっての課題を相互で認識し、更なる議論に活かしていく、といったことが考えられる。
      • また、気候予測・観測データを経済影響等の予測に結び付けるには、過去の両者の相関を理解することが有効・早道である場合も多い。例えば、台風や吹雪等の状況と鉄道や航空等の欠航・運休データの相関、豪雨時の気圧や雨量と建築物の倒壊・浸水等の規模又は被害金額等の過去データを的確に集約・分析することで、企業・研究機関等による将来予測に活かすことが想定される。
    • 経営活用(「経営活用データの創出・提供」)
      • 気候予測データや社会や事業に係るデータを、企業・金融機関・投資家等の単位で、自らや顧客の適応・気候変動リスク・機会への対応等に活かしていくことが期待されるが、本懇談会等における様々な議論で、データの発見・利用・分析等に係る様々な課題・障壁等が指摘された。
      • 第一に、企業・金融機関等がデータを活用する場合、実際の事業状況等に合わせた具体的な粒度・前提に基づくデータ・予測を導出・利用する必要があるが、こうした個別状況に合わせたいわばテイラーメイドのデータの分析・活用を行うには、データに係る相応の資源投入が前提となり、予測に不可避な不確実性やデータの粒度等の課題を総合的に勘案して、躊躇する企業等も存在する。
      • 例えば、気候変動に応じた魚種の変化を踏まえて、地域ごとの加工・冷凍設備等の導入方針を策定するには、当該地域の特定年数期間の魚種の変容を具体的に予測する必要があるが、国等が既に提供するデータで自社が利用したいと考えるデータが提供されているのかを把握し、どの程度の追加の検討・対応を行う必要があるか、どの程度の確実性で分析等を得ることが出来るか、といった一律の理解は容易でない。
      • データ分析については、既述のとおり、地球環境分野等での専門知見、データの所在等の理解、対象とする事業や社会及びこれに係るデータの知見等が必要で、学際的な側面もあり、自社の広範な部署を巻き込み、又は場合によってはデータの提供や分析を専門とする事業者等と連携するなど、相応のリソースが必要となる。
      • これらを踏まえ、企業・業界団体等と関係省庁等との対話を深め、例えば、データの分析がリスク分析に止まらず事業機会の創出につながる場合があることなど、データ活用の有用性・利点について理解を得つつ、幅広い適応・リスク低減・機会創出の実例を相互に共有・浸透していくことが重要と考えられる。

金融庁 バーゼル銀行監督委員会による議事要旨の公表について
▼ 議事要旨(仮訳)
  • バーゼル銀行監督委員会(以下「バーゼル委」)は、銀行の暗号資産エクスポージャーに係る開示枠組みと資本基準及び銀行勘定の金利リスクに係る基準の改訂を承認し、サードパーティリスク諸原則について市中協議を行うことに合意。
    • バーゼル委は、銀行の暗号資産エクスポージャーに係る開示枠組みを承認し、暗号資産に係る基準に関する対象を絞った改訂を行うことを承認。
    • 銀行勘定の金利リスクに係る基準における金利ショック幅と関連する計算手法を更新することに合意。
    • サードパーティリスクの健全な管理のための諸原則について市中協議を行うことに合意。
  • バーゼル委は、7月2日と3日にバーチャル会合を開催し、一連の政策・監督上の取組みについて議論した。
  • 暗号資産
    • バーゼル委は、銀行の暗号資産エクスポージャーに係る開示枠組み及び2022年12月に公表された暗号資産に係る基準に関する対象を絞った一連の改訂についての市中協議へのコメントをレビューした。
    • バーゼル委は、銀行の暗号資産エクスポージャーを対象とする標準化された一連の公表用の計表とテンプレートを含む、最終化された開示枠組みを承認した。
    • これらの開示は、情報の利用可能性を高め、市場規律を高めることを目的としている。この枠組みは今月中に公表され、2026年1月1日から実施される。
    • バーゼル委はまた、暗号資産に係る健全性基準に関する一連の対象を絞った改訂を承認した。これらの改訂は、同基準、特にステーブルコインが「グループ1b」暗号資産として規制上の優遇措置を受けるための要件に関して、一貫した理解を更に促進することを目的としている。更新された基準は今月中に公表され、2026年1月1日から実施される。
    • バーゼル委メンバーは、トークン化された預金やステーブルコインの潜在的な発行体としての銀行のプルーデンス面の含意についても議論した。バーゼル委メンバーは、こうした商品による金融安定リスクの規模と重大さは、その具体的な構造や法域の法規制に部分的に依存していると述べた。足元の市場の動向に基づけば、これらのリスクはバーゼル枠組みによって概ね捕捉されている。バーゼル委は、この分野及び暗号資産市場におけるその他の動向を引き続き注視していく。
  • 銀行勘定の金利リスク
    • バーゼル委は、銀行勘定の金利リスク(IRRBB)に係る基準について、一連の対象を絞った調整を行うことを提案する市中協議へのコメントをレビューした。
    • バーゼル委は、IRRBB基準に規定されている金利ショックに対する一連の調整を承認したが、これは同基準における、水準を定期的に更新するとのコミットメントと整合的である。また、バーゼル委は金利がゼロ近傍にある期間における金利の変化をよりよく捕捉するために、これらのショックを計算するために用いられる手法について、対象を絞った調整を行うことに合意した。改訂された基準は今月中に公表され、2026年1月1日から実施される。
    • これらの変更は、バーゼル委が2023年3月の銀行を巡る混乱を受けて実施しているIRRBBに関する分析作業とは関係していない。
  • サードパーティリスク
    • バーゼル委は、サードパーティリスクの健全な管理のための諸原則について市中協議を行うことに合意した。この諸原則は、銀行システムに関連する金融サービスの外部委託に関する現行のガイダンスを置き換えるものである。この諸原則は、サードパーティサービス提供者の環境が、より大規模で多様なものとなった進展を反映しており、銀行と監督当局がサードパーティリスクを管理する際の共通のベースラインを提供する一助となるであろう。市中協議は今月中に公表される予定である。
  • 気候関連金融リスク
    • バーゼル委は、気候関連金融リスクに関する第3の柱の開示枠組みを提案する市中協議へのコメントをレビューした。バーゼル委は、気候関連金融リスクに対処するための包括的なアプローチの一環として、そうした枠組みを最終化する作業を継続することに合意した。

金融庁 「貸金業利用者に関する調査・研究」調査結果の公表について
▼ (別添)貸金業利用者に関する調査・研究
  • 3年以内借入経験者全体のうち、「借入れができなかったことがあった」人が38.7%、借入れができなかったことはないが「希望通りの金額で借入れができないことがあった」人が11.0%、「全て希望通りの金額で借入れができた」人は50.3%となっている。職業別では、「学生」、「会社員」において、「希望金額を下回ることがあった」、「借入れできなかったことがあった」等、希望通りの借入れとはならなかった人の回答割合が高くなっている。
  • 希望通りの借入れができなかったときの主な対応の上位3項目は、「支出を控えた・諦めた」が49.7%、「親類・友人等からの援助を受けた・借入れを行なった」が24.1%、「アルバイトなどにより収入の増加に努めた」が23.1%、となっている。
  • 3年以内借入経験者かつ現在借入残高がある者で、借入残高が収入の1/3を超える者の割合は18.0%となっている。年収別でみると、年収が低いほど借入残高が年収の1/3を超える者の割合が高い傾向が見られる。職業別に見ると、「個人事業主」、「学生」、「パート・アルバイト・フリーター」、「契約社員・派遣社員」で割合が高くなっている。(回答者30人以上)また、消費者金融に借入残高がある者に絞ると、借入残高が年収の1/3を超える者の割合は18.3%となっている。
  • 借入残高が年収の1/3を超える者(3年以内借入経験者、かつ現在借入残高あり)の職業は全体に比べ「個人事業主」の割合が高い。借入残高が年収の1/3を超える者(3年以内借入経験者、かつ現在消費者金融に借入残高あり)の消費者金融借入目的は、「生活費不足の補填」の割合が、最も高くなっている。
  • 3年以内借入経験者におけるセーフティネットの認知は、「法テラス、国民生活センターの相談窓口」が60.9%で最も高く、「弁護士会、司法書士会の相談窓口」が59.7%の僅差で続く。なお、「財務局や地方自治体が設置している多重債務専門の相談窓口」に対する、全体の認知率は19.1%である。借入残高が年収の1/3を超える者の認知も「法テラス、国民生活センターの相談窓口」が60.9%で最も高く、「弁護士会、司法書士会の相談窓口」が上位2位。詳細認知は、「財務局や地方自治体が設置している多重債務専門の相談窓口」のが27.0%で最も高い。
  • 「財務局や地方自治体が設置している多重債務専門の相談窓口」の認知経路は、全体では「地方自治体の広報誌を見た」が35.7%で最も高い。【3年以内借入経験者】では、全体に比べ「SNSの投稿を見た」、「コンビニ・スーパーマーケット・ATM等に設置されているカードを見た」、「他機関からの紹介」等が特に高い。
  • 家計や借入れの悩みの相談先は、「家族・親類・友人」が最も多く、全体で25.8%となっている。「悩みはあったが誰にも相談しなかった」人は、全体で10.3%。その理由は「相談する必要性を感じなかったから」が34.6%で最も多い。
  • 家計や借入れの悩みの相談先の満足度について、「満足計」では「家族・親類・友人」が84.2%で最も高い。(回答数30以上)
  • 無登録業者(ヤミ金融)の利用経験は、3年以内借入経験者で14.2%、3年以内借入経験者以外では0.1%となっている。借入残高別に見ると、借入残高が年収の1/3を超える者で35.2%、年収の1/3以下の者が26.4%となっている。職業別に見ると、「会社員」、「経営者・役員」、「公務員」、「学生」での回答割合が高くなっている。(回答数30以上)
  • 事業者における事業資金の借入れ先の上位3位は、「銀行」が39.7%、「公的金融機関」が30.3%、「信用金庫・信用組合」が23.3%の順。「貸金業者」を事業資金として利用経験のある事業者は6.0%、借入れ意向者は5.0%となっている。
  • 事業資金の借入れ目的について、借入れ先別に見ると、「銀行」、「信用金庫・信用組合」は、いずれも「設備資金に充てるため」が4割、「つなぎ資金(短期の運転資金)に充てるため」が4割強、「中長期の運転資金に充てるため」が3割という構成になっている。「貸金業者」、「ファクタリング(売掛債権)」は、「つなぎ資金(短期の運転資金)に充てるため」の回答割合が高いことが特徴的。
  • 3年以内借入経験者のうち、ギャンブルを目的とした借入経験者全体に占める割合は26.3%。ギャンブル等を目的とした借入れについて、1回の平均的な借入金額は「1万円以上~5万円未満」が38.5%と最も高い。次いで、「1万円未満」が22.4%で続く。5万円未満との回答者は合計で、約6割見られた。同借入れにおける、現在の借入残高は「1万円未満」が26.2%で最も多く、次いで「10万円以上~50万円未満」が18.5%となっている。

金融庁 『「サステナビリティ投資商品の充実に向けたダイアログ」対話から得られた示唆』の公表について
▼ (参考1)「サステナビリティ投資商品」の充実に向けたダイアログ」対話から得られた示唆概要
  • GXの実現など、経済・社会の成長・持続可能性の確保につながる投資を推進していくには、幅広い投資家に魅力的なGXその他のサステナビリティに関する投資商品を開発し、多様な投資家の市場参加を促していくことが重要
  • 商品組成を担う資産運用会社、投資を受ける企業、投資を行う個人・機関投資家など、幅広い関係者の戦略・選好が相互にフィットしていくことが重要との観点から、金融庁において23年12月から計4回、「サステナビリティ投資商品の充実に向けたダイアログ」を開催。対話を通じて得られた今後の課題や論点等に係る示唆について、「対話から得られた示唆」として24年7月に公表。
  • サステナビリティ投資商品の基本的意義
    • 幅広い投資家がサステナビリティ投資市場に参画することは、経済社会の持続可能性の向上の観点から重要性が高いほか、投資家にとっても、長期的な投資収益を実現できる可能性
    • サステナビリティ投資は、商品の名称等ではなく、企業との対話を含む投資の戦略・実践手法であると考えられるが、実際にはその内容が見えづらい
    • エンゲージメントが事業改善や中長期の機会創出につながり得ることを含め、幅広い理解の獲得がすそ野拡大につながっていく
  • 商品の特性
    • 投資効果を想像・実感し易い商品への個人投資家等の関心は高く、持続可能性への対応やこれを通じた事業の成長の実現を、手触り感をもって理解できることが必要
    • 多様な投資先を専門的に分析し、能動的な投資判断・働きかけを行う点では、アクティブ運用と期待される機能発揮が共通する面も。パッシブ運用でも有用な投資は想定され、特性を活かした商品組成が重要
  • 商品の提供方法
    • サステナビリティに係る課題と投資・事業との関係性は様々であり、自らの投資が、資産形成と社会・環境課題への対応の双方に資することについて理解を得ていくには、分かり易い説明に特に留意が必要
    • フラグシップとなり得る代表的な投資商品や、ロールモデルとなり得る運用者・運用会社等の存在は、具体イメージを明確化し、信頼感を醸成することにつながる可能性
  • 今後の対応のあり方に係る示唆
    • 投資家にとって投資の基本的意義・効果を実感できる機会・情報提供を図るため、以下を含めた総合的な議論が重要
      • 投資家の特性や意向等の実態把握、これを踏まえた具体的な投資機会のあり方等に係る議論
      • 運用会社、販売会社、情報提供会社や投資家等による協働など、フラグシップ的な投資機会の創出に係る議論
      • サステナビリティ投資の基本的な意義や戦略など、中核的な概念・実務に係る議論

金融庁 FATFによる市中協議文書「FATF勧告16の改訂に関する説明文書及び勧告改訂案」の公表について
▼ 6月FATFプレナリー結果概要:Outcomes FATF Plenary,26-28 June 2024(グーグル翻訳)
  • シンガポールのラジャ・クマール議長の下での第6回FATF総会が本日閉幕しました。
  • 200以上の国・地域からなるFATFのグローバル・ネットワークの代表者と国際機関のオブザーバーが、シンガポールにおける主要なマネーロンダリング、テロ資金供与、拡散資金問題に関する3日間の議論に参加しました。
  • FATFは、現地視察の成功を受けて、2カ国を監視強化の対象から外し、高リスク国・地域別監視対象国・地域に関する声明を更新しました。FATFは、過去10年間のFATFの声明に基づき、朝鮮民主主義人民共和国(DPRK)がマネーロンダリング防止及びテロ資金供与対策(AML/CFT)体制における重大な欠陥、並びに大量破壊兵器の拡散及びその資金供与に関連する北朝鮮の違法行為がもたらす深刻な脅威に対処していないことに対する懸念を改めて表明した。
  • FATFは、リスクと状況に重点を置くことに伴い、国際協力レビューグループ(ICRG)プロセス(いわゆるグレーリストまたはブラックリストプロセス)の下で国を優先するための基準を改訂することにより、重要な戦略的マイルストーンを達成しました。これらの変更は、次回の評価ラウンドで適用され、プロセスをさらにリスクベースにし、後発開発途上国が直面する能力の課題を認識します。
  • 次回の相互評価に備え、本会議は、資産回収と国際協力の枠組みを更に強化し、犯罪者から犯罪収益をより効果的に奪う、最近改訂されたFATF基準の遵守について、各国がどのように評価されるかについて合意した。また、FATFは第2回学習・開発フォーラムを主催し、今回は受益者に関するFATF基準の改訂版の国内実施の支援に焦点が当てられました。
  • 参加者は、インドのFAT/APG/EAG合同評価とクウェートのFATF-MENAFATF合同評価について議論し、採択した。
  • メンバーは、次期議長国メキシコの下でのFATFの優先事項を承認しました。これらには、金融包摂への焦点が含まれます。新しい評価ラウンドの成功裡のスタートを確保する;グローバルネットワークの結束を強化する。資産回収、実質的所有者及び仮想資産に重点を置いた改正FATF基準の効果的な実施を支援する。テロ資金供与及び多元資金供与と闘うための継続的な努力。
  • FATF議長は、9つのFATF型地域機関(FSRB)の議長と会談し、FATFとFSRBsのパートナーシップ強化の進捗状況について議論し、来年のグローバルネットワークの優先事項について合意しました。
  • メンバーは、議長国シンガポールがWomen in FATF(ファトフ)及びグローバル・ネットワーク(WFGN)イニシアティブを開始したことに感謝した。このイニシアチブの主なハイライトは、多様な文化や背景を持つ15組のメンターとメンティーのペアが参加する多文化パイロットメンタリングプログラムと、FATFとグローバルネットワークの著名なリーダーのストーリーを特集した電子書籍「Breaking Barriers: Inspiring the Next Generation of Women Leaders」の発売です。
  • ロシア連邦の停止は引き続き続いています(2024年2月の声明を参照))
  • FATF基準の遵守
    • ICRG審査プロセスにおける国別優先順位付け基準の見直し
      • FATF加盟国は、国際金融システムにリスクをもたらす戦略的AML/CFTの不備(FATFのグレーリストまたはブラックリスト)を有する国について、国際協力レビューグループ(ICRG)の審査プロセスにおける国の優先順位付け基準の改訂を承認し、次の評価ラウンドに適用することで、重要な戦略的マイルストーンを達成しました。この更新された優先順位付け基準は、FATFの上場プロセスが引き続きリスクベースで、公正で、透明性があり、後発開発途上国が直面する能力の課題を認識していることを保証するために設計されたいくつかの新しい措置の1つです。
    • 方法論の改訂
      • メンバーは、2023年10月に採択された資産回収及び関連する国際協力に関するFATF基準の遵守状況を各国がどのように評価するかに合意した。今後、各国は、他の措置の中でも特に、資産回復を優先していることを示す必要があります。所轄官庁は、犯罪財産を特定し、追跡しています。犯罪者から犯罪収益を奪うために没収命令が取得され、執行されます。建設的かつ時宜を得た国際協力を提供していること。
    • 高リスクおよびその他の監視対象の管轄区域
      • 監視強化対象の管轄区域
        • 監視を強化している国・地域は、マネーロンダリング、テロ資金供与、拡散資金供与に対抗するための体制の戦略的欠陥に対処するために、FATFと積極的に協力しています。FATFが管轄区域を監視強化下に置くことは、その国が合意された期間内に特定された戦略的欠陥を迅速に解決するための行動計画を実施することを約束したことを意味します。この総会で、FATFはモナコとベネズエラを監視強化の対象国のリストに追加しました。
      • 監視強化の対象ではなくなった管轄区域
        • FATF総会は、ジャマイカとトルコが、相互評価で以前に特定されたAML/CFTの戦略的欠陥への対処において大きな進展を遂げたことを称賛した。両国は、合意された期間内に特定された戦略的欠陥を解決するための行動計画を完了しており、FATFの強化された監視プロセスの対象ではなくなります。
        • ジャマイカ及びトルコは、AML/CFT/CPF体制の強化を継続するため、FATF及び同国が加盟する関連するFATF型地域機関と引き続き協力する。
      • 行動要請の対象となる管轄区域
        • FATFは、マネーロンダリング、テロ資金供与、拡散資金供与に対抗するための重大な戦略的欠陥がある国または地域を特定します。これらの国・地域は、国際金融システムを保護するための行動の呼びかけの対象となります。
        • FATFは、朝鮮民主主義人民共和国(DPRK)がマネーロンダリング防止及びテロ資金供与対策(AML/CFT)体制における重大な欠陥、並びに大量破壊兵器の拡散及びその資金供与に関連する北朝鮮の違法行為がもたらす深刻な脅威に対処していないことに対する懸念を改めて表明した。特に、FATFは、北朝鮮が国際金融システムとの連結性を高めており、それが拡散資金リスクを高めていることに留意する。したがって、FATFは、北朝鮮に対する対抗措置の警戒を強化し、新たな実施と執行を求める。
    • インドとクウェートの相互評価報告
      • FATFは、マネーロンダリング、テロ資金供与、拡散資金対策の有効性、およびFATF勧告の遵守を評価したインドのFATF/APG/EAGの合同相互評価報告書を議論し、採択しました。
      • 本会議は、インドがFATFの要求事項を高いレベルで技術的に遵守しており、そのAML/CFT/CPF体制は、MLおよびTFリスクの理解、国際協力、基本的かつ受益的な所有者情報へのアクセス、金融情報の利用、犯罪者の資産剥奪と拡散防止資金供与措置など、良好な成果を上げていると結論付けました。しかし、一部の非金融セクターでは、予防措置の監督と実施を強化するための改善が必要である。また、インドは、ML及びTFの訴追の終結に関する遅延に対処し、非営利セクターがTFのために濫用されるのを防ぐことを目的としたCFT措置が、TFリスクに関するNPOへのアウトリーチの実施を含め、リスクベースのアプローチに沿って実施されることを確保する必要がある。
      • FATFは、FATFの品質と一貫性のレビューが完了した後、報告書を公表します。
      • また、本会議では、クウェートに対するFATF-MENAFATFの共同評価が議論され、採択され、クウェートにはML/TF/PFに対処するための適切な法的・監督的枠組みがあるが、効果的な成果をもたらすという点では深刻な欠陥が残っていると結論付けた。クウェートは、ML/TFリスクに対する理解を深め、TFの捜査と訴追を強化し、テロや大量破壊兵器への資金提供に関連する資産を遅滞なく合法的に凍結できるようにする必要がある。また、クウェートは、法人の濫用を防止し、非営利セクターをTFの濫用から保護するために、対象を絞ったリスクベースの措置を適用することにも注力すべきである。
      • FATFは、FATFの品質と一貫性のレビューが完了した後、報告書を公表します。
    • メンバーシップの問題
      • ロシア連邦の加盟国資格停止は引き続き続いている。2022年3月以降に発表された声明に続き、FATFは、国際金融システムを保護するために、すべての国・地域がロシア連邦に対して講じられた措置の回避による現在および新たなリスクに警戒すべきであることを改めて表明しています。
  • 戦略的な取り組み
    • 腐敗に関するDNFBP技術コンプライアンスの水平レビュー
      • FATFは、ゲートキーパー(会計士、弁護士、不動産業者、信託・企業サービスプロバイダー)がマネーロンダリングやテロ資金供与に利用されるのを防ぐために加盟国が実施している措置の見直しを完了しました。これらのゲートキーパーがFATF基準に従って規制されていない場合、彼らは重大な犯罪リスクにさらされたままであり、マネーロンダリングの危険信号を見抜くための手段を欠いています。FATFは、2024年7月に本レビューの結果を公表する予定です。
    • 仮想資産:FATF基準の実施に関する的を絞った最新情報
      • FATFは、仮想資産及び仮想資産サービスプロバイダー(VA/VASP)に関するFATF基準の実施に関する各国・地域別の進捗状況に関する第5回年次報告書を公表することに合意しました。
      • 重要なVASP活動を行う国・地域を含め、2023年6月の前回更新以降、一定の進展が見られました。実質ベースでは、この分野においてFATF基準に準拠している、または概ね準拠している国・地域の数は増加しています(2024年に33、2023年に25)。しかし、4分の3の国・地域(75%、130カ国中97カ国)は、この分野のFATF基準に部分的または非準拠である。これは、VASPによるFATF基準の実施が他の金融セクターのそれよりも遅れていることを意味し、VAとVASPは悪用に対して脆弱なままです。
      • FATFは、すべての国・地域に対し、VAおよびVASPに関するFATFの要求事項を迅速に行動し、完全に実施することを求めています。FATFは引き続き状況を注視し、各国が要件を実施するための支援を確保するための努力を継続します。第5回年次アップデートは2024年7月に公開される予定です。
    • 支払いの透明性
      • FATFは、国境を越えた決済システムの進化と業界標準(特にISO20022)の変更を反映するために、FATF基準を改訂する過程にあります。プレナリーは、2024年5月3日に閉幕した基準の改正案に関する広範なパブリックコンサルテーションの結果について議論した。この改訂は、AML/CFTコンプライアンスを確保し、FATF基準が技術的中立であり続けることを保証すると同時に、国境を越えた支払いをより速く、より安く、より透明で、より包括的にすることを目的としています。プレナリーは、要件の複雑さと決済システムへの潜在的な影響を考慮し、改正を最終決定する前に、公的部門と民間部門の両方の関連機関および専門家とのさらなる対話を行うべきであることに合意した。
    • グローバルネットワーク連携
      • FATF議長は、FATF-FSRB年次ハイレベル会合においてFSRBsの議長と会談し、グローバルネットワークの2022年戦略的ビジョンの実施状況について議論し、FATFとFSRBsのパートナーシップ強化における主な成果を強調した。FATF議長とFSRB議長は、来年のグローバル・ネットワークの3つの優先事項に合意した。相互評価の新たなラウンドに備える。地域レベルでのAML/CFTの専門知識を強化する。参加者は、FATF議長が議長国としてFSRBsに積極的に関与し、強力に支援したことに感謝し、グローバルネットワークの結束強化を含む議長国メキシコの優先事項案を歓迎した。
    • Women in FATFとグローバル・ネットワーク(WFGN)イニシアティブ
      • FATF総裁は、2023年2月の総会で発足した「Women in FATF and the Global Network (WFGN)」イニシアティブの最新の成果を発表しました。インドラニー・ラジャ首相府大臣兼財務・国家開発担当第二大臣は、本会議の傍らで、シンガポール議長国のWomen in FATF(国連ファトフにおける女性)とグローバル・ネットワーク(WFGN)イニシアチブの最新成果物である電子書籍「Breaking Barriers: Inspiring the Next Generation of Women Leaders(障壁を打ち破る:次世代の女性リーダーを鼓舞する)」を発表しました。この電子書籍は、女性が金融犯罪との闘いにもたらす決意、回復力、専門知識に関する洞察を提供し、意欲的な女性リーダーに強力なインスピレーション、アドバイス、模範となる力を提供します。これは、多文化メンタリングプログラムと、すべての人にとってより強力なFATFおよびグローバルネットワークコミュニティを構築するための取り組みを補完するものです。
    • 入ってくるメキシコ人2024-2026年の議長国の優先事項
      • 次期大統領のエリサ・デ・アンダ・マドラソは、メキシコ大統領府の優先事項をメンバーに提示しました。メキシコは、2024年7月1日から2026年6月30日までFATF議長国に就任します。
      • 議長国メキシコは、以下の5つの主要優先事項を概説した。
        • 均衡性の原則の下で、リスクベースの基準の実施を促進することにより、金融包摂を推進する。
        • 新しい評価ラウンドを成功裏に開始する。
        • 透明性、包摂性及び一体性を醸成し、FATFとFSRBsの間の協力及び協力を強化するための提案を支持することにより、グローバル・ネットワークの結束を強化する。
        • 資産回収、受益者及び仮想資産に重点を置いたFATF基準の効果的な実施を支援する。そして
        • テロ及び拡散資金供与と闘うための努力を継続する。

金融庁 「2024年 保険モニタリングレポート」の公表について
▼ 概要
  • 保険会社の社会的役割
    • 国民生活の安定や国民経済の健全な発展に不可欠な保障・補償機能を適切かつ安定的に提供。
    • 機関投資家として活力ある資本市場を実現し、ひいては安定的な資産形成に貢献。
  • 環境変化と諸課題
    • 少子高齢化や自然災害の頻発・激甚化、自動車保険市場の縮小等の中長期的な事業環境の変化 など
    • 諸課題
      • 保険ビジネスを巡る動向(持続可能なビジネスモデルの構築、自然災害の頻発・激甚化への対応など)
      • 財務の健全性の確保
      • 顧客本位の業務運営(損害保険会社による代理店に対する内部統制の実効性、外貨建保険の募集管理の高度化など)
      • 不適切事案を踏まえた対応 など
  • 令和6年能登半島地震
    • 令和6年1月1日夕刻に発生した能登半島地震等に対し、1月2日、適用地域を管轄する財務局より日本銀行と連名で「金融上の措置要請」を関係金融機関等に発出した。
    • これを踏まえ、保険会社等は、保険料の払込や継続契約の手続猶予等を実施。特に、日本損害保険協会においては、現地への立入調査が困難な地域が発生していた状況を踏まえ、迅速な損害調査・保険金支払対応に向け、航空写真等を用いた「共同調査」を実施。
      1. 保険料の払込み、保険契約手続の猶予
        • 保険料の払込み及び保険契約の更新手続(継続)を猶予(最長6か月)。
      2. 契約保険会社の照会制度のご案内
        • 災害救助法が適用された地域で、家屋等の損壊等により保険会社との保険契約に関する手がかりを失った顧客に対する契約照会の受付について案内。
      3. 生命保険に係る保険金の支払の柔軟化
        • 全ての生命保険会社において、今回の災害で被災された顧客との保険契約に対して、約款上の地震による免責条項等を適用せず、災害関係保険金・給付金を全額支払うことを決定。
      4. 生命保険会社による入院給付金等の特別取扱い
        • 一部の生命保険会社が、被災地の事情等により直ちに入院できなかった被災者の入院給付金について、ケガをした日から入院を開始したものとする特別取扱いを実施。
      5. 地震保険金の損害認定に係る「共同調査」の実施
        • 日本損害保険協会は、地震保険金の支払迅速化のため、航空写真等を用いた「共同調査」を実施。当該調査の結果、火災・津波被害については「全損地域」及び「一部全損地域」、倒壊建物については「全損建物」及び「全損の可能性が高い建物」を認定し、損害保険会社が現地調査を省略して損害認定することができるようにした。
  • 保険ビジネスを巡る動向(生命保険会社)
    • 少子高齢化や自然災害の頻発・激甚化、自動車保険市場の縮小等の中長期的な事業環境の変化を見据え、顧客基盤の強化や収益の補完に向けた取組み、国土強靭化の推進や自然災害リスク管理への取組みなどを通じて、持続可能なビジネスモデルを構築することが求められている。
    • 営業職員が主軸チャネルの大手生命保険会社、乗合代理店チャネルや銀行窓販チャネルを主軸とする保険会社など、計18社を対象に対話を実施。
      • 大手生保を中心に、中長期的な人口動態の変化や顧客ニーズの多様化等を見据え、医療、健康増進事業などの非保険領域の強化を目的とした企業買収による保険周辺分野への参入の動きが見られた。一方、事業の持続可能性の確保や子会社管理態勢等の更なる高度化が課題。
      • 乗合代理店チャネルを主軸とする社において、販売競争が激化している第三分野商品の販売につき、競争力強化や差別化を目的として、ヘルスケアへの関心の高まりなどの顧客ニーズを踏まえた商品開発を行うといった取組みがみられた。一方で、第三分野商品においては、商品開発が短期化しており、乗合代理店は、新たな商品知識の習得等に追われ、顧客に向き合う時間が減少。このため、保険会社においては、顧客本位の業務運営の観点から、商品開発競争に対する取組みを検討する必要。
      • 銀行窓販チャネルを主軸とする社において、政策動向や市場環境等を踏まえ、平準払商品や変額保険などの資産形成ニーズを捉える商品の拡販に注力する動きが見られた。一方、銀行窓販マーケットは商品の特性上、市場環境の影響を受けやすいという特徴があり、収益のボラティリティの高さが課題。
  • 保険ビジネスを巡る動向(損害保険会社)
    • 本事務年度は、関東大震災から100年の節目に当たるほか、7月には国土強靭化基本計画が見直されたことも受けて、大手3グループ及び中堅7社を対象に、主に国土強靭化、自然災害リスク管理をテーマにして対話・モニタリングを実施。
      • 水災は、標準補償となっている風災に比べて補償付帯率が低く、家計分野では低下傾向にある。損害保険会社は、保険契約者がリスクを正しく認識できるよう、水災リスクや水災料率に関する十分な情報を提供することが必要。
      • 家計分野の地震リスクを補償する地震保険は、火災保険とセットで加入する形式となっているが、その付帯率は徐々に増加。企業向け地震補償においては、各社の保険引受キャパシティが限られ、普及率の拡大は容易でないが、引受可否を検討するポイントとして、十分な耐震性、支払限度設定、免責金額設定などがあげられる、との声が聞かれた。
      • 近年、大手損害保険会社を中心に、ドローン等による画像データやAIを活用した損害認定を試行。現状では精度面で課題があるケースも多いが、将来の大規模災害時の実用化に向けて、引き続き精度の向上を図ることが必要。
      • 多くの損害保険会社では、自社や子会社等を通じて、防災・減災・早期復旧サービスを提供。一方、認知度が低く利用実績が限定的なサービスも見られ、利用実績の向上に向けた取組みなど、不断の工夫が必要。
      • 2023年は、大雨や雹による中小規模の災害が多発。再保険の発動には至らず、多くの社で多額の異常危険準備金の取崩しが行われた一方、ここ数年上昇が続いていた再保険料率はわずかに下落。損害保険会社は、将来の大規模自然災害に備え、準備金積立や再保険手配など、自然災害リスク管理への取組みが引き続き重要。
  • 財務の健全性の確保
    • 保険会社を取り巻く経営環境やリスクが絶えず変化していく中で、保険会社のリスクや収益性についてフォワードルッキングな分析を行い、保険会社の財務の健全性を確保する必要がある。
    • 世界経済や金融市場の動向を踏まえ財務の健全性に係るモニタリングを行うと共に、資産運用の状況についても注意深くフォローアップしていく。また、経済価値ベースのソルベンシー規制の円滑な導入に向けて作業を着実に進めていく。
  • 顧客本位の業務運営(保険代理店における体制整備の高度化)
    • 保険代理店は、顧客との直接的な接点として、顧客と保険会社をつなぐ重要な役割を担っているところ、顧客本位の業務運営の観点も踏まえ、保険代理店における業務品質の向上や体制整備の高度化を促していくことが必要である。
    • また、「損害保険業の構造的課題と競争のあり方に関する有識者会議」による報告書を踏まえ、特に大規模乗合代理店に対する監督のあり方について、第三者評価枠組みの導入なども含め、今後検討していく必要がある。
    • 財務局と協働して、「顧客本位の業務運営に関する原則」を採択の上で取組方針等を公表し、金融庁で公表する「金融事業者リスト」へ掲載している社のうち、86の保険代理店を中心にヒアリングを実施。
      • 多くの保険代理店が、公的保険制度を踏まえた保険募集を行うことの必要性を認識した上で対応。顧客にとって真に必要と考えられる保障を提案することで、顧客からの信頼を得られているといった声も聞かれた。
      • 多くの保険代理店が、サイバーセキュリティ対策について、募集人端末の管理等に関する内部規程を整備。一方、コンティンジェンシープランを策定している保険代理店は6割程度にとどまっており、取組みの進展を期待。また、専門的知識を持つ人員の確保に課題認識を持つ保険代理店が複数見られた。
      • ヒアリング先の7割弱の保険代理店が生命保険協会の代理店業務品質評価基準を業務運営の参考としていた。一方で、約半数の保険代理店が生命保険会社からの情報連携がなかったと回答しており、生命保険会社における保険代理店への情報連携等のサポートの充実などの工夫が必要。
      • 損害保険会社と代理店との円滑な連携について、手数料ポイントや代理店統廃合に関し、引き続き一部の代理店から懸念の声があることを踏まえ、これらの対応が一方的なものとならないよう、損害保険会社と保険代理店との間で丁寧な対話が行われることが重要。
  • 顧客本位の業務運営(損害保険会社による代理店に対する内部統制の実効性)
    • 自動車関連事業を兼業する代理店を販売チャネルとしている損害保険会社に対して、内部監査モニタリングを実施。
    • 保険代理店に対する指導・監督について、3線(内部監査部門)の監査機能にとどまらず、1線(本社各部門等)や2線(本社コンプライアンス部門等)の取組みも含めた全体的な3線管理の実態を確認。
      • 保険代理店に対する監査については、全国に非常に多くの代理店が存在しており、損害保険会社各社の監査リソースにも制限がある中で、ほとんどの社においては、代理店に「直接監査」を実施するのではなく、1線や2線に対する監査時に、それぞれの部門等における代理店管理の内部統制を監査・評価。
      • 一連の保険金不正請求問題を踏まえ、損害保険会社に対する影響力の大きい大規模代理店等については、3線がリスクべースで「直接監査」を実施することを検討している社がある一方、多くの社ではこうした取組みを全く検討していない。
      • 3線による営業拠点等に対する監査において、一部の社では、リスクアセスメントが十分とは言えない実態にある中、最長5年以上監査を実施していない拠点等が存在。
      • 損害保険会社による代理店に対する検査・点検について、多くの社は、1線の営業担当職員が実施している実態にあり、検査等の独立性・透明性が懸念されるほか、検査等のスキルにバラツキが生じている可能性。また、検査等の手法も、画一的な検査・点検項目を形式的に確認するにとどまっている社が多数。
      • 保険募集人ではない自動車修理工場の工員等による不正行為について、一部の社においては、保険業法の適用外であるとして、コンプライアンス部門が全く関与せずに損害調査部門等にその調査を委ねている実態にあったため、調査態勢の改善に着手。
      • 代理店手数料ポイント制度について、業務品質を評価する割合は各社間で大きなバラツキがあるが、総じて挙績・増収に傾注。
      • 保険代理店への出向等について、一部の社においては、代理店への出向者数を拡大している中、出向者の管理を十分に行っていない実態が見られた。
  • 顧客本位の業務運営(外貨建保険の募集管理等の高度化)
    • 外貨建保険については、販売量が前年度対比で落ち着きを見せており、苦情件数・苦情発生率とも減少傾向を維持しているものの、外貨建保険以外の保険に係る苦情発生率と比較すると高い水準にある。顧客本位の業務運営を確保する観点から、苦情抑制に加え、顧客の最善利益の追求を意識した取組みの高度化が重要である。
    • 顧客本位の良質な金融商品・サービスを提供する金融事業者の選択に資するとともに、顧客が各業態の枠を超えた商品の比較検討を容易にする観点から、比較可能な共通KPIを作成・公表することにより、有益な情報提供が行われることが望ましい。
  • 不適切事案を踏まえた対応(保険金不正請求事案)
    • 業務改善命令の対象となった大手損害保険会社においては、業務改善計画にもとづき、一連の取組みを実効性のあるものとして進めていくことが必要であり、金融庁としても、当該計画の着実な実施に向け、モニタリングを行っていく。
    • 一連の行政対応の中で認められた構造的課題等について、主に制度・監督上の観点から、必要な対応を検討していく。
    • 保険金不正請求事案に関し、一連の行政対応を実施。
      • 損害保険代理店に対し、立入検査を行い、保険業法に定める損害保険代理店としての登録取消しを実施。
      • 損害保険会社及びその親会社に対し、立入検査を行い、保険業法に基づき、経営責任の明確化や経営管理態勢の抜本的な強化を求める業務改善命令を発出。
      • 「損害保険業の構造的課題と競争のあり方に関する有識者会議」を3月~6月にかけて開催し、大規模代理店に対する損害保険会社による指導等の実効性確保のために必要な対応等に関する論点などについて幅広く議論を行い、報告書を公表(2024年6月25日)。
  • 不適切事案を踏まえた対応(保険料調整行為事案)
    • 保険料調整行為事案に関し、一連の行政対応を実施。
      • 大手損害保険会社4社に対し、保険業法に基づき、経営責任等の明確化や経営管理態勢の抜本的な強化を含む業務改善命令を発出。
      • 「損害保険業の構造的課題と競争のあり方に関する有識者会議」を3月~6月にかけて開催し、適正な競争環境確保のために必要な対応等に関する論点などについて幅広く議論を行い、報告書を公表(2024年6月25日)。
  • 少額短期保険業者の態勢整備
    • 業者数の増加や取扱商品の多様化とともに、収入保険料等の市場規模も一貫して拡大傾向にある一方、経営管理態勢等に係る問題事案が認められる中、引き続き少短業者の財務の健全性及び業務の適切性を確保するための態勢整備を促していく必要がある。

金融庁 リスク性金融商品の販売・組成会社による顧客本位の業務運営に関するモニタリング結果等について(2023事務年度)
▼ リスク性金融商品の販売・組成会社による顧客本位の業務運営のモニタリング結果について(概要版)
  • リスク性金融商品の販売会社等におけるモニタリングの着眼点
    • プロダクトガバナンス態勢の整備・構築
      • 顧客の最善の利益の実現を図る観点から、販売会社においても、適切な検証期間の下でのリスク・リターンの合理性等や自らの想定顧客層に適した金融商品かどうかについて検証を行った上で、顧客の最善の利益の追求に資するリスク性金融商品の導入を判断することが重要。
      • 金融商品を導入した後も、販売実績等を基に商品性を継続的に検証し、必要に応じて商品の見直し等を行うことが重要。
    • 販売・管理態勢及び従業員に対する適切な動機付けの枠組み等の整備・構築
      • 販売・管理態勢
        • 販売会社は、複雑又はリスクの高い金融商品の販売・推奨等を行う場合には、コスト(名目を問わず、顧客が負担する手数料その他の費用)やリスク・リターン等といったリスク性金融商品の販売・推奨等に係る重要な情報について、他の金融商品と比較しながら顧客に分かりやすく提供すべきとされている。【本原則4及び5等】
        • 販売会社は、顧客の資産状況、取引経験、知識及び取引目的・ニーズ等を把握した上で、同顧客にふさわしい金融商品の販売・推奨等を行うべきとされている。【本原則6】
      • 従業員に対する適切な動機付けの枠組み等
        • 販売会社は、顧客本位の業務運営を確保する観点から、適切な販売・管理等を促進するよう、報酬・業績評価体系等といった従業員に対する適切な動機付けの枠組み等を整備等すべきとされている。【本原則7】
  • 販売会社等へのモニタリング結果/外貨建一時払保険
    • プロダクトガバナンス態勢
      • リスク・リターン検証を十分に行わないまま、実質的な議論を行うことなく、予定利率や積立利率といった表面金利等の形式的な情報を踏まえて商品を導入。
    • 販売・管理態勢
      • 目標値に到達したターゲット型保険の多くが解約され、同時に同一商品を同一顧客に販売する乗換販売が発生。
      • 為替・金利リスクを理解できていない可能性の高い顧客や、リスク許容度が低いと考えられる顧客に外貨建一時払保険を販売。
    • 販売後の管理(顧客のフォローアップ)及び手数料体系(適切な動機付けの枠組み)
      • 工夫事例(下記参照)において掲げられる顧客への丁寧なフォローアップを行う販売会社は限られている。この背景の一つとして、販売会社が組成会社から受け取る手数料の体系が、顧客へのフォローアップ等を行う役務負担に見合ったものとなっていないことが考えられる。
    • 工夫事例(一部の重点先)
      • (販売会社において、)乗換販売を防止する観点から、適切なフォローアップを行った職員に対してプラスの業績評価を行うこととした事例
      • (組成会社において、)販売会社が目標値到達前に適時・適切なフォローアップができるよう、ターゲット型保険の契約一覧を定期的又は要請に応じて販売会社に提供している事例
  • 金融庁における外貨建一時払保険の運用パフォーマンス分析
    • 金融庁において、代表的な運用型の外貨建一時払保険(8商品)の運用パフォーマンスを分析。2023年8月末時点での運用終了分の同保険は、少なくとも今般のモニタリング実施時での販売・管理の下では、継続期間5年以上の同保険と比べて劣後。
    • 外貨建一時払保険は、長期保有を前提に販売されている商品であるが、少なくとも今般のモニタリング実施時での販売・管理の下では、ターゲット型保険を中心に同保険購入後4年間で約6割の解約等が発生していることから、契約継続期間の平均は2.5年と短期化。
    • 契約継続期間の短期化に伴い、顧客が複利運用効果を十分に享受できていない可能性があるほか、解約や運用終了に伴い発生する費用(市場価格調整と解約控除)が利幅を押し下げている状況が窺われた。
  • 外貨建一時払保険の販売先(顧客層)に関する、金融庁による検証の結果
    • 金融庁において、販売会社における347名分の顧客カードを分析したところ、2割の顧客で外貨建一時払保険を購入するための知識・投資経験不足の懸念や投資方針との不一致の懸念が認められた。
    • 知識・投資経験の不足が懸念される事例
      • 株・債券・為替という言葉は知っているが、詳しくは知らない
      • 投資経験なし
      • 株式・為替相場を特に確認していない 等
    • 投資方針との不一致が懸念される事例
      • 安定的な運用をして資金準備をしたい
      • 収益性が小さくてもリスクが小さいことを重視
      • 定額運用によって安定的に資金を準備したい 等
  • 販売会社等へのモニタリング結果/仕組預金
    • 仕組預金の販売額は、いずれの業態でも2022年度下期は増加している一方、2023年度上期は減少。仕組預金のうち、円ベースで元本割れのリスクがある外貨償還特約付預金のモニタリングを実施。
    • 課題事例(多くの重点先)
      • プロダクトガバナンス態勢
        • リスク・リターンの合理性等について十分に検証しないまま、外貨償還特約付預金の組成・導入を判断。また、導入後も販売実績等を基に十分な検証を行っていなかった。
      • 販売・管理態勢等
        • 組成コストや販売手数料を十分に情報提供していないほか、解約時の手数料を分かりやすく情報提供していなかった。
        • 外貨償還特約付預金のリスク特性を理解していない懸念がある者にも販売していることが窺われた。
      • 工夫事例(一部の重点先)
        • 外貨償還特約付預金の商品性(リスク・リターンやコスト等)について、他のリスク性金融商品と比較・検証した上で、顧客の最善の利益を追求する観点から、販売手数料の削減を行い、顧客が受け取るリターンの向上を図った事例
  • 外貨償還特約付預金に係る顧客の損益実績の検証結果
    • 外貨償還特約付預金の預入データを検証(注3)。多くの重点先では、同預金を預け入れした顧客が受け取った償還金のトータルリターン(年率換算)がマイナス。
    • 顧客が負担するコスト(手数料等)は、重点先からの申出ベースでは年率換算で最大5%強と考えられる。
  • 販売会社等へのモニタリング結果/仕組債、その他のリスク性金融商品
    • 仕組債
      • 公募による仕組債の販売額は減少している一方、特に法人等を対象にした私募による販売額は一定の水準。
      • 今事務年度は、日本証券業協会が策定した複雑な仕組債等の販売勧誘に係る関係ガイドライン等の対応状況を確認するとともに、「本原則」を踏まえたモニタリングを実施。
      • 「本原則」を踏まえたモニタリングの結果、一部の重点先では、以下の課題や工夫事例が見られた。
      • 課題として、EB債の個人向け販売と法人向けの販売における取扱いの違いについて十分な整理をしていない。
      • 工夫事例として、能動的な勧誘による仕組債の販売を停止した上で、仮に仕組債の購入を希望する顧客に対しても、まずは顧客が取り得るリスクやニーズを確認した上で、代替商品を提案。
    • 外貨建債券
      • 外貨建債券は、為替・金利等の影響を受けることから、円ベースでの元本が確保されないリスクのある商品。
      • 特に、新興国通貨建債券は、先進国通貨建債券に比べて為替のボラティリティが大きく、リスクが高くなる傾向があり、商品性を十分に理解できる顧客への販売や、より丁寧な説明を期待。
    • ファンドラップ
      • 位置付けや付加価値の明確化などに向けて取り組むことを期待。(顧客が負担するコストとコスト控除後の(期待)リターンの妥当性についての検証、(期待)リターン・顧客が負担するコスト・運用実績等の情報開示等の充実 等)
  • リスク性金融商品販売に係る顧客意識調査結果
    • 今事務年度は、金融機関の顧客等に対して資産運用に関する意識等について調査を実施。2020事務年度調査(以下「前回調査」)の結果と、2023事務年度調査(以下「今回調査」)の結果を比べると、顧客本位の業務運営について一定の進捗は見られたものの、引き続き、各金融機関が顧客本位の業務運営の確保に向けた取組みを継続していくことが必要。

金融庁 金融審議会「市場制度ワーキング・グループ」報告の公表について
▼ (参考)金融審議会 市場制度ワーキング・グループ 報告書 概要 ープロダクトガバナンスの確立等に向けてー
  • 家計の安定的な資産形成を図り、「成長と分配の好循環」を実現すべく、製販全体として顧客の最善の利益に適った商品提供等を確保するため、組成会社向けの「補充原則」を「顧客本位の業務運営に関する原則」に追加
  • 基本的な考え方
    • 組成会社・販売会社間での建設的なコミュニケーション等により、製販全体・金融商品のライフサイクル全体として顧客の最善の利益を実現
    • 投資信託を含む幅広い金融商品について、組成会社による補充原則の受け入れを期待
    • 組成会社・販売会社の負担にも配慮し、金融商品の特性(リスク・複雑さ)に応じて対応(プロポーショナリティ)
    • 組成会社・販売会社間の情報連携に係る実効性を確保(フォーマット等の実務面の検討)
    • 金融庁において、金融事業者における取組状況をフォローアップし、好事例や課題等を把握・分析
  • 組成会社に求められる対応 (プロダクトガバナンスに関する補充原則)
    • 補充原則1 基本理念:経営者のリーダーシップの下、金融商品提供に関する理念の明確化
    • 補充原則2 体制整備:プロダクトガバナンスの実効性を確保するための体制整備、金融商品の組成・提供・管理の各プロセスにおける品質管理体制の整備
    • 補充原則3 金融商品の組成時の対応:金融商品の組成時における商品性の検証や想定顧客属性の特定、組成会社・販売会社間の情報連携の促進
    • 補充原則4 金融商品の組成後の対応:金融商品の組成後における商品性の検証、組成会社・販売会社間の情報連携による運用・商品提供等の改善
    • 補充原則5 顧客に対する分かりやすい情報提供:運用体制やガバナンス等に関する顧客への分かりやすい情報提供
  • 販売会社に求められる対応
    • 原則6 顧客にふさわしいサービスの提供
    • 実際に購入した顧客層や反応等について組成会社との情報連携
    • 組成会社による想定顧客属性を踏まえつつ、自らの責任で顧客の適合性を判断
  • 株式決済期間の短縮
    • 日本では、株式の取引が行われた約定日(T日)の2営業日後(T+2日)に決済が行われている一方、国際的に株式決済期間の短縮(T+1化)の実施・検討が進められている
    • 日本の証券決済制度が国際標準から取り残されないよう、市場関係者において、T+1化に関するメリットと課題等について、実務的な検討を始めるべき
    • メリット
      • 決済リスクの削減
      • 資金効率の向上・担保負担の軽減
      • 決済事務の一層の合理化・効率化 等
    • 課題
      • フェイルリスクの増加
      • オペレーショナルリスクの増加
      • 非居住者による日本株取引への影響 等
  • 投資型クラウドファンディング
    • 株主一元化スキームの活用
      • 株式投資型クラウドファンディング(CF)において、株主一元化スキームの組成ニーズが高まっているが、ファンド運営に係る投資運用業の登録要件を満たすための体制整備の負担が課題
      • 投資運用業の登録審査において、実態に即した人的構成・業務運営体制での登録が可能であることを明確化
      • 株式投資型CFと株主一元化スキームとで自主規制規則における規制体系に差異(少額要件の適用の有無等)
      • 株主一元化スキームと株式投資型CFとの規制の平仄を合わせる
    • 勧誘方法
      • 投資型CFの勧誘方法は、自主規制規則において、一部を除き、電磁的方法に限定され、電話・訪問勧誘等は禁止
      • 特定投資家への勧誘は電磁的方法以外(電話・訪問等)の方法を認めてほしいとの要望
      • 電磁的方法以外(電話・訪問等)の方法による勧誘について、法人の特定投資家に対しては可能とする(一方、個人(特定投資家を含む)に対しては引き続き慎重に対応)

金融庁 共同データプラットフォームの進捗と今後の進め方
▼ 共同データプラットフォームの進捗と今後の進め方
  • データ一元化のこれまでの取組み
    • 金融庁と日本銀行は、より質の高いモニタリングの実施と金融機関の負担軽減を図る観点から、データの一元化に取り組んできた。
      • 計表の統合・廃止
        • 金融庁・日本銀行が収集する計表について、様式の重複等を踏まえ、統合・廃止。
      • 提出先の一元化
        • 業界から提出を受けるファイルを日本銀行と共有する受渡サーバーを金融庁で開発し、金融庁・日本銀行で共通する計表の提出先を一元化。
      • 共同データプラットフォーム
        • 高粒度データ(取引単位の法人向け貸出明細等)の収集に向けた項目・定義の整理や、より効率的なデータ収集・管理の枠組みを検討。
    • 計表の統合・廃止や提出先一元化については、業界の要望も踏まえ、統計集計上の理由やシステム上の理由により対応困難なもの等を除きすべて対応し、金融機関の負担軽減を実現。その後も定例的に要望を聞きつつ、対象計表の拡充等について検討を進めている。
    • 共同データプラットフォームについては、2021年度の海外事例の調査や2022年度の実証実験(一部の金融機関から高粒度データを収集)の結果を踏まえ、2023年度は、引き続き実務的な検討を行うとともに、高粒度データの収集を段階的に開始した。
  • 共同データプラットフォームの進捗
    • 2023年度は、以下の通り、金融機関との間で定義・フォーマットの標準化等の調整を実施し、高粒度データの収集を段階的に開始した。
      • 主要行等
        • 各行のデータ保有状況や提出項目数・データ量を踏まえ、各行と個別に定義・フォーマットの内容を調整。
      • 地方銀行(地方銀行協会加盟行)
        • 各行で共通する既存のデータベースを活用すること等により、定期的なデータの収集を開始。
        • 金融庁・日本銀行において、既存計表の代替可否を確認し、要件を満たした先に対して順次結果を通知。
      • 第二地方銀行(第二地方銀行協会加盟行)
        • 新たに第二地方銀行を対象に追加(2022年度の実証実験では、第二地方銀行は対象外)。
        • 提出フォーマット・定義の調整を目的としたトライアルデータの収集を開始。
    • データ収集・管理に係るオペレーション(データクレンジング、データ共有等)についても、金融庁・日本銀行間で検討を進めた。
  • 今後の進め方
    • 本格的なデータ収集開始に向けた金融機関の提出準備状況の確認・データの精度向上
      • 2025年3月期からの本格的なデータ収集に向けて、引き続き提出データの確認やデータ精度の更なる向上等の働きかけを行う。
      • 併せて、金融機関の負担軽減に向けて、高粒度データによる既存計表代替の可否の確認作業を進める。
    • オペレーションの効率化
      • データ提出にかかる金融機関の負担軽減や、金融庁・日本銀行でのデータクレンジング(データの確認・修正等正確性の向上作業)の短期化・効率化を図る観点から、形式的なエラー等を検知・修正可能なツール等の開発を検討する。
      • データクレンジング作業におけるチェック項目の見直しや処理の一段の自動化等、金融庁・日本銀行のオペレーションの改善に向けた取組みを継続する。
    • モニタリング・分析の高度化等
      • 高粒度データを使ったより解像度の高いモニタリングや分析の手法の検討を継続し、金融・経済環境が変化する中での金融システムのリスクの把握等に繋げる。
      • 以上の取組みを着実に進めたうえで、より網羅的かつ的確なモニタリング・分析に向けて、提出項目の見直しを行うとともに、対象金融機関の拡大等を検討する。

金融庁 「マネー・ローンダリング等対策の取組と課題(2024年6月)」の公表について
▼ 「マネー・ローンダリング等対策の取組と課題(2024年6月)」
  • 新たな金融セクターの現状
    1. 第一種資金移動業を営む資金移動業者
      • 資金移動業は、取引額の上限によって第一種から第三種までの3類型に分類されており、第一種資金移動業については取引額の上限が設けられていない。
      • 第一種資金移動業は海外送金を含め、個人による高額商品・サービスの購入や企業間決済の際に利用するなど、従来の送金上限額を超える利用者のニーズに応えるために新たに創設された。高額の為替取引を扱うことが可能となり、マネロン等リスクも相対的に高まることから、資金移動業者は第二種・第三種よりも一層堅牢なリスク管理態勢を整備することが求められる。
      • 2024年以降、新たに2社が第一種資金移動業の認可を受けており、2024年6月現在、第一種資金移動業を営む資金移動業者は4社となっている。
    2. 電子決済手段
      • 我が国では、デジタルマネー類似型ステーブルコインは電子決済手段、暗号資産型ステーブルコインは暗号資産や有価証券として規制されている。
      • 近年、ステーブルコイン発行に向け、海外送金業務を手掛ける資金移動業者がスタートアップ企業との業務提携を発表したほか、大手信託銀行を始めとする複数の金融機関等が発行や活用に向けた共同検討を開始する等、ステーブルコインの発行・実用化に向けた動きが活発化している。
      • ステーブルコインについては、匿名性が高いこと、国境を越えて瞬時に移転が可能であること、資金源の偽装を図る取引に悪用される可能性があること等、暗号資産と同様の脆弱性がFATFのレポートで指摘されており、広範な利用が見込まれることも合わせると、マネロン等リスクの高まりが想定される。
      • 2024年6月時点では、我が国において電子決済手段の発行は確認されていないものの、将来的に幅広い分野で送金・決済手段として用いられる可能性がある。
      • 電子決済手段等取引業者においては、環境の変化に伴うリスクの変化を機動的に捉え、適時適切にリスクの低減を図りつつ、利用者のニーズに応じたサービスを提供していくことが期待される。
    3. 高額電子移転可能型前払式支払手段
      • 高額電子移転可能型前払式支払手段については、高額のチャージや、多額の譲渡を実際に行っている利用者は限られるとみられるものの、かねてより前払式支払手段がマネー・ローンダリングに悪用される事例が指摘されているほか、例えば、国際ブランドの前払式支払手段では、数千万円のチャージが可能なサービスも提供されているなど、マネロン等に利用される危険は高いと考えられる。
      • 高額電子移転可能型前払式支払手段の発行者に対しては業務実施計画の届出が求められることとなっており、特定事業者としてリスク管理態勢を整備することが重要である。
  • 態勢整備状況の確認
    • 2024年3月、金融庁等は、金融機関等に対し、ガイドライン対応の期限である3月末時点における対応結果を4月末までに報告することを求めた。
    • 当該対応結果の報告を集計した結果、2024年3月末時点の金融機関等におけるガイドライン対応の完了率は99%であった。
    • これまでの取組を振り返ると、ターゲット検査実施当初は、FATF第4次対日相互審査を受けて改訂・策定したガイドラインやFAQが公表されて間もなかったこともあり、リスクの特定・評価・低減措置といったリスク管理の根幹となる態勢整備が不十分な先や、ガイドラインとのギャップを金融機関等自ら分析する自己評価と検査での検証結果に乖離が生じる先が多く見受けられた。
    • ガイドライン対応の期限が近づくに従って、こうした態勢の不備や自己評価との乖離は少なくなっていった。これは、前述の業界団体と連携した取組やアウトリーチ等も踏まえ、各金融機関等において、経営トップのリーダーシップの下、求められる内容の理解が進み、態勢整備が進展したことが要因と推測される。
    • また、前述のとおり、大方の金融機関等からガイドライン対応が完了したとの報告があったことを踏まえれば、対応期限を定めた集中的な取組が一定の効果を発揮したものと認識している。
  • マネロン等対策に係る2024年4月以降の金融庁の対応
    • 金融機関等においては、2024年3月末にガイドラインに基づく態勢整備期限が到来したことを踏まえ、2024年4月以降、RBAを高度化させるとともに、整備した態勢の有効性を更に向上させていく必要がある。
    • 態勢の有効性を向上させるに当たっては、当然のことながら、態勢整備が完了していることが前提となる。そこで、金融庁としては、2024年4月以降、まずは、金融機関等が2024年3月末の期限までに必要な対応を実施したことを確認し、態勢整備が完了していない場合には早急な対応を求めていく。
    • 具体的には、期限までに必要な対応を完了しなかった金融機関等については、必要に応じて、その理由や今後の対応計画等を個別に確認した上で、適宜、個別に行政対応を検討・実施していく。
    • また、期限までに必要な対応を完了した旨報告があった場合においても、今後、対応が著しく不十分であることが判明した場合には、必要に応じて個別に行政対応を検討・実施していく。
    • 他方、金融機関等における態勢の有効性向上の取組を支援していくことも重要であり、金融機関等が実施する有効性の検証等の取組について事例や参考となる考え方などを整理し、公表・共有に向けた検討も進めていく。
  • マネロン等対策に係る業務の共同化
    • 我が国においては、金融機関等における取引モニタリング等システムの誤検知率が非常に高く、FATF第4次対日相互審査においても、大量の誤検知を手作業でチェックする作業が経営資源の活用に制約を加えているという指摘がなされるなど、中核的な業務である取引モニタリング等の高度化・効率化を図ることが喫緊の課題となっている。
    • 他方、こうした課題に対応していくためには、システム整備や人材確保等の面で負担が大きく、金融機関等が単独で対応するには限界があるといった問題もあったことから、2022年6月に資金決済法が改正されたことを受け、金融庁は、制度的対応として複数の銀行等の委託を受けて為替取引の分析等を行う「為替取引分析業」を創設、許可制を導入するとともに、2023年6月から「為替取引分析業者向けの総合的な監督指針」を適用するなど、監督体制の整備を図ってきた。
      1. 為替取引分析業者の役割・対応方針
        • 為替取引分析業に係る許可申請を提出した事業者に対し、審査を実施の上、これまで3事業者に対して許可を行った。
        • 為替取引分析業は金融機関等におけるマネロン等対策の中核的な業務を受託して行うものであり、為替取引分析業者には、自らが提供する取引モニタリング等の有効性をより高い水準で確保しつつ、金融機関等におけるマネロン等対策の有効性の向上に資する役割が求められている。
        • 金融庁としては、金融機関等が個別に抱えている困難な課題等を解決し、金融セクター全体の高度化・効率化を図っていくため、為替取引分析業者が運用する共同システム及び提供するサービスを利用することが有効と考えている。為替取引分析業者の取組が、金融機関等における取引モニタリング等の有効性の向上に資するものとなるよう、検査・モニタリングを強化していく。
        • なお、金融機関等は、自らのリスクに応じた対応が求められており、その責任は金融機関等自身に帰属することから、為替取引分析業者を利用する場合であっても、委託する業務について一任することなく、各金融機関等においても提供を受けるサービスの品質を確認し、必要に応じ自ら追加の対応等を行う必要がある。
      2. マネー・ローンダリング等対策高度化推進事業
        • 「マネー・ローンダリング等対策高度化推進事業」とは、金融業界全体のマネロン等対策の高度化・実効性の向上を適切かつ迅速に推進することを目的とし、複数の金融機関で利用可能なAI等の技術を活用したシステム開発・実装に係る経費の一部に補助金を交付するものである。当事業に係る経費について令和4年度第2次補正予算にて措置を行った。2023年1月に補助事業者の公募を開始し、同年3月に、外部有識者による審査結果を踏まえて選定した補助事業者2社を公表した。
        • 2024年3月に補助事業実施期間が終了し、同年4月、選定された2社に対し、補助金を交付した。
  • 継続的顧客管理に関する課題
    • 継続的顧客管理の実施に当たっては、金融機関等が自らの全顧客のリスク評価を実施し、そのリスクに応じた頻度・深度により顧客情報の確認・更新を行っている。顧客情報の確認には、ダイレクトメール等で調査票を送付するなどして対応している金融機関等が多い。しかしながら、顧客からの回答が得られないケースが散見され、回答率の向上や郵送以外の顧客情報の確認手段が課題となっている。こうした中、金融庁等としては、各金融機関等の以下の取組を把握した。
    • 【取組事例】
      • 顧客に自動音声電話又はSMS送信で案内している。
      • 顧客が来店した際、窓口担当者が端末画面で情報更新が必要な顧客かどうか確認できるようになっている。
      • 営業店ごとの目標回答率を設定し、業績評価にも反映させている。
      • ATMの取引画面や取引明細書等に、情報更新依頼や読み取ると情報更新手続に進む二次元コード等を表示させている。
    • また、金融機関等が継続的顧客管理を円滑に進めるためには、顧客の理解と協力が不可欠である。こうした観点から、金融庁等や業界団体は、一般利用者に向けて、情報発信や広報活動を行っている。
    • これまでも、政府広報媒体も活用して金融機関等が行っている継続的顧客管理への理解を求める広報に取り組んできたが、2023年7月以降、金融機関等による利用者情報の更新への協力依頼に加えて、情報更新の必要性等について簡潔に解説するための動画を作成し、金融庁ウェブサイト及び金融庁公式YouTubeチャンネル上で公開した。
    • くわえて、近年、売買等によって不正に取得された法人名義の預貯金口座を利用する特殊詐欺等の犯罪が多発している状況を踏まえ、2024年1月に、警察庁と連名でマネロン等対策に係る法人向けチラシを作成し、業界団体に配布した。
    • 今後、業界団体との連携を強化し、より一体的かつ集中的な広報活動を展開する予定としており、関係省庁とともに、広く国民に継続的顧客管理への理解・協力を求めていく。
  • 暗号資産交換業者におけるトラベル・ルールの運用状況
    • 2023年6月にFATFが公表した「暗号資産及び暗号資産交換業者に関するFATF基準の実施状況についての報告書」では、調査に回答した法域のうち半数以上がトラベル・ルールの実施に向けた措置を講じておらず、世界的な基準遵守状況は依然として不十分であるとの見解が示されている。
    • さらに、FATFは、勧告15の実施促進の観点から、2024年3月には、FATF全加盟法域と重要な暗号資産活動のある法域を対象として、基準の実施状況等に係る一覧表を公表した。FATFは、こうした取組が、重要な暗号資産活動がある法域に対する支援の促進を図るとともに、規制・監督当局のみならず、民間セクターにおいても、暗号資産活動が重要な法域における法整備等の基準実施状況や当該国に所在する暗号資産交換業者との取引をリスクベースで自ら見極める一助となることを期待している。
    • こうした中、我が国は犯収法等を改正し、2023年6月以降、暗号資産交換業者に対し、暗号資産を移転する際、移転先の暗号資産交換業者への送付人及び受取人情報の通知を義務付けた。
    • 金融庁等は、定期的なヒアリング等を通じ、トラベル・ルールの運用状況をモニタリングしている。その結果、以下のような対応が不十分な事例が認められており、各暗号資産交換業者においては、これらの事例も参考に自らの運用状況を継続的に検証し、態勢の整備を進めていくことが求められる。(犯収法第10条の5(暗号資産の移転に係る通知義務)関係)
      • 暗号資産交換業者A社は、通知システム(情報通知インフラとしてのコンプライアンスツール)の互換性がない暗号資産交換業者に対し、必要な通知を行わずに暗号資産を移転した。
      • 暗号資産交換業者B社は、顧客から暗号資産の外部への移転指示を受けた際、顧客が提示した移転先がトラベル・ルールの対象法域の外国暗号資産交換業者であるかどうかの調査を完了させていないにもかかわらず、移転先である法域対象国の外国暗号資産交換業者が管理するウォレットをアンホステッド・ウォレット34と同等の扱いとして、通知を行わないまま暗号資産を移転した。
      • 暗号資産交換業者C社は、顧客から暗号資産の外部への移転指示を受けた際、所定のリストから移転先を顧客に選択させる仕様としていた。こうした中、C社は、リストで示した移転先が、非要通知先から要通知先に変わっているかどうか十分に調査・確認していなかったことから、移転先の暗号資産交換業者が非要通知先から要通知先へ変わっていたにもかかわらず、当該暗号資産交換業者への通知を行わないまま暗号資産を移転した。
  • マネロン等リスク管理態勢の有効性検証
    1. 有効性検証態勢に係るモニタリングの実施
      • 金融庁において、マネロン等リスクに応じ必要な態勢整備を完了させた一部の金融機関(以下「金融庁によるモニタリング対象先金融機関」)に対し、ガイドラインで求められる有効性検証の取組状況についてモニタリングを実施した。
      • ガイドラインでは、金融機関等の管理部門及び内部監査部門が、リスクの特定・評価・低減のための方針・手続・計画等を含むマネロン等対策の有効性を不断に検証すること及びそのための態勢を整備すること並びに個々のリスク低減措置について個別に有効性を検証することを求めている。上述のとおり、2024年4月以降は、このような検証を踏まえた、リスク管理態勢の高度化及び実効性確保に資する取組がより重要となる。
    2. リスクの特定・評価・低減に係る有効性検証に関する取組事例
      • 金融庁によるモニタリング対象先金融機関では、ガイドラインを踏まえ、(1)顧客属性・取引内容等に鑑みたリスク低減措置の有効性、(2)異常/不正取引抽出措置の有効性、(3)データ管理措置の有効性等を検証している【図表6】。これらは検証時期、要件、主体等を定めたマニュアル及びリスク管理態勢に係る有効性検証計画に従って実施され、その結果を受け、経営陣の関与の下、方針・手続・計画等の見直し等が行われている。
      • 金融庁によるモニタリング対象先金融機関における取組状況の概要は以下のとおりである。
        • 顧客属性・取引内容等に鑑みたリスク低減措置の有効性
          • 顧客全体のリスクの特定及び評価結果によるリスク分布が、自らのリスク認識と整合的であることを確認
          • 高リスク類型顧客に対する追加的リスク低減措置を整理した上で、顧客リスクが許容可能な水準まで確実に低減されているかを精査
          • 高リスク類型顧客に対するデュー・ディリジェンスの実施状況を、顧客から受領したKYCに関する質問票回答のサンプル等を用いて再確認
          • 疑わしい取引の届出実績の分析により、特にリスクが高い取引種別、顧客属性・グループ、取引チャネル等を特定し、それらに対する現行のリスク低減措置の十分性を確認
        • 異常/不正取引抽出措置の有効性
          • 取引モニタリングにおける現行の抽出基準(シナリオ・敷居値等)により、不審又は不自然な取引を適切かつ効率的に検知できているかを、内外情報(アラート生成数、疑わしい取引の届出件数、当局による疑わしい取引の参考事例情報、捜査機関からの情報・口座凍結要請等)に照らし検証
          • 取引フィルタリングに用いるリスト及び取引フィルタリングシステムに設定された検知基準により、不正又はその可能性がある取引を適切かつ効率的に検知できているかを、当局情報や関連ダミーデータを用いたシミュレーション等により検証
        • データ管理措置の有効性
          • 関連ITシステムに連携されたデータ(顧客・口座・取引等)について、必要な情報が全て揃っていて欠損等がないことを、上流システム(勘定系・情報系システム等)が保有するデータに照らし確認
          • 関連ITシステムに登録されるデータの正確性について、元情報や想定されるデータ型(利用可能な記号種、空白の入力可否等)に照らし検証
    3. 有効性検証を実施するための態勢整備や手法に関する事例
      • 金融庁によるモニタリング対象先金融機関では、上記の有効性検証を実施するための態勢整備や実施手法の整理を行っている。個別のリスク低減措置の有効性検証の実施のみにとどまらず、方針・手続・計画の検証及び見直しを行うことで、リスク管理態勢の高度化を図っている。
      • 具体的には、検証対象とする方針・手続・計画等をリスクベースで(例えば全社的リスク評価の過程で)選定し「検証項目」とした上で、その有効性を検証している。方針・手続・計画は、前述の(1)顧客属性・取引内容等に鑑みたリスク低減措置、(2)異常/不正取引抽出措置、(3)データ管理措置に係る取組を含め、包括的に検証されている。
      • 金融庁によるモニタリング対象先金融機関における第2線部署では、10~50程度の検証項目を検証目的に応じて選定した上で、項目ごとの検証時期や検証手法を定めた、リスク管理態勢の有効性検証計画を定期的に策定している。検証計画、検証結果を踏まえた必要な対応等は、上級管理職の関与をもって協議及び決定される。
      • 第2線部署における有効性検証の手法としては、各規程等に定める措置の十分性や、業務記録のサンプル調査により規程等の遵守状況を検証する、などの取組が見受けられた。検証手法は検証対象業務の特性等を踏まえて決定されている。
      • 金融庁によるモニタリング対象先金融機関の第3線部署では、リスク評価を第3線部署独自の手法により再実施の上、年次監査計画を策定している。
      • 第3線部署が被監査部門の業務の遂行状況を検証するに当たり、第3線部署が自らの視点で検証するか、第2線部署における検証の適切性を確認するにとどめるか、あるいは双方を組み合わせた検証を実施するかを、監査項目ごとに選択している事例が確認された。
    4. 有効性検証に係る金融庁の着眼点
      • 金融機関等は、上記1.のとおり、ガイドラインに従い、リスク管理態勢の有効性を検証することを求められているが、特定の時点での取組にとどまることなく、FATF第5次対日相互審査も見据え、金融機関等は継続的に自らのマネロン等対策の有効性検証を実施し、リスク管理態勢を維持・高度化していく必要がある。
      • 金融庁としても、前述の有効性検証等の取組事例に加え、既に述べたとおり、金融機関等が実施する有効性の検証等の取組について事例や参考となる考え方などを整理し、公表・共有に向けた検討を進めていく。
  • 「マネロン・テロ資金供与対策ガイドラインに関するよくあるご質問(FAQ)」の改訂
    • 2024年4月、金融庁は、金融機関等によるリスク分析に基づく創意工夫・主体的な対応をより一層促進するため、金融機関等の意見・要望を踏まえ、FAQを一部改訂した。今後も各金融機関等のマネロン等対策の実効性向上に資するよう、ガイドラインやFAQの改訂は機動的に行っていく。改訂の主なポイントは以下のとおりである。
      1. 顧客管理
        1. 自らのリスク分析を踏まえた柔軟な顧客管理措置の促進
          1. リスクに応じた簡素な顧客管理
            • リスクに応じた簡素な顧客管理(以下「SDD」)の適用対象顧客とできる要件である「対象顧客は低リスク先顧客であること」「対象顧客の口座を取引モニタリング検知対象とすること」「対象顧客であっても情報更新された場合は顧客リスク評価を見直すこと」の3点に加え、これらの要件を満たした上で、自らの顧客等のリスク分析を踏まえてSDDの適用対象顧客を選定することができる旨を明確化した。
            • 従来は上記に加えて、「法人・営業性個人ではないこと」「本人確認済みであること」「直近1年間において捜査機関等からの外部照会及び口座凍結依頼を受けた実績がある顧客や疑わしい取引の届出実績のある顧客でないこと」の3点も要件としていた。これらは、金融機関等がリスク分析を行うに当たって考慮すべきポイントではあるものの、これら3点に合致しない顧客を一律にSDD対象外とすることは必須ではない。よって、これら3点は要件ではなく、リスク分析に当たって考慮することが考えられる点として注書きに記載することとした。金融機関等が対応に当たって留意すべき点は以下のとおり。
              • 注書きに記載した点に該当する顧客をSDDの適用対象外とする取扱いを継続することに問題はないと考えられる。
              • 新たな基準でSDD対象を選定する場合、自らのSDD対象顧客群のリスクを分析し、SDDを適用することが妥当である旨の検証することが考えられる。
          2. 顧客情報更新の頻度
            • 顧客のリスクに応じた定期的な顧客情報更新の実施に当たって、金融機関等が自らの直面するマネロン等リスクを検証し、顧客情報更新の頻度を自ら決定できる旨を明確化した。
            • 今般、高リスク先については1年に1度、中リスク先については2年に1度、低リスク先については3年に1度といった頻度で情報更新を行う点はあくまで例示であることを明確化した。また、例示によらず顧客情報更新の頻度を自ら決定する場合は、全顧客のリスク格付を行っていることを前提として、更新頻度が顧客リスク評価を適切に行うために妥当か検証し、経営陣に報告の上適切な頻度を定めること、以降も定期的に更新頻度の妥当性に問題がないことを検証することが考えられる旨を明確化した。金融機関等が対応に当たって留意すべき点は以下のとおり。
              • 高リスク先について1年に1度、中リスク先について2年に1度、低リスク先について3年に1度の頻度での顧客情報更新を継続する金融機関等においては、従来の対応を継続して問題ないと考えられる。
              • 金融機関等が、自ら顧客情報更新頻度を検討する際には、情報更新が必要であると判断した全顧客のリスク評価見直しを一度は実施していることが前提となると考えられる。
              • 金融機関等が自ら顧客情報更新頻度を検討するに当たって、情報更新実施手順や妥当性検証の手順等を規程等に定めること及び経営陣の関与、実施・検討内容・意思決定等の証跡確保等も必要と考えられる。
        2. 調査に応ずることがない顧客のリスク評価
          • 情報更新に有効であると考えられるあらゆる手段を講じても顧客が調査に応ずることがない場合、当該顧客等のリスクを分析し、適切に自らの顧客リスク評価に反映することが考えられる。
          • 金融機関等が定期的に情報を更新することが必要と判断した顧客に対しては、当該顧客の情報更新に有効であると考えられるあらゆる手段を講じて情報を更新することが重要である点は引き続き変わらない。
          • あらゆる手段を講じてもなお情報更新できない顧客については、その事実のみをもって必ずしも高リスクとする必要はなく、取引履歴データ等を踏まえて顧客等のリスクを分析し、分析結果を顧客リスク評価に反映すること及びこうした顧客群の管理状況・評価結果等の妥当性が定期的に検証され経営陣に報告されていることが必要であることを明確化したものである。
        3. 国際機関PEPsに関する記載の明確化
          • 国際機関PEPsについても、国内PEPsや他の顧客と同様にリスクに応じた対応が必要である点を明確化し、併せて国際機関PEPsの定義を記載した。
          • 本項における今般の改訂は、全ての国内PEPs・国際機関PEPsに対する何らかのリストを利用したスクリーニングを一律に行うことや、全ての国内PEPs・国際機関PEPsに対して一律にEDD38を行うことを示したものではない。他の顧客と同様に、国内PEPs・国際機関PEPsについても、リスク評価を行い、リスクに応じた顧客管理を行うことが考えられることを明確化したものである。
      2. 取引モニタリング・フィルタリング
        • ガイドラインでは、金融機関等に対して、国際連合安全保障理事会決議等で経済制裁対象者等が指定された際に、遅滞なく照合するなど、国内外の制裁に係る法規制等の遵守その他リスクに応じた必要な措置を講ずることを求めている。
        • 遅滞なく照合するための金融機関等における具体的な対応として、外務省告示の発出日以降、金融機関等は、速やかに制裁対象者リストの更新に着手し、合理的な期日までに差分照合を完了することが考えられることを明確化した。
        • 具体的には、従来は、国際連合安全保障理事会決議等で経済制裁対象者等が指定されてから遅くとも24時間以内に自らの制裁リストに取り込み、取引フィルタリングを行い、各金融機関等において既存顧客との差分照合が直ちに実施されているところであるが、今般の改訂で、財務省が金融機関等に示している基準と整合させた。今後は、改訂後の内容を踏まえて対応することで差し支えないと考えている。
  • フォーラムを終えての感想
    • マネロン等対策は営業面で競合する分野ではなく、地域でマネロン等対策に取り組んでいる姿勢を示すことが顧客の安心・安全につながるため、連携して取り組んでいきたい。(地方銀行)
    • 継続的顧客管理に係る他行の取組事例は、課題である回答率の向上に大変参考になった。(第二地方銀行)
    • 第二地方銀行の中では情報を発信する側だったため、地銀とも意見交換できたことが大変有意義だった。(第二地方銀行)
    • 技術的な面も含めて他金融機関の事例を聞くことができ、大変参考になった。(信用金庫)
    • 2024年3月末に向けて態勢整備を進めていたところ、フォーラムによってかなり疑問点が解消された。(信用組合)
    • 今後は、業容、営業地域、顧客特性等が似通った金融機関でグルーピングして議論するというのも有益(地方銀行)
    • 当局から対面で解決策や参考事例について共有いただけたのが非常に有難かった。今後も対面での開催を希望(地方銀行)
    • 今後は金融犯罪防止の取組も情報交換していきたい。(地方銀行)
  • 直近のFATF基準改訂状況
    • FATFは、2023年10月に、財産回復(勧告4及び38)及びNPO(勧告8)に係る勧告を改訂した。さらには、2024年2月、改訂勧告25(法的取極)に係るガイダンスを採択し、法人及び法的取極の実質的支配者の透明性向上に向けた一連の作業を完了させた。
    • また、クロスボーダー送金の改善に向けたG20における取組、新たな決済手段や送金事業者の登場等による決済市場の構造変化、ISO20022の決済規格等の標準化の動きも踏まえ、FATFでは、現在、FATF基準の技術的中立性や”same activity,same risk, same rules”原則に則り、電信送金(勧告16)に係る基準の改訂作業に取り組んでいる。
    • FATFでは、市中協議(2024年2月~2024年5月)や官民対話を実施してきたところであるが、本勧告改訂は、民間事業者への影響が大きくなり得ること、クロスボーダー送金のコスト・スピードの改善や金融包摂など他の政策目的との両立を図る必要があること、勧告自体が高度に技術的かつ複雑であるといった特性を有する。
    • 金融庁としては、これらを踏まえ、引き続き、関係省庁・民間事業者等と緊密に意見交換を行いながら、勧告の最終化等に適切に対応していく方針である。
  • FATF基準改訂を踏まえた政府による主な取組
    • 法人及び法的取極の透明性向上に関する取組(勧告24、25関係)
      • 政府として、株式会社を対象とした仕組みの構築を優先的に実施することと整理し、法人の透明性向上に関する取組について検討を進めた。また、外国で設立された法人や外国信託等について、本邦においてマネロン等に悪用されるリスクの評価を実施する等、検討結果を踏まえ、今後3年間で取り組むべき対応内容を行動計画(2024-2026年度)に取りまとめた。
    • 財産回復に関する取組(勧告4及び勧告38関係)
      • 政府は、2023年10月にFATFにて採択された財産回復に係る勧告改訂等を踏まえ、2026年度末までに取り組むべき対応方針につき、行動計画(2024-2026年度)に取りまとめた。
    • NPOのテロ資金供与目的での悪用防止に関する取組(勧告8関係)
      • NPOセクターのテロ資金供与目的での悪用リスクに対して、正当なNPO活動を不当に遮ることのないよう、2023年10月、焦点を絞った、比例的かつリスクに応じた措置が効果的な取組の中核となることを明確化する勧告改訂案等が取りまとめられた。これも踏まえ、令和7年度末までに取り組むべき対応内容を行動計画(2024-2026年度)に取りまとめた。
  • フィッシング対策
    • 我が国のインターネットバンキングに係る不正送金事犯については、昨年に引き続き増加傾向にあり、2023年は発生件数が5,578件、被害総額は約87.3億円と過去最多となっている(それぞれ前年比で391.0%、474.6%増加)。
    • 同事犯の多くは、フィッシングによるものと考えられるところ、同事犯に対応するため、各金融機関等によるフィッシング対策の高度化が喫緊の課題となっている。
    • 金融庁は、2022年9月、警察庁と連名で、全国銀行協会(以下「全銀協」)等に対し、DMARCの導入やフィッシングサイトのテイクダウン等を含む不正送金対策の強化を要請したほか、2023年12月、同事犯に係る注意喚起を警察庁、全銀協及び日本サイバー犯罪対策センターと連携して行っている49。また、各金融機関等においてもアプリやウェブサイト上での表示・掲載、店頭でのチラシの配布等により、利用者向けの注意喚起を実施している。
    • フィッシングの特徴としては、常に他金融機関等比で脆弱な金融機関等に標的が移ることや、金融機関側が対策を講ずるたびに新たなフィッシング手口による攻撃が行われることにある。そのため、絶えずフィッシング対策の情報収集を行い、フィッシングの最新の手口や他の金融機関等のフィッシング対策の取組状況等を把握する必要がある。
    • 以下、金融庁がモニタリングにより把握した各金融機関等のフィッシング対策の取組状況を列挙する。各金融機関等は、これに限らず他の金融機関等や業界団体と連携し、日々対策を高度化していくことが求められる。
      • 普段と異なる利用環境からのアクセスを適時・適切に捕捉するシステムを導入し、リアルタイムでのログイン謝絶や送金保留を実施
      • 不正送金事犯で使用されたIPアドレスや端末情報をブラックリスト化し、リスト登録先からのログインを自動謝絶
      • モアタイム中(夜間)の振込上限額の変更依頼や新規振込先への送金依頼を自動保留し、即時での反映は行わず、翌営業日以降に反映
  • 暗号資産交換業者宛ての不正送金対策
    • 昨今、インターネットバンキングによる不正送金事犯や特殊詐欺事案において、暗号資産交換業者が所有する預貯金口座を利用した不正送金被害が多発している。
    • こうした状況を踏まえて、2024年2月、金融庁と警察庁は連名で、全銀協を始めとする関連業界団体等へ利用者保護等のためのリスクベースによる更なる対策の強化等を要請している。本要請においては下記2点の対策が参考事例として挙げられているが、各金融機関等はこれに限らず他の金融機関等や業界団体等と連携し、対策を不断に高度化していくことが期待される。
    • 対策事例の1点目は、振込名義変更(異名義)による暗号資産交換業者への送金停止等である。金融庁にてモニタリングを行った金融機関では、既にインターネットバンキングにおける振込名義変更による暗号資産交換業者への送金をシステムで検知し、自動で事前停止しているなどの取組が多く見受けられた。
    • 対策事例の2点目は、暗号資産交換業者への不正な送金への監視強化である。前述したフィッシング対策や、後述する口座の不正利用対策の内容の中には、暗号資産交換業者宛ての不正送金の監視にも有益となる取組が含まれている。また、下記のような暗号資産交換業者に特化した検知の仕組みや不正利用実態の調査・分析などが含まれる。
    • 暗号資産交換業者宛ての送金の中でも、特にリスクが高いと判断された取引やその取引に関連した個人及び法人に対する深堀調査、必要に応じてインターネットバンキングの利用制限を実施
    • ネットワーク分析を行い、不正利用の疑いが強い口座名義人に関連する個人・法人を特定して、組織的犯罪集団の疑いがあるケースとして深堀調査を実施
  • 預貯金口座の不正利用対策等
    • 近年、特殊詐欺の被害やフィッシング被害が増加しており預貯金口座の不正利用件数も増加傾向にある。
    • 金融庁は、口座の不正利用対策に関して金融機関等に対する継続的なモニタリングを行っており、以下の傾向を把握した。
      • 非対面にて開設された口座は対面で開設された口座よりも不正利用されやすい。
      • 新規に開設された口座(開設後約1年未満の口座)は既存の口座よりも不正利用されやすい。
    • 以下では、口座の不正利用対策として先進的な取組を紹介する。なお、こうした先進的な取組を行っている金融機関等の多くにおいて口座の自主凍結の件数が、警察等からの凍結要請の件数を上回っていた。
      1. 検知及び検知後対応の即時性(リアルタイムモニタリング)
        • 24時間体制で、送金等個別取引の自動保留、自動謝絶や速やかな口座の凍結対応等を実施
      2. 預貯金口座凍結の判断基準の精緻化・明文化
        • 属人的な判断能力やノウハウに頼ることなく口座凍結の判断基準を明確に設定し、規程やマニュアル等にて明文化
      3. 取引モニタリングシナリオや預貯金口座の凍結の判断基準の機動的な見直し
        • 口座の売買・譲渡や収納代行などに見られる特有の挙動・振舞いに着目し、きめ細やかなモニタリングシナリオを設定
        • 不正利用の検知基準向上のため、日々の業務の中で把握した傾向等を、数日以内に既存のモニタリングシナリオや判断基準に反映
        • モニタリングシナリオや判断基準の見直しを、月次以上の頻度で実施。くわえて、定期的にシナリオや敷居値の有効性を検証
        • 金融庁は、これまでのモニタリングを通じて、相対的に対策が劣る金融機関等では口座の不正利用が増加する傾向を把握している。他方で、口座凍結に積極的に取り組む金融機関等では不正利用が抑止・減少する傾向にある。
        • 各金融機関等は、積極的・機動的な情報交換を行うとともに、他の金融機関等の取組を参考にしつつ、自らの口座不正利用対策に劣っている点がないか、また、改善・高度化の余地がないか、感度を高く保つことが重要である。
  • 法人名義の預貯金口座の悪用への対応
    • 法人名義の預貯金口座は、一般的に個人名義の口座と比較して、振込限度額が高額あるいは上限設定がない場合が多く、例えば、短期間で多頻度の入出金が繰り返される場合であっても、通常の商取引に係る決済・送金と不正な入出金とを明確に区別をすることは、金融機関等にとって困難な場合が多くみられる。
    • また、金融機関等が正規に利用されている法人名義の口座を誤って口座凍結・取引停止した場合、当該法人の事業運営及び継続、資金繰り等に多大な影響を与えるおそれがあることについて、金融機関等としては、不正利用が疑われる場合であっても法人名義の口座への対応には慎重になる傾向がある。
    • これらの特徴を含め、詐欺等のために口座の不正利用を企図する者にとっては、法人名義の口座の買入れ・譲受けを志向するものと考えられる。
    • 各金融機関等における法人名義の口座の取引モニタリングに当たっては、インターネットバンキングの接続場所や端末、申告された事業の特性と入出金との整合性等、通常の商取引に係る取引とは異なる取引を検知するため、これまで以上に法人顧客について、リスクに応じた適切な顧客理解を深めることが期待される。
  • 偽造本人確認書類を用いた預貯金口座開設への対応
    • 特殊詐欺やSNS型投資詐欺・ロマンス詐欺53など預貯金口座への振込みにより他人の金銭を詐取する類いの犯罪において、架空・他人名義の口座が振込先として悪用されている例が多数みられる。
    • このように不正に利用される振込先口座には、本人確認書類(運転免許証等)の偽造等により不正に開設されたものもある。インターネット上には、偽造本人確認書類の販売や本人確認書類の偽造等の請負に関するウェブサイトが存在し、精巧な偽造書類を比較的容易に入手することが可能となっている。そのため、金融機関等にとって、本人確認書類の偽造等への対応を始め、不正な手段による口座開設への対策は急務である。特に、顧客と対面することなく口座開設を受け付ける場合には、本人確認書類自体の手触りや質感等を確認することができず、偽造等を看破することが困難であることから、本人特定事項の確認方法の特性に応じた対応を検討する必要がある。後述の「国民を詐欺から守るための総合対策」では、口座の不正利用防止対策の強化等として、非対面、対面ともに公的個人認証による本人確認を行うこととしている。
    • なお、本人確認書類の偽造等を識別するために金融機関等では、以下のような対策が講じられている。
      • 本人確認書類の偽造に関し、手口等の特徴を分析して審査に活用
      • 偽造本人確認書類の識別能力を向上するためシステム化を推進
      • 口座開設数の増加に応じ、行内のリソース確保や業務委託先との連携を含め、適切な審査体制を整備
    • また、本人確認書類の偽造等に対し高い耐性を持つと考えられる本人確認方法としては、犯収法施行規則第6条第1項第1号ヘ・ト・チに規定する本人確認書類のICチップに記録された情報の送信を受ける方法のほか、同号ワに規定する公的個人認証サービスを利用する方法があり、今後、一層の利用拡大が期待される。また、対面での本人確認においても、本人確認書類の提示に加え、ICチップ情報の確認を行うことも偽造本人確認書類を見分ける上で効果的である。
▼ 「マネー・ローンダリング等対策の取組と課題(2024年6月)」(概要)
  • 「マネロンガイドライン」に基づく態勢整備の期限を迎え、今後はFATF第4次対日相互審査での指摘への対応〔第2章〕から第5次対日相互審査審査に向けた実効性の向上〔第3章〕に視点を移していくことが必要。
  • 特殊詐欺事案等の急増とこれらにおける金融サービスの不正利用対策〔第4章〕は目下の最重要課題
  • 第1章 日本政府におけるマネロン等対策の取組
    1. 「マネロン・テロ資金供与・拡散金融対策に関する行動計画(2024-2026年度)」の策定
      • 「マネロン・テロ資金供与・拡散金融対策に関する行動計画(2024-2026年度)」のうち、金融庁関連部分の概要
    2. 金融庁におけるリスクベース・アプローチの取組
      • 当庁のリスクベース・アプローチ手法としての金融セクター分析とCRR
    3. 新たな金融セクターの現状
      • 近年登場した金融セクター(第一種資金移動業を営む資金移動業者、電子決済手段、高額電子移転可能型前払式支払手段)の現状
  • 第2章 FATF第4次対日相互審査での指摘対応を含めた基礎的な態勢の整備
    1. 2024年3月末までの態勢整備状況
      • FATF第4次審査での指摘を踏まえ各金融機関に要請していた態勢整備に関する、現状の把握やターゲット検査・アウトリーチ等の取組
    2. マネロン等対策に係る2024年4月以降の金融庁の対応
      • 上記1.で取りまとめた現状を踏まえた行政対応を含む今後の対応
    3. マネロン等対策に係る業務の共同化
      • 為替取引分析業による取引モニリング等の高度化の取組
    4. 継続的顧客管理に関する課題
      • 円滑に継続的顧客管理を進めるための官民一体での情報発信・広報
    5. 暗号資産交換業者におけるトラベル・ルールの運用状況
  • 第3章 FATF第5次対日相互審査を見据えた実効性向上に向けた取組
    1. マネロン等リスク管理態勢の有効性検証
      • 有効性検証に関するモニタリング結果と取組事例
    2. 「マネロン・テロ資金供与対策ガイドラインに関するよくあるご質問(FAQ)」の改訂
      • 金融機関の主体的な対応を促すためのFAQ改訂(24年4月公表)
    3. 各地域における金融機関等の連携強化(業態横断フォーラム)
      • 各地域における「業態横断フォーラム」の概要・結果
    4. FATF基準改訂も踏まえた対策の実効性向上
  • 第4章 金融サービスの不正利用対策
    1. インターネットバンキング不正送金対策強化
      • フィッシング対策
      • 暗号資産交換業者への異名義送金の停止等とモニタリングの強化
    2. 預貯金口座不正利用対策等
      • 法人口座を含めた預貯金口座の不正利用の特徴や対策
    3. 偽造本人確認書類を用いた口座開設への対応
      • 本人確認書類の偽変造対策、公的個人認証(JPKI)の活用
    4. 国民を詐欺から守るための総合対策
      • 「国民を詐欺から守るための総合対策」(24年6月公表)のうち、金融庁関連部分の概要
▼ 「マネー・ローンダリング等対策の取組と課題(2024年6月)別紙:金融セクター分析結果概要」

金融庁 「地域銀行による顧客の課題解決支援の現状と課題」について
▼ 「地域銀行による顧客の課題解決支援の現状と課題(主なポイント)」
  • 本レポートは、地域銀行による顧客企業の課題解決支援の取組みを後押しするため、金融仲介を取り巻く環境変化が地域銀行に与えている影響を分析し、企業のライフサイクルごとに支援の現状と課題を整理したもの。
  • 地域銀行は、支援分野の多様化等に対応するため、人的リソースの確保が課題となっている。そうした中、顧客の課題解決に向けた付加価値の高い支援を提供し、地域銀行自身の収益基盤を強化するためには、中長期的な視点で注力する分野を見極め、適切な人的リソースの配分や必要な態勢整備を行うことが重要である。
  • 今後、金融庁としては、分析結果を踏まえ、地域銀行の取組みの実態把握や海外事例の調査等をさらに進め、地域銀行の顧客支援態勢の充実に向けた一層の創意工夫を後押ししていく。
  • 創業支援
    • 創業期の企業に対しては、公的創業支援制度の積極的な活用が見られる
    • 創業期以外の企業への融資よりも積極的に取り組む方針の地域銀行は少ない
    • 創業後の事業拡大期の資金ニーズに応えられるよう、意識的に事業内容や成長可能性を評価する「目利き力」を高めていくことが重要
    • スタートアップ融資については、海外事例等を参考にしつつ審査基準・態勢を構築することが重要
  • 本業支援
    • 顧客の抱える経営課題の多様化にあわせ、本業支援サービスを拡充している
    • 顧客の経営課題やニーズの把握等には改善の余地がある
    • 顧客の経営課題の十分な理解等が、収益性の向上につながることを認識し、各事業に最適な人的リソースを配分することが重要
    • 専門人材の育成・確保、支店と本部の連携強化等を通じ、効果的な支援態勢を確立することが重要
    • 支援効果や顧客からのフィードバックを把握し、更なる支援の質の向上につなげるサイクルを構築することが重要
  • 経営改善支援/事業再生支援
    • コロナを受け支援専門部署の人員を増強し、返済条件の変更や改善・再生計画の策定を中心に支援している
    • 返済条件の変更が長期間にわたっている事業者が相応に存在している
    • 経営陣が経営改善・事業再生支援にコミットし、中長期的な収益機会と認識して、地域への影響等も考慮しつつ早期の支援に取り組むことが重要
    • 個々の事業者の状況をより反映した引当を検討することが重要
    • 支援の動機づけとなるよう評価制度を工夫したり、支援を担う人材の育成を強化することが重要

金融庁 大手損害保険会社の保険料調整行為等に係る追加調査の結果について
  • 金融庁は、令和5年12月26日(火曜日)、大手損害保険会社4社(あいおいニッセイ同和損害保険株式会社、損害保険ジャパン株式会社、東京海上日動火災保険株式会社、三井住友海上火災保険株式会社。以下「各社」という。)に対し、保険業法第132条第1項に基づく業務改善命令を発出しました。
  • 今般、業務改善命令におけるⅠ.1.②「私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律(昭和22年法律第54号。以下「独占禁止法」という。)に抵触すると考えられる事案、同法の趣旨に照らして不適切な行為があった事案について、更なる事案の特定、調査等」に関して、各社からの報告を取りまとめましたので、公表します。
  • 追加調査の結果、各社からの報告によれば、少なくとも1社の保険会社において、独占禁止法に抵触すると考えられる行為及び同法の趣旨に照らして不適切な行為(以下「不適切行為等」という。)があるとされた保険契約者は600先※1、そのうち1社からの報告は392先、2社以上からの報告は208先となりました(令和6年6月14日時点※2※3。)。
    • ※1 保険契約者数は金融庁による名寄せ後の数字。なお、保険契約者数について、最終的な保険契約者数は多数になるが、代理店が包括的に契約条件の決定権限を持っていた契約や複数団体向けの契約は1件として集計。
    • ※2 令和5年12月26日時点では、不適切行為等があるとされた保険契約者は576先、そのうち1社からの報告は458先、2社以上からの報告は118先。
    • ※3 各社からの報告を突合した結果、ある社から独占禁止法に抵触するおそれのある行為として報告があった事案について、当該行為に関与したとされた他の社から報告がない場合に、当該他の社に対して調査を求めたところ、前回報告時点で未報告であった理由としては、会社として事案を把握するに至らなかったものが80%、会社として事案は把握していたが、前回報告時点では調査の上で不適切行為等と認められなかったことや調査中の事案であった等の理由で報告の対象外としていたものが20%。
  • 金融庁としては、追加調査の結果も踏まえ、引き続き、各社において、業務改善計画が確実に実施され、定着が図られるよう、改善を求めてまいります。

金融庁 「金融機関の取組みの評価等に関する企業アンケート調査」の公表について
▼ 「企業アンケート調査の結果」
  • 企業が抱える「事業や経営に関する課題」は、「労働力不足」、「取引先・販売先の拡大」、「人材育成・従業員福祉」、「財務内容の改善」、「経営人材の不在」の順に回答が多い(課題として回答のあった上位5つの合算)。
  • 上位の課題(第1位)として挙げられたものでは、「労働力不足」が最も多く、次いで、「取引先・販売先の拡大」、「財務内容の改善」の順であった。
  • 経営上の課題や悩みをメインバンクに「日常的に相談している」または「時々相談している」と回答した企業の割合は全体で79.8%であり、債務者区分が下位であるほど、「日常的に相談している」と回答した企業の割合が高い。
  • 「日常的に相談している」または「時々相談している」理由としては、債務者区分が上位であるほど「専門性や情報に期待」の割合が高く、債務者区分が下位であるほど「事業への理解度」と回答した企業の割合が高い。
  • 相談状況(左グラフ)について、「全く相談したことがない」と回答した理由としては、「他に相談相手がいるから」が全体で29.2%と最も多く、次いで、「アドバイスを期待できない」、「融資以上期待していない」の順であった。
  • メインバンクが自社の経営上の課題や悩みを「よく聞いてくれる」または「ある程度聞いてくれる」と回答した企業の割合は全体で73.0%であり、前回調査(※)と比較し、3.5%pt増加。(※)前回調査は、2023年2月17日~同年3月8日に実施。以下、同じ。
  • メインバンクの対応について、コロナ期の2021年4月~2022年3月頃と比較して「(課題や悩みを)より聞いてくれるようになった」と回答した企業の割合は、債務者区分が下位になるほど高い。
  • メインバンクが自社の経営上の課題に関する分析結果や評価を「よく伝えてくれる」または「ある程度伝えてくれる」と回答した企業の割合は全体で55.7%であり、前回調査と比較して、0.9%pt増加。
  • メインバンクの対応について、コロナ期の2021年4月~2022年3月と比較して「(課題や評価を)より伝えてくれるようになった」と回答した企業の割合は、債務者区分が下位になるほど高い。
  • メインバンクから伝えられた経営上の課題の分析結果や評価に対する納得感について、「とても納得感がある」または「ある程度は納得感がある」と回答した企業の割合は全体で59.2%であり、前回調査と比較し3.3%pt低下。
  • コロナ期の2021年4月~2022年3月と比較して「納得感が増した」と回答した企業の割合は、債務者区分が下位になるほど高い。
  • メインバンクの評価として「経営上の課題や悩みを聞いてくれる」、「経営上の課題に関する分析結果を伝えてくれる」、「伝えられた経営課題や評価に対する納得感がある」の3つの質問全てに肯定的に回答した先(以下、「課題共有先」という。)は、事業者と金融機関との間で共通理解の醸成が図られており、事業性評価の前提が得られているものと考えられる。こうした「課題共有先」の割合は全体の44.9%であり、前回調査と比較し0.9%pt低下。
  • メインバンクとの取引全般について「満足」と回答した企業の割合は、「課題共有先」が「その他の先」より34.3%pt高い。
  • メインバンクとの関係性について10年前と比較すると、「課題共有先」では、「付き合いが深くなった」と回答した企業の割合は「浅くなった」の割合より51.4%pt高く、また、「事業に対する理解が深くなった」と回答した企業の割合は「変化を感じない」の割合より36.4%pt高い。「その他の先」では、「訪問頻度が減少した」と回答した企業の割合は「増加した」の割合より13%pt高く、また、「営業担当者のレベルが下がった」と回答した企業の割合は「上がった」の割合より9.2%pt高い。
  • メインバンクの担当者との面談頻度は、企業規模が小さい、または債務者区分が下位であるほど面談頻度が低下。
  • メインバンクの担当者と面談頻度が「月1回以上」と答えた企業の割合は、「課題共有先」では8割以上を占める一方、「その他の先」では4割程度にとどまる。
  • メインバンクとのオンライン面談について、約9割の企業が「オンライン面談は実施していない」と回答。
  • メインバンクの担当者の能力・ノウハウ・商品知識に関する評価について、「課題共有先」においては「非常に評価している」、「ある程度評価している」と回答した企業の割合は、それぞれ23.2%、72.2%である。一方、「その他の先」において、「非常に評価している」、「ある程度評価している」と回答した企業の割合は、それぞれ3.8%、56.1%である。また、「その他の先」では、企業規模が小さいほどこれらの割合は低下する。
  • メインバンクの対応について、過去1年以内に「問題点を感じたことがない」と回答した企業の割合は全体で71.0%であり、「課題共有先」においては8割以上が「問題点を感じたことはない」と回答。「担当者の退職や交代が多い」と回答した企業の割合は全体で17.2%であり、「その他の先」の方が「課題共有先」より12.4%pt高い。
  • 過去1年以内に感じた問題点として「ノルマ達成のために担当者が頻繁に訪問してくる」と回答した企業(全体の6.7%)に対して、具体的な営業行為を尋ねたところ、「投信や年金等の金融商品の購入を勧められた」と回答した企業の割合が53.3%と最も高い。上記結果は、「課題共有先」と「その他の先」において、差異はほとんどみられなかった。
  • メインバンクと取引を継続するうえで「借入金利の上昇を許容できる」と回答した企業の割合は、全体で83.3%であり、「僅かでも金利が上昇するのであれば取引を継続したくない」の割合より高い。特に、企業規模が大きい先、債務者区分が上位である先、課題共有先において、金利上昇への許容度が高い。
  • 自社の経営が傾いた際にメインバンクからの支援を「期待できる」、「ある程度期待できる」と回答した企業の割合は、全体でそれぞれ20.6%、58.2%である。また、企業規模が大きい先、債務者区分が上位であるほど割合が高い。「課題共有先」において、メインバンクからの支援を「期待できる」、「ある程度期待できる」と回答した企業の割合は、それぞれ32.6%、59.9%である。一方、「その他の先」において、「期待できる」、「ある程度期待できる」と回答した企業の割合は、それぞれ10.7%、57.1%である。
  • 借入期間の延長や金利の減免など、「借入条件変更、緩和を受けている」と回答した「要注意先以下」企業(「要注意先以下」企業全体に占める)の割合は32.8%である。この割合は、企業規模が大きいほど高い。借入条件変更、緩和を受けた「要注意先以下」企業のうち、過去1年以内に「経営改善に資するサービスの提案・提供を受けている」と回答した企業の割合は51.9%である。この割合は、「課題共有先」の方が「その他の先」より高くなる。
  • 借入期間の延長や金利の減免など、「借入条件変更、緩和を受けている」と回答した「要注意先以下」企業のうち、「借入条件変更、緩和を継続したい」と回答した企業の割合は87.6%である。「課題共有先」と「その他の先」においてその割合に差異はほとんどみられなかった。
  • 金融機関から「手数料を支払っても受けたいサービス」、「実際に提供を受けたサービス」のいずれにおいても、「取引先・販売先の紹介」や「各種支援制度の紹介や申請の支援」といった売上や利益改善に直結するサービスが高い割合を占める。「業務効率化(IT化・デジタル化含む)に関する支援」と「経営人材の紹介」は、「手数料を支払っても受けたい」と回答した企業の割合が「実際に提供を受けた」と回答した企業の割合を上回っており、その差は他のサービスと比較して大きい。
  • サービス提供にあたり、金融機関が自社の経営課題やニーズを「十分に理解している」と回答した企業の割合は26.2%。金融機関が提供するサービスを受けた理由として、「課題共有先」では「信頼できる」、「ニーズをよく理解している」と回答した企業の割合が50%を超え、「その他の先」でのそれぞれの割合を20~30%pt上回る。一方、「金融機関との付き合いから提供を受けた」と回答した企業の割合は、「その他の先」の方が「課題共有先」よりも12%pt高い。
  • 必要性を感じているものの、実際には金融機関からサービスの提供を受けていない理由について、「自社で対応することができた」と回答した企業の割合が最も高いが、「金融機関から提案自体がなかった」と回答した企業の割合が二番目に高く、企業側に金融機関のサービスに対する潜在的なニーズがある。また、「提案されたサービスが自社の経営課題やニーズに沿わないものだった」と回答した企業の割合は13.0%であった。
  • 金融機関から提供されたサービスが自社の経営課題やニーズに合致していたかについて、全体では、「完全に合致していた」と回答した企業の割合は15.3%であり、「ある程度合致していた」と回答した企業の割合は64.1%。提供されたサービスの手数料水準について、全体で62.6%が「妥当な水準である」と回答。提供されたサービスに関し、今後機会があれば「同じ金融機関から提供を受けたい」と回答した企業の割合は、全体で61.8%であり、サービス毎では「事業戦略に関するアドバイス・提案」が69.6%で最も高い。
  • 金融機関からのサービス提供について、「課題共有先」と「その他の先」別にみると、提供されたサービスが自社の経営課題やニーズに合致していたかについて、「どちらかといえば合致していなかった」と回答した企業の割合は、「その他の先」が「課題共有先」を16.6%pt上回る。提供されたサービスの手数料水準について、「どちらかと言えば高い」と回答した企業の割合は、「その他の先」が「課題共有先」を6.6%pt上回る。提供されたサービスに関し、今後機会があれば「同じ金融機関から提供を受けたい」と回答した企業の割合は、「課題共有先」が「その他の先」を16.8%pt上回る。
  • 実際に各サービスの提供を受けた後、金融機関にそのサービスの改善点や活用状況を伝える機会が「特になかった」と回答した企業の割合は、全体で26.5%であり、サービス毎では、「脱炭素化に関する支援」が32.3%と最も高い。また、特に伝える機会はなかったと回答した企業のうち「改善点など伝えたいことはあるが、伝えるつもりはない」、「サービスの改善等に繋がるのであれば、伝えたい」と回答した企業の割合は、全体でそれぞれ13.3%、34.7%。
  • 金融機関へのフィードバックについて、「課題共有先」と「その他の先」別にみると、実際に各サービスの提供を受けた後、金融機関にそのサービスの改善点や活用状況を伝える機会が「特になかった」と回答した企業の割合は、「その他の先」が「課題共有先」を20.7%pt上回る。また、特に伝える機会がなかった企業のうち「改善点など伝えたいことはあるが、伝えるつもりはない」、「サービスの改善等に繋がるのであれば、伝えたい」と回答した企業の割合は、「その他の先」が「課題共有先」をそれぞれ8.1%pt、6.4%pt上回る。
  • 既存融資の個人保証徴求について、企業規模が小さい企業や債務者区分が下位の企業ほど、「徴求されている」と回答した企業の割合が高い。既存融資に個人保証を徴求されている企業のうち、2023年4月の「経営者保証改革プログラムに基づく監督指針の改正」以降、新たに個人保証契約を締結・更新した企業は、全体で45.3%であり、債務者区分が下位であるほど割合が高い。上記各結果について、「課題共有先」と「その他の先」で大きな差はみられなかった。
  • 既存融資における個人保証の保証徴求理由の説明状況について、「説明を受けた」と回答した企業の割合は、全体では52.2%であり、企業規模が大きい先や課題共有先において割合が高い。他方、「説明の申し出がなかったため、説明を受けていない」と回答した企業の割合は全体で36.2%。
  • 経営改善や事業再生に関し、検討した、または検討の俎上に載った支援メニューのうち、「経営改善(計画策定)」「経営改善(ビジネスマッチング・その他)」「事業再生(返済条件変更)」については、約5割の企業が「メイン行に提案を依頼した」または「メイン行より提案があった」と回答。
  • 金融機関以外の支援機関に提案を依頼した、もしくは金融機関以外から提案があった企業では、いずれの支援メニューにおいても「税理士」または「コンサルタント」から支援を受けたと回答した企業の割合が合計で約7割。
  • 「経営改善(計画策定)」「経営改善(ビジネスマッチング・その他)」「事業再生(M&A・事業譲渡)」については、約6割の企業が「業況が厳しくなると予想されるタイミング」に提案やアドバイスを受けたと回答。他方、上記以外の事業再生や廃業支援については、「実際に業況が厳しくなったタイミング」や「約定弁済ができなくなったタイミング」になってから提案やアドバイスを受けたとの回答が5割以上となった。

金融庁 三菱UFJモルガン・スタンレー証券、モルガン・スタンレーMUFG証券及び三菱UFJ銀行に対する行政処分等について
  • 三菱UFJモルガン・スタンレー証券に対する行政処分
    1. 処分の理由
      • MUMSSに対する証券取引等監視委員会による検査の結果、以下の法令違反等が認められたとして、令和6年6月14日、行政処分を求める勧告で開きますが行われた。
      • 銀証間における不適切な顧客情報の共有等
        1. (ア)銀証間における不適切な顧客情報の共有等
          • 金融商品取引法第44条の3第1項第4号に基づく金融商品取引業等に関する内閣府令第153条第1項第7号において、有価証券関連業を行う金融商品取引業者(第一種金融商品取引業を行う者に限る)は、当該金融商品取引業者又はその親法人等若しくは子法人等による非公開情報の提供について、あらかじめ発行者等の書面又は電磁的記録による同意がある場合等を除き、当該金融商品取引業者の親法人等若しくは子法人等と当該発行者等に関する非公開情報を受領又は提供してはならないとされている。
          • しかしながら、MUMSSの役職員は、親法人等であるMUBK、親法人等であるMSMSとの間において、法人顧客から情報共有を禁止されていること又は情報共有の同意を得ていないことを認識しながら、当該法人顧客に関する非公開情報の授受を少なくとも13回にわたって行い、これをMUMSS社内で共有していた。また、MUBKから受領した一部の非公開情報については、MUMSS代表取締役副社長(当時)自らが受領するとともに、当該非公開情報を利用して、引受契約の締結にかかる勧誘を行っている状況も認められた。
          • (主な事例1)
            • A社株式の売出しに関する非公開情報について、A社は役員自らが、MUBKに対し、MUMSS及びMSMSへの情報提供の禁止を再三伝達していた。しかしながら、MUMSS代表取締役副社長(当時)は、当該売出しの実行時期、金額、方法等に関する情報をMUBKから受領し、これを社内関係者に共有及び社内関係者からMSMSに提供しているほか、当該売出しにおける主幹事としてのポジションを獲得するため、当該非公開情報を利用して、営業戦略を企画し、引受契約の締結にかかる勧誘を行った。
          • (主な事例2)
            • B社が予定していた企業買収に際し、買収資金に係る融資契約の締結に向けた交渉過程において、MUBKがB社より伝えられた本件買収の実施予定に関する非公開情報について、MUMSS職員は、当該情報共有が法令違反行為であると知りながら、B社の意思に反し、MUBKから非公開情報を受領し、これをMUMSS代表取締役副社長(当時)も含めた社内関係者に共有及びMSMSに提供した。
        2. (イ)法人関係情報の管理態勢不備
          • 金融商品取引法第40条第2号に基づく金融商品取引業等に関する内閣府令第123条第1項第5号において、金融商品取引業者は、法人関係情報に係る不公正な取引の防止を図るために必要かつ適切な措置を講じなくてはならないとされている。
          • しかしながら、上記アのとおり、MUMSSの役職員は、MUBK及びMSMSとの間で不適切な法人関係情報の授受を少なくとも13回にわたって行っていた。
          • また、社内規程に基づく適切な管理を行わないなど、法人関係情報の不適切な管理も少なくとも16件認められた。
          • MUMSSにおける上記アの行為は、金融商品取引法第44条の3第1項第4号に基づく金融商品取引業等に関する内閣府令第153条第1項第7号及び第8号に規定する行為に該当するものと認められる。
          • また、MUMSSにおける上記イのような状況は、金融商品取引法第40条第2号に基づく金融商品取引業等に関する内閣府令第123条第1項第5号に該当するものと認められる。
          • 上記ア、イの行為等は、MUMSS役職員が、銀証間で情報の授受を行ってはならないことを認識しながら、案件獲得というMUMSS、MUBK及びMSMSの利益を優先したものであり、MUMSS代表取締役副社長自らが非公開情報を受領している状況が認められるなど、銀証連携ビジネスの推進にあたり、MUMSSとして法令等遵守意識が希薄であることに起因するものであり、MUMSSにおいては法令等遵守態勢に不備があるものと認められる。
      • 登録金融機関による有価証券関連業の禁止を看過・助長したうえで不適切に金融商品取引契約を締結している状況
        • 登録金融機関による有価証券関連業の禁止を看過・助長したうえで不適切に金融商品取引契約を締結している状況
          • MUMSSは、前回検査において、MUMSSからMUBKに対して引受交渉を依頼し、MUBKが引受シェアの交渉を行ったともとれるような営業日報の記録が認められるなど、MUBKが法令上禁止されている有価証券関連業務を行うことを誘発しかねない状況が認められる旨の指摘を受けていた。この際、MUMSSは、MUMSS担当職員に対する聞き取りを中心とした事実関係の確認のみにとどまり、メール等の検証やMUBKに対する確認を行うことなく、単に誤解を招く記載であったなどと結論づけていた。この結論を前提に、社内に対して営業日報に不適切な記載を行わないよう注意喚起が行われ、MUBKが引受交渉を行っていた旨の事実関係が営業日報に記載されない状況となっていた。このような中、以下のような事実関係が確認された。
            • MUMSS役職員は、少なくとも4回、MUBKが法令違反に該当し得る有価証券の引受けに係る交渉を行っている状況につき、MUBKから報告を受けるなどして把握していたにもかかわらず、MUMSSコンプライアンス部門に対して当該行為を報告・相談していないほか、MUBKの行員に対し、当該行為を止めるよう注意や警告をすることなく、この状況を看過・助長したうえで金融商品取引契約を締結した。
            • MUMSS職員は、少なくとも3回にわたり、MUBKの行員に対し、引受交渉を要請するなど、MUMSS職員からMUBKに対して不適切な働きかけを行っていた。
            • MUMSS職員は、MUBKが本来行うことができない引受業務を行っていること、MUBKが所定の契約条件の融資を行う場合の最低条件としてMUMSSの引受シェアを引き上げてほしい旨の抱き合わせ勧誘を行っていること、及び、MUBKにより所定の契約条件の融資が行われていることを知りながら、顧客との間で引受契約を締結した。
        • 不適切な銀証連携を防止するための内部管理態勢が不十分な状況
          • MUMSSは、前回検査において、MUBKが法令上禁止されている有価証券関連業務を行うことを誘発しかねない状況及びモニタリングが不十分な状況であった旨の指摘を受けており、改善策として、不適切な銀証連携の防止などをテーマとした研修の実施やモニタリングの強化に取り組んでいた。
          • しかしながら、MUMSSコンプライアンス部署によるモニタリングが不十分であったことから、MUBKにおいて多数の法令違反行為が行われている状況を全く把握していなかったほか、MUBKによる法令違反行為が行われていた疑義のある事象少なくとも1件をモニタリングで検出していたにもかかわらず、グループ全体のコンプライアンスを担当する部署と連携し、必要な対応策を講じるなどの然るべき対応をすることを怠るなど、MUBKの法令違反行為を看過していた。
          • このようなMUMSSの対応状況は、不適切な銀証連携を防止するための内部管理態勢が不十分であったと認められる。
          • MUMSSにおける上記のような状況は、金融商品取引法第51条の「公益又は投資者保護のため必要かつ適当であると認めるとき」に該当するものと認められる。
          • また、上記行為ア③については、金融商品取引法第44条の3第1項第2号で禁止されている行為に該当する。
          • なお、上記のような状況は、MUMSS経営陣において、MUFGがグループ会社間の営業連携やこれに伴うグループ収益の拡大を掲げる中で、MUBKがグループ収益の確保に向けて、法令で禁止されている引受交渉等に自ら関与するリスクの認識が希薄であったことにより発生したものと認められる。
          • 上記(1)(2)の行為は、グループ連携に係る適正な内部管理態勢を構築・運用する責務を負っている経営陣が、その責務に照らして求められるべき認識を持たず、上記の不適切行為の発生を未然に防止するために必要な内部管理態勢を構築していないなど、経営陣によるガバナンスが十分に発揮されていないことに起因するものであり、MUMSSにおいては、適切な業務運営を確保するための経営管理態勢に不備があるものと認められる。
    2. 命令の内容
      • 業務改善命令(金融商品取引法第51条)
        1. 本件に関して、業務の健全かつ適切な運営を確保するため、以下を実施すること。
          • 今回の処分を踏まえた経営陣を含む責任の所在の明確化を図ること。
          • 本件に係る根本的な発生原因の分析に基づき、再発防止に向けて、以下の点を含む実効性のある業務改善計画を速やかに策定し、着実に実施すること。
            • 経営管理態勢並びに銀証連携等に係る法令等遵守態勢及び顧客情報管理態勢を含む内部管理態勢の強化
        2. 上記1に係る実施状況及び業務改善計画を令和6年7月24日までに書面で報告すること。
        3. 上記2の実施状況について、四半期末経過後15日以内を期限として、当面の間、報告すること。
  • モルガン・スタンレーMUFG証券に対する行政処分
    1. 処分の理由
      • MSMSに対する証券取引等監視委員会による検査の結果、以下の法令違反が認められたとして、令和6年6月14日、行政処分を求める勧告で開きますが行われた。
      • 銀証間における不適切な顧客情報の共有等
        • 銀証間における不適切な顧客情報の共有等
          • 金融商品取引法第44条の3第1項第4号に基づく金融商品取引業等に関する内閣府令第153条第1項第7号において、有価証券関連業を行う金融商品取引業者(第一種金融商品取引業を行う者に限る)は、当該金融商品取引業者又はその親法人等若しくは子法人等による非公開情報の提供について、あらかじめ発行者等の書面又は電磁的記録による同意がある場合等を除き、当該金融商品取引業者の親法人等若しくは子法人等と当該発行者等に関する非公開情報を受領又は提供してはならないとされている。
          • しかしながら、MSMSの職員は、親法人等であるMUMSSとの間において、法人顧客から情報共有を禁止されていること又は情報共有の同意を得ていないことを認識しながら、当該法人顧客に関する非公開情報の受領を少なくとも3回にわたって行い、これをMSMS内で共有していた。また、MUMSSから受領した非公開情報を利用して引受契約の締結にかかる勧誘を行っている状況も認められた。
          • (主な事例1)
            • A社株式の売出しに関する非公開情報について、A社は役員自らが、MUBKに対し、MSMS及びMUMSSへの情報提供の禁止を再三伝達していた。しかしながら、MUBKの役職員は、当該情報提供が禁止されていることを認識していたにもかかわらず、MSMS及びMUMSSが当該売出しにおける主幹事としてのポジションを獲得するため、当該売出しの実行時期、金額、方法等に関する情報をMUMSSの役職員に提供し、さらにMSMS職員はMUMSSの職員からこれを受領した。このほか、当該売出しにおける主幹事としてのポジションを獲得するため、MSMSの職員及びMUMSSの役職員は当該非公開情報を利用して、営業戦略を企画し、引受契約の締結にかかる勧誘を行った。
          • (主な事例2)
            • B社が予定していた企業買収に際し、買収資金に係る融資契約の締結に向けた交渉過程において、MUBKがB社より伝えられた本件買収の実施予定に関する非公開情報について、当該情報共有が法令違反行為であると知りながら、B社の意思に反し、MUBKはMUMSSに当該非公開情報を提供し、MSMS職員はMUMSSからこれを受領した。
        • 法人関係情報の管理態勢不備
          • 金融商品取引法第40条第2号に基づく金融商品取引業等に関する内閣府令第123条第1項第5号において、金融商品取引業者は、法人関係情報に係る不公正な取引の防止を図るために必要かつ適切な措置を講じなくてはならないとされている。
          • しかしながら、上記アのとおり、MSMSの職員は、MUMSSとの間で不適切な法人関係情報の受領を少なくとも3回にわたって行っていた。
          • また、本来であれば、法人関係情報を認識した段階で登録手続などの適切な管理を行うべきところ、MSMSにおいては、幹事指名の内諾までは登録手続を行わないという不適切な取扱いが多く確認されているなど、法人関係情報の不適切な管理も少なくとも30件認められた。なお、30件の不適切管理のうち、登録が1月以上遅延している事例が11件認められている(最大遅延は9月以上)。
          • コンプライアンス部門は、職員の情報登録時の情報取得経緯等を確認する段階で、登録遅延及び登録漏れの疑いを認識し得たにもかかわらず、今回検査において登録遅延及びその疑いを指摘されるまで、いずれも検出できていない状況にあるなど、法人関係情報のモニタリング態勢に不備が認められた。
          • MSMSにおける上記アの行為は、金融商品取引法第44条の3第1項第4号に基づく金融商品取引業等に関する内閣府令第153条第1項第7号及び第8号に規定する行為に該当するものと認められる。
          • また、MSMSにおける上記イのような状況は、金融商品取引法第40条第2号に基づく金融商品取引業等に関する内閣府令第123条第1項第5号に該当するものと認められる。
          • 上記ア、イの行為等は、MSMS職員が、親法人等から顧客の非公開情報の受領をしてはならないことを認識しながら、案件獲得というMSMS、MUBK及びMUMSSの利益を優先したものであり、銀証連携ビジネス等の推進にあたり、MSMSとして法令等遵守意識が希薄であることに起因するものであって、MSMSにおいては法令等遵守態勢に不備があるものと認められる。
          • また、経営陣において、日本の法令等の遵守のために必要かつ実効性の伴うモニタリング態勢や、法令等遵守意識の教育指導態勢など、顧客に関する非公開情報及び法人関係情報の取扱いに係る内部管理態勢を十分整備していないことに起因するものであり、MSMSにおいては、適切な業務運営を確保するための経営管理態勢に不備があるものと認められる。
    2. 命令の内容
      • 業務改善命令(金融商品取引法第51条)
        1. 本件に関して、業務の健全かつ適切な運営を確保するため、以下を実施すること。
          • 今回の処分を踏まえた経営陣を含む責任の所在の明確化を図ること。
          • 本件に係る根本的な発生原因の分析に基づき、再発防止に向けて、以下の点を含む実効性のある業務改善計画を速やかに策定し、着実に実施すること。
            • 経営管理態勢並びに銀証連携等に係る法令等遵守態勢及び顧客情報管理態勢を含む内部管理態勢の強化
        2. 上記1に係る実施状況及び業務改善計画を令和6年7月24日までに書面で報告すること。
        3. 上記2の実施状況について、四半期末経過後15日以内を期限として、当面の間、報告すること。
  • 三菱UFJ銀行に対する行政処分
    • 処分の理由
      • MUBKに対する証券取引等監視委員会による検査の結果、以下の法令違反等が認められたとして、令和6年6月14日、行政処分を求める勧告新しいウィンドウで開きますが行われた。
      • 銀証間における不適切な顧客情報の共有等
        • 銀証間における不適切な顧客情報の共有等
          • 金融商品取引法第44条の3第1項第4号に基づく金融商品取引業等に関する内閣府令第153条第1項第7号において、有価証券関連業を行う金融商品取引業者(第一種金融商品取引業を行う者に限る)は、当該金融商品取引業者又はその親法人等若しくは子法人等による非公開情報の提供について、あらかじめ発行者等の書面又は電磁的記録による同意がある場合等を除き、当該金融商品取引業者の親法人等若しくは子法人等と当該発行者等に関する非公開情報を受領又は提供してはならないとされている。
          • しかしながら、MUBKの役職員は、親法人等であるMUMSSとの間において、法人顧客から情報共有を禁止されていること又は情報共有の同意を得ていないことを認識しながら、当該法人顧客に関する非公開情報の授受を少なくとも10回にわたって行っていた。なお、一部の非公開情報の提供に関しては、MUBK専務執行役員(当時)自らも提供している状況も認められた。
          • (主な事例1)
            • A社株式の売出しに関する非公開情報について、A社は役員自らが、MUBKに対し、MUMSS及びMSMSの2社(以下、当該2社を総称して「系列証券会社」という。)への情報提供の禁止を再三伝達していた。しかしながら、MUBK専務執行役員(当時)は、当該情報提供が禁止されていることを認識していたにもかかわらず、系列証券会社が当該売出しにおける主幹事としてのポジションを獲得するため、当該売出しの実行時期、金額、方法等に関する情報をMUMSSに提供した。
            • MUBK代表取締役(当時)は、不適切な情報提供が行われている可能性があることを認識したものの、当該専務執行役員からA社役員との間で事実上の黙認が成立している旨の報告を受け、違法性のある行為ではなかったと誤認したとしている。そのため、当該専務執行役員に対してそれ以上の詳細な事実関係の確認を行っておらず、内部管理統括責任者をはじめとしたコンプライアンス部署に一切の連絡を行わないなど、特段の対応を指示しなかった。このため、MUBKは、本件について適切な是正措置を講じていなかった。
            • なお、当該専務執行役員とA社役員との間で、実際は、黙認が成立していなかった。
          • (主な事例2)
            • B社が予定していた企業買収に際し、買収資金に係る融資契約の締結に向けた交渉過程でB社より伝えられた本件買収の実施予定に関する非公開情報について、MUBK行員は、B社から本件買収にかかる秘密保持契約の取り交わしを求められ、秘密保持契約を交わしたにもかかわらず、B社の意思に反し、MUMSSに非公開情報を提供した。
        • 法人関係情報の管理態勢不備等
          • 金融商品取引法第40条第2号に基づく金融商品取引業等に関する内閣府令第123条第1項第5号において、登録金融機関は、法人関係情報に係る不公正な取引の防止を図るために必要かつ適切な措置を講じなくてはならないとされている。
          • しかしながら、上記アのとおり、MUBKの役職員は、MUMSSとの間で不適切な法人関係情報の授受を少なくとも10回にわたって行っていた。
          • また、社内規程に基づく適切な管理を行わないなど、法人関係情報の不適切な管理も少なくとも11件認められた。
          • このほか、MUBK行員は配偶者名義で開設した証券口座を利用し、平成30年7月から令和5年11月までの間、専ら投機的利益の追求を目的として、勤務時間中の発注を含め、主に信用取引により短期間での同一銘柄反対売買を行う手法により、自己の計算に基づく有価証券の売買を多数回(約5000回、約20億円)にわたり行っており、このうち少なくとも4銘柄の売買については、職務上知り得た法人関係情報に基づく不適切な有価証券の売買であった。なお、当該行員が所属していた部署は、法人関係情報を用いて業務を行う部署ではあるものの、Need to Know原則(顧客等に関する情報へのアクセス及びその利用は業務遂行上の必要性のある役職員に限定されるべきという原則)に反し、本来、法人関係情報を知る必要のない行員に対しても法人関係情報が広く伝達されている状況にあった。
          • MUBKにおける上記のような状況は、金融商品取引法第40条第2号に基づく金融商品取引業等に関する内閣府令第123条第1項第5号に該当するものと認められる。また、MUBK行員における専ら投機的利益の追求を目的とした有価証券の売買は、金融商品取引法第38条第9号に基づく金融商品取引業等に関する内閣府令第117条第1項第12号に該当するものと認められる。
          • 上記ア、イの行為等は、MUBK役職員が、銀証間で情報の授受を行ってはならないことを認識しながら、案件獲得というMUBK及び系列証券会社の利益を優先したものであり、MUBK専務執行役員自らが非公開情報を提供している状況及びMUBK代表取締役も不適切な情報提供があった可能性を認識している状況が認められるなど、銀証連携ビジネスの推進にあたり、MUBKとして法令等遵守意識が希薄であることに起因するものであり、MUBKにおいては法令等遵守態勢に不備があるものと認められる。
      • 登録金融機関による有価証券関連業の禁止
        • 金融商品取引法第33条第1項において、登録金融機関は有価証券の引受業務などの有価証券関連業を行ってはならないとされている。
        • しかしながら、MUBKは、有価証券の引受等に関し、上場会社等に対して、系列証券会社を引受先や割当先とするよう交渉及び勧誘する行為を少なくとも28回にわたって行った。当該行為は、本検査での指摘を受けるまで多数の部署において広く継続的に行われていた。
        • なお、上記不適切勧誘の一部に関しては、MUBKの営業部店からMUBK代表取締役(当時)に対して、MUBK関与によりMUMSSの案件獲得に至った旨の報告がなされており、当該代表取締役においても不適切な勧誘行為が行われていることを認識している状況も認められた。
        • MUFGは平成30年に策定した中期経営計画において、グループ収益の最大化を目指す施策を打ち立てており、その一環として、MUBKの収益目標についても、従来のグループ連携収益と銀行収益の2本柱の目標から銀行収益を含むグループ収益に1本化されている。このため、行員の業績評価においても、MUMSSに対して顧客ニーズの連携(案件紹介)を行い、系列証券会社で成約に至り収益計上された利益金額が、MUBKの行員の営業実績にも反映される仕組みとなっていた。
        • このような状況のもと、MUBKの多数の部署において不適切勧誘が行われることとなり、一部営業店の行員においては、銀行収益と系列証券会社収益を比較して、系列証券会社収益の方が大きい場合には系列証券会社の契約を獲得する方が収益目標額との関係でも利点が多いと考えたうえで行動している状況も確認された。
        • (主な事例1)
          • C社の社債発行に関し、MUMSSの提案内容が他社に劣後している状況を把握したMUBKは、C社に対して、MUMSSの引受シェアが全くないと厳しいため、MUFGとしてMUMSSを主幹事とし、引受シェアを与えてもらえるよう交渉を繰り返し行った。しかしながら、C社からMUMSSに引受シェアを与えない方針があらためて伝えられたことから、MUBKは、同時期にMUBKとC社の間で折衝していた融資条件から金利スプレッドの引下げ、弁護士費用及び担保を免除する一方、MUMSSの引受シェアを得られるよう交渉を行った。その結果、MUMSSは幹事に指名され引受シェアを得られることとなった。
          • このほか、MUBKはC社に関する別の社債発行に際しても同様の交渉を行い、MUMSSが主幹事に指名されているが、その際、MUBKの営業部店からMUBK代表取締役(当時)に対して、MUBKが何度もC社に対してMUMSSの引受交渉に関与した結果がMUMSSの契約に結びついた旨の報告がなされていた。
        • (主な事例2)
          • MUBKはD社から期間10年の融資要望を受けていた。同時期に予定されていたD社の公募増資に関し、MUBKの関連部署間において、期間10年で融資する取組意義は証券取引の拡大である旨の議論が行われた結果、MUBKはD社に対して、期間10年の融資をする条件として系列証券会社の引受シェアを引き上げてほしい旨の抱き合わせ勧誘を行った
          • D社が、MUBKに引受シェアを引き上げなかった場合、今後のMUBKとの融資に影響が生じるのではないかと危惧している旨の懸念を伝えると、MUBKは、仮に系列証券会社の引受シェアの引き上げがない場合、貸出金額の変更こそしないが、貸出期間については短縮する意向である旨を伝達した。
          • MUBKにおける上記行為は、登録金融機関による有価証券関連業を禁止する金融商品取引法第33条第1項に違反するものと認められる。
          • なお、上記のような状況は、MUBK経営陣において、MUFGがグループ会社間の営業連携やこれに伴うグループ収益の拡大を掲げる中で、MUBK行員がグループ収益の確保に向けて、法令で禁止されている引受交渉等に自ら関与するリスクの認識が希薄であったことにより発生したものと認められる。
          • 上記12の行為は、グループ連携に係る適正な内部管理態勢を構築・運用する責務を負っている経営陣が、その責務に照らして求められるべき認識を持たず、上記の不適切行為の発生を未然に防止するために必要な内部管理態勢を構築していないなど、経営陣によるガバナンスが十分に発揮されていないことに起因するものであり、MUBKにおいては、適切な業務運営を確保するための経営管理態勢に不備があるものと認められる。
    • 命令の内容
      • 業務改善命令(金融商品取引法第51条の2)
        1. 本件に関して、業務の健全かつ適切な運営を確保するため、以下を実施すること。
          • 今回の処分を踏まえた経営陣を含む責任の所在の明確化を図ること。
          • 本件に係る根本的な発生原因の分析に基づき、再発防止に向けて、以下の点を含む実効性のある業務改善計画を速やかに策定し、着実に実施すること。
            • 経営管理態勢並びに銀証連携に係る法令等遵守態勢及び顧客情報管理態勢を含む内部管理態勢の強化
        2. 上記1に係る実施状況及び業務改善計画を令和6年7月24日までに書面で報告すること。
        3. 上記2の実施状況について、四半期末経過後15日以内を期限として、当面の間、報告すること。
  • 三菱UFJ銀行及び三菱UFJフィナンシャル・グループに対する報告徴求
    • MUBK及びMUFGに対する金融庁検査において、経営管理態勢並びに内部管理態勢が不十分であることが確認されたことから、本日、銀行法に基づき、以下の事項について報告するよう求めた。
      • MUBKに対する報告徴求(銀行法第24条第1項)
        1. 報告事項
          • ①銀行法第12条に規定する他業禁止及び同法第12条の2第2項に規定する顧客情報管理措置に関して認められた事案の事実認識、発生原因の分析(背景となる真因の分析を含む)、並びに当該分析を踏まえた問題認識
          • ②を踏まえた、以下の点を含む再発防止に向けた実効性のある改善対応策(改善対応策の実施計画と実施状況等を含む。)
            • 経営管理態勢並びに銀証連携に係る法令等遵守態勢及び顧客情報管理態勢を含む内部管理態勢の強化
        2. 報告期限
          • 上記1に係る報告を令和6年7月24日までに報告すること。
          • 上記2①の実施状況について、四半期末経過後15日以内を期限として、当面の間、報告すること。
      • MUFGに対する報告徴求(銀行法第52条の31第1項)
        • 報告事項
          • ①子会社であるMUBKにおいて認められた、銀行法第12条に規定する他業禁止及び同法第12条の2第2項に規定する顧客情報管理措置に関する事案を踏まえ、銀行持株会社としての発生原因の分析(背景となる真因の分析を含む)、及び当該分析を踏まえた問題認識
          • ②今回の事案を踏まえた、グループとしての再発防止に向けた以下の点を含む実効性のある改善対応策(改善対応策の実施計画と実施状況等を含む)
            • 経営管理態勢並びに銀証連携に係る法令等遵守態勢及び顧客情報管理態勢を含む内部管理態勢の強化
        • 報告期限
          • 上記1に係る報告を令和6年7月24日までに報告すること。
          • 上記2①の実施状況について、四半期末経過後15日以内を期限として、当面の間、報告すること。

金融庁 「成長戦略」等における金融庁関連施策
▼ 「新しい資本主義のグランドデザイン及び実行計画2024年改訂版」における金融庁関連の主要施策
  • 人への投資に向けた中小・小規模企業等で働く労働者の賃上げ定着
    • 価格転嫁の商習慣化の徹底と中小・小規模企業の省力化投資の加速
      • 大企業と中小・小規模企業・スタートアップの間の協力関係の確立
        • 地域企業経営人材マッチング促進事業の推進
  • 企業の参入・退出の円滑化を通じた産業の革新
    • スタートアップ育成5か年計画の実行
      • 非上場株式のセカンダリー取引の活性化
      • 東証の上場維持基準等の中長期的な在り方の検討
    • 経営者の意向に沿った参入退出
      • 事業再構築やM&A支援に際し経営者保証を見直す枠組みの検討
      • 経営者保証に依存しない融資慣行の確立、企業価値担保権の周知
      • 地域金融機関によるM&A仲介・支援の促進
  • 投資の推進
    • DX
      • web3に関するトークンの利活用や決済の円滑化等
  • GX・エネルギー・食糧安全保障
    • GX・エネルギー
      • 中小・小規模企業におけるGX推進
      • トランジション・ファイナンスの推進
  • 資産運用立国の推進
    • 資産運用立国実現プランの実行
      1. 家計の安定的な資産形成の支援
        • NISAの活用
        • 金融経済教育の充実
        • 投資詐欺等への対処
        • 多様な投資商品の提供
      2. 金融商品の販売会社等における顧客本位の業務運営の確保
      3. コーポレートガバナンス改革、金融・資本市場の機能向上
      4. 資産運用業の改革
        • 資産運用会社の競争力強化やガバナンス改善・体制強化
        • 日本独自のビジネス慣行や参入障壁の是正
        • 金融・資産運用特区の推進
        • 新興運用業者促進プログラム(日本版EMP)の実施
      5. 企業年金・個人年金の改革
      6. 成長資金の供給と運用対象の多様化
      7. 対外情報発信・コミュニケーションの強化
    • アセットオーナーシップの改革
  • 社会的課題を解決する経済社会システムの構築
    • インパクトスタートアップに対する総合的な支援策
      • コンソーシアムを通じたネットワーク形成
      • インパクト投資の案件創出

金融庁 「損害保険業の構造的課題と競争のあり方に関する有識者会議」報告書の公表について
▼ (参考)「損害保険業の構造的課題と競争のあり方に関する有識者会議」報告書の概要
  • 顧客本位の業務運営の徹底
    1. 大規模代理店に対する指導等の実効性の確保
      • 損保会社による代理店に対する指導等の実効性の確保
      • 金融庁・財務局のモニタリング強化
      • 第三者による代理店の業務品質の評価の枠組みの検討
      • 損保募集人の試験制度や継続教育の高度化・厳格化等
      • 態勢整備の厳格化、自主規制機関についての検討
    2. 代理店手数料ポイント制度
      • 「規模・増収」に偏ることなく「業務品質」を重視する評価体系への変革
      • 「業務品質」の指標を顧客にとってのサービス向上に資するものとする
    3. 保険会社による代理店等への過度な便宜供与等の制限
      • 自社の保険商品の優先的な取扱いを誘引する便宜供与等の解消
      • 自社の保険商品の優先的な取扱いを誘引するほか、代理店の自立に向けた動きを阻害する出向等を解消
    4. 乗合代理店における適切な比較推奨販売の確保
      • 顧客の最善の利益を勘案した比較推奨の確保
      • 顧客の保険リテラシー向上の支援(商品選択のガイドブックの作成 等)
    5. 代理店の兼業と保険金等支払管理部門の独立性確保等
      • 代理店の兼業による弊害を防止するための措置の実施
      • 適切な保険金等支払管理態勢の確保(営業部門からの介入の排除 等)
  • 健全な競争環境の実現
    1. 競争環境の歪みの是正
      • 独占禁止法抵触リスクをはらむ共同保険のビジネス慣行の適正化
      • 政策保有株式の縮減及び不適切な便宜供与の解消
    2. 損保会社における態勢の確保
      • 独占禁止法等を遵守するための適切な法令等遵守態勢の確保
      • コンプライアンス上不適切なインセンティブとならない評価体系の策定等、適正な営業推進態勢の確保
      • リスクに応じた適切な保険料を提示するための保険引受管理態勢の強化
    3. 企業内代理店のあり方
      • 企業内代理店の立場の明確化、情報共有ルールの策定
      • 企業内代理店の実務能力の向上(損保会社による指導等の態勢整備、不適切な代行の解消 等)
      • 企業内代理店の自立の促進(特定契約比率の見直し 等)

金融庁 ベンチャーキャピタルに関する有識者会議(第3回)議事次第
▼ 資料1 「ベンチャーキャピタルにおいて推奨・期待される事項(案)」
  • GPはLPに対する受託者責任を果たすために、投資先企業の企業価値最大化を通じ、LPの持分価値の最大化に向けて、VCを運営していくことが求められていることを十分に認識し、必要な説明責任を果たすことが推奨される。LPとGPの意思疎通を促進する観点から、LPとGP間で利益相反事項のほかファンド運営に関する重要な事項等が議論されるよう、LPの代表により構成される諮問委員会(LPAC)を設置する等、LPの意見が十分に反映されることが推奨される。
  • GPはLPに対する受託者責任を果たす観点から、やむを得ない事情がある場合や、ファンド運営に支障や利益相反が生じるおそれがない場合を除き、キーパーソンがファンド運営に専念する体制を整備することが推奨される。また、短期間でのキーパーソンの離反は、基本的には起きてはならない事象であるとの認識を持ち、万が一、キーパーソンが離反する場合には、ファンドの新規投資の停止やLPによる出資コミットメントの再検討が可能とされることが推奨される。VCのファンドとしての継続性を高める観点から、複数の投資担当者やミドル・バックオフィス業務の担当者を備える等、持続可能な体制が構築されることが推奨される。
  • 関連法令、ファンドに関する契約等を遵守するため、LPの要求水準に応じた適切な範囲において、コンプライアンス管理の責任者の明確化や非公表情報の取扱いその他業務運営に必要な規程を整備し、コンプライアンス管理の体制を確保することが推奨される。
  • LP間の公平性の観点から、一部のLPが認識しないうちに不利益を被ることがないよう、特定のLPに対し、他のLPに重大な悪影響を及ぼし得る個別権利の付与を行う場合には、他のLPにも情報提供が行われる等の透明性が確保されることが推奨される。また、特定のLPに個別権利の付与を行う場合には、ファンドサイズやLPの属性に応じ、LPは自身よりも出資コミットメント額が同等以下のLPに付与されている権利を求めることができるようにすることが推奨される。
  • GPはLPに対する受託者責任を果たす観点から、ファンド組成時において、利益相反が生じ得る事項の特定とその管理体制に関する検討を行い、LPに十分に説明することが推奨される。また、LPとGP間の利益相反事項については、LPACに諮問を求める等、利益相反のおそれに対処することが推奨される。特に、GPが他事業との兼任・兼業や複数ファンドの運営を行う場合は、利益相反管理を徹底することが推奨される。他事業との兼任・兼業については、GP内のリソース配分やファンド運用との関係を明確にした上で、ファンドの運営に影響があり得る場合には、投資先企業の価値向上につながるもの等、LPのリターン向上に資するものに限定することが推奨される。また、複数ファンドの運営については、ファンド間の利益相反に関する明確な管理体制(GP内のリソース、投資機会、エグジット時期等)を整備することが推奨される。
  • GPによるファンドに対する適切な出資コミットメントが行われる等、LPとGPの利益を一致させるための対応を講じることが推奨される。GPは、投資先ごとの投資額に対するリターンよりも、LPの出資コミットメント額に対するリターンを最大化することが重要であることを意識することが推奨される。組合契約における利益分配構造等の主要な条件については、グローバルな機関投資家からの資金調達も見据え、ILPA Private Equity Principles等のグローバル・スタンダードに配意したものとすることが推奨される。
  • ファンドの資産の状況を算定するにあたり、保有する非上場企業の株式について公正価値評価を行った上で、LPに情報提供することが推奨される。また、公正価値評価における評価手法等についても情報提供することが推奨される。
  • ファンドの財務情報に関し、LPに四半期ごとに財務情報を提供することが推奨される。また、年次報告においては、ファンドの投資戦略の実現状況及び今後の方針を提供することが推奨される。

金融庁 「金融機関のシステム障害に関する分析レポート」の公表について
▼ 「金融機関のシステム障害に関する分析レポート」の概要
  • 金融庁では、監督指針等に基づき、金融機関から報告を受けているシステム障害(サイバー攻撃を含む)の分析結果をまとめ、2019年以降、毎年、「金融機関のシステム障害に関する分析レポート」として公表している。
  • 本レポートは、過去の事例も含め、障害の端緒に着目して障害事例を分類し、原因と課題を分析している(次頁参照)。また、ITレジリエンス強化の参考となるよう、ATM停止時の円滑な顧客対応や、コンティンジェンシープランに則った円滑なシステム復旧などの障害対応の好事例も記載している。加えて、今般のレポートにおいては、「金融機関における脅威ベースのペネトレーションテスト(TLPT)の好事例及び課題」及び「オペレーショナル・レジリエンスに係る金融機関との対話等の概要」のコラムも掲載している。
  • 金融機関においては、本レポートに加え、サイバーセキュリティを含むシステムリスク管理に関する各種標準、ガイドライン等を参照し、自組織の体制及び対策について見直し、求められるITセキュリティ又はITレジリエンスとの差異を特定し、解消することが望ましい。
  • システム障害の傾向及び課題等の概要
    1. サイバー攻撃、不正アクセス等の意図的なもの
      • マルウェア感染
        • 脆弱性に係る最新情報の把握、パッチ適用の徹底
        • マルウェア対策整備、重要な外部委託先のサイバーセキュリティ管理態勢のリスク評価実施や強化
      • DDoS攻撃
        • DDoS攻撃の軽減対策強化、DDoS攻撃の早期検知・復旧のための態勢整備
    2. システム統合・更改や機能追加に伴い発生
      • 外部委託管理不十分
        • 外部委託先管理の強化
      • BCP・大規模障害時の危機管理体制の整備が不十分
        • プロジェクトの固有のリスクを踏まえたBCPの整備
        • 大規模障害を想定した危機管理体制の整備
        • 訓練等による実効性の確保
        • 課題解決のためのIT人材の確保、第三者目線によるチェック強化
    3. 日常の運用・保守等の過程の中で発生
      • 冗長構成が機能しない
        • 冗長構成が意図どおりに機能するよう実効性の確保
        • 冗長構成が機能不全を起こす不具合へのパッチに関する適切な管理
      • 障害時の復旧に関する不芳事案
        • 障害原因を早期特定するための必要な情報把握と情報取得手段の確保
      • 記憶領域の確保不足による障害
        • 記憶領域の確保に係る設定内容の十分な確認、検証の強化
        • 記憶領域の使用状況を把握、適時対策を実施するための監視強化
      • 取引量増加に起因する障害
        • 顧客の利用量増加を踏まえたシステムの処理能力設計に係る品質強化
        • システムの処理能力の事前検証による実効性の確保
    4. プログラム更新、普段と異なる特殊作業等から発生
      • 設定ミス・作業の誤り
        • (本番システムに影響する作業を行うことよるリスクを軽視することなく)作業手順書の確認強化、作業実施体制の強化
  • 金融機関における脅威ベースのペネトレーションテスト(TLPT)の好事例及び課題
    • 国内金融機関におけるTLPTの現状
      • サイバー攻撃の脅威が高まる中、技術的な対策だけではなく、人及びプロセスも含めた対応が必要であり、TLPTはその対応態勢の実効性を検証する有効な手法。近年、我が国の金融機関において、TLPTの活用が増えており、好事例も認められるものの、TLPTの内容や活用方法に改善の余地がある事例も認められる
      • 金融庁では、銀行等におけるTLPTの実施事例を収集し、主な好事例及び課題を整理し、匿名化・一般化したうえで、その結果を銀行と共有した
    • 分析結果概要
      • TLPTの重要な要素:
        • 一般的な脅威だけではなく、自組織に特有の脅威を分析し、現実の攻撃を模した攻撃を実施する(具体的には、脅威インテリジェンスの導出結果を踏まえ、自組織を標的とし得る攻撃者、及び、それらの攻撃者が現実に用いている攻撃手法を想定し、テスト計画へ反映する等)
        • システム、IT資産、技術的な対策のほか、人、対応プロセスも評価する(例えば、導入されているセキュリティ製品の有効性にとどまらず、インシデント対応を担うブルーチームの能力も評価する)
      • 本調査で銀行等から提供された事例を分析した結果認められたTLPTとして望ましい事例と不十分な事例の概要は次頁のとおり
        • なお、TLPTとしては不十分であっても、なおサイバーセキュリティの強化に資する側面があると考えられるため、そうした金融機関の取組そのものが否定されるものではない
    • 金融機関に求められる対応
      • 金融機関は、TLPTに重要な要素、望ましい事例及び不十分な事例を参考としてTLPTを実施することが望ましい
      • 経営陣は、攻撃者の目線から、組織的な態勢と技術的対策を検証し、抽出された課題への対策を講じることにより、経営上のリスクを低減させるというTLPTの意義を踏まえたうえで、TLPTで重要な課題が検出されれば、躊躇なく現場から報告がなされるような組織文化を築くべき。また、経営陣は、現場とのコミュニケーションを厚くすることなどを通じ、TLPTによって判明した課題の経営上の重要性及び緊急性、課題の根本原因、課題の解決に必要なリソース及び時間などを含め、課題の全体像を把握したうえでその解決に臨むべきである
  • TLPTの好事例及び課題
    • 脅威インテリジェンス
      • 望ましい事例
        • 自組織に特有の脅威インテリジェンスを導出し、シナリオ選定している。
      • 不十分な事例
        • 脅威インテリジェンスが一般的な脅威情報の分析にとどまっている。
    • 評価
      • 望ましい事例
        • ブルーチームに対して事前予告せずにTLPTを実施し、その検知・対応能力を評価している。
        • SOCにおける検知・対応能力だけでなく、フィッシングメールを起点とした職員からCSIRTへのエスカレーションと、CSIRTの対応状況も評価している。
      • 不十分な事例
        • TLPTの計画を事前にブルーチームに伝え、ブルーチームが、疑似攻撃が発生することを把握しているため、その検知・対応能力が適正に評価されていないおそれがある。
        • 攻撃者が考え得る複数の経路からの侵入や迂回攻撃を試みていないため、事前に想定した攻撃手法・経路で検証対象の脆弱性を検証する脆弱性診断と実質的に異ならないものにとどまっている。
    • 経営陣への報告 経営陣の対応
      • 望ましい事例
        • サイバーセキュリティ担当部署は、TLPTの結果から判明した全社的な影響を生じさせ得るリスクを経営陣に報告している。
        • 経営陣は、TLPTの結果報告を受け、課題への対応を指示するだけではなく、テスト範囲の拡大や事前に予告せずにテストを実施することを通じて、TLPTの高度化を図るように指示している。
      • 不十分な事例
        • 業務や顧客に重大な影響を及ぼし得る類似の課題が繰り返し検出されており、対策が十分ではなく、重要なリスクが残存している可能性を推測すべきであるにもかかわらず、過去の発見事項と類似していることをもってサイバーセキュリティ担当部署が経営陣への報告を省略している。
        • TLPTによって検出された課題のうち、金融機関の経営に重要な影響を及ぼし得るものついて経営陣に報告したり、具体的なリスクについて報告したりせず、単に「良好な結果であった」と報告している。
    • 発見事項の活用
      • 望ましい事例
        • サイバーセキュリティ担当部署は、TLPTで検出された課題と同様の課題がTLPTの対象でなかったシステムにおいても認められないかどうかを確認し、報告するよう、社内の他のシステム担当者及びグループ会社のシステム担当者に対して指示している。
      • 不十分な事例
        • TLPTで検出された課題が他のシステムでも認められないかどうかを確認していない。その結果、それ以降、他のシステムに対して実施したTLPTでも類似した課題が検出されている。
    • その他
      • 望ましい事例
        • 犯罪集団、国家が関与する主体、内部犯行者などの様々な主体の攻撃が生じさせる脅威に応じ、複数のシナリオを設定し、TLPTを実施している。
      • 不十分な事例
        • TLPTの趣旨・目的に沿った十分な予算が確保されておらず、脅威インテリジェンスやブルーチームの評価が省かれ、結果として、TLPTとしては不十分なテストとなっている。
  • オペレーショナル・レジリエンスに係る金融機関との対話等の概要
    • 金融庁では、2023年4月に公表した「オペレーショナル・レジリエンス確保に向けた基本的な考え方」(オペレーションナル・レジリエンスに関するディスカッション・ペーパー)及び同ディスカッション・ペーパーの趣旨を踏まえて同年6月に改正した主要行等向けの総合的な監督指針に規定する基本動作及び主な着眼点等について、主要行等及び国際統一基準金融機関を対象にアンケートを実施した上で一部の金融機関と対話を行った。その結果の概要は、以下のとおり。
      1. 「重要な業務」の特定
        • 重要な業務の選定にあたっては、既存のBCP(事業継続計画)の対象業務を選定することを検討しつつも、新たな基準を設けて、重要業務の範囲を見直している先が多くあった。
        • 具体的には、顧客目線に立った業務中断時の影響を重視するとともに、業務が中断した場合の自行への影響(取引数・取引額などの観点からなど)、業務の特性(取引時限があるか否かなど)等も加味しながら選定を行っている傾向が認められた。
      2. 「耐性度」の設定
        • 既存のBCPのRTO(目標復旧時間)を活用して耐性度を設定するとしている先が多くあった。
        • 一部の金融機関においては、影響を受ける取引数、取引額及び利用者数に加え、苦情数を考慮している事例、業務特性に応じた時限を考慮している事例、RTOにRLO(目標復旧レベル)を組み合わせている事例が認められた。
      3. 相互連関性のマッピング・必要な経営資源の確保
        • 重要業務の遂行に必要な経営資源として、人員、システム、施設、サードパーティなどの関連性・依存度をマッピングしている先が多くあった。
        • マッピングにおいて重要業務単位でフローチャートを用いて経営資源(人員、システム、施設など)を可視化している事例が認められた。
      4. 適切性の検証・追加対応
        • 重要な業務の特定、耐性度の設定、必要な経営資源の配分などが適切であることを検証するシナリオとして、システム停止が長期化するなどのストレスシナリオの検証を行っている事例、業務停止の原因を問わず、システム、要員などの経営資源が棄損したという結果事象を想定したシナリオによる検証を進めている事例が認められた。
  • 金融機関においては、利用者目線に立った重要業務の早期復旧や影響範囲の最小化のため、経営陣のコミットメントの下、ロードマップを立て、オペレジの確保を計画的に進めることが望ましい。

金融庁 日本IFIARネットワーク第8回総会議事次第・議事要旨
  • テーマ(1)監査法人のガバナンス
    • 監査法人のガバナンスコードは、上場会社等監査人登録制度が法定化されたことでより大きな役割を持つようになると考える。上場会社等監査人名簿が登録された監査人の監査品質を保証することになるため、登録された監査人に監査法人のガバナンスコードを適用するだけでなく、その適用状況に関してフォローできる枠組みを入れるべきであり、業務及び財産の状況に関する説明書、又は透明性報告書といった形で公表することを義務付けるべき。企業や投資家が監査品質を外部から確認できる仕組みが必要。
    • 監査役には監査法人による開示を確認し、監査法人の状況をしっかり理解いただいた上で、会計監査人選任の判断をしていただきたい。
    • 昨今株式市場の評価を意識し、情報開示を強化する企業が増えている。そうした企業は中小監査事務所を選任することもあるため、監査法人のガバナンスコードを中小監査事務所にも浸透させてほしい。
    • 監査の担い手の質・量の確保のため、監査・保証の魅力を伝えつつ、アドバイザリー以外の監査サービス自体のビジネスモデルで十分に成り立つという議論が世界的になされていくことが重要。
    • 企業の監査役が監査人の質や開示をしっかり確認することも重要。
  • テーマ(2)サステナビリティ開示・保証
    • サステナビリティ情報に関する保証業務については、監査法人以外の保証業務提供者に対しても、財務諸表監査と同様の自主規制と監督機関のフレームワークが適用されることを期待する。
    • 最近、例えば「再生可能エネルギー100%を達成した」といった企業のメッセージをよく見る。再生可能エネルギーはあまり潤沢に存在するものではなく、まとまった量を早い段階で確保するには企業のブランド力や価格支配力等様々な要因が働いていると考えられる。中にはクラウドアウトされている企業も存在する可能性もあり、こうした点も開示・保証の観点で確認していくことができればよい。
    • 約10%から15%の有価証券報告書が訂正される状況を踏まえると、グリーンウォッシングを防ぐためにも、開示と保証は同時に開始されるべき。企業の負担が大きいのであれば、実施当初は会計士や保証業務提供者に対して保証導入支援業務を認め、3年等の一定期間経過後に正式に保証を導入することも考えられる。
    • 様々な海外の動向を比較した上で厳し目の規制が日本の制度に導入される傾向があるが、サステナビリティ開示に関する方向性が国によって異なる中で日本がどのような方向性で進めるかというスタート時点の意思決定は重要。日本市場の魅力向上、及び日本企業の国際競争力強化を第一に考えて検討を進めてほしい。
    • 開示基準の適用については、段階的に進めざるをえないと考える。最終的に全てのプライム上場企業にまで開示を求めるか、本当にできるのか、投資家が本当に求めているのかという点については、効果とコストをよく考えて検討すべき。
    • 開示のスケジュールについて、有価証券報告書の2段階開示については、総会前の有価証券報告書の開示といった論点との関連性も含めて検討すべき。法務省等、他の省庁との連携も必要になると思うが、株主総会の時期も含め、国際的に見た際の日本の立ち位置にも目を向け検討を進めるべき。
    • サステナビリティに関して具体的に検討が進む中、企業や監査法人における人材育成について日本全体として考える必要がある。試験制度をどうするかという観点も出てくると考える。
    • 企業からはいつまでに何をやればよいのか分からないといった声もあり、サステナビリティ開示に関する工程表や記述情報の開示の好事例集を浸透させることが重要。好事例集について、2018年度から毎年作成されているが、毎回の特徴がより明確になるとメディアにも取り上げられ、より浸透するのではないか。
    • 現実的に可能な範囲でという前提で、できるだけ早めの開示を実現することが重要。
    • 保証については、監査法人以外の保証提供者も認めるのかといった点も含めて担い手をどうするかという議論が最も難しいと考える。国際的な議論も踏まえてフレームワークを検討していく必要がある。保証の内容については、過度に難しいことを求めるべきではない一方で、投資家が要求する水準に応えることも必要。十分な議論をしながら進めるべき。また、手戻りを防ぐためにも基準ややり方については早めに議論をするとよい。
    • サステナビリティ情報は開示の内容が重要であり、戦略の財務への影響の記載、財務情報との整合性に注目している。
    • バリューチェーンに関する開示の保証がIESBAの倫理規程の公開草案には入っている一方でIAASBの保証基準案には入っていないことが日本基準ではどのように取り扱われるのかや、監査法人以外の保証業務提供者について、利益相反の問題も生じうる中でしっかり管理ができるのかといった点に関心を持っている。
  • テーマ(3)監査におけるテクノロジーの活用
    • 各監査法人において、生成AIを含む各種監査ツールの実用化を検討しているが、特に不正リスクシナリオや、不正の兆候の分野でAI利用が効果的と考える。生成AIの利用は一朝一夕に進むものではないものの、人が経験をベースに対応しているものを可能な限り機械化し、公認会計士は専門的判断を求められる領域にリソースを割いていくことで、監査の高品質化を実現していける。
    • 現在主流のAIはディープラーニングを用いたもので、AIを利用した不正検出やシナリオ分析はあくまでも過去の経験に基づいたもの。
    • 統計ソフトウェアを用いて分析したものの、なぜその分析結果になったか、(分析者自身に知識や経験がなく)仮説が立てられない例をよく目にする。AIに長けた専門家を育成し、生成AIによる不正の兆候の発見やシナリオ分析を進めたとしても、その人自身の知識と経験不足により、生成AIが検出した不正がなぜ起きたか、原因に結び付けられない事態となっては身もふたもない。AIの推進を強調する場合、生成AIによる分析結果に対して専門的な判断(professional judgment)を行える能力の向上も同時に強調していくべき。

金融庁 「職域等における金融経済教育を推進するための手法等に関する調査」報告書の公表について
▼ 別添)「職域等における金融経済教育を推進するための手法に関する調査」報告書
  • 日本における金融経済教育の取り組みの全体像
    • 海外の先進取組事例を踏まえ、職域を軸としながら、未到達層を複層的にカバーする施策を提言
      • 職域(大企業)
        • 大企業に対する金融経済教育のインセンティブ付与・教育カリキュラム提供
        • 企業ヒアリングにおいては、金融経済教育に取り組む意義の明確化に加えて、従業員の教育にどこまで関与すべきかの線引きが曖昧である、との声が聞かれた
        • 海外先進事例においても、カナダ、イギリス、ドイツにおいて、政府が主体的に企業の啓発や、社員に対する支援内容の標準化に取り組んでいる事例が見られた
      • 職域(中堅・中小企業)
        • 取り組みの動機付けから計画・実行支援までを一気通貫で支援するプラットフォーム構築
        • 企業ヒアリングにおいては、大企業以上にノウハウ・リソース不足が取り組む際の障壁となり実行できないとの声が多かった
        • 海外先進事例においては、カナダ・韓国等の国において、取り組みのインセンティブ付与や、計画・実行のサポート等、単なる啓発にとどまらない工夫が見られた
      • 職域以外(未到達層)
        • 個々の資産状況やリテラシーに応じたセグメンテーション・アプローチの拡充
        • 消費者サーベイから、未到達層が金融経済教育を受講しない理由は様々あり、大きく4つのセグメントに類型化できることを確認
        • 海外先進事例においても、カナダ・イギリスにおいて、セグメント毎に施策投入を行いながら、未到達層のカバー範囲を拡大して行く取り組みが見られた
  • 職域(大企業)施策の全体像(案)
    • 施策1:企業向け認定制度の整備
      • 最低限目指すべき水準の明確化
      • 企業が目指すべき金融経済教育の水準を明確化し、認定制度として整備 例)健康経営優良法人認定、えるぼし認定
      • 認定取得企業を公開することで、自主的に取組強化を行う企業にとってのベンチマークを拡充
      • 現状どこまで社員の教育に関与すれば良いかの線引きが曖昧である。目線がクリアになれば大企業はキャッチアップする努力をするように感じる。(国内大手製造業、人事担当者)
    • 施策2:情報開示の拡充
      • 情報開示の拡充による企業間での必要性理解の促進
      • 先進企業に対して、自社の取り組みに関する情報開示を依頼・奨励(統合報告書等)
      • IRに加え、セミナー・イベント等、不定期の発信機会・媒体を拡充
      • 有価証券報告書等での開示についても”金融経済教育”に関する記載の充実を促す
      • 他社の開示が増えていくと、当社も横並びで取り組み・開示を強化する様に経営層が課題を認識し、検討の指示が来ると思われる。人的資本開示の際にも同じようなことが発生した。(国内大手金融機関、人事担当者)
    • 施策3:取り組み意義の持続的啓発
      • 金融経済教育に企業として取り組む本質的な意義を持続的に啓発
      • ベストプラクティス企業の取り組みを事例集等の形で紹介
      • サステナビリティ、人的資本経営等のテーマとの関連付けを実施-「企業が支払う給与を生活の豊かさに正しく結びつける取り組みが企業のサステナビリティに貢献」 等
      • 金融経済教育は自己責任で学ぶべきであり、企業側が提供するものでないと考えている(企業が取り組むためには、本質的な意義の明確化が必要)。(国内大手製造業、人事担当者)
    • 施策4:従業員向けコンテンツ提供
      • 十分な受講満足度・成果実感を得られる教育コンテンツの提供
      • コンテンツ開発に課題を抱える大企業が導入・利用できる教育カリキュラム/コンテンツを提供
      • 企業が自社の取り組みを評価し、持続的に改善するためのツール・ノウハウも提供
      • 社内にあるコンテンツの満足度が低く、今のコンテンツでは従業員に業務を中断させてまで教育を受けさせるインセンティブが働かないのが悩み。(国内大手製造業、人事担当者)

【2024年6月】

金融庁 詐欺的な投資に関する相談ダイヤル」の開設について
  • SNSやマッチングアプリ等で知り合った者や著名人を騙る者から投資勧誘を受けて、金融商品取引業や暗号資産交換業の登録等を受けていない業者とFXや暗号資産などの投資商品に係る取引を行った結果、損害を被った等という相談が多く寄せられています。
  • こういった詐欺的な投資に関するご相談等を皆様から受け付けるため、専用の相談ダイヤルを下記のとおり開設することといたしました。この相談ダイヤルでは、上記相談事例のように損害を被った場合に限らず、詐欺的な投資勧誘(注1)を受けて、不審に思った方や投資を悩んでいる方などからのご相談等も受け付けます。
    1. 名称:「詐欺的な投資に関する相談ダイヤル」
    2. 受付時間:平日10時00分~17時00分(電話受付)※ウェブサイトでは、24時間受付。
    3. 電話での受付:0570-050588※IP電話からは03-6206-6066におかけください。
    4. ウェブサイトでの受付:金融庁ウェブサイト新しいウィンドウで開きますでもご相談等を受け付けております。
  • ご留意事項
    • お話を伺った上で、他機関の紹介や論点の整理などのアドバイスを行います。ただし、個別取引について、あっせん・仲介・調停を行うことは出来ませんので、予めご了承下さい。
    • 一般の「金融機関との間の個別トラブルに関する相談等や金融行政に関する意見・要望等」については、0570-016811(IP電話からは、03-5251-6811)におかけください

金融庁 金融審議会「市場制度ワーキング・グループ」(第29回)議事次第
▼ 資料2 金融審議会 市場制度ワーキング・グループ報告(案)概要
  • 家計の安定的な資産形成を図り、「成長と分配の好循環」を実現すべく、製販全体として顧客の最善の利益に適った商品提供等を確保するため、組成会社向けの「補充原則」を「顧客本位の業務運営に関する原則」に追加
  • 基本的な考え方
    • 組成会社・販売会社間での建設的なコミュニケーション等により、製販全体・金融商品のライフサイクル全体として顧客の最善の利益を実現
    • 投資信託を含む幅広い金融商品について、組成会社による補充原則の受け入れを期待
    • 組成会社・販売会社の負担にも配慮し、金融商品の特性(リスク・複雑さ)に応じて対応(プロポーショナリティ)
    • 組成会社・販売会社間の情報連携に係る実効性を確保(フォーマット等の実務面の検討)
    • 金融庁において、金融事業者における取組状況をフォローアップし、好事例や課題等を把握・分析
  • 組成会社に求められる対応 (プロダクトガバナンスに関する補充原則)
    • 補充原則1 基本理念 経営者のリーダーシップの下、金融商品提供に関する理念の明確化
    • 補充原則2 体制整備 プロダクトガバナンスの実効性を確保するための体制整備、金融商品の組成・提供・管理の各プロセスにおける品質管理体制の整備
    • 補充原則3 金融商品の組成時の対応 金融商品の組成時における商品性の検証や想定顧客属性の特定、組成会社・販売会社間の情報連携の促進
    • 補充原則4 金融商品の組成後の対応 金融商品の組成後における商品性の検証、組成会社・販売会社間の情報連携による運用・商品提供等の改善
    • 補充原則5 顧客に対する分かりやすい情報提供 運用体制やガバナンス等に関する顧客への分かりやすい情報提供
  • 販売会社に求められる対応(原則6に注を追記)
    • 原則6 顧客にふさわしいサービスの提供
      • 実際に購入した顧客層や反応等について組成会社との情報連携
      • 組成会社による想定顧客属性を踏まえつつ、自らの責任で顧客の適合性を判断
  • 株式決済期間の短縮
    • 日本では、株式の取引が行われた約定日(T日)の2営業日後(T+2日)に決済が行われている一方、国際的に株式決済期間の短縮(T+1化)の実施・検討が進められている
    • 日本の証券決済制度が国際標準から取り残されないよう、市場関係者において、T+1化に関するメリットと課題等について、実務的な検討を始めるべき
    • メリット
      • 決済リスクの削減
      • 資金効率の向上・担保負担の軽減
      • 決済事務の一層の合理化・効率化 等
    • 課題
      • フェイルリスクの増加
      • オペレーショナルリスクの増加
      • 非居住者による日本株取引への影響 等
  • 投資型クラウドファンディング
    • 株主一元化スキームの活用
      • 株式投資型クラウドファンディング(CF)において、株主一元化スキームの組成ニーズが高まっているが、ファンド運営に係る投資運用業の登録要件を満たすための体制整備の負担が課題
      • 投資運用業の登録審査において、実態に即した人的構成・業務運営体制での登録が可能であることを明確化
      • 株式投資型CFと株主一元化スキームとで自主規制規則における規制体系に差異(少額要件の適用の有無等)
      • 株主一元化スキームと株式投資型CFとの規制の平仄を合わせる
    • 勧誘方法
      • 投資型CFの勧誘方法は、自主規制規則において、一部を除き、電磁的方法に限定され、電話・訪問勧誘等は禁止
      • 特定投資家への勧誘は電磁的方法以外(電話・訪問等)の方法を認めてほしいとの要望
      • 電磁的方法以外(電話・訪問等)の方法による勧誘について、法人の特定投資家に対しては可能とする
      • 一方、個人(特定投資家を含む)に対しては引き続き慎重に対応

金融庁 業界団体との意見交換会において金融庁が提起した主な論点
▼ 主要行等
  • 「気候関連シナリオ分析 ~銀行セクターにおける今後の取組~」の公表について
    • 金融庁と日本銀行は、2021事務年度に実施した気候関連シナリオ分析の第1回エクササイズに続き、3メガバンクを対象として、2024事務年度に第2回エクササイズを実施する予定である。5月10日に、その枠組を公表した。
    • 第2回エクササイズでは、短期シナリオによる移行リスクの分析を行う予定である。政策変更や技術制約等で短期的により強いストレスのかかる状況を想定しており、第1回エクササイズで行った長期シナリオによる分析を補完するものであると考えている。また、これに加えて、企業の移行(トランジション)を支援するための銀行のトランジション・ファイナンスの効果を示すことができないか、試行的に考察することも検討している。
    • 実施の詳細については、引き続き、3メガバンクと金融庁・日本銀行の間で実務的な議論を続けていくので、第2回エクササイズ実施に向けて、ご協力をお願いしたい。
    • なお、本公表においては、2023事務年度に行った、気候関連リスクが保有有価証券の時価下落を通じて銀行の財務に与える市場リスクの影響の簡易分析も紹介している。
  • マネロン等対策に係る当面の対応について
    • 「マネロンガイドラインに基づく態勢整備」については、2024年3月末に対応期限を迎え、4月末に「対応結果の報告」を提出いただいたところ。経営トップのリーダーシップのもと対応を進めてこられたことに感謝申し上げる。
    • 金融庁としては、当面の間、本報告を踏まえたモニタリングを通じて、各金融機関における態勢整備状況の確認を行っていく。
    • こうしたモニタリングの結果を踏まえて、これまで申し上げてきたとおり、必要に応じて個別に行政対応を検討する場合があることを改めて申し上げる。
    • 今後は2028年に予定されているFATF第5次対日相互審査も見据え、各金融機関においては整備したマネロン等リスク管理態勢を適切に運用し、その有効性を検証し、継続的に態勢を維持・高度化していただく必要がある。
    • 金融庁としても、各金融機関における、こうした有効性の検証等の取組について先行的に対応を実施している金融機関の事例を共有するとともに、各金融機関の参考となるような一定の目線・考え方を整理できないか検討を進める。
  • 「マネロン・テロ資金供与・拡散金融対策に関する行動計画(2024-2026年度)」について
    • 4月17日、マネロン等対策に関する政府の新たな行動計画が策定、財務省ウェブサイトにおいて公表された。
    • 新たな行動計画は、今後3年間の政府及び金融機関等が実施すべき取組を取りまとめたものであり、金融業態においても、官民一体で、リスクベースアプローチに基づきマネロン等対策の強化・高度化を着実に進めていく必要がある。
    • これまでの計画では期限を定めて基礎的な態勢整備を主に対応いただいてきたところ、今後は態勢の実効性を高めていくとともに、金融犯罪の巧妙化をはじめとするリスク環境の変化にも対応し、国際的な水準にも対応できるよう取り組んでいただきたい。
    • また、金融庁としては、共同システムの安定運営等により、我が国の金融業態のマネロン等対策の底上げについても対応していく。
    • 各行の経営トップにおいては、引き続き自らのリーダーシップの下で、これまでに整備した態勢の下、その有効性を一層高める取組みを着実に進めていただきたい。

金融庁 バーゼル銀行監督委員会によるディスカッション・ペーパー「気候関連金融リスクの管理と監督の向上のための気候シナリオ分析の役割」の公表について
▼ バーゼル銀行監督委員会によるディスカッション・ペーパー「気候関連金融リスクの管理と監督の向上のための気候シナリオ分析の役割」の公表について
  • CSAの主な特徴
    1. モチベーション
      • CSAは、明確に表現され、公式に定められた目的を持つべきである。CSAのモチベーションは、シナリオの設計、CSAの特性と範囲、モデル作成枠組みの開発、及び結果の活用に繋がる重要な機能である。これらの目的は、枠組みの開発を推進し、適切に文書化され、すべての関連する利害関係者に明確に伝達されるべき。
    2. 包括性
      • CSAは、健全なリスク特定プロセスによって特定された重要かつ関連するリスクの評価を可能にし、明示されたCSAの目的と整合的であるべき。CSAは、理想的には、対象となる金融機関の性質及び構成又はエクスポージャーの種類を考慮して、目的の範囲内で特定されたすべての重要なリスクを捕捉すべき。
    3. 妥当性
      • CSAで設定するシナリオは、現在は起こりそうもないように見えるが、気候変動との関連で起こり得る極端な事象を含む、もっともらしい将来の状況・潜在的な現実世界の事象を反映すべき。
      • シナリオ及び枠組み内の前提条件は、関連する科学、技術及び経済に関する文献に明確に基づくべき。これは、既存のデータ又はモデル作成上の課題のため単純化・省略された前提条件が使用される場合においても同様。
      • シナリオの前提条件及びその理論的根拠は、特に科学的及び技術的前提条件について、信頼できる専門家から入手可能な最新の情報を反映すべきであり、厳密な分析によって裏付けられるべき。同様に、モデル作成における前提条件は、シナリオによって分析された経済及び気候条件の構造変化を反映するため、過去の関係性がどのようにもっともらしく変化するかを考慮すべき。
    4. 一貫性
      • シナリオ設計、リスク分析、モデル作成及び全体的なCSAの設計を含むCSA一式は、気候シナリオ内、及びシナリオを結果に変換するために利用されるプロセス全体にわたって、内部的な一貫性を示すべき。
      • 技術進歩、人口動態、気候の影響及びマクロ経済要因に関する前提条件は、シナリオとモデルを通して、内部的な一貫性を示すべき。
      • 気候関連リスクのドライバーから得られる経済・金融変数の一貫性については、気候変動に関する技術の変化及び科学的根拠の勘案を含めて、特別に注意が払われるべき。
    5. 透明性
      • 気候シナリオは、アウトプット、前提条件及び不確実性を含め、十分に透明性を備え、関連する利用者がアクセス可能であるべき。
      • シナリオの構成要素においては、定量的結果の前提条件及びドライバー、並びにシナリオ内の変数の観測された経路について、経済的又は財務的根拠によって裏付けられた、シナリオ間の差異を簡潔に説明すべき。
      • 主要な前提条件及びモデル作成アプローチは、銀行の経営陣や監督当局にとって明確かつ理解可能であるべき。関連するガバナンスやモデルリスクの管理のために、CSAの結果が主要なリスクドライバー及び波及経路に明確に帰属するよう、リスク分析モデルは透明性をもって設計されるべき。不確実性の原因に関する詳細を伴うべき。
    6. 扱いやすさ
      • CSAの枠組みを開発する際には、柔軟性と再現性を持つように努める必要がある。シナリオ開発者は、変化する運用環境に、シナリオを柔軟に適応させることができる必要がある。
      • 気候関連金融リスクによるショックは、銀行や監督当局が使用する経済・金融変数に、再現可能な形でマッピングされ、適切な場合には過去の一連の変数が提供されるべき。また、可能であれば、シナリオで示された影響の大きさは再現可能であるべき。
    7. 比例適用
      • CSAの深度と粒度は、リスクの重要性に比例すべき。また、すでに確認されている重要性の範囲に応じて、組織とその能力に比例したものであるべき。
      • シナリオと分析枠組みの両方の設計では、対象となる金融機関、ビジネスライン、セクター又は地域の性質と構成を考慮すべき。
  • CSAの用途別の考慮事項
    1. 標準化の程度
      • CSAの標準化には、下記の事項が含まれ得る。
        • 共通の気候リスクシナリオ一式の提示
        • 特定のシナリオ作成者からのシナリオの活用
        • 特定のシナリオ変数の使用の要求
        • 必要なデータ項目の導入
        • 特定の資産クラス、セクターまたは地域の選択・モデル作成の技術を規定
        • 特定のデータ出力の要求
      • CSAの目的の中で、採用されるカスタマイズの程度、その決定を行う際に行われたトレードオフについて議論され組織内で共有されるべき。
      • 監督上のCSAには、目的に応じて、個別の銀行が実施するもの(ボトムアップ)と、監督当局が実施するもの(トップダウン)の2種類がある。
        • ボトムアップ型のCSAは、各銀行のリスク・プロファイルに合わせて調整されるが、銀行間での比較可能性が低く、より資源集約的となり得る。
        • トップダウン型のCSAは、より標準化され、銀行間での比較が容易であるが、個別の銀行のリスク・プロファイルに見合っていない可能性がある。
    2. 時間軸
      • シナリオが予測される、及び/又は分析が実施される期間は、評価の目的によって決定される。
        • 急性の物理的リスクが顕在化した場合や政策上のショックのような一過性のショックを分析する場合は、短期の時間軸が有用。銀行が組織レベルでリスクを軽減し、監督当局が短期の脆弱性に対処するために重要となり得る。
        • 物理的・移行リスクに伴う長期の構造変化に対する既存の戦略やビジネスモデルのレジリエンスを評価する場合は、長期の時間軸を用いる必要。
      • CSA・CSTに関する重要な考慮事項は、実効的なリスク・エクスポージャー(すなわち、エクスポージャーの満期)及び予想されるリスクの具体化(すなわち、ショックの発現)の両者に関連する時間軸が、目的と整合的であること。
      • 多くのリスクベースでのツール及び評価は、一般的にエクスポージャーの満期及び性質を反映する時間軸を必要とする。
    3. シナリオの厳しさ
      • CSAにおいて用いるシナリオの厳しさには幅がある。
        • これまでは、長期的な気候リスクドライバーによる、一般的なマクロ経済や金融環境を説明するシナリオに焦点を当ててきた。
        • 最近は、気候リスクドライバーによるテールリスク事象を説明する短期的なシナリオに注目が集まっている。
        • 両者とも重要であり、目的に従い、様々な厳しさを持つシナリオ一式が必要となり得る。
      • また、2つ以上のリスク(複合リスク)の相互作用が、個々の影響よりも大きな影響をもたらす可能性がある点については、CSA、特にCSTで議論がなされている。複合的リスクとその累積的な影響を捕捉するために複数のショックを使用することは、テールリスクを適切に反映するシナリオを構築するために必要となり得る。
    4. ベースラインの選択
      • CSAはストレステストの枠組みに従って運用されることが多い。ストレステストでは、特定のベースシナリオを想定する。伝統的なストレステストの文脈においては通常、ベースラインシナリオは、他のシナリオとの比較の基礎となる、(ストレスがかかっていない)中心的な予測である。そのため、伝統的なストレステストからCSA及びCSTに移行する際、移行リスク・物理的リスクによる影響が多様であるため、ベースラインの選択という課題に直面する。
      • この点、CSAでは移行リスクと物理的リスクを除外するベースラインはない。更に、これらのリスクを含むベースラインには、ある程度のストレスが組み込まれているため、得られた結果が過少となる可能性がある点が、既存の枠組みを適用させる上での課題。
      • 事実上、一部のCSAは伝統的なストレステストのベースラインを選択しているが、これは、通常気候変動の影響を組み込んでいないため、仮想的なものである。現実的な選択肢には、これ以上の気候政策対応がない場合の最も蓋然性が高いと考えられるシナリオが含まれる。
    5. 粒度
      • 伝統的なシナリオ分析(特に資本ストレステスト)では、マクロ経済レベルのシナリオを検討する傾向があり、リスクドライバーは失業、インフレ、金利や株価等の重要なマクロ経済変数(MEV)へのショックとして伝達される。
      • 一方で、CSAは、例えばエネルギーシステムの移行、サプライチェーンの変化、保険の利用可能性の低下といった構造変化に明示的に関係していることが多い。その結果、CSAのシナリオ及びエクスポージャーデータは、経済的な関係の変化を適切に評価するために、より粒度の高いものを必要とし得る。
      • 十分な粒度のデータは容易にアクセス可能なフォーマットで利用できない可能性があるため、不足するデータについては、代替値の活用も検討考えられる。銀行及び監督当局は、代替値の活用や粒度を下げることのコスト・便益を慎重に検討すべき。または、公表データの活用などにより、定められたCSAの目的を達成することができる適切な粒度レベルを考慮すべき。
    6. バランスシートの前提条件
      • 選択された時間軸におけるバランスシートの展開に関する前提条件は、CSAの結果に影響を及ぼし得る。一般的に、バランスシートについては、現在の水準で一定とする(静的)、又は時間軸を通じて調整する(動的)前提が用いられる。いずれのアプローチも気候リスクを評価するための目的に応じてメリット・デメリットがある。
        • 静的バランスシートでは、銀行のエクスポージャーの規模、構成、及びリスク・プロファイルは一定と仮定するため、リスク削減にかかる経営上のアクションの効果を考慮しない脆弱性の規模を評価するのに適している。
        • 動的バランスシートでは、リスク削減にかかる経営上のアクションの効果を評価するのに適している。
      • バランスシートの前提条件の選択は、CSAの目的に依存。シナリオの基礎的な前提条件とどう相互作用するかを理解すべき。
    7. 分析の枠組み
      • 多くのCSAは、伝統的なストレステストの枠組み及びリスク指標に基づいている。これらの伝統的な枠組みは、一般的にマクロ経済シナリオ変数を通じて伝達される一時的なショックと、特に収益・費用・損失及び引当金の推計を予測するモデルと組み合わせるように設計されている。これらは、気候関連金融リスクの潜在的な影響を分析するための初期段階としては妥当であった。
      • しかし、銀行や監督当局がCSAに対するアプローチを進める中では、過去の経験と切り離した、構造的な関係を評価することが目的となる。従来の手法がこうした目的に適しているかは疑問視されており、新しいモデルや指標が必要となり得る。
      • 例:ヒストリカルデータを用いて測定されたストレステストのモデルは、過去の関係や相関関係が将来も維持されるという前提に依拠している。
      • また、長期的な構造変化の下での銀行のパフォーマンス、リスク及び存続性の評価を容易にするため、代替的な枠組み(機械学習、AI、ビックデータ分析との統合など)を開発する必要があるかもしれない。

金融庁 損害保険業の構造的課題と競争のあり方に関する有識者会議(第4回)議事次第
▼ 資料1 損害保険業の構造的課題と競争のあり方に関する有識者会議報告書(案)、資料集
  • 大規模代理店に対する指導等の実効性の確保
    • 損害保険会社においては、保険代理店に対する指導等が適切に実施されるよう保険募集管理態勢を再構築するとともに、保険代理店における保険募集の適切性について、代理店監査等を通じて検証し、必要に応じて改善を求めるなど、保険代理店の規模やそれに基づく保険会社の営業面への影響の大きさにかかわらず、保険代理店に対する指導等が適切に行われるよう、その実効性を確保するべきである。
    • また、保険代理店に対する金融庁及び財務局のモニタリングについても、これまでは、人員の制約等により、一部の保険代理店に対するヒアリングや苦情分析にとどまっていたが、今般の事案を踏まえ、損害保険会社による保険代理店に対する指導等の状況についても、損害保険会社や保険代理店への立入検査を通じて検証するなど、金融庁及び財務局によるモニタリングを強化5すべきである。
    • その上で、損害保険会社による保険代理店に対する指導等に対する補完的な枠組みの構築を検討すべきである。例えば、保険代理店の業務品質を保険代理店と利害関係のない中立的な第三者が一定の基準に基づいて公正かつ適切に評価する業界共通の枠組み(以下「第三者評価」という。)を設けることを検討すべきである。また、第三者評価を検討するに際しては、それを実効的に機能させる観点から、以下のような点にも留意する必要があるとの指摘もある。
      • 特に、損害保険会社による適切な指導等が行われないおそれのある大規模な保険代理店等に対して有効に機能するような仕組みや、それ以外の保険代理店への指導等においても損害保険会社が活用できる評価基準を検討すること
      • 評価基準や項目については、評価される側の保険代理店等の関係者を含めて、十分に検討する必要があること
    • 保険募集人の募集品質の一層の向上を図る観点から、大規模な保険代理店に対するより厳格な態勢整備等を法令上の措置として求めることや、法令上に根拠を持つ自主規制機関等を設立することも視野に入れて検討を継続することが望まれる。
  • 代理店手数料ポイント制度
    • 損害保険会社が、代理店手数料ポイント制度において、規模や増収面を重視し、保険募集に係る顧客本位の業務運営の観点からみた業務品質を必ずしも適切かつ十分に評価していないきらいがあり、この仕組みが、大規模な保険代理店に業務品質を軽視する不適切なインセンティブを与え、不適切な保険募集を誘引しているおそれがある。
    • 損害保険会社においては、代理店手数料ポイント制度について、
      • 「規模・増収」に偏ることなく「業務品質」を重視する
      • 「業務品質」の具体的な指標について、損害保険会社の事務効率化ではなく、顧客にとってのサービス向上に資するものとする
        とを、関係者と議論し、検討していくことが求められる。
    • その際、代理店手数料ポイントの適切性確保に向けた動きを加速させるため、
      • 前述の第三者評価に係る仕組みにおいて、一定の評価基準が示される場合は、その内容と連動させる
      • 乗り合っている他の損害保険会社の手数料ポイントに追随することで、保険代理店における業務品質の向上に向けたインセンティブを阻害しないようにする
      • 損害保険会社において業務品質評価割合の考え方を開示することや、保険代理店においても、特に大規模な保険代理店については、損害保険会社別の手数料総額等の開示を行う
        などの仕組みを設けることを検討することが望ましい。
  • 保険会社による保険代理店等への過度の便宜供与等の制限
    • 損害保険会社は、顧客の適切な商品選択を確保する観点から、保険代理店等に対する便宜供与のうち、自社の保険商品の優先的な取扱いを誘引するものを解消する必要がある。具体的には、以下のような性質を有する便宜供与について、全てのケースにおいて確実に解消する必要がある。
      • 便宜供与の実績に応じて、保険代理店における保険取引の調整が行われる場合(ニギリ)
      • 保険代理店等から物品等の販売数量の目標設定や購入数量の割当て等が行われる場合(ノルマ)
    • また、上記の類型に該当しない保険代理店等に対する便宜供与であっても、その価格、数量、頻度等の要素を総合的に勘案した上で、「実質的に」自社の保険商品の優先的な取扱いを誘引するものについては、解消する必要がある。個々の事案ごとに判断されるべきものではあるが、例えば、具体的には、少なくとも以下のような行為が該当するものと考えられる。
      • 明示的なノルマはないものの、他の保険会社の購入実績との比較を提示されるなど暗黙の購入圧力を背景として、数量等の報告やとりまとめを伴う物品等の購入等を損害保険会社の社員等が斡旋する行為
      • 保険代理店が主催等するイベント等において、損害保険会社の社員等が保険業と関連性の低い役務を提供するかたちで参加・協力する行為
      • 保険代理店が主催等するイベント等において、損害保険会社の社員等が休日や業務時間外に参加・協力する行為
      • 本来は保険代理店等が負担すべき費用・業務を損害保険会社が負担する行為
    • 損害保険会社から保険代理店への出向等についても、上記の趣旨に留意しつつ、顧客の適切な商品選択を確保する観点から、自社の保険商品の優先的な取扱いを誘引するものの他、保険代理店としての自立に向けた動きを阻害するものは解消する必要がある。
    • 具体的には、出向等以外の便宜供与と同様に、その出向等の実績に応じて、保険代理店等における保険取引の調整が行われるものや、保険代理店の業務の中核的な役割を担う部署への長期にわたる出向等については、確実に解消する必要がある。
    • 顧客本位の業務運営を徹底する観点から、損害保険会社において、適切な入庫紹介の実施を確保するにあたり、以下の内容について十分に留意する必要がある。
      • 顧客が自動車修理工場を選択できることに関する顧客への明確な伝達
      • 顧客に自動車修理工場を紹介する際において、原則として複数社を紹介することそれらを紹介する理由の説明
      • 顧客に紹介する自動車修理工場の業務の適切性や品質を定期的に検証するとともに、入庫紹介を受けた顧客の意見等も踏まえた、入庫紹介の適切性を確認するための体制の整備
  • 乗合代理店における適切な比較推奨販売の確保
    • 乗合代理店が損害保険会社からの便宜供与の実績等の理由により、当該損害保険会社の商品を推奨することを決定しておきながら、顧客に対して「特定の損害保険会社の事務に精通している」といった本来の理由14を隠した説明を行っていたなど、比較推奨販売に関する規定が不適切に運用されていたことも明らかになった。
    • 乗合代理店における保険募集の実務や募集形態等を踏まえた上で、様々なケースに応じた保険募集が適切に行われるよう、例えば、以下の点について検討すべきである。
      • 保険募集人が、顧客に対して比較推奨を行う場合においては、顧客の意向を踏まえ、顧客の最善の利益を勘案しつつ、顧客にとって最適と考えられるものを比較又は推奨提案し、比較に係る事項や提案の理由(単に「経営方針」等のみにとどまるのではなく、顧客の立場に立ち、その顧客にとって提案商品が最適と考えた具体的な理由)を分かりやすく説明する
      • 保険募集人の提案する保険商品が、どのような商品群から選定された上で提案されているのかなどについて、顧客に対して、例えば、取り扱う保険商品の範囲、募集手数料に関する情報、乗り合っている保険会社のリスト等の情報を提供する
  • 保険代理店の兼業と保険金等支払管理部門の独立性確保等
    • 兼業代理店がその兼業という立場を利用して自らの利益を得るために顧客の利益を損なうことは許されるべきものではなく、また、兼業代理店はこうした利益相反が生じ得る事業構造であることを改めて認識する必要がある。今後、こうした事案の再発を防ぐ観点からは、保険代理店の兼業を禁止することも考えられないではないが、それによって、顧客の利便性や自動車事故に係る被害者救済機能の低下といった弊害が生じ得ることを鑑みれば、保険代理店の兼業自体を禁止するのではなく、兼業に伴う弊害を適切に管理することが合理的である。このため、損害保険会社及び保険代理店において、以下のような、兼業に伴う弊害を防止するための措置を講じる必要がある。
      • 保険代理店を営む企業において、当該企業内における保険契約者等の利益を損ね得る事業を特定した上で、その管理方針を策定・開示すること
      • 損害保険会社において、業務委託先である保険代理店を営む企業との関係を踏まえた利益相反に係る管理方針を策定し、その内容をウェブサイト等で公表すること
  • 共同保険のビジネス慣行の適正化
    • 損害保険会社においては、企業向け保険市場の参加者等とともに、独占禁止法抵触リスクを低減する観点から、共同保険組成過程において、営業担当者間で競争関連情報等の情報を交換しやすい状況下で、低い保険料を提示した幹事会社に他の損害保険会社が保険料を合わせるといった従来のビジネス慣行を見直すべきであり、例えば、シンジケートローン16,17を参考にした方式や、各損害保険会社の保険料を統一せずに共同保険を組成する方式にすることが考えられる。
    • 実際には損害保険会社が単独で保険契約を引き受けられるにもかかわらず、便宜供与等の保険以外の要因を背景に、敢えて共同保険を組成している慣行もあるが、適正な競争環境を確保する観点から、このような慣行は是正することが重要である。
  • 政策保有株式の縮減及び便宜供与の適正化
    • 政策保有株式の縮減については、大手損害保険会社4社から、政策保有株式の縮減に向けた業務改善計画が提出されているが、今後、金融庁として同計画をフォローアップする必要があるところ、その際には、例えば、本来は政策保有目的で保有しているにもかかわらず、純投資に区分されるなどして、実質的に政策保有株式の保有が継続することのないよう、金融庁が適切に監督することが重要である。
  • 損害保険会社における態勢の確保
    • 損害保険会社においては、コンプライアンス上、不適切なインセンティブとならない評価体系(営業目標、人事・業績評価等)の策定等、適切な営業推進態勢を構築すべきである。さらに、取締役会等の経営陣においても自社の営業推進態勢が適切に確保されているか、検証するべきとの指摘があった。
    • 事後的に利益が確定するという保険契約の性質に鑑みると、ボトムラインに基づく評価は難しいものの、適切な採算管理を行う観点から、例えば、損害保険会社は、
      • 各商品における適切な単位での収支分析
      • 再保険会社からの評価を踏まえたポートフォリオ全体の分析
    • 等を実施することが望ましく、さらに、金融庁においても、各損害保険会社の保険引受管理態勢が適切に確保されているかをモニタリングすることが重要である。
  • 企業内代理店のあり方
    • 本来、こうした実務能力の乏しい保険代理店は、公正な競争環境のもとでは淘汰されていくことが自然である。しかしながら、そうした保険代理店であっても、グループ企業等への保険募集を行ってさえいれば、損害保険会社から一定の手数料収入を安定的に得られ、保険代理店として存続していけるのが実態である。その結果、企業向け保険市場における保険仲立人や他の保険代理店の参入の妨げになり、公正な競争が行われていないなど、企業向け保険市場の競争環境に歪みが生じているおそれがあるものと考えられる。
    • 企業内代理店は、戦前からの損害保険市場における効率的な保険募集の実現に一定の役割を果たしてきたが、損害保険市場を巡る環境が大きく変わる中で、その役割を終えつつあるとの指摘がある。
    • 企業向け保険市場の更なる発展を図る観点から、保険仲立人の活用を促進するための施策もあわせて検討を続けるべきである。
  • 特別利益の提供の禁止
    • 今般の事案において、保険加入を条件に車両価格を値引くなどの行為を行っていた旨が指摘されているほか、一部の代理店において、保険契約を獲得するために、保険契約者間の公平性を損なうようなサービスが行われているとの指摘もある。
    • 国民の損害保険業界に対する信頼を回復する観点から、保険契約者間の公平性を確保するための対応を検討すべきとの指摘があった。
  • 個人の保険契約者に対するリスクマネジメントのインセンティブ付け
    • 少額事故であれば免責とする、という選択肢を保険募集時に示すと同時に、前述の業界ルールを変更し、保険料に損害額の多寡という視点を入れることで、保険契約者自身のリスクマネジメントの向上に資する28、との指摘もあった。
  • 企業のリスクマネジメント意識の向上
    • 近年、株主構成や事業リスクが多様化するなど、日本企業を取り巻く経営環境が大きく変化する中で、企業による主体的なリスクマネジメントの重要性が高まっている。しかしながら、こうした環境変化が進む中であっても、日本企業におけるリスクマネジメントの取組みは漸進的な変化にとどまっているとの指摘29がある。企業においては、こうした指摘も踏まえ、自らのリスクマネジメントに係る取組みを強化していく必要がある。
    • この際、保険はリスクマネジメントの重要な手段の一つであるところ、その活用にあたっては、自社のリスクを正確に評価した上で、そのリスクが適切にカバーされる保険商品を購入すべきであるが、自社の事業の変化に応じて、その付保範囲等を定期的に見直していくことも肝要である。また、保険商品を適切に選択しないと、事故発生時に適切な保険金の支払いが受けられないこととなり、保険の付保範囲の適切性等をめぐり、企業の経営層が株主から経営責任を問われるような事態に発展しかねないことにも留意する必要がある。
    • 損害保険会社においては、リスクマネジメントの高度化に取組む企業に対して、自らが有するリスクマネジメントや保険商品に係る知見を共有するなどにより、積極的な支援を行っていくことが望まれる。

金融庁 コーポレートガバナンス改革の実践に向けたアクション・プログラム2024(「スチュワードシップ・コード及びコーポレートガバナンス・コードのフォローアップ会議」意見書(7))の公表について
▼ コーポレートガバナンス改革の実践に向けたアクション・プログラム2024(「スチュワードシップ・コード及びコーポレートガバナンス・コードのフォローアップ会議」意見書(7))
  • はじめに
    • 2023年4月、「スチュワードシップ・コード及びコーポレートガバナンス・コードのフォローアップ会議」における議論を経て、「コーポレートガバナンス改革の実質化に向けたアクション・プログラム」(以下「アクション・プログラム」)を策定した。
    • アクション・プログラムにおいては、企業の持続的な成長と中長期的な企業価値向上のため、形式的な体制整備によってのみではなく、企業と投資家の双方における自律的な意識改革によるコーポレートガバナンス改革の実質化を促すとの方向性を示し、その重要性の認識が広く共有されてきた。
    • こうした流れをより確かなものとするため、フォローアップ会議では、各施策の取組み状況について、実態を踏まえたフォローアップを行い、以下のとおり、アクション・プログラムで掲げた施策の主な取組みに関するフォローアップと今後の方向性について、取りまとめを行った。
    • 今後は、以下を踏まえ、企業の持続的な成長と中長期的な企業価値向上というスチュワードシップ・コードとコーポレートガバナンス・コードの目的に立ち返り、収益性や成長性を意識した経営の実現に向けた取組みを中心とし、スチュワードシップ活動の実質化を含む具体的な取組みの検証や共有を通じて、企業と投資家の自律的な意識改革に基づくコーポレートガバナンス改革の「実践」に向けた施策を推し進めていくべきである。
  • フォローアップと今後の方向性
    1. 総論
      • 2.以下で示すとおり、アクション・プログラムで掲げた施策について、関係省庁及び東京証券取引所(以下「東証」)等において様々な取組みが進められている。
      • こうした取組みを踏まえ、企業及び投資家の双方において、意識改革が進められているとの意見がある。
      • 課題
        • 他方で、企業及び投資家における取組みの具体的な内容に目を向けてみると、コーポレートガバナンス・コードやスチュワードシップ・コードへの対応が形式的なコンプライにとどまっているとの指摘や、各主体の間で取組みの質に大きな差があるとの指摘もある。また、こうした「差」のより具体的な要因として、企業の規模等に応じたエンゲージメントの担い手が不足しているとの指摘もある。
      • 今後の方向性
        • 今一度、各コードがプリンシプルベースかつコンプライ・オア・エクスプレインのアプローチを採っている趣旨に立ち返り、すべての企業・投資家において、共通して必要となる対応に加え、各主体の規模や置かれた状況に応じ、きめ細かく必要な取組みを検討することが必要である。こうした観点からは、各コードを形式的に遵守することより、むしろ丁寧にエクスプレインすることも重要である。こうした考え方を踏まえ、企業及び投資家の双方において、エクスプレインを含む各主体の対応の状況に十分に配意し、双方向の対話を行うことが重要である。
        • また、こうしたコーポレートガバナンス改革の実質化に向けた取組みについて、各主体において検討・開示するのみならず、中長期的な企業価値の向上という目的に応じた成果を追求し、着実に実践に移すことが重要である。
    2. スチュワードシップ活動の実質化
      • 金融審議会「資産運用に関するタスクフォース」において、スチュワードシップ活動の実質化に向けた取組みについて議論が行われ、2023年12月に公表された報告書において、協働エンゲージメントの促進等について提言が行われた。
      • また、金融審議会「公開買付制度・大量保有報告制度等ワーキング・グループ」において、投資家と企業の対話の促進に向けた制度面の議論が行われ、2023年12月に公表された報告書において、大量保有報告制度の見直しのほか、実質株主の透明性確保に向けた提言が行われた。これを受け、大量保有報告制度における「共同保有者」の範囲の明確化を含む金融商品取引法等の一部を改正する法律が、2024年5月に成立した。
      • 課題
        • チェックボックスを埋めるような形式的な対話が行われており、投資先の深い理解に基づく建設的な目的を持った対話や、双方向の対話が行われていないとの指摘がある。協働エンゲージメントについても、単に協働するのみならず、テーマを絞った意味のある対話が行われることが重要との指摘がある。
        • また、対話の担当部門、議決権行使の担当部門、運用部門等が分離しており十分な連携が図られていないなど、対話と議決権行使を一体とした実効的なエンゲージメントが行われていないとの指摘がある。
        • そもそもスチュワードシップ・コードへの対応についてはその遵守状況が確認されていないため、当局において実際の取組みを点検することが必要ではないかとの指摘がある。
      • 今後の方向性
        • エンゲージメントを一層実効的なものとするため、金融審議会の報告書による提言を踏まえ、建設的な目的を持った対話に資する協働エンゲージメントの促進や、実質株主の透明性確保に向けて、スチュワードシップ・コードを見直すべきである。その際、議決権行使と対話は点と線の関係にあり、議決権行使(点)に至るまでの対話の過程(線)で、どのような対話をすることが重要かという意識をもつことや、エンゲージメントの成果を意識し検証することが重要であるといった観点にも留意する必要がある。
        • また、上記の課題の解決に向けて、望ましいエンゲージメントや望ましくないエンゲージメントについて、投資家・企業等の関係者の意見も踏まえ、具体的な事例や一定の目線を共有することが有用である。
        • こうした視点も踏まえ、一層実効的なエンゲージメントの実現に向けて、金融庁は、関係者と連携しつつ、運用機関・アセットオーナー・議決権行使助言会社等によるスチュワードシップ・コードの遵守状況を検証すべきである。
    3. 取締役会等の実効性向上(独立社外取締役の機能発揮)
      • 2024年1月、経済産業省が、金融庁及び東証と共同で、社外取締役の質の担保・向上に向けた取組みの一環として、「社外取締役のことはじめ」を作成した。
      • また、国際的な団体を含む民間の主体において、継続して、社外取締役を含む取締役等に対する研修の実施、提言の発信、表彰等の啓蒙活動が行われている。
      • 課題
        • 独立社外取締役の選任や、指名委員会・報酬委員会の設置が進む一方で、社外取締役や各委員会の議長・委員長が果たすべき役割の認識が共有されておらず、未だ取締役会が実効的には機能していないとの指摘がある。また、こうした社外取締役等の質の評価が実質的には行われていないとの指摘がある。
      • 今後の方向性
        • 取締役会の実効性向上に向けては、今一度、社外取締役、取締役会の議長、指名委員会・報酬委員会の委員長が真に果たすべき役割や機能について理解を共有するとともに、こうした役割や機能を果たし得る社外取締役等を選定することが重要である。そのための取組みとしては、社外取締役等の選定に際して透明性の高いプロセスを履践することや、選定後も社外取締役と投資家の対話や、個々の取締役の評価を含む取締役会の実効性評価等を通じて、社外取締役等の役割や機能に関する認識を醸成していくことなどが考えられる。
        • また、こうした役割や機能が十分に発揮されるためには、取締役会その他各委員会の事務局において、取締役会や各委員会における実質的な議論を促すための取組みを実践していくことも重要である。
        • 以上のような取締役会の実効性向上に向けた取組みの実践を促進する観点から、これらの取組みに関する具体的な事例を関係者間において共有すべきである。
    4. 収益性と成長性を意識した経営
      • 2023年3月、東証より、プライム市場・スタンダード市場上場企業に向けて、資本コストや株価を意識した経営の実現に向けた要請が行われた。2024年1月より、当該要請に基づき開示を行った企業の一覧が公表されているほか、同年2月、投資者との面談に基づき取りまとめた対応のポイントや事例集が公表された。
      • 課題
        • 上記の要請を踏まえ、多くの上場企業において取組みが進められているとの評価があるが、一方で、国内外の投資家等からは、各企業の取組みの更なる進展を期待する声も寄せられている。例えば、要請を踏まえた対応について、緊張感を持って経営の重要課題と位置付ける企業と、形式的な対応に終始する企業に二極化しているとの指摘がある。
      • 今後の方向性
        • 上記の指摘も踏まえ、投資家や金融庁・東証等の関係者において、継続して各企業の取組みの状況をフォローアップし、実質的な対応を促すべきである。
        • その際、開示の状況を確認するのみならず、開示の内容と実際の取組みの内容が乖離していないか、取締役会として主体的かつ積極的に対応に取り組んでいるか、投資家との対話において具体的な議論が行われているか、こうした対応におけるリソースが確保されているか、中長期的な企業価値向上の観点から具体的な成果を意識した分析・評価が行われているか等について着目することが重要である。
    5. 情報開示の充実及びグローバル投資家との対話促進
      • 2023年3月、東証より、プライム市場上場企業に対し、株主との対話の実施状況の開示を促すため、「株主との対話の推進と開示について」が公表された。
      • また、東証において、プライム市場上場企業における英文開示の義務化に向けた議論が進められ、2024年5月、決算情報及び適時開示情報の英文開示の義務化を含む、上場規程の改正が行われた(2025年4月1日施行)。
      • 課題
        • 企業の情報開示は充実してきている一方、開示している内容と実際の取組みの内容が乖離しているとの指摘がある。また、情報開示のタイミングに関し、有価証券報告書の株主総会前の開示を含め、投資家が必要とする情報が効果的・効率的に提供される必要があるとの指摘がある。
        • また、プライム市場上場企業を中心として、更なる企業価値向上に向けては、グローバル投資家とも積極的に対話を行い、タイムリーに英文開示を実施する必要があるとの指摘がある。
      • 今後の方向性
        • 企業における実質的な開示の充実に向けては、今一度、情報開示による透明性の向上が、市場からの信頼につながることを意識することが重要である。
        • 情報開示については、タイムリーかつ効果的・効率的に提供されることが必要であり、有価証券報告書の開示が株主総会前のタイミングになるよう、環境整備について検討すべきである。その際、企業の自助努力には限界があることも踏まえ、金融庁が関係者と連携し、実態把握を進めるだけでなく、有価証券報告書と事業報告等の重複開示に関する開示の効率化を含め、抜本的な環境整備に向けた検討を進めるべきである。
        • グローバル投資家との積極的な対話の促進に向けては、今後、英文開示の義務化を踏まえた状況をフォローアップすることが必要である。さらに、アクション・プログラムにおいて提示された取組みであるグローバル投資家の期待に自律的、積極的に応える企業群の「見える化」のため、一定の要件を満たす企業群について、資本収益性や市場評価、成長性等に関する指標や、独立社外取締役の選任状況や取締役会議長及び指名委員会・報酬委員会委員長の属性、女性役員比率等のコーポレートガバナンスの状況を示す具体的なリストを作成・公表すべきである。
    6. 市場環境上の課題の解決
      • 2023年12月、東証において、従属上場会社に関する情報開示・ガバナンスのあり方に関し、「少数株主保護及びグループ経営に関する情報開示の充実」及び「支配株主・支配的な株主を有する上場会社において独立社外取締役に期待される役割」が公表された。
      • また、政策保有株式への対応については、金融庁において、2023年3月期より、有価証券報告書において、政策保有株式の発行会社との業務提携等の概要の記載を求める開示の充実が図られ、2024年3月に更新された「記述情報の開示の好事例集2023」において関連する開示例が公表された。加えて、2024年3月に公表された「令和5年度有価証券報告書レビューの審査結果及び審査結果を踏まえた留意すべき事項等」において、課題等が指摘された。また、金融機関に対して、政策保有株式の縮減の進捗や保有意義の検証等について継続的にモニタリングすることとしている。
      • 課題
        • 政策保有株式について、各社において縮減に向けた取組みが進められている一方、議決権行使の状況を含む実態を踏まえた開示等の適切な対応がなされていないとの指摘がある。特に保有目的について、純投資目的への変更についてはその理由の開示が求められていないことから、実態が不透明となっているとの指摘がある。その要因として、例えば、社内の関係者間(IR担当や営業担当等)で認識に差があるとの指摘もある。また、他方で形式的に売却することは必ずしも望ましくなく、発行会社の経営の支援等を通じて保有の合理性を説明し得るような場合もあるため、適切に検証を行う必要があるとの指摘がある。
      • 今後の方向性
        • 従属上場会社について、少数株主保護に向け、上記の東証の要請も踏まえ、引き続き、各社において開示を含む取組みが進められる必要がある。
        • 政策保有株式について、投資家や金融庁・東証等の関係者において、今一度、企業に対し、コーポレートガバナンス・コードに照らして保有の合理性についての検証を尽くすよう促すべきである。その際、形式的な対応とならないよう、有価証券報告書において実態を踏まえた適切な開示が行われることが重要である。このため金融庁においても、実際の開示についてより深度ある検証を実施し、その結果を踏まえ必要に応じて開示の拡充等の必要な措置を講じるべきである。
    7. サステナビリティを意識した経営
      • 2023年3月期から有価証券報告書においてサステナビリティ情報の「記載欄」が新設されるとともに、女性管理職比率や男女間賃金格差等の多様性に関する指標が追加された。2023年12月、金融庁より、「記述情報の開示の好事例集2023」において関連する開示例が公表されたほか、同年10月、東証より、プライム市場上場企業に対する、女性役員比率に係る数値目標の設定等に関する上場規程の改正が行われた。2024年2月には、金融審議会総会において、サステナビリティの開示と保証のあり方に関する検討について諮問が行われ、「サステナビリティ情報の開示と保証のあり方に関するワーキング・グループ」において、具体的な検討が進められている。
      • また、国際的には、2023年9月、G20/OECDコーポレートガバナンス原則が改訂され、新たにSustainability and resilienceの章が新設された。
      • 課題
        • サステナビリティを意識した経営を促すためには、「企業価値」の考慮にあたり、社会的価値と経済的価値を分けて考えるべきではなく、非財務情報と財務情報とのつながりを意識する必要があるとの指摘がある。また、サステナビリティを巡る課題への対応について、執行の問題と捉えられており、取締役会による監督の役割に関する認識が不足しているとの指摘もある。
        • このほか、ダイバーシティの確保に向けては、数値目標を達成するのみならず、必要な能力を有していることや、社内での人材育成が重要であるとの指摘がある。加えて、グローバル人材やジェンダーといった観点での多様性を意識するのみならず、これらを踏まえた「意見」の多様性を確保し、多様な観点から経営課題を議論することが、中長期的な企業価値の向上に資するとの指摘がある。
        • また、各社固有のコーポレート・カルチャー2こそが企業価値を創出・維持する礎となるものであり、経営や対話にあたり常にコーポレート・カルチャーを意識することが中長期的な企業価値をさらに高めていくために重要との指摘がある。
      • 今後の方向性
        • 中長期的な企業価値の向上に向けたサステナビリティを巡る課題への対応にあたっては、財務情報と非財務情報とのつながりや企業価値向上というアウトカムを意識すること、取締役会による監督の役割、コーポレート・カルチャーを意識した経営や対話が重要である。
        • ダイバーシティの確保に向けては、企業の特性や成長段階に応じ、多様性の確保や人材育成方針の策定を含め、人的資本への投資等に配意することが必要である。
        • また、企業経営が、パンデミックやサイバーセキュリティリスク、地政学リスクなどの様々なリスクに、サプライチェーン全体を通じてさらされる中、有事における「復元力」の発揮など、「レジリエンス」を意識することが重要である。
        • 以上のような観点を踏まえ、国際的な比較可能性を確保したサステナビリティ情報の開示・保証のあり方を検討するとともに、サステナビリティを意識した経営に関する具体的な事例を関係者間において共有すべきである。

金融庁 第149回自動車損害賠償責任保険審議会の開催結果について
  • 令和6年6月4日12時00分から第149回自動車損害賠償責任保険審議会が開催されました。
  • 第149回自動車損害賠償責任保険審議会では、自賠責保険における経費の計算方法等について、事務局及び日本損害保険協会から次の内容が報告されました。
  • 事務局
    • 社費の計算基礎となる経費計算基準及び代理店手数料の算出における基礎数値(以下、「経費計算基準等」という。)は、2012年の自賠責審議会で報告の上で改定されたが、その後、デジタル化の進展など、自賠責保険の経費に影響を与えうる環境は変化している。
    • こうした環境変化を踏まえ、日本損害保険協会に対し、
      • 経費計算基準等が業務実態に合っているか検証し、必要に応じて見直しを行うこと
      • 経費計算基準等を将来的に見直すための手続きの導入
    • について、検討を依頼し、検討結果について、2025年1月に開催予定の自動車損害賠償責任保険審議会について報告するよう要請したい。
  • 日本損害保険協会
    • 前回見直し時から、デジタル化の進展や法改正対応などの、経費計算基準等に影響しうると考えられる環境変化が発生している。
    • ついては、日本損害保険協会において、透明性・客観性を確保した第三者委員会を設置し、事務局から提示された点について検討することとしたい。
  • 議論の結果
    • 日本損害保険協会において客観性・透明性を十分に確保した第三者委員会を設置の上、
      • 経費計算基準等について、経費計算基準の計算式が実態に即しているかという観点も含め、業務実態に合っているか検証した上で、必要に応じて、見直しを行うこと
      • 将来的に経費計算基準等を見直す場合の手続きを導入すること
        について、検討を行うこと
    • 2025年1月に開催予定の自動車損害賠償責任保険審議会において、第三者委員会での検討結果を日本損害保険協会から報告を行うこと
      について、了承されました。

金融庁 「金融・資産運用特区実現パッケージ」の公表について
▼ 金融・資産運用特区実現パッケージ(概要)
  • 目的
    • 魅力的なビジネス・生活環境を整備し、金融・資産運用業を特定地域へ集積
    • 国内外の投資資金を呼び込みながら、地域の産業・企業が発展しやすい環境を整備
  • 対象地域
    • 北海道・札幌市:GXに関する資金・人材・情報を集積し、GX金融・資産運用特区を実現
    • 東京都:国際金融センターとしての環境を一層整備し、日本・アジアのサステナブルファイナンスやスタートアップの育成を推進
    • 大阪府・大阪市:海外投資を呼び込みながら、スタートアップ等によるイノベーションの実現を推進
    • 福岡県・福岡市:アジアのゲートウェイとして金融機能を強化し、福岡・九州のスタートアップ等を育成
  • 主な取組み
    • 国の取組み
      • 国内外の金融・資産運用業者の集積
        • 資産運用業におけるミドル・バックオフィス業務の外部委託の促進
        • 行政手続の英語対応(1)資産運用業の登録手続等 (2)開業手続き(商業登記/社会保険/入管関連)
        • スタートアップへ投資する外国人投資家向け在留資格の創設
        • 外国人銀行口座の開設支援
      • 金融・資産運用業者等による地域の成長産業の育成支援
        • 銀行によるGX関連事業に対する出資規制の緩和
        • 銀行グループの投資専門子会社によるスタートアップ出資規制の緩和
        • プロ向けのベンチャー・ファンドへ出資可能な投資家に関する規制の緩和
      • 成長産業(GX・スタートアップ)自体の振興・育成
        • 水素の社会実装に向けた圧縮水素の貯蔵上限の緩和
        • 高度人材ポイント制度を活用した海外人材(GXやフィンテック等)の受け入れ促進
    • 地域の取組み
      • 自治体における英語対応の拡充(英語によるワンストップ窓口の整備・拡充、自治体の行政手続きの英語対応)
      • 国内外の金融・資産運用業者等に対する税財政面での支援(地方税の減免、創業・拠点設立に係る補助金等)

金融庁 SNS・マッチングアプリ等で知り合った者や著名人を騙る者からの投資勧誘等にご注意ください!
  • SNSやマッチングアプリ等を通じて知り合った者から、暗号資産やFXなどの投資商品の投資勧誘を受けて投資したところ、「返金を申し出ても返金されない」「(相手に送金後に)相手と連絡が取れなくなった」などという相談が多く寄せられています。
  • 同様に、著名人を騙るSNS上の広告等を通じて投資を行った結果、出金できなくなった等の相談も寄せられています。
  • 著名人を騙るSNS上の広告等を通じた投資勧誘の主な手口
    • SNS(Facebook、Instagram等)上の偽アカウント・偽広告は著名人のアカウント・広告を装います。偽アカウント・偽広告は公式アカウントやウェブサイトで掲載されている写真を無断転載したりして本人を名乗ることもあります。
    • SNS(Facebook、Instagram等)上の偽広告やURLをクリックすると、LINEのグループへの参加や詐欺サイトへのアクセスを誘導されます。また、個人のLINEアカウントやSMSに突然連絡が来るケースも確認されています。多くの場合に犯人グループと個人間のやり取りに持ち込もうとしてきます。
    • LINEのグループに参加した場合には、グループ内で特定の銘柄の投資勧誘が行われたり、口座開設や入金を要求されます。LINEのグループ内では、犯人たちが複数のアカウントを使って投資が成功しているそぶりを見せて、参加者が投資を行いたくなるように仕向けるケースもあります。このとき、個人名義の口座に入金を指示されるケースもあります。
    • その後、しばらくは利益が出たように装うこともありますが、安心して高額な入金をした後に連絡が取れなくなったり、出金時に高額な手数料や税金の支払いといった名目の口座入金を要求され、入金した直後に連絡が取れなくなることもあります。
  • こうした投資勧誘を受けた場合には、冷静にご対応いただくとともに、取引をする業者が暗号資産交換業や金融商品取引業の登録等を受けているか、「免許・許可・登録等を受けている業者一覧」にてご確認ください。
  • SNS・マッチングアプリ等を通じて知り合った者や著名人を騙る者からの投資勧誘に応じてしまい不安に思った場合や、トラブルに遭った場合は、金融庁金融サービス利用者相談室に情報をお寄せ頂くとともに、最寄りの警察署にご相談ください。

金融庁 ベンチャーキャピタルに関する有識者会議(第2回)議事次第
▼ 資料1 事務局説明資料
  • 本「推奨・期待される事項」の目的
    • 本「推奨・期待される事項」は、「金融審議会市場制度ワーキング・グループ・資産運用に関するタスクフォース報告書(2023年12月12日)」の提言を踏まえ、長期運用に資するアセットクラスとしてのベンチャーキャピタル(VC)の魅力を高め、VC業界の発展を後押しするべく、広く内外機関投資家から資金調達を目指すVCについて、ファンドへの投資者(リミテッドパートナー、LP)及びファンド運営管理者(ゼネラルパートナー、GP)における「推奨・期待される事項」を定めるものである。
    • VCのマーケットサイズは、この十数年で急速に拡大しており、VCには、スタートアップエコシステムの中で、代表的な資金供給主体として、ますます重要な役割を果たすことが期待される。他方、我が国のVCのファンドサイズについては、米国等のそれと比べると相対的に小さいとの指摘もある。現在、日本のVCへの資金供給額としては、事業法人等が多くを占めているが、本「推奨・期待される事項」が、国際的なプラクティスや、日本の商慣習・市場特性、各VCの特性等を踏まえつつ、VCにおける資金調達・運用に係る実務において必要に応じて柔軟に参照されることにより、VCのガバナンス等が向上することで、VCの新設や多様性を阻害することなく、国内外の機関投資家の資金が更にVCに円滑に供給され、VCにおけるファンドサイズの拡大等を通じたレイター・ステージを含む全般的な出資機能の強化に寄与し、スタートアップエコシステムがより発展していくことが期待される。
  • 本「推奨・期待される事項」の採用するアプローチ
    • 本「推奨・期待される事項」は、画一的に遵守を義務づけるルールベース・アプローチではなく、広く内外機関投資家から資金調達を目指すVCについて、LP及びGPにおける「推奨・期待される事項」を示すことで、LPが投資判断するに当たって自己の判断で「推奨・期待される事項」を考慮し、また、GP自身の判断により「推奨・期待される事項」を意識した運営がなされることによって、ファンドの資金調達・運用に係る実務において活用されることが期待される。
  • 本「推奨・期待される事項」の対象
    • 本「推奨・期待される事項」では、広く内外機関投資家から資金調達を目指すVCにおいて、そのVCの実態に応じ、LP及びGPにより「推奨・期待される事項」が活用されることが想定される。VC自らの規模や特性等に照らして満たすことが望ましくない「推奨・期待される事項」があれば、一部の「推奨・期待される事項」を実施しないことも考えられる。その際には、合理的な理由や将来展望等について、LP及びGPの間で意思疎通されることが期待される。
    • また、上記以外のVCは、
      • 1つ又は少数の事業会社等のLPとともに設立されるコーポレート・ベンチャーキャピタル(CVC)、及び金融機関や大学がその本業との関係で戦略的に設立した金融系・大学系VCにおいては、ガバナンスの在り方等について特殊性があり得ることに留意する必要がある。一方、そのLPの意向等に応じて、GPによる「推奨・期待される事項」を意識したファンド運営が期待される場合等には、必要に応じて参照されることも期待される。
      • 初期段階のVCにおいては、VCの規模や資金調達状況に応じた運営体制を取ることが想定される。一方、将来的に広く内外機関投資家からの資金調達を視野に入れている場合には、LP及びGPにおいて、将来的に「推奨・期待される事項」を満たすよう体制の構築を図っていくことを視野に入れる等、必要に応じて参照されることも期待される。
    • 本「推奨・期待される事項」の構成
      • 本「推奨・期待される事項」は、以下の二段構成とする。
        • 広く内外機関投資家から資金調達を目指すVCとして基本的に備えるべき「推奨される事項」
        • 機関投資家から投資対象と選定されるとともに、スタートアップエコシステムの発展に寄与し、その結果としてリターンの向上にもつながる事項としてLP及びGPに「期待される事項」
  • 「推奨・期待される事項」のアウトライン(案)
    1. 受託者責任
      • GPはLPに対する受託者責任を果たすために、投資先企業の企業価値最大化を通じ、LPの持分価値の最大化に向けて、VCを運営していくことが求められていることを十分に認識することが推奨される。(注)VCは金商法上の適格機関投資家等特例業者又は投資運用業者として投資運用を行っているが、同事業者に対しても、金商法上、顧客等に対する忠実義務・善管注意義務が適用されるほか、昨年の金商法及び金サ法の改正により、顧客の最善利益を勘案しつつ誠実公正に業務を遂行する義務が課せられている。
      • GPとLPの意思疎通を促進する観点から、GPに利益相反の可能性がある場合を含め、GPとLP間でファンド運営に関する重要な決定等が議論されるよう、「LPによる諮問委員会(LPAC)」を設置する等、LPの意見が十分に反映されることが推奨される。
    2. 持続可能な経営体制の構築
      • GPはLPに対する受託者責任を果たす観点から、やむを得ない事情がある場合を除き、キーパーソンはファンド運営に専念する体制を整備することが推奨される。また、短期間でのキーパーソンの離反は、基本的には起きてはならない事象であるとの認識を持ち、万が一、キーパーソンが離反する場合には、ファンドの新規投資の停止やLPによる出資コミットメントの再検討が可能とされることが推奨される。
      • VCのファンドとしての継続性を高める観点から、複数のキャピタリストやミドルバック担当者を備えるなど、持続可能な体制を構築されることが推奨される。
    3. コンプライアンス管理
      • 関連法令、ファンド契約等を遵守するため、LPの要求水準に応じた適切な範囲において、コンプライアンスの責任者の明確化や非公表情報の取扱いその他業務運営に必要な規程を整備し、コンプライアンス管理の体制を確保することが推奨される。
    4. LPの権限の透明性確保
      • LPは出資コミットメント額に応じた権利を平等に得ることができることを前提とし、一部のLPが認識しないうちに不利益を被ることがないよう、特定のLPに対し、他のLPに重大な影響を及ぼし得る個別権利の付与を行う場合には、他のLPにも透明性が確保されることが推奨される。また、ファンドサイズやLPの属性に応じ、LPは自身よりも出資コミットメント額が同等以下のLPに付与されている権利を求めることができるようにすることが推奨される。
    5. 利益相反管理
      • GPはLPに対する受託者責任を果たす観点から、ファンド組成時において、利益相反が生じうる事項の特定とその管理体制に関する検討を行い、LPに十分に説明することが推奨される。また、GPとLP間の利益相反事項については、LPACに諮問を求める等、利益相反のおそれに対処することが推奨される。
      • 特に、GPが他事業との兼任・兼業や複数ファンドの運営を行う場合は、利益相反管理を徹底することが推奨される。他事業との兼任・兼業については、GP内のリソース配分やファンド運用との関係を明確にした上で、ファンドの運営に影響があり得る場合には、投資先企業の価値向上につながるものなどLPのリターン向上に資するものに限定することが推奨される。また、複数ファンドの運営については、ファンド間の利益相反に関する明確な管理体制(GP内のリソース、投資機会、エグジット時期等)を整備することが推奨される。
    6. GPとLPの利害の一致に向けた対応
      • GPによるファンドに対する適切な出資コミットメントが行われる等、GPとLPの利益を一致させるための対応を講じることが推奨される。
      • GPは、投資先ごとの投資額に対するリターンよりも、LPの出資コミットメント額に対するリターンを最大化することが重要であることを意識することが推奨される。組合契約における利益分配構造等の主要な条件については、グローバルな機関投資家からの資金調達も見据え、ILPA Private Equity Principles等のグローバル・スタンダードに配意したものとすることが推奨される。
    7. 保有資産の公正価値評価
      • ファンドの資産の状況を算定するにあたり、保有する非上場企業の株式について公正価値評価を行った上で、LPに情報提供することが推奨される。また、公正価値評価における評価手法等についても情報提供することが推奨される。
    8. 情報提供の頻度・内容
      • ファンドの財務情報に関し、LPに四半期ごとに財務情報を提供することが推奨される。また、年次報告においては、ファンドの投資戦略の実現状況及び今後の方針を提供することが推奨される。
    9. スタートアップとの投資契約
      • スタートアップへの投資契約については、当該スタートアップのガバナンス体制・水準も考慮しつつ、エクイティ出資者として、業績のアップサイドを共有するものとの認識の下、事後の資金調達ラウンドでの円滑な資金調達(海外投資家の呼び込みも含む)や事業活動の展開に過度な制約とならないか、経営者による事業拡大・挑戦に向けたインセンティブ・意欲を適切に引き出すものとなっているかといった観点から、条件を設定することが期待される。
    10. 投資先の経営支援
      • 投資先企業への資金供給に加え、VCによる付加価値の提供が、投資先企業の成長とVCのリターン獲得にとって重要であるとの認識の下、VCの戦略や投資先企業の意向に応じて、投資先企業との建設的な対話・関係構築を通じ、投資先企業の事業目的達成を支援するべく、人材の紹介、ビジネスマッチング、ノウハウの提供・コーチング、M&Aの支援等の各種経営支援を提供することが期待される。
      • VCから取締役を派遣する場合においては、投資先企業の取締役として株主全体の利益のために企業価値を最大化させることが使命であることを認識し、ガバナンスの向上等に資する行動を行うことが期待される。
    11. 投資先の資本政策支援
      • 投資先企業の成長を支えるため、自身が参加した資金調達ラウンド以降においても、当該企業の成長に向けた資金調達に必要な協力を行うことが期待される。その際、VCの戦略や投資先企業の意向に応じ、必要性・合理性が認められる場面においては、フォローオン投資の実施や投資契約の修正等の相談にも応じることが期待される。また、ファンドの存続期間が課題となる場合もあり得るが、投資先企業の価値向上とLPのリターン最大化の視点を踏まえ、ファンド期間の延長にも柔軟に取り組むことが期待される。
      • 投資先企業のエグジットについては、LPのリターン最大化を図る観点から、上場だけでなく、M&Aも含めた、最適なエグジットの方法・タイミングを検討し、投資先企業の企業価値向上に向けた対応を行うことが期待される。
    12. 投資先の上場後の対応
      • 投資先企業が株式を上場した後にVCが保有株式を売却する場合には、その売却価値が最大となるよう、売却時期や手法について、十分に検討することが期待される。
      • 投資先企業が株式を上場した後も、例えば、レイター期から投資を行うVCなど、VCの戦略に応じ、当該企業のガバナンスを支え、更なる成長の果実を共有するために株式を保有し続けること(クロスオーバー投資)が期待される。
    13. ESG対応・ダイバーシティの尊重等
      • LPを含むステークホルダーにおけるESG(環境に関する対応等)・ダイバーシティの尊重等への関心の高まりを踏まえ、VCの戦略に応じて、ESG等のポリシーに応じたファンド運営を適切に行うとともに、その状況をLPに報告することが期待される。

金融庁 為替取引分析業者の許可について(株式会社マネー・ローンダリング対策共同機構)
  • 本日、株式会社マネー・ローンダリング対策共同機構に対し、資金決済に関する法律第63条の23の規定に基づく、為替取引分析業者の許可を行いました。
  • (参考)会社概要
    • 商号:株式会社マネー・ローンダリング対策共同機構
    • 本店所在地:東京都千代田区丸の内一丁目3番1号
    • 資本金:5億円
    • 株主:一般社団法人全国銀行協会(100%)
    • 代表者:代表執行役 阿部 耕一

【財務省】

【2024年6月】

財務省関東財務局 株式会社ジャパンに対する行政処分について
  • 株式会社ジャパン(登記上の本店は名古屋市中区、法人番号6180001072164、第二種金融商品取引業、投資助言・代理業、以下「当社」という。)について、以下の問題が認められた。
    • 法令に基づく命令に対し、報告書及び資料を提出していない状況
      • 東海財務局は、当社に対し、令和5年12月6日付で、金融商品取引法(以下「金商法」という。)第56条の2第1項の規定に基づき報告徴求命令(令和5年12月25日報告期限。以下「本件報告命令」という。)を発出し、当社の業務運営の状況等に係る報告書及び資料(以下「報告書等」という。)の提出を求めた。
      • しかしながら、当社は、現在に至るまで本件報告命令に対する報告書等を一切提出しておらず、金商法第52条第1項第7号の規定に基づく命令に違反するものと認められる。
    • 事業報告書を提出していない状況
      • 当社は、金商法第47条の2の規定に基づき、事業年度ごとに事業報告書を作成し、毎事業年度経過後3ヶ月以内に、これを東海財務局長に提出しなければならない。
      • しかしながら、当社はこれを提出しておらず、こうした状況は、同条に違反するものと認められる。
  • 以上のことから、本日、当社に対し、下記(1)については金商法第52条第1項の規定に基づき、下記(2) については同法第51条の規定に基づき、以下の行政処分を行った。
    • 登録取消し
      • 東海財務局長(金商)第149号の登録を取り消す。
    • 業務改善命令
      • 現在、当社と金融商品取引契約を締結している顧客がいる場合には、当該全ての顧客に対し、行政処分の内容を速やかに説明するとともに、契約を適切に終了させること。
      • 上記の対応・実施状況について、完了までの間、書面により随時報告すること。
      • 未提出の事業報告書を提出すること。

財務省関東財務局 CoinBest株式会社に対する行政処分について
  • 関東財務局は、本日、CoinBest株式会社(本社:東京都中央区。法人番号:3010001185935。以下「当社」という。)に対し、資金決済に関する法律(平成21年法律第59号。以下「法」という。)第63条の17第1項及び第63条の16の規定に基づき、下記のとおり行政処分を行った。
  • 行政処分の内容
    1. 業務停止命令(法第63条の17第1項)
      • 令和6年6月14日から令和6年12月13日までの間、IEO業務(暗号資産交換業者が発行者に代わって発行者が発行する暗号資産の販売を行う業務)を停止すること。
    2. 業務改善命令(法第63条の16)
      • 暗号資産交換業の適正かつ確実な遂行のため、以下に掲げる事項について業務の運営に必要な措置を講じること。
        1. 経営管理態勢の構築
          • 下記「2.処分の理由」に記載した問題が発生している根本的な原因の分析・評価を行った上、十分な改善が可能となるよう経営体制を強化すること。また、取締役会の機能強化を図り、法令等遵守や適正かつ確実な業務運営を確保するための実効性ある経営管理態勢を構築すること。
        2. 内部管理態勢(含むIEO業務などをはじめとする新規暗号資産の取扱いに関する態勢)及び内部監査態勢の構築
          • 上記根本的な原因の分析・評価を踏まえ、IEO業務などをはじめとする新規暗号資産の取扱いに関する態勢を整備するほか、第2線・第3線の適切な機能発揮を図ることを含め、適正かつ確実な業務運営を確保するための実効性ある内部管理態勢及び内部監査態勢を構築すること。また、職務の内容・重要性に応じた適切な人材が採用・選任されるプロセスを整備すること。
        3. マネー・ローンダリング及びテロ資金供与(以下「マネロン・テロ資金供与」という。)リスク管理態勢等の構築
          • 「マネロン・テロ資金供与対策に関するガイドライン」(以下「ガイドライン」という。)において、令和6年3月末までに対応が求められる事項のうち、取引モニタリングを適切に実施する態勢や、疑わしい取引の該当性について適切に検討・判断し、速やかに届出を行う態勢の整備をはじめ、対応未了となっている事項に係る措置を講じるなど、マネロン・テロ資金供与に利用されることを防止するための実効性あるリスク管理態勢を構築すること。
          • また、犯罪による収益の移転防止に関する法律(平成19年法律第22号。以下「犯収法」という。)に基づく確認結果の記録の適切な実施をはじめとする法令等遵守態勢を構築すること。
    3. 上記2.に関する業務改善計画(具体策及び実施時期を明記したもの。)を令和6年7月16日(火曜日)までに提出し、提出後、直ちに実行すること。
    4. 上記3.の実行後、当該業務改善計画の実施完了までの間、3か月毎の進捗・実施状況を翌月10日までに報告すること(初回提出基準日を令和6年9月末とする。)。
  • 処分の理由
    • 関東財務局による立入検査及び法第63条の15第1項の規定に基づく当社からの報告(令和6年4月30日付及び令和6年5月15日付)によれば、以下のとおり、当社の経営管理態勢、内部管理態勢(含む新規暗号資産の販売態勢)、内部監査態勢及びマネロン・テロ資金供与リスク管理態勢について、重大な問題が認められた。
      • 経営管理態勢
        • 当社は、IEO業務の早期実現による収益獲得を優先し、経営上重要な事項であるIEO業務への参入について取締役会に付議せず、経営資源の配分や経営上のリスクに関する議論を行わないまま、一般社団法人日本暗号資産取引業協会(以下「JVCEA」という。)への新規暗号資産の販売に係る審査の申請を承認しているほか、取締役会で決議すべきとされている取締役の利益相反取引や、内部管理部長及び内部監査部長等の選任・解任等を付議していないなど、取締役会は形骸化し、業務意思決定機関としての機能を発揮していない。
        • このため、以下2.~4.に掲げる態勢の不備が認められるなど、暗号資産交換業を適正かつ確実に遂行する体制の整備が行われていない。
      • 内部管理態勢(含む新規暗号資産の販売(IEO)態勢)
        • 当社は、2線機能を担う内部管理部門の担当役員等が相次いで退職・休職したことにより、IEO審査担当役員やマネロン・テロ資金供与対策に係る統括管理者(以下「統括管理者」という。)が不在となる中、内部管理態勢を構築することなく、IEO業務による収益獲得を優先し、同業務に必要な態勢の整備や人員の確保、同業務を行うことにより生じ得る経営上のリスクへの対応について、十分な検討を行わないまま、IEOの申請等を行っている。
        • とりわけIEO業務について、当社は、IEO審査担当役員に限らず、当該業務に取り組むための専門的な人材を配置していないなど、IEO業務への参入に係る必要な審査体制を整備していない。
        • このような中、IEO審査を開始した結果、当社は発行体及び事業内容を審査する立場にあるにもかかわらず、アレンジャー兼発行体のアドバイザーとして同事業を推進する立場にある事業者及び発行体と一体となって、IEOに係るJVCEAへの審査の申請を行っているほか、退職した役員を担当役員とした事実と異なる記載をして、申請を行うといった不適切な実態が認められており、IEO業務を適正かつ確実に遂行するための内部管理態勢に著しい不備が認められる。
      • 内部監査態勢
        • 当社は、3線機能を担う内部監査部門の部長や職員も相次いで退職しており、第3線として実効性のある内部監査態勢を構築していないことから、令和2年12月の業務開始以降、規則等に則った内部監査が実施されていない。
      • マネロン・テロ資金供与リスク管理態勢
        • 当社は、統括管理者である担当役員、部長、主要な職員が相次いで退職・休職する中、役員の中から新たな統括管理者を選任していないなど、実効性のあるマネロン・テロ資金供与リスク管理態勢の構築を行っていない。
        • このため、マネロン・テロ資金供与やなりすましの疑いのある取引が認められるにもかかわらず、これらの取引の実態を把握・検証せず、疑わしい取引に該当するか検討を行っていないなど、取引モニタリングを適切に実施する態勢や、疑わしい取引の該当性について適切な検討・判断を行う態勢を整備しておらず、ガイドラインにおいて対応が求められる事項に係る措置が不十分となっている。
        • 当社におけるこうした現状は、金融庁が令和3年4月28日付「マネー・ローンダリング及びテロ資金供与対策に係る態勢整備の期限設定について」において要請した「ガイドラインで対応を求めている事項について、令和6年3月末までに対応を完了させ、態勢を整備すること」に対して、適切に対応していないと認められる。
        • 加えて、犯収法施行規則第20条第1項第24号に基づく実質的支配者の確認結果の記録を保存しておらず、犯収法に違反している。
        • 上記2.のうち、IEO業務に係る態勢の状況は、法第63条の5第1項第4号に定める「暗号資産交換業を適正かつ確実に遂行する体制の整備が行われていない法人」の状況に該当すると認められることから、法第63条の17第1項第1号に基づく業務停止命令を発出するものである。また、上記1.~4.の状況は、「暗号資産交換業の適正かつ確実な遂行のために必要があると認めるとき」に該当するものと認められることから、法第63条の16の規定に基づく業務改善命令を発出するものである。

財務省関東財務局 FTX Japan株式会社に対する行政処分について
  • FTX Japan株式会社(本社:東京都千代田区、法人番号:7010401115356、以下「当社」という。)に対して令和6年3月8日付で発出した資産の国内保有命令の期限が令和6年6月9日に到来するものの、当社は、親会社であるFTX Trading LimitedによるFTXグループ会社に係る米国連邦破産法手続の対象に含まれている状況であり、当社の資産が国外の関連会社等に流出し、投資者の利益が害されるといった事態を招かぬよう、引き続き、万全を期する必要がある。
  • 当社のこうした状況は、金融商品取引法(昭和23年法律第25号。以下「法」という。)第56条の3に定める「公益又は投資者保護のため必要かつ適当であると認める場合」に該当するものと認められる。
  • 以上のことから、本日、当社に対し、法第56条の3の規定に基づき、下記のとおり行政処分を行った。なお、令和4年11月10日付で命じた法第51条の規定に基づく業務改善命令は継続している。
  • 資産の国内保有命令
    • 令和6年6月10日から令和6年9月9日まで、各日において、当社の貸借対照表の負債の部に計上されるべき負債の額(保証債務の額を含む)から非居住者に対する債務の額を控除した額に相当する資産を国内において保有すること(公益又は投資者保護の観点から問題がないものとして、当局が認めた場合を除く)。

財務省関東財務局 株式会社あすなろに対する行政処分について
  • 株式会社あすなろ(東京都港区、法人番号3040002080117)(以下「当社」という。)に対する検査の結果、以下の問題が認められたことから、証券取引等監視委員会より行政処分を求める勧告が行われた。(令和6年5月24日付)
    • 顧客のため忠実に投資助言業務が行われていない状況
      1. 特定の顧客に対し、単発スポット銘柄の配信前に銘柄情報を伝達し、売買等の助言を行う行為等
        • 当社は、原則週1回、上場株式1銘柄の買付けを推奨する投資助言を行っており、所定の日時に銘柄名や買付推奨価格等をメール又は自社ウェブサイトにおいて配信(その際配信される銘柄を以下「単発スポット銘柄」という。)している。
        • こうした中、当社における投資助言業務統括者である甲部長は、令和4年5月から同5年3月までの間に配信した単発スポット銘柄55銘柄のうち、顧客Aに対しては少なくとも6銘柄について、顧客Bに対しては少なくとも16銘柄について、以下の流れで不適切な行為を行っている事実が認められた。
          • (1)甲部長は、単発スポット銘柄の配信を行う約1週間前に、社内での検討を踏まえつつ投資助言を行う1銘柄を決定する。
          • (2)単発スポット銘柄が決定すると、当該銘柄の配信前に、顧客2名に対し、スマートフォンのメッセージアプリ等において当該銘柄の買付けを助言する。
          • (3)単発スポット銘柄の配信日(寄付き前)に、顧客2名に対し、ⅱ.と同様の方法により、当社が配信する買付推奨価格の上限付近の価格等を指値とする売付けを助言する。
          • (4)単発スポット銘柄の株価が売り指値まで上昇しない場合は、指値を下値に訂正するなど、早く売り抜けるよう助言する。
          • (5)一連の助言を受けた顧客2名は、事前に買い付けた単発スポット銘柄を配信日(寄付き後)に売り抜け、顧客Aは少なくとも239万円、顧客Bは少なくとも306万円の利益を得ている。
        • また、甲部長は、上記行為に加え、令和4年9月から同5年3月までの間、一部の顧客に対し、単発スポット銘柄の配信前に、銘柄名は伝達しないものの、どの程度の価格の銘柄かなどを伝達し、配信直後に銘柄名を伝達したらすぐに発注できるよう、準備を依頼したうえで、配信直後に当該銘柄名や成行注文による買付けなどを助言していた。
      2. 上記の行為を見過ごし、かつ、これを防止する態勢を構築していない状況
        • 当社は、単発スポット銘柄の決定を行ってから配信を行うまでの情報管理方法に係る規定を定めておらず、情報の取扱いについて徹底した指導も行われていないほか、業務時間中のスマートフォンの管理を厳格に行っていないなど、情報管理が不十分な状況であった。さらに、甲部長の上記(1)、(2)、(3)、及び(4).の行為は、投資顧問契約の締結の勧誘を目的の一部として行われていたものであるが、当社は、当該勧誘の適切性を確認するための実効性あるモニタリングも行っておらず、上記(1)の行為を防止するための内部管理態勢を構築していない状況であった。
        • このため、当社は、甲部長が上記(1)の行為を、長期間にわたり、業務時間中に執務室の自席で行っていたにもかかわらず、これを見過ごしていた。
        • 当社が、上記(2)のとおり甲部長の行為を見過ごし、かつ、これを防止する態勢を構築しないまま、一般の顧客に単発スポット銘柄を助言すること、また、甲部長が、その業務に関し、当社の特定の顧客(顧客A及びB)に対して、事前に助言銘柄を伝達するとともに売買等の助言を行うこと及び当社の一部の顧客に対して、事前に発注方法の助言等を行うことは、配信日における一般の顧客の取引に基づく価格の変動を利用して特定の者の利益を図るために行われた行為であり、これは一般の顧客と特定の者との間の公平性の観点や、利益相反の観点から問題があるなど、正規の手続きにより投資顧問契約を締結した多くの一般の顧客をないがしろにし、その信認を裏切るものである。このような当社の業務運営の状況は、顧客のため忠実に投資助言業務を行っていない状況と認められ、金融商品取引法第41条第1項に定める「忠実義務」に違反するものと認められる。
  • 以上のことから、本日、当社に対し、下記(1)については金融商品取引法第52条第1項の規定に基づき、下記(2)については同法第51条の規定に基づき、以下の行政処分を行った。
    • (1)業務停止命令
    • (2)新たな投資顧問契約(契約金額の増額を伴う変更契約を含む。)の締結に係る勧誘・契約締結を令和6年6月5日から同年8月4日まで停止すること。
  • 業務改善命令
    1. 本件の発生原因を分析し、適切な業務運営態勢及び内部管理態勢の構築を含む再発防止策を策定・実施すること。
    2. 全ての顧客に対し、今回の行政処分の内容を説明し、適切な対応を行うこと。
    3. 本件法令違反行為の責任の所在を明確にすること。
    4. 上記1から3の対応状況について、令和6年7月5日までに書面により報告すること。

財務省 令和5年末現在本邦対外資産負債残高の概要
  • 令和5年末現在の対外の貸借に関する報告書(本邦対外資産負債残高)の概要は以下のとおりです。
    1. 対外資産残高:1,488兆3,425億円(対前年末比+148兆6,763億円、+11.1%)
      • 為替相場変動に伴う外貨建て資産の円評価額の増加(+75.7兆円)や、居住者による対外資産の取得超(直接投資+25.7兆円、証券投資+17.6兆円)等により、対外資産残高は15年連続で増加した。
    2. 対外負債残高:1,017兆364億円(対前年末比+97兆3,701億円、+10.6%)
      • 為替相場変動に伴う外貨建て負債の円評価額の増加(+16.4兆円)や、非居住者による本邦資産の取得超(直接投資+2.9兆円、その他投資+49.9兆円)等により、対外負債残高は5年連続で増加した。
    3. 対外純資産残高:471兆3,061億円(対前年末比+51兆3,062億円、+12.2%)
      • 対外資産の増加額が対外負債の増加額を上回ったことから、対外純資産残高は6年連続で増加した。
▼ (参考3、4)主要国(地域)の対外純資産、為替相場の推移
  • 主要国(地域)の対外純資産(令和5年末)
    • 日本471兆3,061億円
    • ドイツ454兆7,666億円
    • 中国412兆7,032億円
    • 香港253兆2,509億円
    • ノルウェー213兆2,643億円
    • カナダ179兆5,388億円
    • ロシア121兆6,894億円
    • イタリア24兆2,391億円
    • フランス▲129兆3,333億円
    • 英国▲149兆824億円
    • アメリカ合衆国▲2,805兆2,713億円

【警察庁】

【2024年7月】

警察庁 豪州主導のAPT40グループに関する国際アドバイザリーへの共同署名について(注意喚起)
  • 概要
    • 7月9日、内閣サイバーセキュリティセンター及び警察庁は、豪州通信電子局(ASD)豪州サイバーセキュリティセンター(ACSC)が作成した国際アドバイザリー“APT40 Advisory PRC MSS tradecraft in action”(以下「本件アドバイザリー」という。)の共同署名に加わり、本件アドバイザリーを公表しました。仮訳は追って公表予定です。
    • 本件アドバイザリーに共同署名し協力機関として組織名を列記した国は、豪州の他、米国、英国、カナダ、ニュージーランド、ドイツ、韓国、日本の8か国です。
    • これまで、我が国でも、APT40といわれるサイバー攻撃グループからの攻撃について、我が国企業が対象になっていたこともあると確認しています。
    • 本件アドバイザリーは、APT40による過去の攻撃事例をケーススタディとして攻撃手法を詳述した上で、攻撃の検知や緩和策を示しており、我が国のサイバーセキュリティ強化に資する文書であることから共同署名に加わることとしました。
    • 今後も、サイバーセキュリティ分野での国際連携の強化に努めてまいります。
  • 本件アドバイザリーの概要
    1. 中国の国家的な支援を受けたサイバーグループと、同グループが与える豪州のネットワークに対する脅威について概説。サイバーアクターは、中国国家安全部(MSS)と関連付けられると理解されている。その活動や手法は、APT40と呼ばれるグループと重複している。海南省海口市を拠点に活動し、国家安全部海南支部から業務を請け負っているとされている。
    2. APT40は、豪州政府・民間部門を繰り返し標的にしており、豪州のネットワークに対する脅威は継続している。特筆すべきは、APT40は、新たな脆弱性の概念実証エクスプロイトを迅速に変換・適応させ、標的ネットワークに対して即座に利用する能力を有している。
    3. APT40は、インターネットに接続されている脆弱なインフラを悪用することを指向し、有効な認証情報を獲得することを優先する。APT40は定期的にウェブシェルを利用しつつ、アクセス維持に注力するが、こうした永続化は侵入の初期段階で行われるため、あらゆる侵入で確認される。
    4. APT40は、豪州に対する攻撃において、これまで侵害されたウェブサイトをC2サーバとして使用してきたが、攻撃インフラや踏み台として小規模オフィス・家庭用機器(SOHO機器)を含む侵害された機器を利用するとのグローバルな傾向を採用するようになっている。この手法は、世界中で、中国が国家的に支援する他のアクターも日常的に利用している。
    5. APT40の攻撃による2件のインシデント(ケーススタディ):
      • ケーススタディ1:攻撃者が2022年7月~9月に豪州のある組織のネットワークを侵害し、ウェブシェルを展開。その後、ネットワーク内で横展開を行い、認証情報を含む機微データにアクセス。
      • ケーススタディ2:攻撃者が2022年4月から豪州のある組織のネットワークを侵害し、数百に及ぶユーザ名とパスワード、多要素認証コード、遠隔アクセスセッションの技術情報を窃取。
    6. 豪州のセキュリティ措置を定めた「エッセンシャルエイト(Essential Eight)」を強く推奨し、検知と緩和のために特に下記の諸点が重要。
      • APT40の攻撃によるインシデントで確認されたファイルは、Windowsに登録された全てのユーザアカウントからアクセスでき、データ書き込みが容易になるような場所に蔵置されていることから、疑わしい場所からのプロセス実行を検知するルール設定により、悪意ある振る舞いを検知する。
      • 緩和策
        • ログ記録:ウェブサーバのリクエストログやWindowsイベントログ、プロキシログの保存を適切に行う。
        • パッチ管理:ウェブサーバやリモートアクセスゲートウェイなどインターネットに接続している全ての機器には、セキュリティパッチや緩和策を48時間以内に適用し、可能であれば、ソフトウェアやOSは最新バージョンを使用する。
        • ネットワークの分離:ネットワークを分離することで、攻撃者の横展開を困難にできる。Active Directoryや認証サーバなど重要なサーバは、限定されたサーバからのみアクセスを可能とし、これらのサーバを監視し、ユーザや機器からの接続を限定する。
        • その他
          • 不要なネットワークサービス・ポート・プロトコルを無効にする。
          • ウェブアプリケーションファイアーウォール(WAF)を利用する。
          • 管理者権限を必要最小限にする。
          • 多要素認証及びマネージドサービスアカウントの使用により、認証情報の解読と再利用を困難にする。
          • サポート切れの機器を交換する。

警察庁 海賊版セキュリティツールを悪用するサイバー攻撃の無力化に向けた世界各国の取組に係るユーロポールのプレスリリースについて
  • プレスリリースの概要
    • ユーロポールは、サイバー攻撃者が、広く普及している商用の侵入テストツールである「Cobalt Strike」の海賊版を、攻撃対象企業のITシステムへの侵入等に悪用しているところ、世界各国が民間事業者とも連携しながら協力して捜査を行い、関係サーバーのテイクダウンを行った旨をプレスリリースした。
    • 同プレスリリースにおいては、今回の無力化に向けた取組に関し、日本警察の協力についても言及されている。
  • 日本警察及び関係事業者の協力
    • 警察庁では、「Cobalt Strike」の海賊版を悪用するサイバー攻撃において用いられているとみられるサーバー(IPアドレス)について、ユーロポールから情報提供を受け、これを管理する事業者に順次働きかけを行っており、既に一部については、当該事業者によってテイクダウンの措置が講じられている。
    • 引き続き、サイバー空間における一層の安全・安心の確保を図るため、サイバー事案の厳正な取締りや実態解明、国内外の関係機関との連携を推進する

警察庁 令和6年5月末におけるSNS型投資・ロマンス詐欺の認知・検挙状況等について
  • SNS型投資・ロマンス詐欺の認知件数は4,197件(前年同期+3,201件)、被害額は約548.2憶円(+442.2憶円)
  • SNS型投資詐欺の認知件数は3,049件(+2,568件)、被害額は約430.2憶円(+381.5憶円)
  • ロマンス詐欺の認知件数は1,148件(+633件)、被害額は約117.9憶円(+60.7憶円)
  • SNS型投資・ロマンス詐欺の検挙件数は22件、検挙人員は14人。うちSNS型投資詐欺の検挙件数は15件、検挙人員は8人、ロマンス詐欺の検挙件数は7件、検挙人員は6人
  • SNS型投資詐欺の被害者の性別について、男性52.2%、女性47.7%。被害者の年齢層は男性は60代30.5%、50代23.2%、70代18.5%、女性は50代29.3%、60代25.5%、70代16.5% など。被疑者が詐称した職業は、投資家35.0%、その他著名人19.0%、会社員3.5%、芸術・芸能関係2.4%など。当初接触ツールについて、男性はLINE21.5%、フェイスブック21.0%、インスタグラム18.2%、女性はインスタグラム34.9%、LINE18.2%、フェイスブック12.7%。被害時の連絡ツールはLINE92.2%。被害金の主たる交付形態は振込89.4%。被害者との当初の接触手段はバナー等広告51.8%、ダイレクトメッセージ19.1%など
  • ロマンス詐欺の被害者の性別について、男性61.2%、女性38.8%。被害者の年齢層は男性は60代28.2%、50代27.3%、40代20.3%、女性は50代26.3%、40代30.1%、60代18.0% など。被疑者が詐称した職業は、投資家10.5%、会社員9.4%、会社役員5.7%、芸術・芸能関係4.2%など。当初接触ツールについて、男性はマッチングアプリ33.7%、フェイスブック26.6%、インスタグラム16.4%、女性はマッチングアプリ36.9%、インスタグラム34.4%、フェイスブック16.4%。被害時の連絡ツールはLINE92.3%。被害金の主たる交付形態は振込77.2%、暗号資産16.5%。被害者との当初の接触手段はダイレクトメッセージ71.2%、その他のチャット8.4%、オープンチャット3.0%など。金銭等の要求名目は投資71.6%。

警察庁 令和6年5月の特殊詐欺認知・検挙状況等について
  • 令和6年1月~5月における特殊詐欺全体の認知件数は7,389件(前年同期7,776件、前年同期比▲5.0%)、被害総額は185.1憶円(157.7憶円、+17.4%)、検挙件数は2,048件(2,647件、▲22.6%)、検挙人員は725人(854人、▲15.1%)
  • オレオレ詐欺の認知件数は1,689件(1,716件、▲1.6%)、被害総額は85.0憶円(48.5憶円、+75.2%)、検挙人員は491人(831人、▲40.9%)、検挙人員は258人(367人、▲29.7%)
  • 預貯金詐欺の認知件数は860件(1,058件、▲18.7%)、被害総額は8.1憶円(14.6憶円、▲44.7%)、検挙件数は600件(555件、+8.1%)、検挙人員は167人(176人、▲5.1%)
  • 架空料金請求詐欺の認知件数は2,050件(2,063件、▲0.6%)、被害総額は48.6憶円(52.3憶円、▲7.1%)、検挙件数は129件(91件、+41.8%)、検挙人員は64人(38人、+68.4%)
  • 還付金詐欺の認知件数は1,789件(1,771件、+1.0%)、被害総額は26.8憶円(20.3憶円、+32.0%)、検挙件数は278件(437件、▲36.4%)、検挙人員は65人(76人、▲14.5%)
  • 融資保証金詐欺の認知件数は129件(82件、+57.3%)、被害総額は1.1憶円(1.1憶円、▲1.3%)、検挙件数は4件(9件、▲55.6%)、検挙人員は3人(6人、▲50.0%)
  • 金融商品詐欺の認知件数は41件(68件、▲39.7%)、被害総額は2.8憶円(6.0憶円、▲53.1%)、検挙件数は0件(11件)、検挙人員は1人(13人、▲92.3%)
  • ギャンブル詐欺の認知件数は8件(10件、▲20.0%)、被害総額は0.8憶円(0.3憶円、+175.8%)、検挙件数は0件(0件)、検挙人員は0人(0人)
  • キャッシュカード詐欺盗の認知件数は613件(984件、▲37.7%)、被害総額は7.0憶円(14.0憶円、▲49.9%)、検挙件数は540件(711件、▲24.1%)、検挙人員は149人(177人、▲15.8%)
  • 組織的犯罪処罰法違反の検挙件数は137件(59件、+132.2%)、検挙人員は52人(20人、+160.0%)、口座開設詐欺の検挙件数は301件(287件、+4.9%)、検挙人員は153人(162人、▲5.6%)、盗品等譲受け等の検挙件数は0件(2件)、検挙人員は0人(1人)、犯罪収益移転防止法違反の検挙件数は1,487件(1,105件、+34.6%)、検挙人員は1,128人(860人、+31.2%)、携帯電話契約詐欺の検挙件数は73件(54件、+35.2%)、検挙人員は67人(56人、+19.6%)、携帯電話不正利用防止法違反の検挙件数は12件(7件、+71.4%)、検挙人員は5人(6人、▲16.7%)
  • 被害者の年齢・性別構成について、特殊詐欺全体では男性(37.3%):女性(62.7%)、60歳以上79.8%、70歳以上58.2%、オレオレ詐欺は男性(26.9%):女性(73.1%)、60歳以上83.5%、70歳以上76.0%、預貯金詐欺は男性(11.0%):女性(89.0%)、60歳以上99.1%、70歳以上95.9%、融資保証金詐欺は男性(70.7%):女性(29.3%)、60歳以上5.7%、70歳以上1.6%、特殊詐欺被害者全体に占める高齢被害者(65歳以上)の割合は、特殊詐欺全体では70.7%(男性32.8%、女性67.2%)、オレオレ詐欺 80.9%(19.5%、80.5%)、預貯金詐欺 97.9%(11.2%、88.8%)、架空料金請求詐欺 49.1%(67.2%、32.8%)、還付金詐欺 77.1%(36.8%、63.2%)、融資保証金詐欺 4.1%(60.0%、40.0%)、金融商品詐欺 34.6%(66.0%、34.0%)、ギャンブル詐欺 50.0%(75.0%、25.0%)、交際あっせん詐欺 30.0%(100.0%、0.0%)、その他の特殊詐欺 15.0%(53.3%、46.7%)、キャッシュカード詐欺盗 97.9%(22.0%、78.0)

警察庁 警察庁のウェブサイトを模倣した偽サイトに注意
  • 警察庁のウェブサイトを模倣した偽サイトがあることが分かりました。偽サイト内のリンクなどをクリックすると、悪質なサイトに誘導され、サイバー犯罪等の被害に遭う可能性がありますのでご注意ください。
  • 注意すべき点
    • 不正なアドレスにアクセスしない。
      • アドレス欄をよく見る、リンクにポインタを置きアドレスを表示させるなどして、アドレスを必ず確認してください。
      • 警察庁のウェブサイトの正しいアドレスはnpa.go.jpです。
    • 不審と思われるアドレスにアクセスしない。
      • 不審と思われる場合には、安易にアクセスしたり、当該ウェブサイト上のリンクをクリックしたりしないでください

【2024年6月】

警察庁 令和6年4月末におけるSNS型投資・ロマンス詐欺の認知・検挙状況等について
  • SNS型投資詐欺
    • 認知件数(前年同期比)2,508件(+2,133件)
    • 被害額(前年同期比) 約334.3億円(+294.6億円)
  • SNS型ロマンス詐欺
    • 認知件数(前年同期比)832件(+ 448件)
    • 被害額(前年同期比)約 84.1億円(+ 40.5億円)
  • 合計
    • 認知件数(前年同期比)3,340件(+2,581件)
    • 被害額(前年同期比)約418.4億円(+335.1億円)
  • SNS型投資詐欺の被害発生状況(808件、約115.1億円の被害)
    • 被害者の性別 男性50.4% 女性49.6%
    • 被害者の年齢層
    • 男性 60代 28.0% 70代 21.6% 50代 20.1%
    • 女性 50代 28.7% 60代 25.7% 70代 19.5%
    • 被害額の分布 500万円以下 男性153件・女性205件 2000万円以下 男性90件・女性67件
    • 被疑者が詐称した身分(地域) 日本国内 81.7% 東アジア2.2%
    • 被疑者が詐称した職業 投資家39.7% その他著名人21.2% 会社員4.2%
    • 当初接触ツール 男性 LINE23.8%・FB23.6% 女性 インスタグラム32.2%・LINE18.0%
    • 被害時の連絡ツール LINE94.7%
    • 被害金の主たる交付形態 振込90.2% 暗号資産7.5%
    • 被害者との当初の接触手段 バナー等広告55.8% ダイレクトメッセージ17.1% グループ招待10.5%
  • SNS型ロマンス詐欺の被害発生状況(229件、約23.5億円の被害)
    • 被害者の性別 男性60.3% 女性39.7%
    • 被害者の年齢層
    • 男性 60代 30.4% 50代 27.5% 40代 18.8%
    • 女性 50代 28.6% 40代 26.4% 30代 16.5%
    • 被害額の分布 500万円以下 男性82件・女性46件 2000万円以下 男性24件・女性14件
    • 被疑者が詐称した身分(地域) 日本国内 53.7% 東アジア13.5% 北米7.9%
    • 被疑者が詐称した職業 投資家10.9% 会社員7.4% 会社役員6.6% 軍関係5.7%
    • 当初接触ツール 男性 マッチングアプリ38.4%・FB24.6% 女性 マッチングアプリ44.0%・インスタグラム28.6%
    • 被害時の連絡ツール LINE94.3%
    • 被害金の主たる交付形態 振込81.7% 暗号資産14.4% 電子マネー3.5%
    • 被害者との当初の接触手段 ダイレクトメッセージ74.2% その他チャット6.1% オープンチャット4.4%
    • 金銭等の要求名目 被害発生数ベース 投資名目70.7% 等市以外29.3%

警察庁 令和6年4月の特殊詐欺認知・検挙状況等について
  • 令和6年1~3月における特殊詐欺全体の認知件数は5,605件(前年同期6,195件、前年同期比▲9.5%)、被害総額は131.4憶円(126.5憶円、検挙件数は1,631件(2,086件、▲21.8%)、検挙件数は1,631件(2,086件、▲21.8%)、検挙人員559人(664人、▲15.8%)
  • オレオレ詐欺の認知件数は1,224件(1,388件、▲11.8%)、被害総額は61.0(38.6憶円、+58.0%)、検挙件数は373件(650件、▲42.6%)、検挙人員は198人(283人、▲30.0%)
  • 預貯金詐欺の認知件数は676件(836件、▲19.1%)、被害総額は被害総額は6.1憶円(11.8憶円、▲52.0%)、検挙件数は479件(419件、+14.3%)、検挙人員は134人(134人、±0%)
  • 架空料金請求詐欺の認知件数は1,558件(1,561件、▲0.2%)、被害総額は32.5憶円(40.7憶円、▲20.1%)、検挙件数は95件(71件、+33.8%)、検挙人員は47人(30人、+56.7%)
  • 還付金詐欺の認知件数は1,398件(1,458件、▲4.1%)、被害総額は21.0憶円(16.6憶円、+26.7%)、検挙件数は229件(369件、▲37.9%)、検挙人員は47人(64人、▲26.6%)
  • 融資保証金詐欺の認知件数は90件(73件、+23.3%)、被害総額は0.9憶円(1.0憶円、▲5.1%)、検挙件数は2件(5件、▲60.0%)、検挙人員は1人(6人、▲83.3%)
  • 金融商品詐欺の認知件数は28件(51件、▲45.1%)、被害総額は1.5憶円(5.4憶円、▲72.8%)、検挙件数は0件(8件)、検挙人員は1人(12人、▲91.7%)
  • ギャンブル詐欺の認知件数は5件(7件、▲28.6%)、被害総額は0.5憶円(0.2憶円、+96.9%)、検挙件数は0件(0件)、検挙人員は0人(0人)
  • キャッシュカード詐欺盗の認知件数は491件(810件、▲39.4%)、被害総額は5.8憶円(11.9憶円、▲51.4%)、検挙件数は450件(563件、▲20.0%)、検挙人員は117人(134人、▲12.7%)
  • 組織的犯罪処罰法違反の検挙件数は95件(50件、+90.0%)、検挙人員は36人(17人、+111.8%)、口座開設詐欺の検挙件数は246件(231件、+6.5%)、検挙人員は117人(133人、▲12.0%)盗品等譲受け等の検挙件数は0件(2件)、検挙人員は0人(1人)、犯罪収益移転防止法違反の検挙件数は1,192件(918件、+29.8%)、検挙人員は882人(699人、+26.2%)、携帯電話契約詐欺の検挙件数の検挙件数は65件(37件、+75.7%)、検挙人員は59人(39人、+51.3%)、携帯電話不正利用防止法違反の検挙件数は10件(5件、+100.0%)、検挙人員は5人(5人、±0%)
  • 被害者の年齢・性別構成について、特殊詐欺全体は男性(36.9%):女性(63.1%)、60歳以上81.2%、70歳以上59.3%、オレオレ詐欺は男性(25.5%):女性(74.5%)、60歳以上86.9%、70歳以上79.5%、架空料金請求詐欺は男性(61.9%):女性(38.1%)、60歳以上61.5%、70歳以上35.4%、還付金詐欺は男性(61.9%):女性(38.1%)、60歳以上61.5%、70歳以上35.4%、融資保証金詐欺は男性(70.2%):女性(29.8%)、60歳以上6.0%、70歳以上1.2%

警察庁 犯罪統計資料(令和6年1~5月分)
  • 令和6年1月~5月における刑法犯総数について、認知件数は288,515件(前年同期271,669件、前年同期比+6.2%)、検挙件数は108,535件(101,730件、+6.7%)、検挙率は37.6%(37.4%、+0.2P)
  • 凶悪犯の認知件数は2,733件(2,044件、+33.7%)、検挙件数は2,266件(1,707件、+32.7%)、検挙率は82.9%(83.5%、▲0.6P)、粗暴犯の認知件数は23,125件(23,462件、▲1.4%)、検挙件数は18,789件(18,757件、+0.2P)、検挙率は81.2%(79.9%、+1.3P)、窃盗犯の認知件数は195,246件(186,325件、+4.8%)、検挙件数は63,193件(58,544件、+6.1%)、検挙率は32.4%(32.0%、+0.4P)、知能犯の認知件数は24,328件(18,960件、+28.3%)、検挙件数は6,976件(7,347件、▲5.0%)、検挙率は28.7%(38.8%、▲10.1P)、風俗犯の認知件数は6,448件(2,980件、+116.4%)、検挙件数は5,123件(2,493件、+105.5%)、検挙率は79.5%(83.7%、▲4.2P)
  • 詐欺の認知件数は22,326件(17,487件、+27.7%)、検挙件数は5,676件(6,284件、▲9.7%)、検挙率は25.4%(35.9%、▲10.5P)
  • 万引きの認知件数は41,155件(38,831件、+6.0%)、検挙件数は26,922件(24,890件、+8.2%)、検挙率は65.4%(64.1%、+1.3P)
  • 特別法犯総数について、検挙件数は24,942件(26,764件、▲6.8%)、検挙人員は19,984人(21,980人、▲9.1%)
  • 入管法違反の検挙件数は2,276件(2,206件、+3.2%)、検挙人員は1,550人(1,548人、+0.1%)、軽犯罪法違反の検挙件数は2,613件(3,087件、▲15.4%)、検挙人員は2,622人(3,088人、▲15.1%)、迷惑防止条例違反の検挙件数は2,368件(4,039件、▲41.4%)、検挙人員は1,719人(3,127人、▲45.0%)、ストーカー規制法違反の検挙件数は491件(480件、+2.3%)、検挙人員は399人(396人、+0.8%)、犯罪収益移転防止法違反の検挙件数は1,679件(1,266件、+32.6%)、検挙人員は1,309人(993人、+31.8%)、不正アクセス禁止法違反の検挙件数は164件(164件、±0%)、検挙人員は70人(50人、+40.0%)、銃刀法違反の検挙件数は1,755件(1,996件、▲12.1%)、検挙人員は1,501人(1,657人、▲9.4%)、麻薬等取締法違反の検挙件数は646件(453件、+42.6%)、検挙人員は381人(276人、+38.0%)、大麻取締法違反の検挙件数は2,693件(2,664件、+1.1%)、検挙人員は2,146人(2,171人、▲1.2%)、覚せい剤取締法違反の検挙件数は3,116件(2,720件、+14.6%)、検挙人員は2,069人(1,879人、+10.1%)
  • 来日外国人による 重要犯罪・重要窃盗犯 国籍別 検挙人員 対前年比較について、総数306人(227人、+34.8%)、ベトナム88人(71人、+23.9%)、中国46人(34人、+35.3%)、フィリピン22人(10人、+120.0%)、ブラジル18人(15人、+20.0%)、韓国・朝鮮14人(10人、+40.0%)、スリランカ7人(10人、▲30.0%)、パキスタン7人(3人、+133.3%)、インド5人(4人、+25.0%)
  • 暴力団犯罪(刑法犯)罪種別 検挙件数・検挙人員 対前年比較について、検挙件数総数は3,443件(3,869件、▲11.0%)、検挙人員総数は1,834人(2,355人、▲22.1%)、暴行の検挙件数は171件(244件、▲29.9%)、検挙人員は154人(224人、▲31.3%)、傷害の検挙件数は297件(399件、▲25.6%)、検挙人員は343人(451人、▲23.9%)、脅迫の検挙件数は99件(128件、▲22.7%)、検挙人員は98人(117人、▲16.2%)、恐喝の検挙件数は116件(140件、▲17.1%)、検挙人員は135人(164人、▲17.7%)、窃盗の検挙件数は1,720件(1,731件、▲0.6%)、検挙人員は269人(322人、▲16.5%)、詐欺の検挙件数は543件(724件、▲25.0%)、検挙人員は363人(592人、▲38.7%)、賭博の検挙件数は39件(12件、+225.0%)、検挙人員は48人(46人、+4.3%)
  • 暴力団犯罪(特別法犯)主要法令別 検挙件数・検挙人員 対前年比較について、検挙件数総数は1,629件(1,801件、▲9.6%)、検挙人員総数は1,014人(1,235人、▲17.9%)、入管法違反の検挙件数は13件(35件、▲62.9%)、検挙人員は13人(3人、+333.3%)、軽犯罪法違反の検挙件数は13件(35件、▲62.9%)、検挙人員は13人(25人、▲48.0%)、迷惑防止条例違反の検挙件数は26件(25件、+4.0%)、検挙人員は26人(25人、+4.0%)、暴力団排除条例違反の検挙件数は34件(10件、+240.0%)、検挙人員は40人(23人、+73.9%)、銃刀法違反の検挙件数は30件(30件、±0%)、検挙人員は20人(19人、+5.3%)、麻薬等取締法違反の検挙件数は86件(66件、+30.3%)、検挙人員は31人(33人、▲6.1%)、大麻取締法違反の検挙件数は293件(413件、▲29.1%)、検挙人員は171人(268人、▲36.2%)、覚せい剤取締法違反の検挙件数は915件(957件、▲4.4%)、検挙人員は569人(628人、▲9.4%)、麻薬特例法違反の検挙件数は32件(48件、▲33.3%)、検挙人員は7人(21人、▲66.7%)

警察庁 一般社団法人日本損害保険協会長とサイバー警察局長との対談について
  • 損保協会新納会長のご発言
    • 当協会にて、令和3年~令和5年に国内の中小企業を対象に実施したアンケートにおいて、サイバー保険の認知度は3年間で10.3pt上昇(直近では46.9%)。一方、加入率については、5%程度と低い水準となっている状況。
    • サイバー保険は、(1)法律上の損害賠償金の補償(2)調査費用や見舞品等の費用の補償(3)IT機器の機能停止により生じる喪失利益の補償のほか、関連する付帯サービス(情報セキュリティ診断サービス等)の提供による、被害の未然防止や損害の軽減といった機能も大きい。
    • 当協会のサイバー保険特設サイトでは、ランサムウェアを含む複数のサイバー攻撃の類型及びその被害事例について紹介し、注意喚起を実施。また、サイバー犯罪の被害を最寄りの警察署または都道府県警察本部のサイバー犯罪相談窓口へ通報・相談することを推奨している。
    • 各支部で行っているセミナーを含め、今後もリスク啓発活動を継続していく。
  • サイバー警察局大橋局長の発言
    • 警察庁では、令和5年におけるサイバー空間の脅威の情勢を示す指標および事例を記載した「令和5年におけるサイバー空間をめぐる脅威の情勢等について」を令和6年3月14日に公表。ランサムウェアの被害が依然として高水準で推移し、令和5年中は197件の被害を確認。このほか、データを暗号化することなくデータを窃取した上で企業・団体等に対価を要求する「ノーウェアランサム」の手口も確認。ランサムウェア被害の実態を明らかにし、拡大させないためには、被害を潜在化させず、警察への通報・相談が行われることが重要。
    • 警察庁は、ランサムウェア対策多国間会合(カウンターランサムウェア・イニシアティヴ会合:CRI)に参加、国際的なランサムウェアの脅威への対処に関する議論に参画。第3回会合後に発出された共同声明では、ランサムウェアに対する集団的な強靱性の構築、ランサムウェアの実行可能性を弱め、責任者の追跡に関する協力、ランサムウェアのエコシステムを支える不正資金への対抗、民間セクターとの協力、国際的な協力の継続などを再確認。
    • 引き続き、国際社会と緊密に連携し、ランサムウェアの脅威への対処含め、自由、公正かつ安全なサイバー空間の維持・発展のための取組を進めていく。
    • 警察庁では、令和5年3月には「サイバー事案の被害の潜在化防止に向けた検討会」を開催。警察では、通報・相談を受け、全国警察で保有している高度な知見等を基に、業務への影響が最小限となるよう当該相談者に配意した事件捜査を行うとともに、(1)被害企業の被害拡大防止対策に必要な情報の提供、助言、(2)被害企業の被害の復旧への貢献、(3)他の企業等の被害未然防止のための取組といった活動を推進し、被害の通報・相談が自ずと行われる社会的な機運の醸成を図っている。
    • ランサムウェア被害に対する取組として、警察庁ウェブサイト「ランサムウェア被害防止対策」コンテンツの提供等、被害の潜在化防止の重要性を訴求している。

警察庁 犯罪統計資料(令和6年1~4月分)
  • 令和6年1月~4月の刑法犯総数について、認知件数は222,285件(前年同期208,824件、前年同期比+6.4%)、検挙件数は85,650件(80,786件、+6.0%)、検挙率は38.5%(38.7%、▲0.2P)
  • 凶悪犯の認知件数あ2,078件(1,597件、+30.1%)、検挙件数は1,756件(1,338件、+31.2%)、検挙率は84.5%(83.8%、+0.7P)、粗暴犯の認知件数は17,864件(18,310件、▲2.4%)、検挙件数は14,673件(14,811件、▲0.9%)、検挙率は82.1%(80.9%、+1.2P)、窃盗犯の認知件数は150,344件(142,461件、+5.5%)、検挙件数は49,993件(47,351件、+5.6%)、検挙率は33.3%(39.2%、+0.1P)、知能犯の認知件数は18,855件(15,008件、+25.6%)、検挙件数は5,626件(5,935件、▲5.2%)、検挙率は29.8%(39.5%、▲9.7P)、風俗犯の認知件数は4,917件(2,268件、+116.8%)、検挙件数は3,988件(2,007件、+98.7%)、検挙率は81.1%(88.5%、▲7.4P)
  • 万引きの認知件数は32,485件(30,215件、+7.5%)、検挙件数は21,200件(19,780件、+7.2%)、検挙率は65.3%(65.5%、▲0.2P)
  • 詐欺の認知件数は17,245件(13,843件、+24.6%)、検挙件数は4,548件(5,085件、▲10.6%)、検挙率は26.4%(36.7%、▲10.3%)
  • 特別法犯総数について、検挙件数は19,565件(21,336件、▲8.3%)、検挙人員は15,657人(17,545人、▲10.8%)
  • 入管法違反の検挙件数は1,678件(1,765件、▲4.9%)、検挙人員は1,164人(1,255人、▲7.3%)、軽犯罪法違反の検挙件数は1,978件(2,438件、▲18.9%)、検挙人員は1,982人(2426人、▲18.3%)、迷惑防止条例違反の検挙件数は1,842件(3,286件、▲43.9%)、検挙人員は1,321人(2,528人、▲47.7%)、児童買春・児童ポルノ法違反の検挙件数は1,117件(1,103件、+1.3%)、検挙人員は634人(824人、▲23.1%)、青少年保護育成条例違反の検挙件数は482件(690件、▲30.1%)、検挙人員は371人(546人、▲32.1%)、犯罪収益移転防止法違反の検挙件数は1,354件(1,032件、+31.2%)、検挙人員は1,033人(791人、+30.6%)、銃刀法違反の検挙件数は1,369件(1,639件、▲16.5%)、検挙人員は1,117人(1,367人、▲13.9%)、麻薬等取締法違反の検挙件数は495件(340件、+45.6%)、検挙人員は296人(214人、+38.3%)、大麻取締法違反の検挙件数は2,109件(2,074件、+1.7%)、検挙人員は1,666人(1,661人、+0.3%)、覚せい剤取締法違反の検挙件数は2,354件(2,109件、+11.6%)、検挙人員は1,560人(1,450人、+7.6%)
  • 来日外国人による 重要犯罪・重要窃盗犯 国籍別 検挙人員 対前年比較について、総数243人(175人、+38.9%)、ベトナム77人(56人、+37.5%)、中国37人(27人、+37.0%)、ブラジル18人(8人、+125.0%)、フィリピン14人(8人、+75.0%)、韓国・朝鮮10人(7人、+30.0%)、パキスタン7人(2人、+250.0%)、スリランカ6人(8人、▲25.0%)
  • 暴力団犯罪(刑法犯)罪種別 検挙件数・検挙人員 対前年比較について、検挙件数総数は2,589件(3,130件、▲17.3%)、検挙人員総数は1,451人(1,865人、▲22.2%)
  • 強盗の検挙件数は24件(31件、▲22.6%)、検挙人員は45人(58人、▲22.4%)、暴行の検挙件数は137件(197件、▲30.5%)、検挙人員は124人(173人、▲28.3%)、傷害の検挙件数は231件(323件、▲28.5%)、検挙人員は250人(365人、▲31.5%)、脅迫の検挙件数は72件(96件、▲25.0%)、検挙人員は67人(86人、▲22.1%)、恐喝の検挙件数は84件(113件、▲25.7%)、検挙人員は101人(118人、▲14.4%)、窃盗の検挙件数は1,263件(1,408件、▲10.3%)、検挙人員は205人(246人、▲16.7%)、詐欺の検挙件数は404件(591件、▲31.6%)、検挙人員は308人(486人、▲36.6%)、賭博の検挙件数は34件(11件、+209.1%)、検挙人員は42人(42人、±0%)
  • 暴力団犯罪(特別法犯)罪種別 検挙件数・検挙人員 対前年比較について、検挙件数総数は1,246件(1,436件、▲13.2%)、検挙人員総数は800人(963人、▲16.9%)、入管法違反の検挙件数は12件(4件、+200.0%)、検挙人員は10人(2人、+400.0%)、軽犯罪法違反の検挙件数は9件(28件、▲67.9%)、検挙人員は8人(20人、▲60.0%)、迷惑防止条例違反の検挙件数は24件(21件、+14.3%)、検挙人員は24人(20人、+20.0%)、暴力団排除条例違反の検挙件数は32件(10件、+220.0%)、検挙人員は34人(23人、+47.8%)、風営適正化法違反の検挙件数は31件(25件、+24.0%)、検挙人員は21人(21人、±0%)、銃刀法違反の検挙件数は26件(24件、+8.3%)、検挙人員は19人(16人、+18.8%)、麻薬等取締法違反の検挙件数は56件(49件、+14.3%)、検挙人員は22人(25人、▲12.0%)、大麻取締法違反の検挙件数は226件(337件、▲32.9%)、検挙人員は135人(217人、▲37.8%)、覚せい剤取締法違反の検挙件数は681件(742件、▲8.2%)、検挙人員は441人(470人、▲6.2%)、麻薬等特例法違反の検挙件数は24件(43件、▲44.2%)、検挙人員は6人(17人、▲64.7%)

【法務省】

【2024年7月】

法務省 7月は「再犯防止啓発月間」です
  • 法務省では、広く再犯防止についての関心と理解を深めていただくため、再犯の防止等の推進に関する法律に基づき、毎年7月を、「再犯防止啓発月間」として定めています。
  • 「再犯防止啓発月間」には、重点的に再犯防止に関する様々な広報・啓発活動を展開しています。
  • 令和5年度の取組
    • 再犯防止啓発ポスターの作成
      • 令和5年3月に「第二次再犯防止推進計画」が策定され、再犯防止の取組は新たな段階を迎えております。
      • そのような今だからこそ、再犯防止がなぜ必要か、改めて考え直すことをコンセプトに、本ポスターを作成しました。
      • 再犯防止は、犯罪をした者等が再び犯罪をすることを防ぐ取組でありますが、その根底には、新たな被害者を生まない、安全・安心な社会の実現という目的があります。
      • 令和5年度の再犯防止啓発ポスターは、そのような思いを一人でも多くの方にお伝えするために、「変わってほしい 被害者も 加害者も 生まない 未来のために」をキャッチフレーズとしました。
      • このポスターは、法務省の出先機関のほか、裁判所、地方公共団体、鉄道会社等にも御協力いただき、全国で掲示いただいています。また、法務省前の祝田橋交差点にあるポスター掲示板のほか、法務省内にも掲示しています。
      • 本ポスターを目にされた一人でも多くの方が、再犯防止について知っていただき、また、考えるきっかけとしていただけますと幸いです。
    • ソーシャルメディアサービス(SNS)を活用した情報発信
      • 令和5年度においても、ソーシャルメディアサービスの「Twitter」や「note」を活用し、再犯防止に関する情報について、集中的に発信を行います。ぜひご覧ください。

法務省 第74回“社会を明るくする運動”~犯罪や非行を防止し、立ち直りを支える地域のチカラ~
  • “社会を明るくする運動”とは?
    • “社会を明るくする運動”~犯罪や非行を防止し、立ち直りを支える地域のチカラ~は、すべての国民が、犯罪や非行の防止と犯罪や非行をした人たちの更生について理解を深め、それぞれの立場において力を合わせ、犯罪や非行のない安全で安心な明るい地域社会を築くための全国的な運動です。令和6年で74回目を迎えます。
  • 地域のチカラが犯罪や非行を防ぐ
    • テレビや新聞では、毎日のように事件(犯罪)のニュースが報道されていますが、安全で安心な暮らしはすべての人の望みです。犯罪や非行をなくすためには、どうすればよいのでしょうか。取締りを強化して、罪を犯した人を処罰することも必要なことです。しかし、立ち直ろうと決意した人を社会で受け入れていくことや、犯罪や非行をする人を生み出さない家庭や地域づくりをすることもまた、とても大切なことです。
    • 立ち直りを支える家庭や地域をつくる。そのためには、一部の人たちだけでなく、地域のすべての人たちがそれぞれの立場で関わっていく必要があります。“社会を明るくする運動”では、犯罪や非行のない地域をつくるために、一人ひとりが考え、参加するきっかけをつくることを目指しています。
  • あなたもできることから始めてみませんか
    • “社会を明るくする運動”では、街頭広報、ポスターの掲出、新聞やテレビ等の広報活動に加えて、だれでも参加できるさまざまな催しを行っています。イベントに参加したり、このホームページを見たりしたことなどをきっかけにして、犯罪や非行のない安全で安心な暮らしをかなえるためいま何が求められているのか、そして、自分には何ができるのかを、みなさんで考えてみませんか。

【2024年6月】

法務省 「令和5年度人権教育及び人権啓発施策」(人権教育・啓発白書)について
  • 内容
    • 「令和5年度人権教育及び人権啓発施策」(人権教育・啓発白書)は、人権教育及び人権啓発の推進に関する法律(平成12年法律第147号)第8条に基づく、令和5年度に政府が講じた人権教育及び人権啓発に関する施策についての報告であり、同法を共管する法務省及び文部科学省において、関係府省庁の協力を得て作成したものです。
    • 人権一般の普遍的な視点からの取組、「女性」、「こども」、「高齢者」、「障害のある人」、「部落差別(同和問題)」、「アイヌの人々」、「外国人」等の個別の人権課題に対する取組、人権に関わりの深い特定の職業に従事する者に対する研修、人権教育・啓発の総合的かつ効果的な推進体制等、政府が令和5年度に講じた人権教育及び人権啓発に関する施策を報告する内容となっています。
    • また、本報告では、「特集」として「こども・若者の人権をめぐる取組」について掲載するとともに、「『ビジネスと人権』に関する我が国の取組」や「職場におけるハラスメント防止対策の推進」等を「トピックス」として掲載しています。
    • なお、本報告は、「令和6年版 人権教育・啓発白書」として刊行するとともに、法務省ホームページでも公開することとしています。
▼ (資料1)令和5年度人権教育及び人権啓発施策の概要
  • 女性の人権に関する取組
    • DVやセクシュアルハラスメントをテーマとする啓発動画の作成・配信、全国一斉「女性の人権ホットライン」強化週間による相談体制の強化
  • こどもの人権に関する取組
    • 「全国中学生人権作文コンテスト」や「人権教室」に加え、いじめや児童虐待等のこどもの人権問題をテーマとした啓発動画の作成・配信等
    • 全国一斉「こどもの人権110番」強化週間、「こどもの人権SOSミニレター」、「LINEじんけん相談」等による相談体制の充実
    • トピックス
      • 地域と学校が連携・協働した人権教育に向けた取組
        • 「コミュニティ・スクール(学校運営協議会制度)」と「地域学校協働活動」の一体的な取組の推進に合わせ、法務省の人権擁護機関では人権擁護委員の参画を進め、学校における人権教育や人権課題の解決に向けた取組への積極的な関与を推進
      • 性被害防止に向けた取組
        • 令和5年7月施行の「刑法及び刑事訴訟法の一部を改正する法律」等の趣旨や内容について、こども・若者向けにまとめたリーフレットの作成・配布や法改正の内容を踏まえた啓発動画の作成などの各種広報・啓発活動を実施
  • 高齢者の人権に関する取組
    • 高齢者を含む全ての人の人権が尊重される社会の実現を訴える啓発動画の配信、社会福祉施設における相談体制の強化
  • 障害のある人の人権に関する取組
    • 障害のある人を含む全ての人の人権が尊重される社会の実現を訴える啓発動画の配信、冊子の配布、シンポジウムの実施等、社会福祉施設における相談体制の強化
    • トピックス:障害者関係の法改正の動向
      • 事業者による合理的配慮の提供義務化等を含む改正障害者差別解消法の施行に向け、事業分野ごとの相談窓口の明確化、適切な相談窓口に「つなぐ窓口」の設置等の取組を推進
      • 改正精神保健福祉法の施行に向け、精神科病院における虐待防止等に係る地方公共団体向けの説明会や外部との面会交流の機会確保のための入院者訪問支援事業に係る研修の実施、患者向けの周知用ポスターの作成
  • 部落差別(同和問題)に関する取組
    • 部落差別の解消を呼び掛ける講演会等の実施、啓発動画の配信、冊子の配布、差別を助長するインターネット上の書き込み等に対する削除要請の実施
  • アイヌの人々に関する取組
    • アイヌの人々の人権に関する啓発動画の配信、人権教育啓発推進センターが実施する「アイヌの方々のための相談事業」と人権相談との連携を実施
  • 外国人の人権に関する取組
    • 共生社会の実現をテーマとしたシンポジウムの開催、ヘイトスピーチは許されないことを訴えるポスター等の活用、インターネット上のヘイトスピーチの解消に焦点を当てた啓発動画の配信やSNSによる定期的な情報発信、人権相談の多言語(約80言語)対応
  • 感染症に関連する人権問題に関する取組
    • 感染症に関連する偏見や差別の解消に向けた啓発冊子の配布、啓発動画の配信
  • ハンセン病問題に関する取組
    • 元患者やその家族との協議を踏まえ、関係省庁が連携してシンポジウムの開催、啓発動画の配信等の各種啓発活動を実施
  • インターネット上の人権侵害に関する取組
    • SNS・掲示板等のインターネット上の誹謗中傷等の根絶を呼び掛ける啓発動画の配信、インターネット広告の実施
    • 中高生及び保護者向け啓発冊子の配布
    • 中学生等を対象に携帯電話会社と連携・協力したスマートフォン等の安全な利用に関する人権教室の実施
    • 有識者検討会の取りまとめ(インターネット上の書き込み等のうち削除されるべきものの基準等について法的に整理)を踏まえた削除要請の実施、プロバイダ事業者等との意見交換
  • 性的マイノリティの人権に関する取組
    • 理解増進法に基づき、関係府省庁が横断的に連携し、性的指向及びジェンダーアイデンティティの多様性に関する国民の理解の増進に関する施策を総合的かつ効果的に推進
    • 性的マイノリティをめぐる人権問題について解説した啓発冊子の配布、動画の配信
    • 各企業・団体が進める取組事例を公表する投稿型の特設サイトの本格的運用
    • トピックス
      • 「ビジネスと人権」に関する我が国の取組
        • 公共調達における人権配慮に関する政府方針について決定
        • 経済産業省において、「サプライチェーンにおける人権尊重のための実務参照資料」を作成・公表、中小企業向けのセミナーを実施
        • 法務省の人権擁護機関において、企業研修等への講師派遣、特設サイトの周知等、企業活動における人権尊重の取組を促進するための啓発活動を実施
      • 職場におけるハラスメント防止対策の推進
        • 厚生労働省において、職場におけるハラスメント防止に向けた周知啓発、事業主への助言指導等を実施するとともに、カスタマーハラスメントに関する企業向け対策マニュアルやポスターを活用した周知啓発を実施

【消費者庁】

【2024年7月】

消費者庁 第3回公益通報者保護制度検討会
▼ <資料4>公益通報制度に関する近時の裁判例
  • 報道機関に対する情報提供について公益通報該当性(通報対象事実該当性及び3号通報としての通報先該当性)が否定され、当該情報提供をしたこと等を理由としてなされた解雇が有効と判断された事例(東京地判令和5年8月10日LEX/DB文献番号25597728)
    • 事実の概要
      • B社(食品事業)の従業員であるAは、同社創業家に属する女性と婚姻しその後離婚したが、平成31年4月から令和元年5月にかけて、離婚に関連する親族間のトラブル等について出版社及びテレビ局に情報提供を行い、その内容が雑誌及びテレビ番組で報道された。B社は、Aが出版社及びテレビ局に提供した内容がB社の社会的評価等を著しく悪化させる内容であることなどから、令和元年8月、就業規則上の解雇事由である「その他これに準ずるやむを得ない会社の業務上の都合によるとき」に当たるとして普通解雇した。
      • Aは、B社に対し、普通解雇及びそれ以前に行われていた異動命令がいずれも無効であると主張して、雇用契約上の権利を有する地位にあることの確認等を求めるとともに、それを前提とする未払賃金の支払及び不法行為に基づき財産的損害及び慰謝料の支払いを求め、あわせて民法723条に基づき社会的評価を回復する措置を講ずることを求めた。Aは、普通解雇が無効である根拠として、出版社及びテレビ局に対する情報提供は公益通報であり正当な権利行使であるから、客観的に合理的な理由を書き、社会通念上相当であるとは認められないことを主張した。
    • 裁判所の判断
      • 請求棄却(異動命令の無効による地位確認はその後の解雇が有効であるため確認の利益がないとして訴え却下)。
      • Aは出版社及びテレビ局に対する情報提供は公益通報だと主張するが、Aが出版社及びテレビ局に行った「情報提供において通報された事実は、いかなる法令に基づく通報対象事実であるのか具体的に主張立証はされていない」。また、Aは情報提供の目的について、離婚した元妻との間に生まれていた長男に会うための手段であった旨を供述していることからすると、「報道機関に対して情報提供を行うことが、通報対象事実の発生及びこれによる被害の拡大を防止するために必要であったとも解されず」、Aによる「情報提供に通報対象事実が含まれていたとしても、公益通報者保護法にいう公益通報に当たるとはいえない」。
  • 懲戒権の濫用に関する判断において公益通報者保護法の趣旨が考慮され、かつ、多数の関係者に通報文書を交付した行為は多数派を形成し人事を一新することで問題を是正しようとしたもので「不正の目的」とはいえないとして、違法性が阻却され懲戒事由に当たらないと判断された事例(東京地判令和3年3月18日労判1260号50頁)
    • 事実の概要
      • 宗教法人Bの幹部職員A1及びA2は、平成28年12月から平成29年4月にかけて、同法人の不動産が不当に安く売却された(代表者らの背任行為である)旨の文書を作成し、同法人の理事ら等に送付したところ、同年8月、A1は懲戒解雇、A2は降格減給処分とされた。
      • A1及びA2は、宗教法人Bに対し、懲戒解雇が無効であると主張して雇用契約上の権利を有する地位にあることの確認及び降格減給処分の無効確認並びにそれらを前提とする未払賃金の支払を求めた。
    • 裁判所の判断
      • 請求認容。
      • 公益通報者保護法の趣旨は、懲戒権の濫用(労働契約法15条)の判断においても考慮されるべきであり、「(1)通報内容が真実であるか、又は真実と信じるに足りる相当な理由があり、(2)通報目的が…不正の目的でなく、(3)通報の手段方法が相当である場合には、当該行為が宗教法人Bの信用を毀損し、組織の秩序を乱すものであったとしても、懲戒事由に該当せず又は該当しても違法性が阻却されることとなり、また、(1)~(3)の全てを満たさず懲戒事由に該当する場合であっても、①~③の成否を検討する際に考慮した事情に照らして、選択された懲戒処分が重すぎるというときは、労働契約法15条にいう客観的合理的な理由がなく、社会通念上相当性を欠くため、懲戒処分は無効となると解すべき」。
      • 本件では、(1)通報内容の主たる事実について、真実と信じるに足りる相当の理由があった。(2)通報目的について、組織内部で代表者らの「背任行為の疑いを通報して是正を求めることは困難であったため、本件文書の記載内容に理解を示す可能性のある理事、評議員、職員及び関係者の多数人に交付することで、理事、評議員において多数派を形成し、人事を一新することで、これを是正しようとしたものであ」り、不正な目的とはいえない。(3)通報した手段も相当である。したがって公益通報者保護法の趣旨などに照らし違法性が阻却され懲戒事由に当たらない。
  • 通報の受け手である支社長が、通報者の同僚に対して、通報者を特定する情報を漏らした上、虚偽の事実を伝達した結果、通報者が同僚から嫌がらせを受けた事案において、支社長の責任について、虚偽の事実を伝達した点が不法行為に該当すると判断された事例(東京地判令和3年3月23日労判1244号15頁)
    • 事実の概要
      • B社(生命保険会社)のライフプランナーとして勤務するAが、平成29年3月、同僚Bの内部規程違反行為について、支社長Cに伝えて適切な対応を求めたが、支社長Cが、Aの同僚であるDに対して、Aから通報を受けたことを伝えた(その際「Aが秘密録音していた」という情報も伝えており、判決ではこの情報は虚偽であったと認定された。)。その結果、Aは、同僚Dから嫌がらせ(Aが働くブースから見えるように、Aを揶揄するような嫌がらせの張り紙をするなど)を受けた。
      • Aは、支社長C及び同僚Dに対して不法行為に基づき、B社に対して使用者責任又は職場環境配慮義務違反の債務不履行責任に基づき、それぞれ損害賠償を求めた。
      • Aは、支社長Cの行為は虚偽の情報を流布するもので、また、通報者であるAの指名等を職場内に漏えいさせるものであって、公益通報者保護法に関する民間事業者向けガイドラインに反するものであるから、名誉毀損又は秘密保持義務違反と主張した。
      • これに対して、支社長Cは、Aによる相談が「社内通報窓口として指定された窓口に対してなされたものでもないため、支社長Cには、内部通報であるとの認識はなかったのであって、支社長Cには、これらの情報を秘匿する法的な義務はない」と主張した。
    • 裁判所の判断
      • いずれの被告にも責任を認め損害額について一部金額を認容。
      • CがDに虚偽の情報を伝達したことは、Aの名誉を低下させるものであり、不法行為に該当する。(裁判所は、公益通報者保護法には特段言及せず、また支社長Cが通報者を特定する事項をAの同僚であるDに伝達したこと自体の違法性の有無は特段判断しなかった。)
  • 被通報者の親族であり社内で人事に相当程度の影響力を有していた者が通報者を特定しようとした行為は違法と判断され、損害賠償請求が認められた事例(福岡地判令和3年10月22日判時3534号81頁)
    • 事実の概要
      • B社において支店長の立場にあるA1、A2らが、平成30年10月、別の支店長Cのコンプライアンス違反について本社の内部通報窓口に通報したところ、(i)平成31年1月、Cの父であり地区を統括する立場のDが、Aらに対し、A1が本件内部通報をしていないかどうかを複数回にわたり確認し、A1が内部通報したことを直ちに認めなければ、後に通報者が明らかになった際に支店長を辞めさせるなどと申し向けた。その後、(ii)平成31年4月、Dの意向を汲んだ他の支店長らにより、Aらは支店長の任意団体から除名された。さらに、(iii) DがA2に対しB社の役職を辞任するよう求めた。
      • A1及びA2は、Dらに対して、共同不法行為に基づき損害賠償を求めた。
    • 裁判所の判断
      • 損害額の一部について認容。
      • 上記(i)の行為について、「B社において、内部通報は、その秘匿性が担保され、これをした者には厳正に対処するとされていたのであるから、内部通報をしたものを特定しようとすることは許されなかったということができる。…Dは、Aらの人事評価等に権限を有し、…B社における人事に相当程度の影響力を有していたのであるから、このようなDが本件通報者を特定しようとする行為は、違法性があるというのが相当である」。(ii)及び(iii)も違法。
        • ※ 本件の事実関係の(i)についてDが起訴され、強要未遂罪の成立が認定された。(福岡地判令和3年6月8日LEX/DB文献番号25571608)。
        • ※ B社プレスリリース(2021年7月16日付)によれば、Aの内部通報を受けて、コンプライアンス担当の常務執行役員がDに事情聴取を行ったが、その際「Cが周りの(支店長)ともめているようである」と通報者が推測される内容を伝えていた。なお、常務執行役員は、その際、通報者を探すことはしてはならない旨伝え、Dは了承していた。

消費者庁 第1回デジタル社会における消費取引研究会
▼ 【資料4】事務局説明資料
  • 国内BtoC-EC市場規模は毎年拡大傾向にあり、世界的にも同様に拡大傾向にある。
  • 情報通信機器の世帯保有率をみると、固定電話は年々減少傾向にあり、今やスマートフォンは9割以上の消費者が保有。技術の進展と共に、情報通信機器の保有状況は変化し、取引ツールも変化しており、通信販売では携帯(インターネット)による取引が固定電話による取引を上回った。
  • 主なメディアの利用時間では、近年、インターネット利用時間がテレビ視聴時間を逆転。また、インターネットの利用の内訳を見ると、「動画投稿・共有サービスを見る」が長い。
  • ソーシャルメディア系サービス/アプリ等の利用率を見ると、2012年には、多いものでも2割程度の利用率であったが、2022年には、多いものでは9割を超えている。
  • 取引DPF提供者の努力義務に関する指針 概要
    • 取引DPF提供者の努力義務に関し、法の規定の「趣旨・目的・基本的な取組」を明らかにするとともに、「望ましい取組(ベストプラクティス)の例」を示すもの。
    • 消費者が販売業者等と円滑に連絡することができるようにするための措置(法第3条第1項第1号)
    • 基本的な取組:連絡先や連絡手段が、消費者が容易に認識することができるように示されていること、消費者が合理的な期間にわたり、社会通念に照らして相当な時間帯において、必要に応じ販売業者等と連絡が取れるようにすること
    • 望ましい取組の例:販売業者等の連絡先の表示の徹底、専用のメッセージ機能の提供、連絡手段が機能しているか否かの確認、連絡手段が機能しない場合の取引DPF提供者の対応に関し、それぞれ取組を例示
    • 消費者から苦情の申出を受けた場合の販売条件等の表示の適正を確保するための措置(法第3条第1項第2号)
    • 基本的な取組:消費者が苦情の申出を行いやすい仕組みを設けること、消費者から苦情の申出を受けた場合に取引DPF提供者が当該苦情に係る事情の調査を行うこと
    • 望ましい取組の例:消費者からの苦情の申出の受付、関係者への照会等、不適正な表示が行われた場合の対応に関し、それぞれ取組を例示するとともに、前段階として販売条件等の表示に関するルールの設定についての取組も例示
    • 販売業者等の特定に資する情報の提供を求める措置(法第3条第1項第3号)
    • 基本的な取組:販売業者等の表示について問題のおそれのある事例に接した場合にその特定に資する情報の提供を求めること
    • 望ましい取組の例:アカウント登録時等に販売業者等の公的書類の提出を受ける、販売業者等の氏名又は名称が登録された銀行口座と一致しているか確認、商品の販売等に許認可等が必要な場合は許認可等を受けた旨の証明書の提出を受ける、取引の過程で登録情報と異なる情報に接したときは事実確認を行い、正しい情報の記載を求めることなどを例示
    • 開示についての基本的な考え方(法第3条第2項)
    • 消費者からの連絡手段、苦情申出の方法、販売業者等を特定する情報の真正性の確保に係る取組等の開示が考えられる(開示の内容)
    • 各取引DPF上の開示のほか、事業者団体のホームページで各取引DPF提供者の措置を表示することも考えられる(開示の場所)
  • 消費生活相談件数は約90万件前後で推移しており、そのうち「通信販売」の相談件数の割合は約3~4割で推移している。
  • 国、都道府県ともに「訪問販売」に係る行政処分の割合が高く、過去5年間の平均では、国が平均44.8%、都道府県が約80.4%の割合となっている。
  • 例年、不実告知・事実不告知に対する行政処分が多いが、近年、再勧誘違反に対する行政処分も一定数存在している。
  • 消費生活相談件数のうち店舗購入を除く相談件数は、約40万~50万件前後で推移し、法改正及び執行件数との明確な相関関係は認められない。
  • 訪問販売における相談件数の減少は、市場規模の減少の影響が大きい可能性がある。
  • 連鎖販売取引においては、法改正後の市場規模の変化が少ないことを踏まえると、法改正及び執行件数の上昇が、相談件数の減少に寄与している可能性がある。
  • 年度ごとの行政処分事案数における連携共同事案の割合は過去5年間で増加し続けており、複雑な事案が増加している。
  • 過去5年間に国から特定商取引法に基づく行政処分を受けた事業者のうち、行政処分を過去に1回以上受けた事業者(累犯)は、9事業者 過去5年間に特定商取引法に基づく行政処分全体における累犯の割合は、約8.5% 平成28年改正による業務禁止命令の導入及び令和3年改正による業務禁止命令の対象範囲拡大以降も依然として社名を変えて繰り返し特定商取引法違反行為が行われている。
  • 執行人員1人当たりの年間平均処分件数は1.4件。端緒件数に比して執行人員が不足。
  • ウェブサイト広告
    • 【事案の概要】
      • ウェブサイトにおいて一方的に配信される広告に誘引され取引を行う。
      • 取引の重要事項が瞬時に消え画面展開する。
      • 取引の容易性から難解な規約や海外事業者であっても気づかず取引を行う。
      • 不特定多数が閲覧することができ被害が広域に及ぶ。
    • 【執行の困難性】
      • 広告、規約等の改変が容易にできるため、定点観測が必要となる。
      • 複数のIPアドレスやアカウントを持つことが容易であり、プラットフォーム数が膨大にあることから事業者の特定が困難。
  • パーソナライズド広告
    • 【事案の概要】
      • 消費者の属性やウェブサイト閲覧履歴などのデータを基に消費者に関連性のある広告が配信され、その広告に誘引され取引を行う。
    • 【執行の困難性】
      • 消費者の属性等に基づいた広告であるため、消費者が閲覧した広告と同一の広告へアクセスし、広告を特定することが困難。
  • 取引DPF消費者保護法に基づく要請を行った案件
    • 電動のこぎりのPSEマークの表示に係る案件
      • PSEマークとは、電気用品安全法により国が定めた流通前の規制(事業届出、技術基準適合等)を満たす製品に対して表示することができるマーク。
      • 販売業者は、対象製品につき、PSEマークが付されていなければ、当該製品を販売してはならない。
      • 電気用品安全法の要件を満たしていないにもかかわらず、PSEマークをインターネット上に表示して電動のこぎりを販売。
      • 当該商品が販売されていたオンラインモールを運営する取引DPF提供者に対し、当該商品の削除を要請(令和4年9月)。
    • 「点痣膏」と称するクリームの表示に関する案件
      • ほくろ等が取れるという海外製の「点痣膏」と称するクリーム(以下「点痣膏」)による事故情報について独立行政法人国民生活センターが注意喚起を実施(令和5年12月)。
      • 「点痣膏」は強アルカリ性、皮膚に付着すると重篤な皮膚障害を生じるおそれ。
      • 注意喚起後、海外に所在する者が運営する取引DPF上で「点痣膏」を販売する者(中国に所在)を確認。(※)当該出品者は、数百点の商品を販売しており、新品と見られる商品も相当数あり。また、当該出品者が販売する「点痣膏」は、日本語及び英語が混在する状態で表示され、日本語による購入手続が可能。
      • 当該出品者は、上記の注意喚起のとおり、安全性に問題がある商品にもかかわらず、「安全であり子どもも使用可能である」旨の表示とともに「点痣膏」を販売。
      • 「点痣膏」が販売されていたオンラインモールを運営する取引DPF提供者に対し、当該商品の表示の削除等を要請(令和6年4月)。
  • 相談内容の具体例(通信販売)
    • 詐欺的定期購入商法/リテラシーの向上が望まれる事例
      • 昨日の夜、息子に頼まれて、自分のスマホから980円のヒゲ・ムダ毛対策用のローションをネット注文した。注文してからよく見ると、980円というのは初回だけで、2回目以降は6,000円もする定期購入のコースだと分かった。クレジットカード決済で既に注文してしまったが、高額なのでやはり解約したい。商品はまだ届いていない。定期購入は6回のコースとなっている。相手にはまだ連絡していない。どのようにしたらよいか。
    • 解約の電話がつながらない/解約方法が電話に限定される
      • 初回無料で定期購入なのは分かっていた。初月で解約すると定価精算になるので2回目を受け取ってから解約しようと思っていた。2回目を受け取って1週間後から解約しようと思い電話をかけているがつながらず3回目の商品が届いてしまった。
    • 詐欺的な広告の可能性/リテラシーの向上が望まれる事例
      • 会員制SNSのプロモーションで出てきた初回10円の広告につられ、ダイエットサプリをお試しのつもりで申し込んだ。支払い方法はコンビニ後払いで、あらかじめ定期購入と表示があったのは気づいていたが、申込内容をよく確認しなかったので、一回きり、10円で買えるものと誤解したまま契約してしまった。先月末2回目分が届き、2週間ごとに届く6回の基本コース、半年で17,184円の定期購入を申し込んでいたと初めて気づいた。
    • リテラシーの向上が望まれる事例
      • 先日、未成年の友人に「インターネット通販で初回90%オフの美肌クリームを買いたいのでクレジットカードを貸して。」と言われ、自分名義のクレジットカード番号を教えた。ところが定期購入になっていることが分かり、2回目以降の商品代金が高額になった。友人には1回だけの注文を条件にカード情報を教えたので、自分には支払い義務はないと判断してよいか。友人が注文したのでサイト名や商品名は分からない。
    • 消費生活センターへの要望
      • A回転すしを利用している。チラシや店内の注文ボードの写真と実物が全然違う。あまりに違い過ぎている。実際に客に出す写真を出せばいい。出さない商品の写真を出すのは、詐欺と同じだ。店に何回も苦情を言っても変わらない。今の時代はSNSもあり、消費者も泣き寝入りはしていられない。このような行為を許してはおけない。貴センターにA回転すしへの行政指導を要望する。
    • 消費生活センターへの情報提供
      • 「証券会社の○○です。良いお知らせがあります」とメッセージアプリを追加するようスマホにSMSが届いた。情報提供するSNSの使用方法等に関する相談事例会員制SNSのアカウントのパスワードを忘れログインができなくなった。新たなアカウントを作ると削除される。ログインできないのであれば、今までのもの全て削除してほしい。
    • 詐欺と思われる事例/リテラシーの向上が望まれる事例
      • ミニブログで「年末お年玉企画」とお金を配っている人がいたので、いいねをするとDMが届いた。くじ引きのようなURLがあったのでタップすると、メッセージアプリに登録になった。そのメッセージアプリ上でくじを引くと、3億円当たった。信用できるかどうか疑問に思いながらも、本当だったらラッキーだと思っていた時に、チャットで「政府公認非課税くじ」だと聞いて、信用できると思った。事務手数料として5,000円必要と言われ、コンビニで電子マネーを購入して支払った。その後1万5,000円、2万5,000円と事務手数料を請求されて支払ったが、一向に3億円は振り込まれず詐欺ではないかと思った。

消費者庁 第9回食品ロス削減推進会議
▼ 資料1_食品ロスの削減の推進に関する基本的な方針の改定の考え方(案)(概要)
  • 食品ロス削減に係る背景とこれまでの取組
    • 世界では、2015年に国連で採択されたSDGs(持続可能な開発目標)において、2030年までに小売・消費レベルにおける世界全体の一人当たりの食料の廃棄を半減させる目標を設定。
    • 我が国では、2000年に「循環型社会形成推進基本法」及び「食品循環資源の再生利用等の促進に関する法律」が制定され、食品ロス削減を推進してきたが、SDGsの国際目標の達成に向け、2019年に議員立法によって「食品ロスの削減の推進に関する法律」を制定。
    • 「食品ロスの削減の推進に関する法律」に基づき、2020年3月末に「食品ロスの削減の推進に関する基本的な方針」を閣議決定。事業系食品ロス及び家庭系食品ロスそれぞれで、2000年度比で2030年度までの半減目標を設定。
    • 今般、昨年末関係省庁で取りまとめた「食品ロス削減目標達成に向けた施策パッケージ」に基づき、未利用食品等の提供(食品寄附)の促進に向けたガイドライン策定、食品事業者による食品ロス削減の取組の開示促進、食品の期限表示の見直し、デコ活等も活用した消費者の行動変容の推進等を実施しており、年度末の基本方針の5年後見直しへ反映する。
  • 食品ロスの削減の推進に関する基本方針の見直し
    • 食品ロス削減・食品寄附を巡る現状
      • 直近(2022年度)の食品ロス量は、事業系食品ロスは236万トン・家庭系食品ロスは236万トンであり、いずれも着実に減少。
      • 特に事業系食品ロスについては、半減目標(2030年度までに273万トン)を達成。家庭系食品ロスは半減目標(2030年度までに216万トン)まであと20万トン。
      • これらの食品ロス量(事業系・家庭系の合算)の経済損失の合計は4.0兆円以上
      • 物価高騰や物流の2024問題、食品流通等におけるAI活用やDX、食料安全保障や食品アクセスの確保など、前回の基本方針の制定時から社会情勢が変化。
      • 食品寄附は、食品ロス削減とともに、こども食堂や生活困窮者などへの支援にも繋がる。こども食堂数はコロナ禍において大きく増加。フードバンク団体活動数も増えているものの、我が国の食品寄附の量は、海外と比較して著しく低い水準であり、フードバンクへの食品寄附等に対する潜在的な需要が十分に想定される。
    • 基本方針の改定の考え方
      • 「食品ロス削減目標達成に向けた施策パッケージ」において2024年度中に実施されることとなっている施策の進捗を踏まえて施策の拡大を図ること。
      • 物流問題や人手不足等の社会変化や、DX・AIといったイノベーションを契機とした、ベンチャーやスタートアップを含む多様なプレイヤーによる取組の支援や、アジアや国際社会をリードできるような施策の推進を図ること。
      • 政府において、食品ロスの削減、食品寄附の促進、食品アクセスの確保を一元的に発信し、福祉等とのシナジーを図るとともに、地域においても、地方自治体や事業者、福祉団体及びNPO等の連携体制を構築し、総合的な取組の促進を図ること。

消費者庁 「低価格・高リスク」の非純正バッテリーに注意~建物が全焼に至った火災も~
  • 近年、繰り返し充電して使用できる「リチウムイオン電池搭載製品」は、私たちの生活に欠かせないものとして普及が進んでいます。その一方で、安価で入手しやすい「非純正バッテリー」で火災を伴う事故が多く発生しています。これを踏まえ、非純正バッテリーに潜むリスクをお伝えします。
  • 概要
    • 2014年から2023年までの10年間に収集された製品事故情報では、非純正バッテリーによる事故は235件ありました。事故のほとんどが火災事故(235件中227件)に発展し、中には建物が全焼する事故も発生しています。
    • バッテリーには可燃性の電解液が含まれており、一度発火すると大きな火災に発展するおそれがあります。非純正バッテリーは純正品に比べて”低価格”のものも多いですが、これらの中には安全対策や品質管理が不十分な”高リスク”のものが潜んでいることを認識しましょう。
  • 気を付けるポイント
    • 非純正バッテリーが抱えるリスクについて理解する
      • 設計に問題があり、異常発生時に安全保護装置が作動しない場合がある。
      • 品質管理が不十分で、通常の使用であっても事故に至る場合がある。
      • 事故が発生した際に、事業者の対応や補償を受けられない場合がある。
    • メーカーからのお知らせ及びリコール情報を確認する
      • バッテリーを取り付ける機器本体のメーカーのホームページに非純正品に関する注意喚起が掲載されているか確認する。
      • 使用しているバッテリーがリコール対象ではないか確認する。

消費者庁 「火災保険を使って実質的に無料で修理ができる」などとうたい、火災保険金を利用した修理工事契約を締結させる事業者に関する注意喚起
  • かねてから、保険金を使って住宅の修理を行う、保険金の請求サポートをするなどとして消費者を勧誘する事業者に関する相談があったところ、令和5年4月以降、消費者宅に電話がかかってきて、「自宅を無料で点検できる」、「火災保険で軒どい等の修理ができる」などと説明され、消費者宅に訪問して無料点検を実施された後、損傷箇所について「このままだと雨漏りをしてしまう可能性が高い」などと自宅の修理が必要であることや火災保険金を使って実質的に無料で修理工事が可能であると説明されたため、火災保険金を利用した自宅の修理工事契約を締結したが、不審であるなどという相談が各地の消費生活センターなどに多く寄せられています。
  • 消費者が、住宅の損害が経年劣化によるものだと知りながら、自然災害による損害であるかのように、うその理由で保険金の支払を請求すると、保険会社から保険金の返還請求や保険契約の解除をされたり、詐欺罪に問われたりすることがあることから、消費者庁が調査を行ったところ、天建と称する事業者(以下「本件事業者」といいます。)が、消費者の利益を不当に害するおそれのある行為(不実告知)を行っていたことを確認したため、消費者安全法(平成21年法律第50号)第38条第1項の規定に基づき、消費者被害の発生又は拡大の防止に資する情報を公表し、消費者の皆様に注意を呼びかけます。
  • また、この情報を都道府県及び市町村に提供し、周知します。

【2024年6月】

消費者庁 令和6年版消費者白書
▼ 【概要】令和6年版消費者白書
  • 消費者庁に通知された消費者事故等に関する情報の集約及び分析の取りまとめ結果
    • 2023年度に消費者庁に通知された消費者事故等は1万6,298件。
    • 内訳は、消費者安全法第12条第1項等の規定に基づき通知された重大事故等が1,658件。同法第12条第2項等の規定に基づき通知された消費者事故等が1万4,640件。
    • このうち、「生命身体事故等」が5,635件、「財産事案」が1万663件。
  • 消費生活相談の概況
    • 2023年の消費生活相談件数は約90.9万件で、前年より増加。また、架空請求に関する相談件数は約1.6万件と、直近20年で最少となった。
    • 商品・サービス別では、迷惑メールや不審な電話を含む「商品一般」に関する相談が最多。
  • 消費生活相談のトピックス
    • 成年年齢引下げ前後で18歳・19歳の相談件数の大幅な変化はみられないが、2022年に引き続き、「脱毛エステ」の相談が多くみられた。四半期別にみると、生活環境が大きく変化する4月から6月までの期間に相談件数が多くなる傾向。
    • 通信販売の「定期購入」に関する2023年の相談件数は9万8,101件で、前年より増加。2023年1月から3月までは各月1万件を超えたものの、6月以降は約5,500件から6,500件程度で推移。
    • SNSが関係する2023年の相談件数は8万404件で、前年より増加。幅広い年齢層からの相談がみられ、特に、50歳代、60歳代及び70歳以上の相談件数は、前年と比較して大きく増加。
  • 消費者被害・トラブルの経験と被害・トラブル額の推計
    • 2023年の消費者被害・トラブル推計額(既支払額(信用供与を含む。))は約8.8兆円と前年より増加。
    • 増加要因として、以下が影響していると考えられる。
    • 消費者被害やトラブルについて、推計した発生確率が上昇→被害金額が1万円以上の案件では、脱毛エステを含む「保健サービス」や、化粧品を含む「保健衛生品」等の相談件数が増加。→被害金額が1万円未満の案件においては、「外食・食事宅配」や、玩具を含む「教養娯楽品」等の相談件数が増加。
    • 被害金額1万円以上の案件について、被害1件当たりの平均既支払額が上昇。
  • 変化する取引環境と消費者~デジタル社会と消費者の脆弱性~
    • 消費者概念の変化
      • 現在の消費者法制度では「一般的・平均的・合理的」な消費者を前提としている。→しかし、現実の消費者は常に合理的な判断ができるとは限らない(消費者が有する脆弱性)。
    • 取引環境の変化
      • 近年、デジタル化や高齢化、国際化の進展によって、消費者を取り巻く取引環境が変化。→その中でも、オンライン取引の増加やAI技術の進展等、デジタル化の進展に伴い取引環境は変化し、消費者の利便性が高まる一方、消費者の脆弱性が顕在化しやすくなる可能性も指摘されている。→本年度の消費者白書では、上記課題にも鑑み、消費者の脆弱性に関する近年の議論と、デジタル化の進展した社会における課題に着目し、特集テーマとして取り上げた。
  • 消費者の脆弱性
    • 消費者には様々な脆弱性があり、一部の消費者だけが脆弱性を有するのではなく、誰しもが脆弱な消費者となる可能性がある。
    • 自身の年齢や経済状況等といった「特徴」(類型や属性)を理由に弱い立場にあると感じた人は約5割、自身が置かれた「状況」によって合理的に考えることが難しいと感じた人は約8割。
    • 多くの人が脆弱性を経験しており、また、デジタル社会ではこれらの脆弱性が顕在化しやすくなる可能性について指摘されている。
  • デジタル社会における課題と変化
    • 消費者を意図しない行動に誘導する仕組み
      • 消費者は、商品やサービスを選択する際の環境から影響を受けることがあり、近年、オンライン取引上には、消費者を意図しない行動に誘導する仕組みが存在している。
      • OECDでは、これを「ダーク・コマーシャル・パターン」と呼称し、「消費者を誘導し、欺き、強要し又は操って、多くの場合、消費者の最善の利益とはならない選択を消費者に行わせるものである」としている。また、消費者の自律性への影響や、経済的な損失、プライバシーに関する被害、心理的な被害や時間的な損失等のおそれがあるとしている。
    • AI技術の進展とその影響
      • AI技術の進展によって、ウェブサイトの閲覧履歴等から、消費者を分析し行動や趣味嗜好を予測することが容易となっており、様々なサービスで個々の消費者に合わせた情報提供を可能にしている。
      • 「おすすめ」が表示される機能は便利だと感じる人が約4割いる一方で、事業者の都合で提案をされていると感じた人は約7割、必要以上の情報を収集されていると感じる人は約8割。
      • AI技術による情報の個別化は、個々の消費者に合わせて有用である可能性が高い情報を絞り込むといった利便性の向上に資する一方、様々な課題もある。
      • 消費者を最善の利益とはならない選択に誘導し、消費者に経済的な損失、プライバシーに関する被害、心理的な被害等を与える可能性
      • 事業者と消費者の情報処理能力の非対称性による情報格差の拡大
    • 消費者を取り巻く取引環境の変化
      • 消費者が提供する情報、費やす時間、示す関心は、デジタル社会においては重要な資源と捉えることができ、消費者は、金銭を支払うだけではなく、事業者に情報・時間・関心を提供する存在であると考えられるようになっている。
      • また、デジタル機器の普及によって、シェアリングエコノミーの普及が進み、消費者が売手となるような取引形態が広がりつつあったり、ソーシャルメディアの出現によって、消費者が情報を発信し、他の消費者の購買行動に影響を与えるようになっている。
      • デジタル化の進展に伴う消費者を取り巻く取引環境の変化は、消費者の行動に影響を及ぼし、消費者の果たす役割の重要性やその影響力も変化しつつあると考えられる。

消費者庁 「令和5年度消費者意識基本調査」の結果について
▼ 2調査結果の概要
  • 現在の生活への満足度を聞いたところ、「満足(『満足している』+『どちらかといえば満足している』)」の割合は62.6%となっている。一方、「不満(『どちらかといえば不満である』+『不満である』)」の割合は36.0%となっている。
  • 現在の生活の程度を聞いたところ、「上」の割合が1.6%、「中の上」が14.9%、「中の中」が48.6%、「中の下」が26.9%、「下」が6.6%となっている。
  • 商品・サービス購入時の情報源について聞いたところ、「テレビ・ラジオ」の割合が74.0%と最も高く、次いで「家族・友人・知人」(66.5%)、「インターネット記事やブログ」(61.3%)の順となっている(複数回答)。商品・サービス購入時の情報源について、一人当たりの回答した個数をみると、「5個」の割合が18.3%と最も高く、平均個数は5.3個となっている。
  • 商品・サービス購入時に重視する情報源を最大3つ聞いたところ、「家族・友人・知人」の割合が36.1%と最も高く、次いで「インターネット記事やブログ」(29.9%)、「テレビ・ラジオ」(27.2%)の順となっている。
  • 普段、パソコンやスマートフォン等でインターネットをどの程度利用しているか聞いたところ、「利用している(『ほとんど毎日利用している』+『毎日ではないが定期的に利用している』+『時々利用している』)」の割合は80.1%となっている。一方、「ほとんど・全く利用していない」の割合は18.7%となっている。
  • 「当てはまる(『とても当てはまる』+『ある程度当てはまる』)」の割合が高い順にみると、「インターネット上の口コミや評価が高い商品を選ぶ」が70.1%と最も高く、次いで「評価の点数が高くても、否定的な口コミを見て購入をためらうことがある」(63.9%)、「レビュー(購入者の評価)の件数が多い商品を選ぶ」(50.6%)の順となっている。
  • 「いずれかに反応したことがある(『「お気に入り」や「いいね」や「高評価/低評価」をつけたことがある』、『「リツイート」や「リポスト」や「シェア」をしたことがある』又は『投稿やコメントをしたことがある』)」の割合は47.9%となっている。一方、「1~3の反応をしたことはない」の割合は40.3%、「SNSや口コミサイト、動画サイト等を利用したことがない」の割合は9.7%となっている。
  • ステルスマーケティングが違法となったことを知っているか聞いたところ、「知っている」の割合が27.1%、「知らなかった」の割合が65.3%となっている。
  • インフルエンサー等の投稿で「PR」等の表示を見た経験について聞いたところ、「見たことがある」の割合が43.7%、「見たことはない」の割合が17.7%、「分からない・覚えていない」の割合が30.7%となっている。
  • 自身の投稿が広告であることを明示する投稿者は明示しない投稿者に比べて信頼できるか聞いたところ、「そう思う(『とてもそう思う』+『ある程度そう思う』)」の割合は63.0%となっている。一方、「そう思わない(『あまりそう思わない』+『ほとんど・全くそう思わない』)」の割合は13.9%となっている。
  • 「当てはまる(『とても当てはまる』+『ある程度当てはまる』)」の割合が高い順にみると、「簡単に登録ができるのに、解約が複雑で難しいと感じることがある」が68.8%と最も高く、次いで「『残りわずか』等、売り切れ間近のような表示を見ると、購入を急がなければいけないと感じる」(46.3%)、「解約方法が電話限りなのに、つながらないことがある」(42.6%)の順となっている。
  • 自分に合わせた情報が優先的に表示されることを知っているか聞いたところ、「知っている」の割合が76.4%、「知らなかった」の割合が19.3%となっている。
  • 「当てはまる(『とても当てはまる』+『ある程度当てはまる』)」の割合が高い順にみると、「自分の情報がどこまでAIに使われるかは自分で決めたいと思う」が84.1%と最も高く、次いで「AIの活用のために、必要以上の情報を収集されていると感じる(位置情報、履歴、趣味・嗜好等)」(77.5%)、「自分に適した情報が表示されていると感じる」(72.0%)の順となっている。
  • 「当てはまる(『とても当てはまる』+『ある程度当てはまる』)」の割合が高い順にみると、「世間一般に向けた情報も見たいと思う」が73.7%と最も高く、次いで「興味のある情報ばかり見ていて、自分の視野が狭まっていると感じる」(52.8%)、「自分の興味がない情報を、目にする機会が減ったと思う」(50.8%)の順となっている。
  • デジタルプラットフォーム上での商品・サービスの購入や出品等の利用経験を聞いたところ、「利用したことがある」の割合が60.7%、「利用したことはない」の割合が35.1%となっている。
  • 「フリマサイト(アプリ)やオークションサイト」で「出品したことがある」の割合は37.6%、「出品したことはない」の割合は62.4%となっている。「シェアリングサービス」で「出品したことがある」の割合は0.9%、「出品したことはない」の割合は97.4%となっている。
  • 購入や出品で利用したことがあるものを聞いたところ、「オンラインモール」の割合が79.6%と最も高く、次いで「フリマサイト(アプリ)やオークションサイト」(59.3%)、「シェアリングサービス」(4.3%)の順となっている。
  • オンラインモールを利用する理由について聞いたところ、「品揃えが豊富」の割合が88.4%と最も高く、次いで「店頭に行く手間が省ける」(86.3%)、「24時間利用できる」(85.4%)の順となっている。
  • フリマサイト等を利用する理由について聞いたところ、「安価に購入・利用できる」の割合が76.7%と最も高く、次いで「24時間利用できる」(59.7%)、「店頭に行く手間が省ける」(53.8%)の順となっている。
  • シェアリングサービスを利用する理由について聞いたところ、「必要な時にだけ利用できて経済的」の割合が63.8%と最も高く、次いで「そのサービスでしか購入できない(利用できない)ものがある」、「安価に購入・利用できる」が共に50.0%となっている。
  • オンラインモールを利用する際の不安や不満について聞いたところ、「現物を手に取って確認することができない」の割合が76.1%と最も高く、次いで「商品説明や口コミ・レビュー(評価)に虚偽や誇張が含まれている」(50.8%)、「個人情報の取扱いなどのセキュリティ面が心配」(44.2%)の順となっている。
  • フリマサイト等を利用する際の不安や不満について聞いたところ、「現物を手に取って確認することができない」の割合が67.6%と最も高く、次いで「商品の安全性や衛生面の確認がしづらい」(58.1%)、「粗悪品や不良品、偽物が届く」(44.6%)の順となっている。
  • シェアリングサービスを利用する際の不安や不満について聞いたところ、「個人情報の取扱いなどのセキュリティ面が心配」の割合が31.0%と最も高く、次いで「商品の安全性や衛生面の確認がしづらい」(29.3%)、「利用規約や個人情報規約の内容が分かりにくい」、「問い合わせ窓口が分かりにくい」が共に27.6%の順となっている。
  • この1年間にオンラインモールで遭遇したトラブルを聞いたところ、「不良品・粗悪品・偽物だったり、注文したものと違うものが届いたりした」の割合が19.5%と最も高く、次いで「商品が送られてこない・遅配された・誤送された」(12.6%)の順となっている。一方、「上記のトラブルに遭ったことはない」の割合は64.1%となっている。
  • この1年間に遭遇したトラブルのうち経験があるものを聞いたところ、「電話番号やメールアドレス等の連絡先が見つけづらかった/見つからなかった」の割合が28.6%と最も高く、次いで「どこに相談すればいいかわからなかった」(27.5%)、「トラブル対応に時間がかかった」(26.6%)の順となっている。
  • この1年間にオンラインモールでトラブルに遭遇した人(749人)に、トラブル時に問い合わせた先を聞いたところ、「オンラインモール運営事業者」の割合が50.7%と最も高く、次いで「販売事業者」(44.3%)、「商品の製造元、サービスの提供元」(15.2%)の順となっている。
  • この1年間にオンラインモールでトラブルに遭遇した人(749人)に、納得のいく解決ができたかを聞いたところ、「納得のいく解決ができた」の割合は58.1%、「納得のいく解決ができなかった」の割合は40.3%となっている。
  • この1年間に実店舗で遭遇したトラブルを聞いたところ、「不良品・粗悪品・偽物だった」の割合が4.9%と最も高くなっている。一方、「上記のトラブルに遭ったことはない」の割合は86.1%となっている。
  • この1年間に遭遇したトラブルのうち経験があるものを聞いたところ、「店舗の対応が不誠実だった」の割合が21.6%と最も高く、次いで「どこに相談すればいいかわからなかった」(20.5%)、「トラブル対応に時間がかかった」(18.4%)の順となっている。
  • この1年間に実店舗でトラブルに遭遇した人(185人)に、トラブル時に問い合わせた先を聞いたところ、「購入した店舗」の割合が65.4%と最も高く、次いで「商品の製造元、サービスの提供元」(34.1%)の順となっている
  • この1年間に実店舗でトラブルに遭遇した人(185人)に、納得のいく解決ができたかを聞いたところ、「納得のいく解決ができた」の割合は50.3%、「納得のいく解決ができなかった」の割合は49.2%となっている。
  • 購入時に合理的に考えることが難しいと感じた状況について聞いたところ、「契約内容が複雑だったとき」の割合が63.0%と最も高く、次いで「十分に考える時間がなかったとき」(52.7%)、「事業者から示された情報が少なかったとき」(45.6%)の順となっている。
  • 購入時に弱い立場に置かれたと感じた理由について聞いたところ、「自身の年齢によるもの」の割合が25.1%と最も高く、次いで「自身の経済状況によるもの」(21.3%)の順となっている。一方、「弱い立場に置かれたと感じたことはない」の割合は47.7%となっている。
  • トラブルや被害に遭う不安の程度について聞いたところ、「不安を感じる(『非常に不安を感じる』+『不安を感じる』+『少し不安を感じる』)」の割合は72.5%となっている。一方、「不安は感じない」の割合は15.2%となっている。
  • トラブルや被害に遭う不安を感じる理由について聞いたところ、「法律や契約に関する知識が乏しいため」の割合が67.9%と最も高く、次いで「専門的な知識が必要なものは、自分で判断しにくいため」(63.8%)、「情報があふれていて、正しい情報を判断しにくいため」(53.2%)の順となっている。
  • 自分自身が購入した商品、利用したサービスについて、「ある」の割合が高い順にみると、「商品の機能・品質やサービスの質が期待よりかなり劣っていた」が16.3%と最も高く、次いで「表示・広告と実際の商品・サービスの内容がかなり違っていた」(11.0%)の順となっている。他の6項目はいずれも5%未満となっている。

消費者庁 大手通信関連会社の名称をかたり、自動音声や国際電話番号等を用いて架空の利用料金請求を行う事業者に関する注意喚起
  • 大手通信関連会社の名称をかたり、自動音声や国際電話番号等を用いて架空の利用料金請求を行う事業者に関する注意喚起を行いました。
  • 詳細
    • 令和5年7月以降、消費者の携帯電話等に、大手通信関連会社の「NTTファイナンス」又は「NTT」の名称をかたり、国際電話番号等から自動音声ガイダンスや着信があるほか、SMSによるメッセージで、「未納料金があります」などと何らかの料金が未納であるかのように告げられたため、消費者が、自動音声ガイダンスの案内に従って携帯電話を操作したり、指定の電話番号に折り返すと、会員サイトやアプリケーションの利用料金名目で「支払われていない」、「このまま支払わないと裁判になる」などと説明され、プリペイド型電子マネーによる支払を請求された、といった相談が各地の消費生活センター等に数多く寄せられています。
    • 消費者庁が調査を行ったところ、上記行為を行う事業者が、消費者の利益を不当に害するおそれのある行為(消費者を欺く行為及び消費者を威迫して困惑させる行為)を行っていたことを確認したため、消費者安全法(平成21年法律第50号)第38条第1項の規定に基づき、消費者被害の発生又は拡大の防止に資する情報を公表し、消費者の皆様に注意を呼びかけます。
    • また、この情報を都道府県及び市町村に対し提供し、周知します。

消費者庁 第2回公益通報者保護制度検討会
▼ <資料7>効果的な公益通報者保護のためのG20ハイレベル原則
  • 効果的な公益通報者の保護、及び保護対象となる通報の取扱いは、清廉性を促進し、腐敗を防止する上で中心的な役割を果たす。公益通報者は、他の方法では検出されないであろう情報を明らかにするという重要な役割を果たし、汚職の防止、検出、調査、訴追の改善につながる。通報が促進されず、保護されていない環境では、汚職のリスクが高まる。
  • 効果的な公益通報者保護の必要性は、既に国際的及び地域的な文書において認識されている。しかし、これら基準の実施状況は国によって大きく異なる。公益通報者保護のための法律を有している国がある一方、多くの国では制度が不十分であるか存在していない。その結果として生じる断片的なアプローチは、予測可能性の欠如と、保護制度の基礎となる保護の範囲と目的に関する一般的な誤解につながり、最終的には公益通報者による情報開示を妨げ、G20諸国における汚職防止法の効果的な執行を損なうことになる。
  • 公益通報者の保護は、2019年G20議長国である日本の優先課題であり、「ベストプラクティス、実施上のギャップ、および、適切な場合には可能性のある更なる保護措置を評価し、特定する」ためのG20汚職防止作業部会(ACWG)の2019年-2021年行動計画に対応することを目的としている。この問題は、2011年のソウルサミット以来のG20諸国のアジェンダの先頭に立つものだった。2011年のG20リーダーによる呼びかけに応えて、ACWGはOECDに対し、「公益通報者保護の枠組みに関する調査と、ベストプラクティスの大要と立法のための指導原則の作成」の準備をするよう命じた。
  • G20各国による支持を受け、日本議長下において策定された本ハイレベル原則は、国連を含む国際的及び地域的枠組における既存の基準及びグッドプラクティスに立脚している。本ハイレベル原則は、効果的な公益通報者保護を確保するために協働する重要性を再確認する。また、本ハイレベル原則は、G20各国において、公益通報者保護のための効果的な制度を整備し、実施するための基盤をなすものであり、G20各国が講じるべき法制的、政策的手段を網羅的にリスト化することを意図したものではない。
  • これに関連して、G20諸国も公益通報に関連するジェンダー特有の側面を調査する必要性を認識した。
  • 以下のハイレベル原則は、前述の調査に基づいており、公益通報者に対する保護の枠組み、法律、政策を確立、修正、強化しようとしている国々の参考となり、既存の汚職防止の取組みを補完し、それを弱めたり置き換えたりするものではない。これらの原則は各国が公益通報者保護の枠組みを評価するのに役立つ可能性がある。これらの原則を補足するために、グッドプラクティスに関する非包括的なメニューが開発され、各国がフォローすることを選択できる、より具体的で技術的なガイダンスが提示される。
  • ハイレベル原則は、各国がそれぞれの法的慣習に従って効果的に適用できるようにする柔軟性を提供する。この原則はまた、国の公共部門、国内の法制度と一致する公共部門、また準ずる国内レベル、および必要に応じて民間部門における公益通報者保護の枠組みを設定および運用する責任者に指針を提供することができる。ハイレベル原則では、「公益通報者」という用語がG20の文脈で長年使用され広く理解されているため、使用されている。ハイレベル原則の目的上、「公益通報者」という用語は、以下の原則2~4でさらに規定されているように、国連腐敗防止条約(UNCAC)第33条に記載されている「通報者」という用語と同等である。ハイレベル原則は、1)法的枠組み、2)保護対象となる通報の範囲、3)保護対象となる通報の手順、4)報復に対する救済策と効果的な保護、5)法的枠組みの効果的な執行と自己評価、の5つの中核的な柱に焦点を当てている。
  • 原則1:公益通報者保護のための明確な法及び政策を整備し、実施する。
    • G20諸国は、公益通報者を保護するための明確な法律と方針を制定し、実施する必要がある。必要に応じて、G20諸国は、そのような保護に特化した法律の採択を検討すべきである。
    • G20諸国はまた、保護を確立し実施するよう組織を奨励し、これらの保護の要素に関する指針を提供すべきである。
  • 原則2:保護対象となる通報の範囲を、広範かつ明確に定義する。
    • G20諸国は、保護対象となる通報に関し、広範かつ明確な不正行為の定義を採用するよう努めるべきである。ハイレベル原則の範囲と目的を念頭に置き、G20諸国は、保護対象となる通報に適用できる限定的な例外につき明確に指定することが奨励される。意図的な不正行為の隠蔽を示す傾向にある情報の開示も保護されるべきである。
  • 原則3:可能な限り広範な通報者に保護を提供する。
    • G20諸国の保護の枠組みは、契約関係の性質に関わらず、可能な限り広範な人々、例えば従業員、公務員、労働者にまで広げるべきである。さらに、G20諸国は、守秘義務を伴う雇用状況以外でも、汚職を所管当局に通報した者に対し、適切な保護を提供するよう努めるべきである。
  • 原則4:公益通報者に通報経路を周知し、十分な支援を提供する。
    • 通報を容易にし、信頼を促進するために、G20諸国は、多様で、視認性が高く、容易にアクセスできる通報チャネルを公益通報者に対し確保し、そのチャネルを通じて通報するすべての適格者に保護を広げる必要がある。これには、組織内に設置された内部通報チャネル、法執行機関や他の書簡当局への外部通報チャネルが含まれる。また国内法の枠組みで認められている場合には公の通報も含まれうる。組織は、通報を受け付け、評価し、調査し、行動するために必要な独立性を付与された内部チャネルを設置し、規模に応じて通報に対する信頼を築く組織風土を醸成することが推奨される。内部通報は公共の利益に対するリスクを早期に効果的に解決することに貢献でき、奨励される。
    • 原則2に基づく例外を損なうことなく、G20諸国は、秘密保持契約や退職合意などの雇用契約を含む、契約上、あるいは必要に応じて公務員としての義務が、公益通報者が保護対象となる通報を行うことを妨げたり、保護を否定したり、あるいはそのような通報を行った者に罰則を科したりしないことを確保すべきである。
  • 原則5:公益通報者に関する秘密保持を確実なものとする。
    • G20諸国の保護の枠組みでは、例えば管轄当局による調査や司法手続きなどの国内規則に従って、公益通報者を特定する情報や保護対象となる通報の内容、通報に関係する人物の身元に関する秘密保持を確実なものとする必要がある。
    • 必要に応じて、G20諸国は、通報の受領者と連絡を取りながら、公益通報者が自身の身元を明かさず通報を行うことを認め、支援する方法を検討することもできる。
  • 原則6:公益通報者に対する報復行為を包括的に定義する。
    • 公益通報者に対する報復は、職場での報復や、評判の悪化、職業的被害、経済的被害、社会的被害、精神的被害、身体的損害をもたらす可能性のある行為に限らず、さまざまな形態をとりうる。
    • G20諸国は、保護の枠組みを開発するにあたり、報復の範囲を可能な限り包括的に定義するよう勧告され、法的確実性を高め、保護範囲の不利益な制限を避けるため、公益通報者の保護のきっかけとなる可能性のある報復の種類について、網羅的ではないが包括的なリストを法律で提供し、ガイダンスを提供するよう勧告されている。
  • 原則7:公益通報者に強固かつ包括的な保護が提供されることを確保する。
    • G20諸国は、保護対象となる通報を行った公益通報者があらゆる形態の報復的または差別的行為から保護されることを確保すべきであり、報復的行為の結果として被った直接的および間接的不利益に対処する効果的な救済策を提供することを検討すべきであり、法的手続きの解決が保留中の効果的な暫定的保護を認めることを検討してもよい。
    • G20諸国は、解雇の場合を含め、公益通報者を保護するために、比例した方法で立証責任を負わせるメカニズムの導入を検討すべきである。
    • G20諸国はまた、公益通報者が利用可能な通報チャネルとその利用方法、通報を行った結果として報復が生じた場合に得られる保護、そして報復の疑いに対する救済策を求めるために利用できる手続きが認識できるように、公益通報者に対し利用可能な支援の提供も検討すべきである。
  • 原則8:報復行為を行った者に対し、効果的で、相応かつ抑止力のある制裁を科す。
    • G20諸国は、公益通報者に対する報復行為や守秘義務の違反者した者に対して、効果的で相応かつ抑止力のある制裁を科し、報復した者の地位や立場に関わらず、制裁がタイムリーかつ一貫した方法で科されることを確実にすることを検討すべきである。
  • 原則9:公益通報者が、通報行為に関連して責任を問われることがないよう確保する。
    • G20諸国は、原則4に従ったルートを使用して保護対象となる通報を行う者が、その通報行為に基づいて懲戒手続きや責任の対象とならないことを確保することを検討すべきである。この原則は、通報対象となっている犯罪に関与し、かつ、通報者が通報された情報が正確であると信ずるに足る合理的な根拠を有していなかった場合に通報者の責任を害するものではない。また犯罪協力者の取り扱いに関する国内の規則を害するものでもない。
    • G20諸国は、故意に虚偽であることが判明した公益通報者の通報に対して、相応かつ抑止力ある制裁を検討することができる。必要に応じて、そのような虚偽の通報により損害を受けた人を補償するための措置が講じられる場合がある。
  • 原則10:公益通報者保護制度に関する研修、能力構築、及び啓蒙活動を実施する。
    • G20諸国は、保護対象となる通報や公益通報者に対する社会の認識や態度を変えることを含め、公益通報者を保護するための自国の枠組みについての周知を促進すべきである。
    • 同様に、どこに遡及し支援を求めればよいかの情報も含み、通報の有用性、利用可能な保護された通報チャネル、及び、報復からの保護に関するポリシーの啓蒙を促進すべきである。
    • G20諸国は、公共部門において保護対象となる通報の受領者に適切な研修を提供することを検討し、これらの組織が内部の保護の枠組みを効果的に確立および運用できることを確実にするため、詳細かつ明確なガイドラインを確実に整備する必要がある。
  • 原則11:保護枠組の効果と実施状況を、監視し、評価する。
    • G20諸国は公益通報者保護の枠組みを定期的に見直すことが奨励される。そうすることで、G20諸国は、有効性の評価と改善を行い、保護枠組全体の定期的な監視と評価を行い、汚職通報への影響を含め、体系的に関連するデータ及び情報を収集し、必要に応じて、機密性やプライバシー保護を確保しつつ、そのデータに関し報告を行っていく方法を検討することができる。
  • 原則12:公益通報者保護を主導し、範を示す。
    • G20諸国は、この分野で範を示し、公益通報者保護の枠組みの確立や強化を望む他の国々に技術支援を提供することが奨励される。

消費者庁 医療法人社団祐真会に対する景品表示法に基づく措置命令について
  • 消費者庁は、令和6年6月6日、医療法人社団祐真会(以下「祐真会」といいます。)に対し、同法人が運営する「マチノマ大森内科クリニック」(以下「クリニック」といいます。)と称する診療所において供給する診療サービスに係る表示について、景品表示法に違反する行為(同法第5条第3号(ステルスマーケティング告示)に該当)が認められたことから、同法第7条第1項の規定に基づき、措置命令を行いました。
  • 違反行為者の概要
    • 名称 医療法人社団祐真会(法人番号9010805002735)
    • 所在地 東京都大田区大森西三丁目1番38号マチノマ大森3階
    • 代表者 理事長 河合 剛
    • 設立年月 令和2年3月
    • 資産の総額 9億7103万6116円(令和6年6月現在)
  • 措置命令の概要
    1. 対象役務
      • 祐真会がクリニックにおいて提供する診療サービス(以下「本件役務」という。)
    2. 対象表示
      • ア 表示の概要
        • 表示箇所
          • 「Googleマップ」と称するウェブサイト(以下「Googleマップ」という。)内の祐真会が開設し運営するクリニックの「プロフィール」と称する施設情報を示す表示(以下「プロフィール」という。)における「クチコミ」と称する当該施設の口コミ及び評価を示す箇所(以下「口コミ投稿欄」という。)
        • 表示期間
          • 別表1及び別表2「表示期間」欄記載の期間
        • 表示内容
          • インフルエンザワクチン接種のためにクリニックに来院した者(以下「第三者」という。)に対し、Googleマップ内の祐真会が開設し運営するクリニックのプロフィールにおける口コミ投稿欄のクリニックの評価として「★★★★★」(以下「星5」という。)又は「★★★★」の投稿をすること(以下「本件星投稿」という。)を条件に当該第三者がクリニックに対して支払うインフルエンザワクチン接種費用から割り引くことを伝えたことによって当該第三者が投稿した、別表1及び別表2「表示内容」欄記載のとおりの表示をしている又は表示をしていた。
      • イ 前記アの表示は、表示内容全体から一般消費者にとって事業者の表示であることが明瞭になっているとは認められないことから、当該表示は、一般消費者が事業者の表示であることを判別することが困難であると認められる表示に該当するものであった。
    3. 命令の概要
      • ア 本件役務を一般消費者に提供するに当たり、第三者に対し、本件星投稿を条件に当該第三者がクリニックに対して支払うインフルエンザワクチン接種費用から割り引くことを伝えたことによって当該第三者が投稿した、別表1「表示期間」欄記載の期間に、同表「表示箇所」欄記載の表示箇所における、同表「表示内容」欄記載のとおりの表示をしている行為を速やかに取りやめること。
      • イ 前記(2)アの表示は、前記(2)イのとおりであって、本件役務の取引に関する事項について一般消費者に誤認されるおそれがあるものであり、景品表示法に違反するものである旨を一般消費者に周知徹底すること。
      • ウ 再発防止策を講じて、これを祐真会の役員及び従業員並びにクリニックの医療従事者及び従業員に周知徹底すること。
      • エ 今後、同様の表示を行わないこと。

消費者庁 食品ロスによる経済損失及び温室効果ガス排出量
▼ 報告書(概要)
  • 背景と目的、調査項
    • 令和3年度の我が国の食品ロス発生量は523万トン(食品製造業:125万トン、食品卸売業:13万トン、食品小売業:62万トン、外食産業:80万トン、一般家庭:244万トン)である。
    • 食品ロスの削減の推進に関する基本的な方針(令和2年3月閣議決定)においては、「国民各層がこの問題を「他人事」ではなく「我が事」として捉え、「理解」するだけにとどまらず「行動」に移すことが必要である」ことが基本的な方向として明記されており、食品ロスの削減に向けた消費者一人ひとりの行動変容が求められている。
    • 一方、国による食品ロスの発生状況の評価は「発生量」によるもののみであり、より消費者の行動変容を促すためには、「経済損失」や「温室効果ガス排出量」といった消費者の共感を生む指標も合わせて公表することが望ましい。本業務は、食品ロスによる経済損失及び温室効果ガス排出量の推計を実施し、推計結果を今後の普及啓発に活用することを目的として実施した。
  • 既往研究・既往調査に関する文献調査結果
    • 食品ロスによる経済損失及び温室効果ガス排出量を推計するにあたり、既往の調査で採用された推計手法について、以下のとおり整理した。本調査での活用可否を評価するため、「推計の精緻さ(推計対象、品目別の分析の有無等)」「推計の簡便さ(同様の推計の実施可否、その容易さ)」「データ更新の可否(参照データの更新頻度)」より評価した。なお、日本国内で生じる食品ロスを対象にした推計であることから、日本国内での調査事例4件を調査対象とした。
    • 経済損失については、家庭系・事業系を含む範囲で精緻に推計を行っている事例として、棟居ら(2021)が挙げられた。温室効果ガス排出量については、推計手法の詳細が公開されている事例は少なかった。産業連関分析を要するが、食品を品目別に推計できることから、棟居ら(2021)の文献が参考になると考えられた
  • 推計の概要
    • 経済損失
      • 食品の生産・流通等に伴って発生する経済的価値全体に対して、食品ロスの発生割合を乗じたもの。
      • 経済的価値は、「食品自体の価格」に加え、流通過程で発生する「商業マージン」「貨物運賃」を加えたもの。つまり、廃棄されてしまう食品の入手のために、家庭等の各部門が余分に負担してしまっている金額を指す。
    • 温室効果ガス排出量(GHG排出量)
      • 食品の生産・流通等に伴って発生するGHG排出量全体に対して、食品ロスの発生割合を乗じたもの。
      • GHG排出量の評価範囲は、食品の一連の生産プロセスにおける排出量である。つまり、廃棄されてしまう食品のために、生産・流通する過程で余分に生じてしまっているGHG排出量を指す。(家庭系食品ロスが廃棄・処分される際に直接排出されるGHG排出量は含まれない。)
  • 食品ロスによる経済損失及び温室効果ガス排出量の推計結果
    • 推計の結果、食品ロスによる経済損失の合計は4.3兆円、国民一人あたりでは34,341円/人となった。(住民基本台帳の2022年1月1日時点の人口に対する値)
    • 4.3兆円の経済損失は、令和3年の農業・食料関連産業の市場規模と比較すると、農林漁業の12.4兆円の3分の1以上の規模となる。
    • 経済損失は世帯あたりでは年間7.2万円となり、世帯当たりの年間家計支出と比較すると、水道代の5.1万円よりも大きな金額である。
    • 推計の結果、食品ロスによる温室効果ガス排出量の合計は1,138万t-CO2、国民一人あたりでは90kg-CO2/人となった。(住民基本台帳の2022年1月1日時点の人口に対する値)
    • 1,138万トンの温室効果ガス排出は、令和3年の家庭の用途別CO2排出量と比較すると、暖房用の3,310万トンに次いで大きな規模である。

消費者庁 海外の通報者保護制度及び実態に係る調査業務最終報告書
  • はじめに
    • 「海外の通報者保護制度及び実態に係る調査業務最終報告書」(以下「本報告書」という。)は、消費者庁の委託を受けて、TMI総合法律事務所が行ったアメリカ(但し、連邦法に限る。)、イギリス、フランス及びEU加盟国(以下総称して「本調査対象国・地域」という。)における通報者保護制度及び実態に関する調査(以下「本調査」という。)の結果を報告するものである。
    • 我が国では、公益通報者保護法が2004年に制定され、2006年から施行されている。同法においては、公益通報を行ったことを理由とする通報者の解雇や不利益取扱いを禁止するとともに、公益通報に対して事業者や行政機関がとるべき措置が定められている。しかし、公益通報者保護法の制定後も、長期間にわたって法令違反行為が行われたにもかかわらず、適切な通報がなされなかった事例がみられるなど、同法が期待された役割を十分に果たしていないのではないかという懸念があった。そこで、利用者が安心して通報することができるようにするなど、通報者を保護するための措置を強化する観点から、公益通報者保護法の一部を改正する法律が2020年に成立し、2022年に施行された。
    • 世界に目を転じると、公益通報者保護法が未整備の国も多数ある一方で、先進諸国を中心に公益通報者保護法が整備されつつある。しかしながら、その制度設計は国によって様々である。例えば、アメリカにおいては、公益通報者保護を図るための単一の法典が存在するわけではなく、複数の法律によって、通報対象の種類や組織の性質に応じた公益通報者保護の仕組みが定められている。EUにおいては、公益通報者保護法が整備されている国とそうでない国があり、公益通報者保護の水準が区々であったところ、EU全体において同一水準の公益通報者保護法制の整備を図るため、2019年10月7日にEU公益通報者保護指令が欧州評議会において承認された。その後、大多数のEU加盟各国は、同指令に基づいて国内における公益通報者保護法制を整備した。
    • 本調査は、2024年3月15日を基準日(以下「本調査基準日」という。)として、上記の公益通報者保護法改正に係る国会審議における附帯決議も踏まえ、我が国の公益通報者保護制度の実効性向上のための検討に資する情報収集の一環として、海外の通報者保護制度の整備状況及び実態(行政機関における執行体制を含む。)等についての調査を実施し、その結果をまとめたものである。本調査では、本調査対象国・地域における通報者保護制度や実態を明らかにするため、文献調査並びに本調査対象国・地域の当局及び有識者に対する聞き取り調査を実施した。なお、聞き取り調査を行った当局及び有識者の見解は聞き取り時点における見解であり、当該見解が同時点以降においても維持されることを保証するものではない。また、本報告書記載の当該見解と、今後裁判所によって行われる判断とが一致することを保証するものでない。
    • また、本報告書は、文献調査及び本調査対象国・地域における当局及び有識者による調査結果を踏まえた上で作成されたものであり、専門家としての法的助言は含まれていない点に留意されたい

消費者庁 サウナ浴での事故に注意―体調に合わせて無理せず安全に―
  • サウナ浴については、近年、マンガやドラマ、各種メディアで取り上げられたことがきっかけで、健康効果のみならず、爽快感やリラックス効果などが注目されています。また、入浴施設だけでなく、スポーツ施設等でも当たり前のようにサウナが見られ、施設等によっては、様々なタイプのサウナを設けるなどの工夫がなされています。
  • 性別を問わず幅広い年代の人々にサウナ浴が楽しまれるようになってきている中、消費者庁には、サウナ室内でやけどや打撲をするなどの事故情報が複数寄せられています。今回は、それらの事故情報を基に、安全にサウナ浴を行うための注意ポイントを紹介します。
  • サウナ浴での事故の状況について
    • 事故情報データバンクには、これまでサウナ浴に関する事故情報が78件登録され、受傷者数は82人となっています(2024年4月末日時点)。
      1. 事故情報の登録件数の推移
        • 事故情報を年度別にみると、2014年度から2021年度までは平均して4件程度でしたが、2022年度以降はそれぞれ10件となっています。
      2. 事故発生場所
        • 受傷者の半数以上を占める45人が「入浴施設」で受傷しています。
      3. 受傷内容及び傷病の程度
        • 受傷内容は、「やけど」が31件、「切り傷・擦り傷等」が24件、「骨折・打撲」が14件の順に多く、受傷内容が不明な2人を除くと、これらの合計が全体の約9割(86.3%)を占めています。
        • 傷病の程度は、不明なものを除くと「1~2週間」が18人と最も多くなっており、次いで「治療1週間未満」が14人、「1か月以上」が13人となっています。
      4. 受傷者の年齢
        • 「40~59歳」が28人、「60~79歳」が25人となり、年齢が不明な11人を除くと、合わせて全体の約7割(74.6%)を占めています。なお、40歳未満の受傷内容は、「やけど」や「切り傷・擦り傷等」などの外傷がほとんどであるのに対し、40歳以上の受傷内容は、外傷のほか、「めまい・意識障害」や「循環器障害」なども含まれています。
  • 事故事例
    • サウナを利用中、熱いと思ったものの10分間ヨガのポーズをとり続け、臀部にやけどを負った。
    • 温泉施設内の貸切りサウナを利用中、椅子から立ち上がった際に壁面にむき出ていた裸電球が背中に当たってやけどをし、治療が必要となった。
    • 個室サウナを利用中、床の段差で足を滑らせ転倒し、右肘を打撲した。
    • スポーツクラブのサウナを利用中、心臓発作を起こし3日間入院。医師からサウナ等は利用しないよう言われた。以前、心筋梗塞を起こしたことがあった。
  • 御注意いただきたいポイント
    • 掲示されている入浴上の注意事項を確認し、正しい利用を心掛けましょう。
    • サウナ室内での思わぬやけどに注意しましょう。
    • サウナ室への出入りでの急な行動に注意しましょう。
    • 温度に体を慣らすことを意識しましょう。
    • 自身の体調等を踏まえて、無理のないサウナの利用を心掛けましょう。
    • サウナ室内で体調に異変を感じるなどした場合は、すぐに周囲の人や施設の従業員に知らせましょう。

消費者庁 中国電力株式会社に対する景品表示法に基づく課徴金納付命令について
  • 消費者庁は、本日、中国電力株式会社に対し、同社が供給する家庭用の電気の小売供給のうち、「ぐっとずっと。プラン スマートコース」と称する電気料金を適用する電気の小売供給及び「ぐっとずっと。プラン シンプルコース」と称する電気料金を適用する電気の小売供給の各役務の取引に係る表示について、消費者庁及び公正取引委員会(公正取引委員会事務総局近畿中国四国事務所中国支所)の調査の結果を踏まえ、景品表示法第8条第1項の規定に基づき、課徴金納付命令を発出しました。

消費者庁 機能性表示食品を巡る検討会
▼ 機能性表示食品を巡る検討会報告書
  • ヒアリング対象者からの主な意見
    • 制度全般及び検討会の射程
      • サプリメントに限定した議論にすべきではないか。機能性表示食品の規制の範囲内でサプリメントの明文化が望ましい。諸外国はサプリメントの定義が法令化されている。風味がない・濃縮されたものが問題。サプリメントの特性(濃縮、継続摂取、複数成分配合など)に特化した規制が必要。
      • 届出更新制度の検討、注意表示の見直し・表示事項の追加、届出時の相談業務の人員拡充、届出データベースの強化と進化、消費者教育の実施、業界の実情把握と対話の強化。
      • 機能性表示食品制度は事業者利益を優先して設計されたもの。安全性・効果・効能が確保されているか、改めて制度の在り方を見直すように。
      • 特にサプリメント形状の食品に対して、安全性と品質を国のチェックにより担保する厳格なルールの導入を。ガイドラインではなく、法律に位置付け、義務化・違反時の罰則を導入するように。事業者の倫理観を求めるだけでは限界がある。
    • 健康被害情報の収集、行政機関への提供の義務等
      • 企業に報告義務を課す要件を明示。事業者が要否の判断、因果関係や重篤度を評価できるようなガイドラインが必要。
      • 健康被害情報を分析・報告する、事業者の社内ガバナンス整備(例:医師などを社外有識者として設置)。被害報告の中立的な受け皿組織の整備(保健所・PMDA、その他)。
      • 届出後の行政の情報公開の基準が明確でないため、事業者には風評被害の懸念がある。
      • 医師や医療機関からの照会事項に的確かつ迅速に対応できる体制、企業に適切な医師を紹介する制度、健康被害情報の調査・連絡体制、販売会社における安全管理責任者の設置。
      • 東京都では平成18年7月から「健康食品の健康被害事例の収集、分析、評価及び普及啓発事業」として、医師会及び薬剤師会から「健康食品」との関連が疑われる健康被害情報を収集し、分析及び評価を実施。平成18年7月から令和5年11月30日までに420名の健康被害事例があったが、調査を行うケースは無かった。なお、この420名において、61.7%(259人)が医師の診察を受けており、59.5%(250人)に基礎疾患があった。
      • 健康関連事例報告の見直しについて、行政報告要件(中小企業であっても対応できる現実的な要件)の見直し、国による注意喚起の早期発信、集積した報告を客観的に分析する政府機関の設置、企業・医師・医療機関の連携強化、当協会のマニュアルの活用、販売会社における要件やスキルを満たした安全管理責任者の配置等の対策が挙げられる。また、「サプリメント法」の検討が必要
      • 食品は安全性が最も重要。食経験を参照しているが、長期の安全性は基本確認されていない。もともと食品には膨大なリスクがあり、全ての責任者が安全性確保・向上のために責任を持つことが基本。食品には未知かつ膨大なリスクがあるので、それを管理するための方法が「多様な食品をバランスよく食べる」(リスク分散)。これを否定するものが健康食品であり、それだけのリスクに見合った安全管理が要求されるべき。食品衛生法第7条に基づき、食経験のないものについて安全性の確認を求めることができるが、具体的な規定や前例はないと思われる、海外に比べ食経験の定義・食経験がない場合の安全性の立証が曖昧。
      • (長期影響を避けるため手段如何?→多様な食品を摂取することによるリスク分散)
      • (食経験の定義をどう考えるのか?→サプリにして濃縮し頻繁に摂取することは食経験がないと判断されるであろう。)
      • (何年くらいの摂取を十分な食経験と捉えうるのか?→国際整合性に照らせば最低25年、かつ国や地域など一定の人数)
      • (食品と医薬品では境界が難しい例があるのでは?→有効成分が立証されていないという点で両者には大きなギャップがあると考える。)
      • いわゆる「健康食品」について、事業者が健康被害届出を判断する基準が明確でない、届出後の行政の情報公開の基準が明確でないため、事業者に風評被害の懸念があることが課題。本年4月に消費者の意識調査を行ったが、機能性表示がないサプリメントに対する購入意向及び信頼度は低い。しかし、7割超の消費者において、機能性表示食品に対する購入意向と及び信頼度は変わっていない。中小企業単独での健康被害の評価は困難なケースもある。消費者に対する情報開示促進に向け、事業者の積極的な活用が望まれる。
      • 健康食品の有効性、安全性を健康管理との観点で情報伝達のできる健康食品管理士(アドバイザリースタッフ)のような人材を広く社会で活かすことは、健康食品を巡る事故の再発防止の大きな手段の一つとなる。国からの具体的応援を必要とする。
      • (管理士が活躍する現場は具体的にどこ?→病院が多い。検査技師や薬剤師による取得例が多いため。)
      • 消費者の多くの方が、正しい知識のない中で健康食品・サプリメントを利用しており、その中には、健康食品の相談をしたいという方も大勢いると考える。NR・サプリメントアドバイザーをはじめ、アドバイザリースタッフの認知度が低く、一般消費者に健康食品について正しい情報を提供できる専門家がいるということが知られていない。健康食品・サプリメントを選択する際、また、利用を行う際に、NR・サプリメントアドバイザーに相談することにより、一般消費者が健康食品・サプリメント等を上手く活用できることが期待。HFNetの素材情報データベースは、ホームページがリニューアル後、有効性情報のみとなっており、安全性情報がまだ掲載されていない状態が続いている。いち早い掲載を望む。
    • 製造管理及び品質管理等
      • 原料製造におけるコンタミ防止対策の強化のため、原料の出荷検査、受入検査の強化を提案する。国の協力を得ながら、cGMPを目指し、国際的な調和を目指す。
      • わゆる「健康食品」に関する原材料の安全性については、事業者が自ら行う自主点検が推奨されており、第三者による評価がない。安全性に係る自主点検のレベルは事業者間でバラツキがあると考えられ、何らかのルール化が必要。
      • 剤、カプセル剤等食品について、製造工程・包装工程についてはGMPによる製造管理・品質管理が浸透しているが原材料製造工程はまだ不十分である。GMP認証は第三者認証なので、行政とのつながりが明確でない。原材料製造も、GMPによる管理を推奨すべき。
      • 料受け入れを含む重点管理項目を明確にして、法令に基づくGMPを段階的に導入すべき。国が具体的な基準を示す、製造・管理・運用に責任感・緊張感を持たせる仕組みが必要。
      • サプリメント形状の加工食品」について、GMPに基づく製造加工管理を義務化だけでなく、原材料の高度な品質管理や安全性の自主点検を求めるルールをガイドラインに盛り込んでほしい。
      • ベースとなるGHPsとHACCPが車の両輪のように両方とも機能することによって食品の安全性確保が図られる。日本の食品衛生法におけるHACCPはCODEXに沿ったもの。HACCPが世界で使われる理由として、重要な(significant)ハザードの管理に焦点を当てていること、監査可能(auditable)であることがあげられる。HACCPは、ハザードを予防的に100%管理する、100%の安全性を保証するものではない、ゼロリスクではない、HACCP単独では機能しない、記録がなければ機能しない。
      • 「その他のいわゆる「健康食品」」に関する原材料の安全性については、事業者が自ら行う自主点検が推奨されており、第三者による評価がない。何らかのルール化が必要(自主点検方法のガイドライン、自主点検した内容の第三者による確認など)。GMP認証は第三者認証なので、行政とのつながりが明確でない。原材料製造も、GMPによる管理を推奨すべき。
      • 機能性表示食品の届出資料に、原材料に関して次の(1)から(4)を含めることを提案する。(1)最終製品製造事業者等による「原材料サプライヤー信頼性評価(必要に応じ監査を行う)」結果、(2)原材料の製造・品質管理システムの確認(GMP、ISO22000、FSSC等、及び認証機関名等)、(3)原材料が「(2)」の客観的品質管理システムによって製造されていない場合は、原材料のロットごとに定量分析及び定性分析の実施(原材料規格確認、異物混入の有無確認)、(4)原材料(食品添加物の目的以外)についての「安全性自主点検」(令和6年通知に準拠)の実施の有無と結果。機能性表示食品の届出後の分析については、「設定した頻度に従い分析が行われていること」ではなく「ロット毎に分析を行う」よう変更することを提案する。なお、上記は機能性表示食品のみにとどまらず、全ての健康食品が備える要件と考える。
      • (原材料をロットごとに定量・定性分析をするというのは、パターン分析か?→そのとおり。)
      • 原料中に含まれる不特定の医薬品成分の検出は非現実的。成分自体が危ないということではない。「サプリメント形状の加工食品」は濃縮され、原料や製法等によって安全性や機能性が大きく異なり、食経験の同一性が定かではない。販売実績を食経験として認める場合、判断基準を明確にしてほしい。医薬品成分を含む機能性表示食品について、届出情報を見ても消費者は気付くことができず、またこれらは特別な注意が必要である。届出情報の在り方について、新たな規制を検討してほしい。
    • 機能性表示食品に関する情報伝達の在り方
      • 紅麹関連製品に関して、一刻も早い原因究明と消費者の不安を解消するための積極的かつ統一的な情報提供並びに今後の在り方についての説明を求める。小林製薬に対しても、安全性確保のための体制強化を求めるとともに、被害者等への誠実な対応、原因や今後の対応について分かりやすい情報発信をするように要請。
      • 機能性表示食品を含む健康食品全般について、それぞれの内容や制度の違いを消費者に分かりやすく情報提供して欲しい。
      • 「機能」の表示を見直し、キャッチフレーズ・広告を含めてルールを明確にするように。
      • 消費者庁は食品安全行政の司令塔を担っており、健康食品の安全性に関する情報をまとめ、バラバラに発信されている情報のすきまを埋めて、消費者に分かりやすく情報提供を行ってもらいたい。機能性表示食品の届出に関する課題について、(1)一般向け公開情報は専門用語が多く、消費者にとって分かりにくい。(2)サプリメント形状の食経験について、販売実績が数年程度あることを「食経験」の根拠として届出しているものが目立つ。ガイドラインの要件を具体的に示すべきではないか。(3)サプリメント形状の加工食品については、発酵物や天然物など、原材料の安全性を確保するための品質管理が重要であり、届出情報に分かるように示してほしい。(4)健康被害情報を消費者庁に集めるためには、非専門家であっても健康被害と食品との因果関係や症状の重篤度を客観的に判断できるような具体策を早急に講じてほしい。
      • (限られた容器包装に全ての注意事項を記載しても消費者は理解できるか?→薬との相互作用を分かりやすく記載した商品もある。表現の工夫次第で消費者が分かりやすいものとなる)
      • 今回の問題を踏まえ、機能性表示食品制度が議論されているが、それが機能性表示食品制度の見直しだけでは不十分であり、最終的には「その他のいわゆる「健康食品」」全体を見据えた施策が必要である。消費者庁の届出情報データベースについても、制度が複雑で分かりづらい部分があるで、ポータルのようなものが必要ではないかと考える。今回の事故への対応も、担当省庁ごとに分かれて掲載されてしまっている。医師や薬剤師に相談すべきであるなどの表示については、より強い表現に修正することも検討すべきではないかと考える。また、重要な表示は色を変えるなどして目立たせる必要があると考える。食品表示法ではなく、全体として食品衛生法で対応することが望ましいと考える。
      • 機能性表示食品制度はセルフケアや予防の観点から重要な製品カテゴリーであり、生活者の多様なニーズへの選択肢としての役割を果たしている。また、ドラッグストアは健康に関する身近なアクセスポイントであり、予防~未病改善~治療を提供できるよう活動を展開し、機能性表示食品との親和性は高い。他方、生活者のリテラシーと店頭での情報提供の課題について、保健機能食品でも、メーカー名や価格で選択されている事例も多い。食品であり、医薬品と異なる製品であるという購入希望者側の認識は十分でない。制度そのものの認知を含め消費者のリテラシー向上への活動が進んでいない。ドラッグストアが取り組む情報伝達について、2022年に「食と健康」販売マニュアル・自主基準を作成した。また、2023年から、自主基準を踏まえた売場づくり促進のため、ヘルスクレームをピクトグラムによる表示。
      • (機能性表示食品の表示は消費者にとって便利なものと認識?→然り。消費者からのニーズがあって商品を仕入れて販売している。セルフメディケーションをしようとする客を後押しする立場)
      • (安全性に関するピクトグラムの検討は?→持ち帰り検討したい。)
      • (問われたらではなくプッシュ型の注意喚起は?→機能性表示食品は客の責任で購買するものであり、求められない場合に説明をしていくことは難しい。)

消費者庁 CSF(豚熱)に関する情報
  • 平成30年9月9日、岐阜県の養豚農場でCSF(Classical Swine Fever)に感染した豚が確認されました。それ以降、複数の県において養豚農場の豚や野生いのししからCSFの陽性事例が確認されています。
  • CSFは、豚、いのししの病気であり、人に感染することはありません。仮にCSFに感染した豚の肉や内臓を食べても人体に影響はありません。
  • また、農林水産省によれば、感染豚の肉が市場に出回ることはありません。
  • 根拠のない噂などにより混乱することなく、以下のリンク先の正確な情報に基づいて冷静に対応して頂きますようお願いします。
▼ 岩手県 第1回豚熱対策本部会議(令和6年5月28日)
  • これまでに県が行った措置等
    • 発生農場に対し、飼養豚や生産物等の移動自粛、部外者の立入制限など、まん延防止措置の徹底を指示
    • 発生農場の疫学関連農場はないことを確認
  • 今後の対応
    • 本部会議終了後、家畜伝染病予防法及び特定家畜伝染病防疫指針に基づき殺処分を開始
    • なお、本県の養豚農場では、豚熱ワクチンが接種されていることから、移動制限・消毒ポイントの措置は行わないもの
  • 風評被害の防止
    • 豚熱は、人に感染することはなく、感染した豚の肉が市場に出回ることはないことを周知
  • 注意喚起・情報提供
    • 県民、県内養豚農場、市町村、関係機関・団体への注意喚起を随時行い、ホームページ等を活用して発生情報や防疫対応を情報提供
  • 農林水産省からの支援
    • 県との連絡調整のため、農林水産省職員をリエゾン派遣(畜産課に駐在28日~)
    • 発生原因調査のため、疫学調査チームが農場への立入調査を実施(29日(水))

【国民生活センター】

【2024年7月】

国民生活センター 花火による子どものやけどに気をつけて
  • 内容
    • 事例1 花火がサンダルの上に落ち、右足の指と足の裏にやけどをしてしまった。(当事者:2歳)
    • 事例2 花火を振り回した直後に、風で火花がスカートに飛んで着火し、燃え上がった。保護者がはたいても火が消えず、服を脱がせたが、右太ももにやけどを負った。(当事者:6歳)
    • 事例3 手持ち花火が終わって、下に落ちていたものを触ってしまい、右手の指にやけどを負った。(当事者:1歳)
  • ひとことアドバイス
    • 花火による子どものやけどは、特に1歳から3歳で多くなっています。花火で遊ばせる際は必ず大人が付き添い、3歳以下の子どもに花火を持たせることは避け、距離を置いて見せるなどして楽しむようにしましょう。
    • 肌の露出が多い服や履物の場合、火花等でやけどの危険性が高まります。裾が広がった服やスカートに着火する事故も起きています。服装にも注意しましょう。また、万が一着衣に着火した場合の対処法も覚えておきましょう。
    • 花火の風下には立たせないようにし、風が強い場合は花火遊びはやめさせましょう。
    • 花火で遊ばせる際には、消火用の水を用意するなど準備をしましょう。
    • 製品に記載されている注意事項を必ず守って使用しましょう。

国民生活センター 新紙幣発行に伴うトラブルにご注意ください
  • 約20年ぶりとなる新紙幣の発行が7月から始まります。
  • これに伴い、「新紙幣発行に便乗した詐欺行為」の発生が予想されます。
  • 国民生活センターでは、詐欺被害を防止するため、情報提供(注意喚起)してまいります。
  • 新紙幣発行に伴う詐欺被害にご注意ください。
  • 予想されるトラブル
    • 「旧紙幣は使えない」、「新紙幣と交換する」などと言って、紙幣をだまし取ろうとする事例の発生が予想されますので、ご注意ください。
    • 「旧紙幣が使えなくなるから」と言われ、交換を求められた。
    • 「その新紙幣は偽札だ」と言われ、交換を求められた。
    • 金融機関の職員を装った者から「新紙幣と交換する」と言われた。
  • 消費者へのアドバイス
    • 新紙幣発行後も、現在の紙幣は使えます。
    • 金融機関や行政機関が新紙幣について交換を求めることはありません。第三者に渡さないでください。
    • 新紙幣に関する不審な電話やメール、訪問があった場合は、警察に相談しましょう。
    • 不審に思ったら、すぐに消費生活センター等に相談しましょう。
    • 消費者ホットライン「188(いやや!)」番:最寄りの市町村や都道府県の消費生活センター等をご案内する全国共通の3桁の電話番号です。
    • 警察相談専用電話「#9110」:最寄りの警察の相談窓口につながる全国共通の電話番号です。

国民生活センター 会員登録のつもりが…別サイトでのサブスク契約に
  • 内容
    • フリマアプリの新規登録をしようと「スタート」というボタンを押して、クレジットカード情報などの入力を完了した。すると身に覚えのない海外事業者の動画配信サービスにつながってしまい「視聴期間は5日間で、キャンセルがなければ月額約7500円がカードから支払われる」と表示された。どうすればよいか。(60歳代)
  • ひとこと助言
    • 国内事業者のサイトの利用時に表示された「スタート」「OK」などのボタン表示をクリックし、クレジットカード情報等を入力したところ、意図せず海外事業者とのサブスクリプション契約になっていたという相談が寄せられています。
    • 「スタート」などのボタンは海外事業者の広告で、ウェブデザイン等で勘違いさせ、消費者に認識させないままサブスク契約に誘導しています。
    • 「スタート」等の表示が、自身の登録しようとしているサイトの手続きボタンなのか、クリックする前によく確認しましょう。枠の端に小さい「×」印等があれば広告です。
    • クレジットカードの請求はこまめに確認しましょう。
    • 不安なときは、お住まいの自治体の消費生活センター等にご相談ください(消費者ホットライン188)。海外事業者とのトラブルについては国民生活センター越境消費者センターでも相談を受け付けています。

国民生活センター そのサイト、大丈夫?ネット通販で商品を購入する前に確認を!-「悪質通販サイト情報」を公表します-
  • 国民生活センター越境消費者センター(以下、越境消費者センター)には、日本語表示の通販サイトで商品を購入したが、「海外から発送された商品が届かない」、「購入した商品が模倣品であるとの税関からの通知が届いた」などの相談が寄せられています。商品代金を支払った後に、販売事業者と連絡が取れなくなり、販売事業者に対応を求めることが困難な事例も多くみられます。
  • 越境消費者センターでは、実際に寄せられた相談の中から、令和6年6月26日より、越境消費者センターウェブサイト上で、随時「悪質通販サイト情報」を公表していきます。
  • 「悪質通販サイト情報」の利用を呼びかけるとともに、リスト掲載のサイト以外にも悪質通販サイトを見極めるポイントを紹介し、通販サイトで商品を購入する前に、慎重に判断するよう消費者への注意喚起を行います。
  • 悪質通販サイト情報
  • 消費者へのアドバイス
    • 購入前に通販サイト内の表示や支払い方法等をよく確認しましょう。
    • 越境消費者センターウェブサイトで悪質通販サイト情報を確認し、掲載事業者からは購入しないようにしましょう。
    • 万が一、商品が届かない等のトラブルにあってしまった場合は、決済関連事業者に相談しましょう。
    • 不安に思った場合にはすぐに消費生活センター等に相談してください。
    • 消費者ホットライン「188(いやや!)」番
      • 最寄りの市町村や都道府県の消費生活センター等をご案内する全国共通の3桁の電話番号です。
    • 越境消費者センター(Cross-border Consumer center Japan:CCJ)
      • 海外の事業者との間での取引でトラブルにあった消費者のためのオンラインの相談窓口です。

国民生活センター 被害回復は困難!SNS上で著名人を名乗る投資話の勧誘に注意
  • 内容
    • 投資を考えていたら、有名経済評論家主催の投資相談のSNS広告が表示された。100万円が1億円になったとの体験談に惹かれメッセージアプリに登録すると、評論家のアシスタントを名乗る人から投資話が届いた。有名な評論家なら信用できると思い100万円を振り込むと、利益を増やすため100万円を追加するよう言われ、別の口座へ振り込んだ。その後も次々と勧められ総額1500万円を振り込んだ。運用状況を確認すると6千万円の利益が出ていたので引き出そうとしたら、手数料や税金約2200万円を支払わないと出金できないと言われた。(60歳代)
  • ひとこと助言
    • SNS上で、消費者を信用させるために、著名人本人に無断で名前や写真を使用した投資勧誘が横行しています。著名人の公式サイトや公式アカウント等で注意喚起が出ていないか、まずは確認するようにしましょう。
    • 投資資金の振込先に個人名義の口座を指定された場合は詐欺です。絶対に振り込まないでください。相手と連絡が取れなくなるなど被害回復は困難です。安易に資金を振り込むことはやめましょう。
    • 不安に思ったら、振り込む前にお住まいの自治体の消費生活センター等にご相談ください(消費者ホットライン188)。

【2024年6月】

国民生活センター 車を売る際は要注意!中古車の売却トラブル
  • 車を高く売りたい!複数の#買取業者 に連絡っと…一番高額な買取業者と契約できた!え!?事故は起こしていないのに、#修復歴 があるから買取金額を減額するって連絡が…⇒188に相談!#査定#高額買取
  • 相談事例
    • 車を売却、引き渡し後に事故車と判明したので買取金額を下げると言われた
      • 約1年前に購入した中古車を売却するために、買取業者何社かに見積もりを依頼した。査定後、一番高い買取金額を提示した事業者と契約した。すでに車を引き渡し、代金が振り込まれるのを待っていたが、事業者から「オークションの検査で事故車と判断されたため、買取金額を引き下げたい」と連絡があった。この車の購入時に事故歴はないと聞いており、自分も事故は起こしていない。契約した金額で買い取ってほしい。(2023年11月受付 40歳代 男性)
    • 契約の3日後にキャンセルしたら、説明や記載のないキャンセル料を請求された
      • 中古車を売却するため、一括査定サイトに登録した。その後電話があり、一番高額な査定をした事業者から5万円の買取金額が提示されたため「お願いします」と答えた。その電話でキャンセル料について説明はなかった。後日、契約に必要な書面一式が送られてきたが、電話の3日後にキャンセルを申し出たら、「キャンセル料3万円を支払ってもらう」と言われた。送付された書類にキャンセル料の記載は見当たらず、届いた契約書はまだ提出していないので、契約成立前ではないか。キャンセル料を請求されて、納得できない。(2024年3月受付 20歳代 女性)
    • 中古車を売却したが、何かと理由をつけて代金が振り込まれない
      • 3カ月前に中古車を売ろうと思い、インターネットで一括査定を申し込んだ。複数社に見に来てもらい、買取金額を一番高く提示した事業者と契約した。車を引き渡し、約200万円の代金は1カ月後に銀行口座へ振り込むと説明を受けた。しかし振込予定日の直前に振込日延期の電話があり、その後も「少し臨時休業する。来週営業再開したら振り込む」と言われたり、「金融機関からの融資が下りたら振り込む。今週末また連絡する」と言われたりして延期が続き、一向に振り込まれない。約束通りに支払ってほしい。(2023年12月受付 20歳代 男性)
  • 消費者へのアドバイス
    • 査定して契約した後に、修復歴や事故歴を理由とした契約の解除や減額には応じる必要はない!
      • 買取業者は査定のプロとしての注意を払って買取金額を算出しています。その査定額で契約した後に、修復歴や事故歴を見落とした等として、買取業者から減額や解約を求められた場合でも応じる必要はありません。
      • ただし、売却する車に修復歴や事故歴があると知っていた場合には、必ず査定時に買取業者へ申告しましょう。
    • クーリング・オフはできない!事前に契約書をしっかり確認する!
      • 車の売却は、特定商取引法におけるクーリング・オフの対象外です。
      • いったん契約をすると、原則として契約書の内容に拘束されますので、契約を締結する前にしっかり内容を確認しましょう。また契約前にその買取業者の情報収集をしっかり行っておくと良いでしょう。
    • 特にキャンセル条項や支払条件など、事前に必ず確認する!※
      • キャンセル料に関しては、金額とともに、どの時点から発生するのか等についても理解したうえで契約することが重要です。契約書にないキャンセル料を請求された場合、あるいは契約書に定められた金額を上回るキャンセル料を請求された場合に、契約内容に従った対応を要求することができます。
      • また、買取代金の支払い条件については、契約時に必ず確認しましょう。買取代金の支払いがなされるまで、車および移転登録書類等の引き渡しを延期することも一法です。
        • ※車買取の事業者の団体である一般社団法人日本自動車購入協会では、「売却する車を事業者へ引き渡した翌日まではキャンセル料を払うことなく解約できる」等の内容を含む契約書のガイドライン(モデル約款)を作成しています。
▼ モデル約款<自動車買取契約書約款>[PDF形式](一般社団法人日本自動車購入協会)
  • 少しでも不安に思ったら早めに消費生活センター等に相談する
    • 消費者ホットライン「188(いやや!)」番
    • 最寄りの市町村や都道府県の消費生活センター等をご案内する全国共通の3桁の電話番号です。

国民生活センター 「本革巻」と表示されていた自動車のハンドル(相談解決のためのテストからNo.186)
  • 消費生活センター等の依頼に基づいて実施した商品テストの結果をご紹介します。
  • 依頼内容
    • 「本革巻と表示された自動車のハンドルの表面がはがれた。天然皮革かどうか調べてほしい。」という依頼を受けました。
  • 調査
    • 当該品は、取り付けられていたという車両のカタログに「本革巻ステアリングホイール」と表示された自動車のハンドルで、相談者は、使用年数の経過に伴い表面がボロボロに剥がれてきたため、合成皮革ではないかと疑念を持ったとのことでした。
    • 当該品に巻かれていた素材を切り出し、断面を電子顕微鏡で観察したところ、ポリエーテルウレタン樹脂を主体とする塗膜層の下に、繊維の太い床面の繊維構造のみがみられ、繊維組織が牛特有の比較的均一で充実した構造であったことから、牛床革と考えられました。
  • 消費者へのアドバイス
    • 自動車のカタログや広告等に表示される「本革」の定義については、公的な規格・基準がなく、銀面のない床革に樹脂塗膜を施した仕様の場合もあります。表示や外観から使用されている素材が銀付革か床革かを見分けることは困難ですので、いずれであるか気になる場合は、購入時に取扱い方法等も含めて販売事業者に確認するとよいでしょう。

国民生活センター 瞬間接着剤の使用によるやけどに注意-つけ爪用接着剤にも使用されています-
  • 2023年11月、PIO-NETに、つけ爪用接着剤が手指に垂れ、ティッシュペーパーで拭き取ったところ、Ⅱ度のやけどを負い、1カ月以上の通院を要するとの診断を受けたという事例が寄せられました。
  • つけ爪やモノを短時間で接着させるために用いられる瞬間接着剤の主成分には、一般的にシアノアクリレート系の物質が使用されています。シアノアクリレート系の物質は、空気中や接着面の水分と反応して重合し硬化する際に反応熱が発生します。特に、ティッシュペーパーや布などに染みこんで表面積が拡大すると、化学反応が急激に進み大きな反応熱が発生することがあり、その部分に触れるとやけどをするおそれがあります。
  • PIO-NETには、2019年度以降に瞬間接着剤によりやけど等をしたという危害情報が、冒頭の事例も含め7件寄せられています。また、2024年5月には、大阪府において、子どもにつけ爪用接着剤がかかりやけどをしたという事故も報道されています。
  • そこで、モノ同士を接着する用途の瞬間接着剤6銘柄及びつけ爪用接着剤6銘柄について、事故の再現テスト等を行い、使用する際の注意点について、消費者へ注意喚起することとしました。
  • PIO-NETに寄せられた相談
    • 店舗で購入したつけ爪用瞬間接着剤を親指の爪につけたところ、手のひら側に垂れ、ティッシュペーパーで拭き取ったところ、やけどをした。皮ふ科を受診したところⅡ度の熱傷で1カ月以上の通院を要すると診断を受けた。商品の使用方法を熟読したが、使い方によってはやけどを起こすなどの表示はなかった。
    • 瞬間接着剤を使用した際に少しこぼれてしまったので、近くにあったティッシュペーパーで拭ったところ火がついたように熱くなり、手からはがしたところ、指がえぐれてしまった。
  • テスト結果
    • 再現テスト
      • ティッシュペーパーや衣類などに染みこませた場合、最高170℃近くまで温度が上昇しました。
      • 瞬間接着剤は、すぐに硬化するため、発熱時には、接着部分を容易にはがすことができませんでした。
    • 表示の調査
      • つけ爪用接着剤には、発熱に関する注意表示がみられない銘柄もありました。
      • つけ爪用接着剤は家庭用品品質表示法の対象外ですが、同法で定める項目が全て表示されていると考えられたのは6銘柄中1銘柄でした。
  • 消費者へのアドバイス
    • 瞬間接着剤はティッシュペーパーや衣類などの染みこみやすい繊維質のものに染みこむと短時間で発熱し、やけどをする場合があるので注意しましょう。
    • 使用中に誤って付着させた場合の対処方法を覚えておきましょう。
    • 使用前には商品の表示や取扱説明書を読み、ポリエチレン手袋を装着して扱いましょう。

国民生活センター 車内に子どもを残したまま…キーの閉じ込みに注意!
  • 事例
    • 運転席に移るためチャイルドシートに子どもを乗せ、外に出てドアを閉めたら、オートロックがかかり炎天下で子どもが閉じ込められてしまった。電子キーは車内に置いたままだった。子どもに異常は見られなかったが、念のため病院で点滴を受けた。(当事者:2歳)
  • ひとことアドバイス
    • 車内に電子キーを置き忘れた際、何らかの原因で車のドアがロックされたり、子どもが誤ってドアロックを操作してしまったりして、子どもが車内に閉じ込められるケースが発生しています。人や荷物の乗降の際には、短時間であっても必ずキーを持って行動しましょう。
    • 手元にキーがない状態でドアがロックされると、すぐには解錠できません。子どもが閉じ込められてしまったら、ロードサービスに救援を求めましょう。車内のお子さんの状態によっては119番通報しましょう。夏場など気温の高い時期には、短時間の閉じ込めでも熱中症になる危険性があります。
    • エンジンが停止しているときに、電子キーの電池が切れるとドアがロックされる場合があります。電池は定期的に交換しましょう。事前に取扱説明書で調べておくほか、不明点は車のメーカーやディーラーに確認しましょう。

国民生活センター 解約手続きができない!? 無人スポーツジムのトラブル
  • 内容
    • ネット上の広告を見て、格安のスポーツジムを申し込んだ。全ての手続きをネット上で済ませるシステムで、店舗にスタッフは誰もいない。入会から3カ月経ち、都合によりやめたくなった。事業者の公式ホームページにスマホで解約するよう案内があり、指示通り操作したが、途中で入力できなくなり先に進めない。事業者に電話もしたがつながらない。このままでは支払いが続いてしまうので解約手続きをしたい。(60歳代)
  • ひとこと助言
    • 無人のスポーツジムやオンラインレッスン等に関して「サイト上での解約手続きができない」「問い合わせたいが電話がつながらない」などの相談が寄せられています。
    • 契約は当事者間の合意や規約の内容に従うことになります。解約時の連絡先や清算方法等、規約内容について契約前に必ず目を通しましょう。
    • 事業者と連絡が取れない場合は、電話やメール、サイト上のフォーム等複数の手段で問い合わせましょう。また、事業者のホームページ等も適宜確認しましょう。
    • 困ったときは、お住まいの自治体の消費生活センター等にご相談ください(消費者ホットライン188)。

国民生活センター 電力・ガスの契約トラブル
  • 2016年4月1日より電力、2017年4月1日よりガスの小売全面自由化が始まりました。新たな事業者の参入もあり、様々な事業者が料金プランを提示している中、国民生活センター及び各地の消費生活センター等並びに経済産業省電力・ガス取引監視等委員会には、電気・ガスの契約の切り替えに関するトラブルなどの相談が寄せられております。
  • 相談事例
    • 契約している電力会社名を名乗って業者が訪問した。安い電気プランの話があり、契約会社のプラン変更のつもりで話を聞き、申し込んだところ、後で別業者と契約したことに気づいた。クーリング・オフしたい。
    • 電気が安くなると言われ、アパート全体で電力会社を切り替えると勘違いし検針票を見せ、契約書を書いた。後で契約を断ったが心配だ。
    • 突然、事業者がやってきて「安くなるので賃貸アパートの他の住人全員が契約した」と都市ガスの契約先の変更を勧められたので、契約することにしたが、後から契約書の控え等を受け取っていないことを不審に思った。クーリング・オフしたい。
  • 消費者へのアドバイス
    • 検針票の記載情報(氏名(契約名義)、住所、顧客番号、供給地点特定番号等)は慎重に取り扱い、情報を聞かれてもすぐ教えないようにしましょう。
    • 大手電力・ガス会社を名乗って勧誘をするケースもみられます。勧誘してきた会社と新たに契約する電力・ガス会社の社名や連絡先を明確に確認しましょう。
    • 電気・ガスの料金プランや算定方法をよく説明してもらい、メリット・デメリットを把握したうえで契約をしましょう。また、検針票等の料金の明細書は必ず確認しましょう。
    • 契約を変更してしまってもクーリング・オフ等ができる場合がありますので、慌てずに対処しましょう。
  • 相談窓口
    • 電話勧誘・訪問販売での契約トラブルのほか、契約を結ぶに当たり、不明な点や不審なことなどがあれば次の相談窓口をご利用ください。
      • 経済産業省電力・ガス取引監視等委員会 相談窓口
      • 消費者ホットライン
        • 電話番号:局番なし188(いやや!)
        • ※最寄りの市区町村や都道府県の消費生活センター等をご案内する全国共通の3桁の電話番号です。

国民生活センター 買い物中の転倒事故に注意!
  • 内容
    • 事例1:大型スーパーに行き、フロアの真ん中を歩いていたとき、周りのお店などに気を取られていたら、フロアのコードカバーにつまずいて転び、左ひざを強く床にぶつけ、痛さで起き上がれなくなった。救急搬送され、7日間入院した。(70歳代)
    • 事例2:雨天の夜、コンビニの入り口のマットから、一歩踏み出した際に転倒した。帰宅してから痛みが増し、救急で病院に行ったところ、手首を複雑骨折しており入院した。(70歳代)
  • ひとこと助言
    • 店舗や商業施設で「つまずく」「滑る」等による転倒事故が起きています。ちょっとした段差や落下物、床に置かれた商品箱等、足元や周囲にも注意を払いましょう。
    • 特に雨の日の入口は、床が濡れて滑りやすいことがあるため、一層の注意が必要です。鮮魚コーナーや冷凍ケース等の周辺も床が濡れていることがあるので注意しましょう。
    • もし、危険だと感じた時は、お店の方に申し出て安全策を取ってもらいましょう。
    • 高齢になるにつれて、足元や周囲に想定外の変化があった時、その対応が遅れがちになり、転倒やそれに伴う骨折などのリスクが高くなります。慎重に行動しましょう。

国民生活センター SNSをきっかけとして、著名人を名乗る、つながりがあるなどと勧誘される金融商品・サービスの消費者トラブルが急増-いったん振込してしまうと、被害回復が困難です!-
  • SNSをきっかけとして、著名人を名乗ったり、つながりを示したりして投資を勧誘されたという消費者トラブルが急増しています。「○○(著名人)が主催する投資の勉強会」「○○(著名人)が投資のノウハウを教える」「○○(著名人)と知り合いで儲かる」などと勧誘し、投資名目で振込をしたものの、「追加費用を支払わないと出金できないと言われた」「相手と連絡が取れなくなった」などといった被害が発生しています。
  • こういった相談が、全国の消費生活センター等に寄せられており、2022年度と比べて約9.6倍と急増しています。また、平均契約購入金額も高額化しています。SNS上の広告をきっかけに投資グループに誘われることが多く、いったん振込してしまうと被害回復が難しいといった特徴があります。同種のトラブル防止のため、相談事例を紹介し、消費者への注意喚起を行います。
  • 年度別相談件数:2021年度は52件、2022年度は170件、2023年度1,629件、2024年度は4月30日までで84件です。
  • 年度別平均契約購入金額:2021年度は436万円、2022年度は234万円、2023年度は687万円です。
  • 相談事例
    • 有名経済評論家の投資相談に参加したところ、アシスタントを名乗る人に次々に投資を勧められ、総額1,500万円を振り込んだが出金できない
      • 母から相続した資産で投資をしようと考えていたところ、有名経済評論家が主催する投資相談のSNS広告が表示され、100万円が1億円になったとの体験談が掲載されていたので興味を持ち、メッセージアプリへ登録した。すると有名経済評論家のアシスタントを名乗る人からメッセージが届き、海外株が短期で値上がりすると投資話を持ちかけられた。有名経済評論家が言うことなら信用できると思い100万円を振り込んだ。すると後日「100万円では利益が少ない。追加で100万円を振り込むように」とメッセージが届き、別の銀行口座へ振り込んだ。
      • 1週間後、「もっと利益が高い投資がある。経済評論家の先生へメッセージを送ってください」と連絡があり、別の銀行口座へ750万円と50万円を振り込んだ。さらにその2週間後、短期投資の話を持ち掛けられて250万円を2回、計500万円を新たな指定口座へ振り込んだ。
      • その後、運用状況で確認すると6,000万円の利益があったので資金を引き出したいと申し出たところ、出金手数料900万円と、運用している海外の株式市場に税金1,300万円を支払わないと出金できないと言われた。(2024年1月受付 60歳代 女性)
    • その他、以下のような相談も寄せられています
      • 有名投資家がノウハウを発信すると謳っていたが、その有名投資家は関与しないものだったうえ、投資額を勝手に決められて違約金も請求された。
      • 「絶対に負けない投資家を知っていて自分も投資で儲かった」という有名投資家の姪から勧められてFX取引を始めたが、連絡が取れなくなった。
  • 相談事例から見る問題点
    • 「著名人が投資を勧めている」「著名人と知り合い」など、著名人の知名度や実績、権威を悪用した勧誘が横行している
      • 投資に対する不安を払しょくするため、著名人の知名度や実績、権威を悪用して勧誘しているものと考えられます。著名な投資家や経済学者等を名乗っていても、本人に無断で写真や氏名等を使用した勧誘が横行しています。消費者がそういった勧誘内容の真偽を判断することは難しく、言われるがままに投資名目で振り込んでしまう事例が多く見受けられます。
    • SNS上の広告について、広告審査が充分に機能しているとは評価しにくい
      • 無登録で金融商品取引業を行うなど、違法な広告については各SNS運営事業者が削除すべきですが、消費者トラブルの現状からは、各SNS運営事業者の広告審査が充分に機能していると評価することは難しく、現状においては消費者自身が自衛する必要があります。
    • 「投資」として振り込むため、高額になりやすい
      • 通常の売買契約とは異なり、「投資」として振り込むことに加え、「儲かる」「お金が増える」などと言われるため、消費者には振込額以上のお金が得られることに対する期待があります。そのため、比較的大きな金額を支払っているケースが多く、平均契約購入金額が約644万円と高額になっています。
  • 消費者へのアドバイス
    • SNS上で勧誘を受けた場合は、まず疑ってみるようにしましょう。
    • 投資資金の振込先に個人名義の口座を指定された場合、それは詐欺です。振り込まないでください。
    • 被害回復が難しいため、安易に投資資金を振り込むことは控えましょう。
    • 不審に思ったら、すぐに消費生活センター等に相談しましょう。
      • 消費者ホットライン「188(いやや!)」番:最寄りの市町村や都道府県の消費生活センター等をご案内する全国共通の3桁の電話番号です。
      • 警察相談専用電話「#9110」:最寄りの警察の相談窓口につながる全国共通の電話番号です。

国民生活センター 会員登録時に注意!意図せず別サイトに誘導され、サブスク契約してしまうトラブル-その「スタート」ボタン、実は海外事業者の広告かも!?-
  • 国民生活センター越境消費者センター(CCJ)には、国内事業者のサイトを利用していて表示された「スタート」、「OK」、「今すぐ視聴する」などのボタン表示をクリックしたところ、意図せず、海外事業者とのサブスクリプション契約となっていた、との相談が多数寄せられています。
  • 「スタート」等というこれらのボタン表示は、海外事業者の広告ですが、消費者は広告と認識しておらず、自分が利用しようとしている国内事業者のサイトの表示と勘違いし、「スタート」等のボタン表示をクリックしています。その後、クレジットカード情報等を入力することで、海外事業者との契約が成立した形となっています。
  • これら「スタート」等のボタン表示は、消費者が国内事業者のサイトに会員登録する際に見る画面内や会員登録のために2次元コードを読み取って開いた画面に表示される他、アプリをダウンロードする過程の画面内にも表示されることがあります。
  • 会員登録や2次元コード読み取り時などに、「スタート」等のボタンが表示された場合は、広告かどうかの確認が必要となります。意図しない海外事業者と契約してしまわないよう、寄せられたトラブルについて紹介し、消費者に注意を呼びかけます。
  • 相談事例
    • 【事例1】国内のオンラインストレージサービスの利用手続をしたつもりが、知らない海外事業者から登録完了メールが届き、サブスク契約してしまったことに気づいた。解約したい。
    • 【事例2】会員カードを更新しようと、「スタート」ボタンから手続をしたら、身に覚えのない契約内容が表示され海外サイトに登録してしまったようだ。事業者の連絡先がわからない。
  • 相談事例からみる問題点
    • 消費者は広告と気付かずサブスクリプション契約の画面に誘導されている。
    • 消費者は契約先の事業者名や契約内容を認識できないままに、クレジットカード情報等を入力している。
    • 事業者が“最終確認画面”を設けていない可能性がある。
    • 契約に気が付いた後も契約先の実態等がわからず、問い合わせ先もわかりにくい。
  • 消費者へのアドバイス
    • 「スタート」等が表示されても、広告ではないかを確認しましょう。
    • 登録完了メールが届いていないか確認しましょう。また、クレジットカードの請求をこまめに確認しましょう。
    • 事業者への申し出の方法がよくわからない場合や不安に思った場合にはすぐに消費生活センター等に相談してください。

国民生活センター 自転車後部に同乗中の子どもの事故に注意!-障害物と接触して大腿骨を骨折する事故も-
  • 自転車後部に同乗中の子どもの事故に注意!-障害物と接触して大腿骨を骨折する事故も-
    • 幼児が同乗できる自転車については、保育所への送迎等で今後も高い需要が見込まれ、特に車での送迎が制限されるケースの多い都市部を中心に、他に代替し難い重要な移動手段となっています。一方で、幼児同乗中の自転車における事故も発生しており、消費者安全調査委員会から「幼児同乗中の電動アシスト自転車の事故」について調査結果が報告されています。
    • 医療機関ネットワークには、自転車後部に子どもを同乗させて走行していた際の事故事例が、2019年度以降の5年間で207件寄せられています。その中には、自転車後部の幼児用座席に乗せていた子どもが、身体をはみ出していたことで障害物に接触する事故が発生しており、大腿骨を骨折するなどの重篤なけがを負った事例も複数みられます。
    • そこで、医療機関ネットワークに寄せられた事故情報等を基に、自転車後部に同乗中の子どもの事故について情報をまとめ、消費者に注意喚起することとしました。
  • 動画【YouTube】
  • 医療機関ネットワークに寄せられた事故情報
    • 身体のはみ出しにより大腿・下腿が障害物と接触した事例
      • 保護者の運転する電動アシスト自転車後部の幼児用座席に乗っていたところ、子どもの右足とガードレールが接触し、受傷した。
      • 保護者が運転する電動アシスト自転車後部の幼児用座席に乗っていたところ、徐行して車止めのポールを通過する際に子どもの右大腿がポールに接触し、股関節を開く形で受傷した。
    • 身体のはみ出しにより頭部が障害物と接触した事例
      • 自転車後部の幼児用座席に乗せて走行していたところ、電柱をよけようとした際に子どもの頭がふられて電柱に接触し打撲した。
    • スポーク外傷の事例
      • 保護者が運転する自転車の後ろの荷台に乗っていて、左足が巻き込まれた。幼児用座席は使用しておらず、サンダルを履いていた。
  • テスト結果
    • 身体のはみ出しによる事故の再現
      • 走行中に足を伸ばすなどした場合、幼児用座席からはみ出した身体が電柱や標識の支柱に接触することがありました。
      • 後部の幼児用座席に乗った子どもの目線からは、前方の障害物を視認しにくいことがわかりました。
      • 幼児用座席から頭部をはみ出していると、障害物と接触することがありました。
    • 狭い通路を走行した際の事故の再現
      • 自転車後部の幼児用座席に子どもを乗せた状態で狭い通路を通過すると、子どもの下腿が障害物に接触することがありました。
    • スポーク外傷の再現
      • 幼児用座席を使用せず荷台に子どもを乗せると、子どもの足が車輪に強く巻き込まれる可能性がありました。
  • 消費者へのアドバイス
    • 自転車後部の幼児用座席に乗った子どもは、前方の視界がほとんどありません。子どもにシートベルト及びヘルメットを適切に装着させ、身体をはみ出さないよう声掛けをしましょう。
    • 狭い通路を走行する際は、同乗させている子どもが障害物と接触しないよう、自転車から降りて押し歩いて通過しましょう。
    • 子どもを自転車に同乗させる際は、年齢や身長に合わせて必ず幼児用座席を使用しましょう。また、荷台に子どもを乗せないこと、小学生以上の子どもを自転車に同乗させないことを徹底しましょう。

国民生活センター 18歳・19歳の消費生活相談の状況-2023年度-
  • 2022年4月1日の成年年齢引下げから2年が経過しました。以下では契約当事者が18歳・19歳の消費生活相談の状況をまとめました。
    • 2023年度の18歳・19歳の相談件数は、2022年度と比較してほぼ横ばい。
    • 商品・役務等別でみると、2022年度の傾向と大きな変化はなく、引き続き「美(び)」(「脱毛エステ」「医療サービス」など)や「金(かね)」(「他の内職・副業」「金融コンサルティング」など)に関する相談が多く寄せられている。
    • 年度別相談件数:2019年度は10,449件、2020年度は11,387件、2021年度は8,536件、2022年度は10,026件、2023年度は9,675件です。
▼ 報告書本文
  • 販売購入形態別の相談件数
    • 2022年度と2023年度における販売購入形態別の相談件数を比較しました。2 2023年度、2022年度ともに相談件数が最も多いのは「通信販売」で、出会い系サイト・アプリや内職・副業に関する相談が多く寄せられていますが、相談件数は減少しました。一方で、「電話勧誘販売」と「訪問販売」の相談件数が増加し、「電話勧誘販売」では、内職・副業や金融コンサルティングに関する相談、「訪問販売」では電気や駆除サービスに関する相談が寄せられています。
  • 契約購入金額・既支払金額
    • 2022年度と2023年度における契約購入金額・既支払金額を比較しました。平均契約購入金額は2023年度が24万8,468円で、2022年度の23万4,776円と比較してほぼ横ばいです。また、平均既支払金額は2023年度が8万1,731円で、2022年度の8万5,181円と比較してほぼ横ばいです。
  • 販売方法・手口
    • 2022年度と2023年度における販売方法・手口別の相談件数を比較しました。「インターネット通販」、「定期購入」に関する相談が引き続き多くみられますが、相談件数は減少しました。
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