30秒で読める危機管理コラム

危機管理のプロの観点から時事ニュースを考察しました。

「正しいことを正しいやり方で正しく行う」ということ

コンプライアンス・リスク管理は、「やってはいけないことをやらない」だけでは不十分であり、「正しいことを正しいやり方で正しく行う」ところまで高めなければならない。前者の受け身の意識は、不作為の横行を許し、自浄作用も働かず、むしろ適切なコンプライアンス・リスク管理を阻害し不祥事を生む土壌となる。一方で、後者は、組織の意思決定・行動が、個人の「常識・良識・見識・知識」や「社会的規範やルール」に照らして何ら違和感のない状況が前提だ。不作為の連鎖を断つためには、「正しいこと」の共通認識のもと、個人の自発性や感情・感覚が組織運営に発揮される社風(企業風土)や正しいことにポジティブな評価を与える仕組みを備え、常に社会の目を意識するために人材や価値観の多様性に着目するという柔軟な組織のあり様が求められる。(芳賀)

偽装アドレス、信販系クレジットカード会社を騙る詐欺が増加

フィッシング対策協議会によると、2020年12月の偽メールなどの詐欺に関する報告は3万2,171件で、悪用されたブランドとして、Amazon、三井住友カード、楽天、MyJCB、アプラス(新生銀行カード)を騙るものが多く、これら上位5ブランドは報告数全体の約86.0%を占めている。また、ここ最近は差出人に正規メールアドレス/ドメインを偽装した「なりすまし」メールも多く確認されている。一見、正しいアドレスから届いた場合でも、偽装している可能性があり、仕事用・私用に関わらず、受信することがあるだろう。メールには、このような詐欺の手口で、偽物や詐欺行為が紛れ込むリスクや脅威を認識してほしい。「本文が不自然ではないか」「安易にリンクをクリックしない」「添付ファイルやURLが正規のものかどうか」など注意と確認を怠らないようにする必要がある。(佐藤)

コロナ禍における自店のロスの発生要因の変化を探れ

コロナ禍の経済的影響により、店舗におけるロスの発生要因が変化している可能性がある。20年に希望退職を募集した企業数はリーマンショック直後の09年に次ぐ水準である。20年11月の完全失業者数は195万人と前年同月に比べ44万人の増加し10か月連続の増加である。これも会社都合による離職が目立つ。失業率と犯罪発生率の研究(大竹・小原[2010]「失業率と犯罪発生率の関係」)によると、失業率と犯罪発生率は正の相関関係にある。失業率が増加するとそれに比例して犯罪率が増加する。特に「窃盗」が他の犯罪種別に比べて著しく増加する。店舗では万引きと従業員不正によるロスのリスクが高まっている。加えて、従業員からのコロナ関連の内部通報が増え、あらたな労務関連のリスクにも対応が必要だ。専門家による視点で自店を診断し、早めの対策が有効である。(伊藤)

危機管理人材の育成が急務だ

1995年1月17日に発生した阪神・淡路大震災から昨日で26年を迎えた。亡くなられた方には改めて、心から哀悼の意を表したい。当時の首相は日本社会党の村山富市氏。政府の対応の遅れに非難が集中した。同年の地下鉄サリン事件なども受け、日本の危機管理の在り方が問われた年となった。その時の教訓から内閣危機管理監や危機管理センター、情報集約センターなど国防を除く部分の政府の危機管理体制が整備され、自治体ごとの危機管理体制も強化されてきた。当時と比べると隔世の感がある一方で、日本の危機管理体制の本格的な歴史は、まだ誕生してから四半世紀しか過ぎていないことに気づかされる。今回の新型コロナへの政府の後手後手の対策を見ても分かるように、危機が発生してから対応するのでは不十分だ。危機管理人材の育成が、この国の急務といえる。(大越)

営業秘密流出リスクへの対応は十分か

携帯電話会社の秘密情報を社外に持ち出したとして、警察は、元社員を不正競争防止法違反(営業秘密の領得)容疑で逮捕した。個人が、図利加害目的で、管理侵害行為により営業秘密を取得するなどすると、同法により、10年以下の懲役若しくは2000万円以下の罰金又はこれを併科すると規定されている。また、法人に関して、秘密情報提供先の法人の従業員等が、不正に営業秘密を使うなどした場合は、法人にも罰金を科す規定もある。一般的な捜査手法で言うと、本件では、被疑者と同じ態様で転職した人も、犯罪捜査の参考(人)として調べられるかもしれない。社内への影響は大となる。営業秘密流出を防ぐ抑止策として、秘密保持契約や競業避止合意書等は有効ではあるが、「悪意」というリスクに対しては、利用パソコンのログ常時監視なども、必要となってくる。(中西)

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