週刊・危機管理PLUS

危機管理のプロの観点から時事ニュースを考察しました。

2017年10月16日号

規制の「行き過ぎ」とは?

悪質な投稿の排除にTwitterが取組む中、テロや犯罪に関係のないアカウントまで凍結される事態が起きているという。利便性と規制の狭間で、規制の「行き過ぎ」はしばしば起こるが、一方で制限のない利便性などないのも事実だ。厳格な顧客管理においては、企業姿勢とはいえ、誤検知や過剰反応、不精確な調査結果でさえも無批判に厳しく運用するだけでは「行き過ぎ」であって、利益や利便性を追求しつつ、一方で、可能な限り手を尽くして相手のことを知ろうとし、グローバルコンプライアンスやリスク管理、サプライチェーンマネジメント等の観点から自らの健全性について説明責任を果たしていくのが本来の姿だ。さらに、深慮のない形式だけの「行き過ぎ」は、ビジネスのダイナミズムの喪失はおろか、隠蔽や不作為など不正を生むリスクを孕むとの認識も必要だ。(芳賀)

製品検査データの不正問題

大手鉄鋼メーカーの検査データ改ざん問題は、アルミ・銅製品から主力の鉄鋼製品にも拡がり、納入先は国内外の約500社に拡大した。本社から目が行き届かない現場、納期や作り直しにかかるコストなどの圧力、管理が行き届かないなかでいつの間にか一線を越えてしまった構図が透けて見える。同社は過去にも総会屋への利益供与や工場から排出するばい煙データの改ざん、JISの偽装による法令違反を繰り返しており、通り一遍の調査や対処策ではすまされないし、問題が放置された理由に回答を出すことは容易ではない。不正の背後に何があるのか、徹底した解明と厳重な再発防止策が求められるとともに、どこで現場の社員を不正に動かす芽が生じたのか、組織や人事の仕組み、経営層の意識と資質、顧客との関係のあり方までにメスを入れる徹底した検証が欠かせない。(佐藤)

商工中金の不正融資、社長引責辞任

商工中金は制度融資(危機対応融資)巡る不正でトップの引責辞任など処分の検討に入ったという。4月に出した「第三者委員会報告書」では35の支店の職員99人が不正(816件)に関与していたが、その後の全件調査で約90支店、行為者は300人規模、不正件数も2000件台に上る見通しだ。金融庁の調査では、制度融資以外でも不正が発覚しており、規模や不正の範囲に鑑みればトップの経営責任は免れない。公共性の高い制度融資を営利目標に組み込めば営業ノルマとして認識されることへの想像力の欠如とリスク認識の甘さは批判されよう。エビデンスの改ざんという不正を想定していない「性善説」に基づいた内部監査は、通常の融資にも不正を許した共通要因だ。危機において事実の矮小化や報告の歪曲に対する健全な懐疑心をトップが持たなければダメージは甚大となる。(伊藤)

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