30秒で読める危機管理コラム

危機管理のプロの観点から時事ニュースを考察しました。

肝心なものは目に見えない(3)~「匿名・流動型犯罪グループ」を可視化せよ

「匿名・流動型犯罪グループ」は、これまでの反社会的勢力の概念・捉え方をさらに拡大するものだ。反社会的勢力と一般人(シロ)との境界が完全に溶け合い、渾然一体とした状況となっている。その捉え方として「(暴力団等と何らかの関係が疑われ)関係を持つべきでない相手」とすることに変わりはないが、実務的には困難さが増している。明確に「匿名・流動型犯罪グループ」であるとする報道は多くないからだ。だが、丹念に報道内容を精査することで、見極めが可能となる場合もある。重要なことは、反社DBやネット風評検索、記事検索を表面的に実施するだけではその姿が見えてこないという点だ。できる限り多くの報道等の情報を、リスクセンスを発揮して見極めていくこと。実はこうした丁寧なプロセスの積み重ねこそが反社チェックの本質でもある。(芳賀)

業務総量統制とリスクマネジメント

有資格者や技術者の不足、ミドルマネジメント層の業務過多。三菱電機、ビッグモーター、ダイハツ工業、大和ハウス工業など、不祥事を起こした会社の第三者委員会の調査報告書を読むと、必要な能力を備えた人が足りなかった、または業務量が多すぎたことが不正の原因になっている。人が足りない状態が不正を生むわけだ。多くの企業での人不足が頻繁に報道される今、企業は不正のリスクマネジメントに力点を傾ける必要があるだろう。さて、改善案だが、トータルボリュームコントロールの意思決定機関を設計してみるのはどうだろう。会社全体の業務総量を数値化し、有資格者や技術者、管理職に業務が集中していないかを分析。高さや濃さに応じて回避、低減、移転、受容を決定する。「業務総量統制委員会」こんな機関があったほうがよいかもしれない。(宮本)

福島原発で220億ベクレルの漏水事故

東電は福島第一原発の処理施設から、大量の排水が漏れる事故があり、220億ベクレルの放射性物質が土壌に浸透したと発表した。東電の試算では漏洩した水の量は約5.5トンで、セシウムやストロンチウムなど220億ベクレルの放射性物質を含んでいる可能性があるという。これでまた福島産水産物への風評被害が拡大しないよう願うばかりだが、このような事故が繰り返されると、諸外国含め不安は拭い切れないのも事実だ。福島第一原発では、去年8月に2トンの漏水事故、10月には汚染水に触れた作業員の入院事故を起こしている。今回は、点検中の汚染水浄化装置の排出口から水が漏洩、濾過水で洗い流す作業をしていた際に、本来閉めなければいけない弁が16個中10個開いていたとのことだが、閉じているはずの弁が6割以上も開いていたとはどういうことなのだろうか。(石原)

▼汚染水含む5.5トン、構内に漏えい 東電福島第1原発の浄化装置 最大220億ベクレル

政治家に説明責任を求めるのは所詮無理な話か

政治資金パーティー問題で、秘書が政治資金規正法違反で略式起訴された二階俊博氏は、幹事長在任期間5年の間に党から50億円の政策活動費を受け取っていた。野党からその使途を問われた岸田首相は「全額、政治活動のための支出と認識している」として明言を避けた。自民党国会議員を対象にしたアンケートの結果も未だ公表されていない。そこに今回"裏金"化したカネを受け取っていた自民党議員は86人に上ることが、日本テレビの取材で判明した。"裏金"が政治団体の収入であれば非課税扱いだが、「政治資金」ではなく議員個人の収入だと国税当局によって認定されれば個人所得として税金がかかり、所得税の脱税に当たる可能性がある。検察・国税共々、"忖度"は不要だ。政治がこのレベルだから、経済界にコンプライアンスや説明責任が浸透しないのか。(石原)

▼【独自取材】自民党"裏金"リスト86人 最も多い使い道「事務所で保管」 脱税の可能性?

災害関連死を防ぐために

能登半島地震で、高齢者や障害者など一般の避難所生活では支障をきたす要配慮者に対して、特別の配慮がなされた福祉避難所の開設が進んでいない。被害が大きかった7市町村では、実際に開設されたのは計画の2割強であると13日付読売新聞で報じている。同紙の調査では、7市町村で最大86カ所開設するはずだったが、実際には20カ所どまり。珠洲市では1カ所も開設できていない。職員が被災してスタッフが確保できない施設や、開設しても新型コロナの影響などで閉鎖した施設もあるという。2016年に発生した熊本地震では家屋の倒壊などによる直接死が50人だったのに対し、その後の避難生活による健康悪化などで亡くなる「災害関連死」が200人を超え、専門家の間に深い課題を残した。関連死のうち8割が70歳以上だった。同じ過ちを繰り返さぬよう注意が必要だ。(大越)

「思い」が伝わる文章に、再発防止を心より願う

芦原妃名子先生の訃報に対し、小学館の「第一コミック局編集者一同」が出したコメントを読んだ。強く感じたのは、誰かを責めるよりも「組織の問題」として捉え、真の再発防止を目指したいというメッセージ。そして心から先生の死を悲しんでいる気持ちだ。テクニックとしてではなく、心の底からあふれ出た「Iメッセージ」(ここではWeだが)は響く。多くの組織の利害が絡む問題は、解決も容易ではないだろう。それでも諦めず、なかったことにせず、関係者の一人一人が「自分ごと」として受け止め、できることを確実に行うことが重要と思う。また、「ドラマを楽しんでしまったこと」に罪悪感を抱く人もいる。そんな人にも配慮されたコメントであったことに感服した。そう、漫画もドラマも、ライブもバラエティも、安心して楽しめる世界を心から願う。(吉原)

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