30秒で読める危機管理コラム

危機管理のプロの観点から時事ニュースを考察しました。

2023年06月05日号

【もくじ】―――――――――――――――――――

「何が正しいか」を問い続けることが重要だ

哲学者の戸谷洋志氏は、著書「スマートな悪」で、余計な手続きを排除する「スマート化」に価値を置く社会に警鐘を鳴らす。同氏は、生成AI問題の本質について、「スマート化するというのは、問題の解決に向けて何かを合理的に、最適化していくことです。その過程で、人間はそれ以外の可能性を考えられなくなり、「何が正しいか」を考える良心が停止してしまいます。つまり、「私はもうそれをする以外にない」のです。さらに言えば、私がこのようにシステムに最適化しているのは私の責任ではないと考えるようになるのです。それこそ、私がスマートさの中に潜んでいると考える倫理的な「悪」の問題です」と喝破する。「何が正しいか」を常に問い、思考停止に陥らないことが重要だが、「そうするしかない」「自分の責任ではない」からの脱却は容易ではない。(芳賀)

▼人間が生成AIに依存したら 責任はどこへ? 哲学者が懸念する未来(2023年6月4日付毎日新聞)

今年もまたどこかで必ず水害は起こる

台風2号と梅雨前線の影響による大雨は、6月2~3日にかけて24時間降雨量として8県16地点で観測史上最大の大雨をもたらした。気象庁によると観測史上最大となったのは三重県鳥羽市で490.5ミリ、愛知県田原市で451.5ミリのほか、和歌山、奈良、静岡、長野、埼玉、茨城。愛知県豊橋市で1人が亡くなり7県で30人が重軽傷を負った。被害者の方には心から哀悼の意を表するとともに、一刻も早い被災地の復旧を願う。ただ、気をつけたいのはまだこれからだ。過去5年間の水害を見てみると、18年6月28日~7月8日の西日本豪雨をはじめ、19年6月28日~7月4日にかけての九州南部大雨、20年の令和2年7月豪雨などほとんどが6月末から7月にかけての時期と9~10月の台風時期に発生している。「今年もまたどこかで必ず水害は起こる」と考え、備えを怠らないようにしたい。(大越)

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