週刊・危機管理PLUS

危機管理のプロの観点から時事ニュースを考察しました。

AIの進化とリスク管理

AIやロボットなど技術革新が進むほど、規制当局が(実は、使用している事業者も)業務を適切にリスク評価し統制していくことが困難になる。なぜなら、誰もそのロジックを理解できない状況が到来するからだ。最近、米の調査で、オンライン融資を利用した消費者は、より深刻な負債を抱えているという驚くべき実態が指摘された。アルゴリズムの欠陥をブラックボックスのまま放置することなく、批判的に解析し、厳しく検証し、適切に管理していくことがもちろん必要だが、これは恐ろしい前兆だと言えよう。金融機関にとってAI等の活用の高度化に対応したリスク管理のあり方の検討が喫緊の課題となった。無論、その他の事業者とて対岸の火事ではない。安心・安全を担保すべく、このようなブラックボックス化に対するリスク管理に、今から取り組む必要がある。(芳賀)

今そこにあるリスクについて、国民的な議論・国会による真剣な審議を

北朝鮮の木造不審船漂着の件、神戸新聞では、「今年は11月末までに59件あり、うち18人が遺体で、42人が生きて見つかった」「海上保安庁によると、2013年以降、同様の発見は全国で年間45~80件あり、8割が11月~3月の冬場」と報道されている。ミサイル発射には国民の関心も高いが、不審船の漂着にはそこまでの関心は感じられない。武装船ではないものの、「朝鮮人民軍845部隊」のプレートが掲げられた船も北海道松前町沖で発見されている。窃盗事件も起きているし、感染症等のリスクもある。日本には6000を超える島があるが、人の住んでいるのは450弱であると指摘する専門家もいる。地理的特徴を理解しつつ、過剰反応はしないまでも、国防機関任せではなく、現実に北朝鮮の国民が生きたまま日本に漂着している点を踏まえた対応策を検討することが欠かせない。(西尾)

座間市事件の教訓:SNS規制の光と影

座間市の事件を受け、青少年ネット利用環境整備協議会は、ネット上で自殺を誘う行為などの明確な禁止や警察、カウンセラーなどの専門家との連携に関する緊急提言を発表した。ネット上のあらゆる言説や情報を規制することは不可能に近く、悪意のある利用者の言葉のやり取りだけで真意を見抜くことはある程度歳を重ねた大人でも難しい。ただ、これまで犯罪を助長する場として野放しにされてきた以上、自殺を幇助する投稿などの規制として加害者側が被害者にコンタクトを取ることの制限やチェック機能の強化は不可欠だ。自殺方法という有害情報に接する可能性を減らすとともに、自殺のリスクの程度や抱えている困難に応じて、現実や対面で支援を受けることが可能な支援機関へのつなぎや、継続的なサポートを可能にする仕組みの本格化と実現が求められる。(佐藤)

訓練からはじまるクライシスマネジメント

商業・宿泊施設における火災は、人命におよぼす被害も少なくない。火災は炎に加えて煙が上階に向かってくるため、逃げ遅れた場合は深刻だ。人は火災などの予期しない事態に直面した時、危機を正常の範囲内だと認識するバイアスが働き「大丈夫」と過小評価して逃げ遅れの原因となる。逆にいうと訓練されていない一般のお客様は、避難誘導する従業員の言動に大きく左右されるため、初期の避難指示は重要だ。指揮責任者は、出火場所や火災の程度、煙の拡散状況を把握して総合的かつ短時間での判断が必要となる。出火階や直上階の避難が最優先だが、延焼が激しい場合、人命第一の難しい判断(断念含む)が迫られる。変化する厳しい状況での訓練は、火災と同時進行の臨機応変な判断が鍛えられる。有事を想定した訓練はクライシスマネジメントの成否を決める。(伊藤)

いま一度副業・兼業の基本的な考え方を見直す

柔軟な働き方に関する検討会の「副業・兼業の推進に関するガイドライン骨子(案)」では、労働者のメリット(キャリア形成や収入)と企業のメリット(スキルの獲得や人材流出防止)が挙げられる一方、留意点として労働時間管理、秘密保持や競業避止、その他、労災、社会保険や税制がある。労働時間管理に着目すると、本業と副業・兼業のいずれも雇用関係である働き方は全体の38%(同検討会資料)であり、そのうち労働時間管理が焦点となるのは、本業と副業・兼業のいずれも雇用関係にあり、かつどちらも管理監督者でない労働者のみである。いま必要なのは、等しく割り当てられた1週間168時間の再構成だろう。自身を管理しつつ、本業の40時間以外を何にどう使うのかが重要だ。その前提は、テレワーク同様、自律した労働者であることは言うまでもない。(新飯田)

資金調達不正―バランスを欠いた組織にコンプライアンスはない

スーパーコンピュータを開発するベンチャー企業の社長らが、助成金の不正受給容疑で逮捕された。世界を相手に戦えるほどの技術を持ちながら、その裏側に重大なコンプライアンス違反があったことは残念でならない。新しい技術の開発には莫大な費用がかかる。これだけの技術があって、他に資金調達の道はなかったのか?安易な道を選べば、不正受給のみならず、出所の薄暗い資金の流入等のリスクもある。「正しい資金調達」のために力を尽くすのが、担当者の務めではないか。社長の命令一つでコンプライアンスが覆るようでは、組織としてあまりにも脆弱だ。技術だけ、社長だけ等、一部に力が偏る組織では、コンプライアンスの徹底は難しい。各部署が相互の信頼に基づき、進むべき方向に向けて役割を果たすためには、組織の力のバランスを保つ努力が必要だ。(吉原)

忍び寄るインフルエンザ禍──求められる正しい知識と集団免疫

インフルエンザが流行し始め、すでに1都11県で注意報レベルを超えている。オーストラリアでは今年500人以上が死亡しており、同じウィルス型の流行も懸念される。対策として最も効果的なのは、ワクチンの接種だ。予防段階ではウィルス型の予測が難しいものの、(本人の免疫だけでなく)集団の一定割合が接種することで感染爆発を抑止する「集団免疫」も重要な目的だ。一方で副作用などのリスクも制御する必要があり、厚労省の指針など臨床医学の正しい知識にもとづいたアセスメントが必要だ。日本ではインフルエンザワクチンについての誤解が根強く、予防医療行政においても欧米に立ち遅れている。事業者においては、正規・非正規を問わず従業員の接種率を高め、家族・取引先といった関係先への感染防止も視野に入れた積極的な取り組みが望まれよう。(山岡)

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