週刊・危機管理PLUS

危機管理のプロの観点から時事ニュースを考察しました。

賃貸事業におけるKYC(Know Your Customer)

座間市の事件では、容疑者が当初から被害者と接触することを目的に部屋を借りた疑いがあるという。また、振り込め詐欺のアジトなど(悪徳事業者が詐欺グループと連携するケースは別として)、申込人が何らかの犯罪等に悪用する目的があったとしても、それを事前に把握することには相当の困難が伴う。ただ、一方で、賃貸事業者も、入居審査を保証会社に任せているケースが多く、保証会社にて経歴や金融資産の状況、暴力団関係者でないかなどを厳しくみているものの、あくまで書面上の審査が中心であり、結局、せっかくの「現場の目」が審査に活かされていない実態がある。賃貸物件の犯罪利用を防ぐためには、最前線にいる社員のリスクセンスと意識の重要性に着目し、それを高め、審査に厳格に反映していくなど、まだまだ取り組むべきことは十分ある。(芳賀)

悪意の連鎖、どこまで。急がれる企業の自衛対策

先日IT事業者大手から流出した名簿が、外資系大手通販事業者の電子書籍サイトで販売されているのを、被害を受けた事業者がインターネットモニタリング中に発見し、実物を購入・確認して、販売中止を申しいれた。当社でも情報漏洩案件の危機管理対応策の一つとして、インターネットモニタリングの必要性を推奨しているが、今回の事案は、その有用性が認識された事例と言える。個人間での売買可能なオークションサイト等の利用も活発化しており、堂々とインターネット上で売買される事態も増加してくる可能性がある。ネット販売事業者のチェック体制各企業もさることながら、企業の危機管理対策としてもインターネットモニタリングのほか、例えば、著作権法による差し止め等が可能となるようなデータベース作成を工夫する等の対策も重要となる。(西尾)

マイナンバー本格運用開始、普及は進むか

政府は11月2日の閣議で、マイナンバー制度に基づく「情報連携」と個人向けポータルサイト「マイナポータル」の本格運用を13日に開始することを正式決定した。今後、年金事務やネットバンキングでの残高照会や医療データの参照、災害時の避難状況の把握なども可能にすることなどが検討されている。これからの普及結果が、役所のシステムを変えただけで宝の持ち腐れに終わるか、電子行政に欠かせないインフラとなるかの分かれ目となる。また、マイナンバーが非対面での取り引きに活用されるということは、状況によっては本人確認を悪用されかねないリスクも孕み、慎重かつ厳格なリスク管理に耐えうるだけの正確性が求められる。交付率が5%で終わった住民基本台帳カードの二の舞を避けるには、安全と利便性を両立した制度の着実な運用が普及には不可欠だ。(佐藤)

ダイバーシティー経営はどうあるべきか

政府もダイバーシティー経営を後押しする風潮があり、これは「女性・外国人などを積極的に登用することで組織の活性化、企業価値の向上を図る」ことを指している。ダイバーシティー経営は組織にマイナスとの主張があるが本当か。少なくともダイバーシティーには「タスク型(能力・経験)の多様性」と「デモグラフィー型(性別、国籍等の属性)の多様性」の2つがあり、その峻別が重要だ。タスク型人材の多様性の効能は明らかだろう。企業に不可欠な知の多様性が期待できるからだ。したがって、ブームに乗り企業が盲目的に属性だけを理由とした登用をすることはリスクが大きい。一方で、企業が成長ステージの成熟期ならば環境変化に合わせた人材の多様性が不可欠だろう。多様性の多様さに着目し、企業の成長ステージにおいたダイバーシティーのあり方が求められる。(伊藤)

女性起業家支援「イバンカ基金」めぐる稚拙な批判、背景に無関心ちらつく

「米国大統領長女の基金に国税投入」との一部報道を受け、市民から批判の声があがっている。しかし、同基金は女性の起業支援を目的とした世界銀行の融資制度で、私有の基金ではない。この拠出も本年7月のG20で決定済みで、社会的意義を少なからず帯びたものであった。にもかかわらず短絡的な批判が生じる背景には、女性の社会進出をめぐる日本人の無関心と理解不足があろう。おりしも世界経済フォーラムが発表した「世界男女格差年次報告書」によれば、ジェンダーギャップ(=社会的な男女格差)において日本は144ヶ国中114位という惨状にある。労働人口の急減を迎えた日本では、女性を専業主婦に押しとどめてきた従来の社会構造からの脱却が求められている。多様な働き方・生き方をいかに担保し、人材を確保するのか。事業者の生存戦略も試されている。(山岡)

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