週刊・危機管理PLUS

危機管理のプロの観点から時事ニュースを考察しました。

「人」に着目したリスク管理を~サイバー攻撃の詐欺的手法への対応

トレンドマイクロは、フィッシング詐欺被害が激増したこと等を受け、「日本では、広く一般の利用者を狙う攻撃で、人間の心理を巧みに騙す手口の継続的な多様化が見られ」たと指摘する。また、法人を狙う攻撃では「ビジネスメール詐欺」、とりわけ「CEO詐欺」が世界的に増加、日本語化されたCEO詐欺メールが初めて確認されたほか、実際の被害事例も発覚したという。さらに、「ギフトカード詐欺」と呼ばれる新たな手口の活発化にFBIが注意喚起を出している。一方、高度化するサイバー攻撃への対策として、ダークウェブ等を巡回し犯罪者が攻撃を仕掛ける予兆をつかむ「脅威インテリジェンス」と呼ばれる手法が注目されている。詐欺的手法の高度化やハード対策の限界を乗り越えるため、「人」の心理・行為に着目したリスク管理の重要性が増していると言えよう。(芳賀)

依然として高水準、SNSによる被害児童

警察庁によると、昨年1年間にSNSを利用した性犯罪などの被害に遭った18歳未満の子供は1811人で、淫行などの他、児童買春、強制性交等と略取誘拐、わいせつが多くの割合を占めている。被疑者と会った理由として、「優しかった、相談にのってくれた」とあるように、警察官や話のわかる相談相手を騙り、時間と手間をかけて、信用させて、そのまま会う約束を取り付ける。事件に巻き込まれるという意味では、ネット上の出会いは間違いなくその確率が高いと言える。フィルタリングの活用や悪質な利用者による複数のアカウント作成の防止などの対策もあるが、このような犯罪事案は”知って備える”ことも大切だ。また、子供が、犯罪に巻き込まれないための相応の知識と判断力を身につけるためには、危険性を認識してもらえるよう丁寧で十分な教育・周知が求められる。(佐藤)

東京福祉大学の不適切な管理運営、留学生不明問題も調査へ

過去に実刑判決を受けた元総長を大学経営に関与させたとして、文科省は今年度の私学補助金を50%減額する方針を固めた。同大学は、留学生1400人の所在不明も問題となっている。通学実績がないにもかかわらず、定員充足のため留学生を受け入れている疑いがある。留学生の適切な受け入れや在籍管理について、文科省は2017年に各大学に通知を出すなど、留学生の所在不明や犯罪への関与などが問題化していた。資格外活動による留学資格のアルバイト就労は急増している。就労により収入を期待する学生やこれを後押しする斡旋業者の存在、人材不足で外国人に期待する労働現場のニーズが背景にあろう。アルバイトに傾倒した結果、退学や留学の借金返済のため、犯罪に関与する懸念が指摘されている。外国人を受け入れる企業にもリスク管理を含めたノウハウが必要だ。(伊藤)

揺らぐ第三者委への信認

外部の第三者調査委員会は不祥事を起こした企業や組織がその根本的な原因究明や実効性のある再発防止策の提言を受けるために設置される。しかし、ここのところ依頼主である企業などの意を汲む、中途半端な報告書の提出が目立つ。厚労省の毎月勤労統計問題やアイドルグループNGT48事件などは最たるものだ。そもそも組織内の調査能力や自浄作用が高ければ外部に委託するまでもない。しかし、現実は専門家などで構成される調査委が設置される。第三者である以上、中立であることは論を俟たない。したがって、第三者委には当該企業や組織以上の透明性が求められ、社会や全てのステークホルダーへの重大な説明責任を有する。報酬や構成メンバーはもちろんのこと、調査委自らの記者会見などは当然不可避であり、単なる幕引きは許されない。(石原)

「ゲノム編集」食品、表示義務化だけでよいのか

「ゲノム(全遺伝情報)編集」技術を使った食品に同技術を使ったとする表示の義務化に向けて政府が検討に入った。今後、市場に流通する可能性が出てきたわけだが、GMO(遺伝子組み換え食品)と違い、食品衛生法による安全審査を受ける必要がない。消費者団体からは「時期尚早」などの反対意見が表明されている。ゲノム編集とは、ゲノムの狙った場所を切断し、特定の遺伝子を働かなくさせたり、別の塩基配列により新たな生命機能を持たせたりする技術だが、自然界で起こる突然変異との区別が付かないため、その表示に関しては、厳しいEUと緩やかな米国といういつもの分かれ方だ。消費者の安心を担保することに加え、GMO含め、世界の飢餓に苦しむ貧困国にどれほど貢献できているのかも信頼に足る情報が必要だ。(石原)

企業のガバナンスのあり方が問われる

総合住設・建材メーカーのLIXILに激震が走っている。昨年行われた不自然なCEO更迭について先週、外資系機関投資家らがノーを突きつけ、潮田洋一郎会長兼CEOと山梨広一COOの取締役解任を目的とする臨時株主総会の招集請求を行ったのだ。「ガバナンス不全」を理由にCEOの解任動議が大株主から出されるのは、日本では極めて珍しい事例と言える。今回の争点の1つが「社外取締役」のあり方だ。社外取締役とは本来、株主の利益を代弁するために設置されたはずだが、今回の第三者委員会報告では「限りなくクロに近い実態」が認められたものの、社外取締役は「法的には問題ない」という見解を表明してしまった。機関投資家らは「法的に有効かどうかを論じる以前に、十二分に株主の信頼を裏切った」と手厳しい。企業の新しいガバナンスのあり方が、問われ始めている。(大越)

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