週刊・危機管理PLUS

危機管理のプロの観点から時事ニュースを考察しました。

本当に排除すべきものは何か

半グレや元暴力団員といった人間が犯罪の被害者となるケースが相次いでいる。今の社会が彼らのような「暴力団員でもない、カタギにもなれない中途半端な人間」を作り出しているのではないか。暴力団離脱者支援が拡がっても、「行き場のない人間」の受け皿となるような社会では、まだない。暴排の反動として、反社会的な人間を生み出してしまっているのであれば、暴排自体のあり方・枠組み、「社会的包摂」についてもう一度考え直すべき時期なのかもしれない。また、彼らの「子ども」を取り巻く環境への配慮も必要だ。その環境は否応なしに劣悪であり、「憎悪の再生産」から子どもも反社会的な人間となってしまうことは避けなければならない。「社会悪」である暴力団等の徹底的な排除は当然だが、「憎悪の再生産」の連鎖を断ち切ることも急務ではないか。(芳賀)

注意、アポ電は犯行の予兆

1月以降、東京都内で被害者に親族をかたるなどして事前に電話をかけ、金が必要だなどと言って資産状況を聞き出した上で犯行に及ぶ手口の強盗事件が相次いだ。この、アポ電(アポイント電話)は、親族、警察官、金融機関の職員らを装い、事前に資産状況や家族構成などを確かめる。アポ電で、いくらくらい金があるかを確認し、詐欺を1回で終わらせるのか、2回、3回と騙せるのかを見極める。あらかじめ強盗を狙っての犯行ではなく、条件に合わせて手口を変えているためその精度は高くなる。まずは「アポ電」という犯行前の情報収集の手口があり、犯行の予兆であるということを認識のうえ、近隣住民や家族で共有するようにして注意しなければならない。また、同様の手口は一部の地域を越えて拡がる可能性があり、警戒と注意喚起を継続する必要がある。(佐藤)

セブンイレブンが時間短縮営業の実験、フランチャイジング組織の課題

24時間営業見直しを巡る余波が大きくなっている。合法であっても社会常識と乖離があればコンプライアンス問題と捉えられる。過去に見切り販売制限訴訟に本部が敗訴し、苦肉の策で廃棄商品原価の15%を支援する制度を導入した経緯もある。標準化した商品、サービス(含営業時間)の実現はメリットであり、絶えずフランチャイジングの課題でもある。一般に成熟した加盟店は、自己の努力の過大評価やコントロール幻想に陥りやすい。このバイアスはフランチャイジングのもつ制約から自由であろうとする。一方で、本部にとって風評や訴訟は経営資源を蝕む。不満を抱えた加盟店は障害となるだけでなく、フランチャイジングそのものを破壊する。フランチャイジング全体の利益を高める為には、コミュニケーション円滑化によって積極的な解決策を探る必要がある。(伊藤)

忘れるのか、語り継ぐのか

「情熱大陸」にも取り上げられるなど、防災教育として全国的に有名なNPO法人プラスアーツの「イザ!カエルキャラバン」。もともとは阪神・淡路大震災10周年の記念事業として始まったものだ。実は当初の神戸市の依頼では「もう震災のことは忘れたい。復興した神戸の子供たちの元気な姿を発信してほしい」というものだったという。同法人理事長の永田宏和氏は「震災から10年、未来に向けた明るいイベントを開催したいという気持ちも分かったが、楽しいだけで防災を避けて通るイベントには違和感を覚えた」と当時を振り返る。防災とデザインを掛け合わせたキャラバンは、いまやJICA経由で海外に輸出されるほどに成長した。今日であの日から8年。今も2533人が不明のままだ。忘れるのか語り継ぐのか。現地に寄り添いながらこれからも考え続けたい。(大越)

ゴーン氏逮捕の本質、遠のく?

3月6日、保釈されたカルロス・ゴーン被告が12日に開かれる日産の取締役会への出席を希望しているという。弁護側の戦略によって保釈は勝ち得たが、さすがに取締役会の出席は、出席者への圧力となるので東京地裁は認めないだろう。ただ近々記者会見を開き、自らの主張を展開すると見られる。裁判では逮捕・起訴容疑である会社法違反などが認められるか、専門家の間でも意見が分かれている。この問題の一つは日産のガバナンスそのものであり、ゴーン氏、西川社長ら双方に関わっている。もう一つは、日産を救済した形のルノー(仏)と日産(日)プラス米国の今後の主導権争いである。長引く裁判の過程でゴーン氏は過去の人になっていく。その意味では、先般の保釈時の変装など危機管理的に見ると、枝葉末節の話しでしかない。(石原)

福島第一原発事故、8年経過

原発事故の完全収束・解決とは何をもって言えるのか。政府は原発をベースロード電源から外しておらず、各地の原発再稼動や原発輸出を推進している。電源別発電コスト比較では、原発の優位性が語られるが、保守管理や廃棄物処理、廃炉費用までは勘案していない。また、CO2地球温暖化犯人説も異議を唱える声も根強い。デブリの除去方法についてはお手上げの状態であり、原発から排出される高レベル放射性廃棄物や使用済み核燃料の再処理問題も進展していない。大量に発生した汚染土・汚染水の処理・再利用も止まったままだ。またNHKは福島第一原発から放出される放射性物質の量が前年比約2倍になったことを報道した。原発問題は再生可能エネルギーの買取価格や余剰電力、耐震性の問題も含め、”アンダーコントロール”にはない。(石原)

景気対策としてのアベノミクスの効果とは?

内閣府は先日、景気動向指数の1月の基調判断を従来の「足踏み」から「下方への局面変化」に下方修正した。各メディアは、中国の景気の減速が日本国内の輸出や生産を押し下げたためとしている。しかし、それだけだろうか。SMBCコンシューマーファイナンスが3月6日に発表した調査では、30~40代で「現在の貯蓄額がゼロ」との回答は23.1%(前年比6%増)になり、平均貯蓄額は195万円(同52万円減)である。一連の統計不正問題に絡み厚労省と総務省は昨年の実質賃金の伸び率がマイナスであったことを認めている。「戦後最長の景気拡大」の恩恵は消費者・国民には回っていないことが改めて分かったのである。一方、企業の内部留保額は増加を続けている。企業側は”働き方改革”の原資の確保に注力すべき時期である。(石原)

米朝首脳会談は失敗?

ハノイで開かれた二度目の米朝首脳会談は物別れに終ったが、これで米朝関係が再び緊張関係に戻るのか。トランプ政権は世界各地(シリア、サウジ、アフガン、独、韓など)からの米軍撤退を急いでいる。これはアメリカファーストと軌を一にしており、各国の対米自立を促進する。米国が反ロ・反中政策を採る中で「米国に頼るな」とのことである。ここに世界覇権を放棄するトランプの真の狙いがある。今回の米朝首脳会談の決裂はかつての6ヶ国協議のように多国間で進めるべき余地を残した。直近にトランプが米軍駐留の同盟国に対し、駐留費負担の増額を求めてきたことも同じ文脈である。一方、米国ではカーター元大統領の北朝鮮特使や日本でもアントニオ猪木議員と小沢一郎氏の訪朝が噂されている。今後大きな動きがあるかもしれない。(石原)

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