30秒で読める危機管理コラム

危機管理のプロの観点から時事ニュースを考察しました。

今あらためて反社リスクの重大性を認識したい

福岡県・福岡市・北九州市は、「公共事業からの暴排」実現のため、暴力関係事業者に対する指名停止措置等の状況を相当の頻度で公表している。先日、ある地場の優良企業が、社名公表により2週間後に倒産したことが判明した。代表者の道仁会関係者との密接交際が原因だが、事実が明らかになるや否や、メインバンクはじめ融資を受けていた地銀3行が相次いで「取引を停止して口座を凍結した」ことが引き金となったものだ。反社リスクが「企業存続にかかる重大なリスク」であることはもはや論を俟たない。代表者の認識の甘さがすべてだが、銀行や取引先などは、本件事実を事前に認知できていたのかもまた重要な論点だ。警察の認定により暴排条項の適用は容易になるが、それ以前に、厳格な顧客管理を自立的・自律的に実効性高く行えていたかも問われよう。(芳賀)

▼福岡県 暴力団関係事業者に対する指名停止措置等一覧表

▼福岡市 競争入札参加資格停止措置及び排除措置一覧

▼北九州市 福岡県警察からの暴力団との関係を有する事業者の通報について

池田小児童殺傷事件から20年、ソフト・ハードの両面から憎悪に対処せよ

池田小児童殺傷事件から20年が経過した。抵抗できない1、2年生8人が犠牲になった。抵抗できない弱者を狙った犯行では、相模原障害者殺傷事件が挙げられる。両事件は弱者への攻撃、施設への侵入という点で共通する。また、スクールバス乗り場での凶行だった川崎殺傷事件では、犯人が犯行直後自殺している。これらの事件は果たして防げなかったのか。組織的テロと異なり、攻撃そのものや動機となる憎悪は、事前に犯行の兆候となる言動が周囲に発信されている場合が少なくない。兆候となるそれぞれの情報を分断することなく分析し、いかに扱い対処につなげるかは重要だ。一方、「死んでもよい」と思っている自爆テロ型は阻止できない。緊張状態を「震え」として検知する技術がある。捜査カメラではなく、犯罪者を発見するソフトの仕組みにも期待する。(伊藤)

線状降水帯に関する「顕著な大雨に関する情報」とは

気象庁は6月17日から、線状降水帯に関する新たな情報として「顕著な大雨に関する情報」を発表する。筆者の記憶によると線状降水帯とは2015年に発生した常総市水害あたりから頻繁に使用されるようになった単語で、前線や台風が重なったことにより線状の降水帯が発生し、非常に激しい雨が同じ場所で降り続いている状況を指す。とはいえ、実は線状降水帯についてはこれまで専門家の間でも様々な定義が使われており、その基準が明確ではなかった。このような状況を受け、気象庁は線状降水帯の基準を明確化。(1)解析雨量(5kmメッシュ)において前3時間積算降水量が100mm以上の分布域の面積が500km2以上、(2)-(1)の形状が線状である(長軸・短軸比2.5以上)-など4つの指標を設け、線状降水帯という言葉を使いやすくした。今後の天気予報を注意深く観察したい。(大越)

▼今年の出水期から実施する各取組みについて(気象庁)

恐怖!ドッペルゲンガードメイン

暑くなってきたので怪談を一つ。メールを送信し、エラーが返っていないので「届いたもの」と思っていたら、相手から「届いていない!」などと言われたことはないだろうか?そんな時は、送信したメールアドレスを、1文字ずつ、じっくり確認してほしい。例えば、「gmail.com」に送るつもりが、うっかり「gmai.com」に送っていないか?うっかり誤入力しても気付かない、そっくりさんドメインを「ドッペルゲンガードメイン」と呼ぶそうな。中でも「gmai.com」は有名で、ここへ送られたメールは、宛先不明でもエラーメッセージを返すことなく、全てどこかに取り込まれるという。あなたのメールは、どこかの誰かに読まれているかもしれないのだ…。この現代の怪談はフィクションではない。アドレスはしっかり確認する、そして重要な内容は初メールでは送らないことが肝要だ。(吉原)

G7の不思議

英国で開催されていたG7サミットが13日終了したが、このサミットに違和感を覚えた方はいないだろうか。各国の入国隔離措置は、それぞれに異なるが、大体1~2週間に設定されているはずだ。今回の各国首脳への対応はどうだったのだろうか。今回は、議長国の英、日、米、加、独、仏、伊、EUに加え、豪、印、韓、南アの4か国が招待された。いずれの国も首脳一人だけが参加したわけではない。随行員や事務方、メディア関係者などを含めれば、相当な数に上ったはずだ。しかし、彼らは隔離措置を取られていない。また、記念写真では、申し訳なさそうなレベルのソーシャルディスタンスを保っているが、それもその後は密接し、歓談している。その後、エリザベス女王が入ってきたときも同様だ。また、終始誰もマスクをしていない。これは一体何を意味するのか。(石原)

▼G7首脳、環境施設で歓迎会 女王ら「王室外交」展開―英サミット

メディアは現在の報道姿勢を改めよ

新型コロナ関連で何故メディアは固定化された“専門家"しか登場させないのか。どのような言説にも必ず反対意見を含め両論ある。“煽り報道だけ"との批判に応えるためにもSARS-CoV-2 、COVID-19、mRNAワクチンの存在・感染力・症例実態・有効性/安全性等について相対立する立場の専門家同士の討論の場を設定すべきだ。討論は1対1でも3対3でもよく、医療関係に詳しいジャーナリスト等をMCに起用し、最終判断は視聴者に任せ、継続的に徹底討論の場を提供する役割を再認識すべきだ。メディアに登場しない、或いは一時登場したがその後、めっきり姿を見せなくなった専門家の中にはネットに積極的に情報提供している方も多いが、何故か動画などが削除されている。フェイクニュースやファクトチェックという言葉が一方に都合良く利用されている現状は深刻なリスクである。(石原)

職場のハラスメント問題は、企業全体の課題である認識を

国内大手企業で起こったパワハラ起因の自殺事案の労災認定を受け、企業トップが社内外にハラスメント撲滅の強いメッセージを発信した。経営幹部は、労災認定が為されるまで、このパワハラの事実も、行為者である上司のパワハラが若手社員の間でよく知られていたことも知らなかったという。厚労省の令和2年ハラスメント調査では、ハラスメントを知った後の職場の対応として、パワハラでは47%、セクハラでは34%の労働者が「(会社は)何もしなかった」と回答している。職場のハラスメント相談やハラスメント関連の内部通報の報告が経営トップ層まで上がらないことも少なくない。ハラスメントは被害者・行為者だけの問題ではない。周囲に影響を与え、生産性を下げる原因になる。情報はトップまで上げ、「会社一丸となって撲滅に取組む」という認識が必要だ。(加倉井)

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