30秒で読める危機管理コラム

危機管理のプロの観点から時事ニュースを考察しました。

e-KYCへの期待と今後の課題

警察庁は、金融機関の口座を開設する際に義務付けられている本人確認の手続きをオンラインのやりとりだけで完結できるよう犯収法施行規則を改正するという。口座を開設する際、スマホで撮影した免許証など本人確認書類の画像と、本人の顔写真といった画像データを金融機関がオンラインで受け付けて照合して本人確認するものだ。従来の転送不要郵便による確認では、利便性を損なうだけでなく、空き家の悪用等の抜け道があった。顔認証や生体認証の導入等との組み合わせながら精度を高めていくことが今後の課題となろう。一方、犯罪者からみれば、本人確認の厳格化と精度向上は、とてもよい「隠れ蓑」を手に入れたことと同義となる。彼らは自ら直接取引せず、周辺者やその関係者を介してくるからだ。e-KYCがその威力を発揮するためには、KYCCの視点が必要だ。(芳賀)

11人が書類送検、絶えないネット中傷

昨年東名高速で起こったあおり運転事故について、デマや個人情報をネット上に書き込んだ11人が名誉毀損の容疑で書類送検された。11人が書き込んだ内容の大半はネットに投稿された文章をコピーしたもので、いずれも「ネット上のうわさを信じてしまった」というものだ。「デマの情報」をでっちあげた当事者だけでなく、それをもとにデマやウソ情報を拡散させることで加害者という立場になる。人は、情報源が定かではないのに、義憤にかられた一時的な「正義心」や「怒り」を周囲から共感を得たいと思いがちであり、書き込んだ当事者は罪の意識がないケースが目立つ。言論の自由はネット上でも保障される。しかし、名誉棄損やプライバシー侵害が許されないのは現実社会と同様であり、刑事責任を問われることもあることをあらためて認識しなければならない。(佐藤)

離職率のコントロールと人的資源の有効活用、内閣府「特集 就労に関する若者の意識」から

同調査では、収入や職場の人間関係などについて多くの若者が不安を抱いている実態が窺える。また、転職に対する質問では、転職に否定的な項目を選択した者は17.3%と2割に満たなかった。そのような意識の結果、職種への適性を理由に離職する若者が少なくない。ただ、離職の問題は、企業間格差が大きい。離職率をコントロールできないことは、人的資源を有効に活用できないことと同義で、競争的市場では勝ち抜けない。高い離職率は、採用や研修コストの上昇だけでなく、研修リターンの低下を通じ研修そのものの削減につながり、生産性の低下を招く。ただし、企業が成長する過程で必要な人材、求めるスキルも変わるため、一定の入れ替わりは組織の活性化につながる。企業は自社の人事データを客観的に分析し、職場環境や制度摩耗を見直すことが重要だ。(伊藤)

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