30秒で読める危機管理コラム

危機管理のプロの観点から時事ニュースを考察しました。

あらためて「つながり」の重要性を認識したい~テロリスク対策と孤独・孤立対策推進法施行

企業におけるテロリスク対策は、(リアリティのない)AML/CFTの取組みも含め、さほど深化していると言えない状況だ。経団連は、2017年11月改定の企業行動憲章において、テロやサイバー攻撃などへの組織的な危機管理を企業に求めている。具体的には、「テロの脅威に対する危機管理と対策に取り組む」「テロや犯罪リスクを洗い出し、それぞれのリスクを評価し、優先的に対策を講じるリスクを決定する」「テロ対策に向けた体制構築や危機管理マニュアルの策定や既存マニュアルの見直しなどを行う」ことなどを示すが、これでも十分ではない。さらにテロリスク対策には、日本では特に社会全体における孤独・孤立対策(つながりの重要性)も極めて重要な視点だ。2024年4月、孤独・孤立対策推進法が施行される。正に「社会全体の課題」として取り組むことが求められる。(芳賀)

東京都「カスタマーハラスメント防止条例」の制定にみる茶番化懸念

東京都の小池都知事は、カスタマーハラスメントを禁止する条例を制定することを発表した。カスハラ被害が深刻化している現状を踏まえると、条例制定はよい取り組みだが、同条例には罰則を設けないとのこと。罰則がなければ、カスハラからの被害防止の実効性はない。大切なのは、知事の政治的アピールや検討メンバーの面子ではなく、実効性を担保して、カスハラの被害の防止することだ。カスハラ行為者は、罰則をもって対処しなければ、社会的損失も減らすことはできない。罰則を設けないのは、カスハラの定義や線引きが難しいからとのことだが、それは現場を知らないメンバーが、定義をどうするかと言葉をこねくり回しているからにほかならない。効果的な定義・類型化や排除のロジック構築は可能だ。専門家として「茶番」にならないことを祈るばかりだ。(西尾)

カスハラ被害の実態を踏まえると、罰則付き条例の制定はマスト

東京都「カスタマーハラスメント防止条例」。罰則を設けない理由として、検討部会は、更に「刑法の適用が可能」との理由を挙げる。確かにカスハラにあたるものの一部は刑法の適用が可能だが、それは本当に極一部だ。そもそもカスハラの大部分が刑法の適用が難しい(警察が事件として扱えない)からこそ、ここまで事態が深刻化しているのだ。検討部会が刑法の適用でカスハラに対処できると考えているなら、それこそ「現場や実態を全くわかっていない」と言わざるを得ない。福岡県警では警察官に対するカスハラ対応マニュアルを作成しているが、正に刑法が使えないことの証左だ。刑法の適用が難しいからこそ、迷惑防止条例のような罰則を伴う条例にしないと、カスハラからの被害防止は実現できない。被害防止が真の目的なら、罰則付きの条例化がマストだ。(西尾)

カスハラの類型化は可能だ。厚労省の定義に引きずられ、その本質を見誤るな

カスハラについては、内容面で過剰な場合は「不当要求」と整理して「クレーム」と区別し、「ハラスメント」である以上、本来は「行為者の言動」にフォーカスすべきだ。そしてパワハラやセクハラと同様、優越的地位を背景とした圧力や反復継続性がその本質にあることに鑑みれば、カスハラの態様は4つに分類できる。「①顧客として優遇を求めることを目的とする言動(優越的地位の濫用)」、「②不当・過剰・法外な要求、社会通念上相当の範囲を超える対応の強要、コンプライアンス違反の強要」、「③職務妨害行為(就業環境又は業務推進阻害行為)」、「④担当者の尊厳を傷つける行為(人格否定・意思決定権の侵害)」だ。民間企業ではこれらを参考にカスハラの定義・類型化が進んでいるが、犯罪類型化ができない検討部会の「有識者」とは、一体…。(西尾)

能登半島地震、引き続き強い揺れを伴う地震に注意

気象庁は2月22日、「令和6年能登半島地震について」(第19報)をホームページで公表した。概要としては「地震活動は依然として活発な状態であり、今後1週間程度、最大震度5弱程度以上の地震に注意すること」とし、強い揺れを伴う地震への注意を呼び掛けている。1月1日に発生したM7.6の地震の発生前と比較すると、石川県能登地方ではこの1週間(2月15日以降)でも震度1以上を33回観測するなど、地震活動は依然として活発な状態だ。最大震度5強や6弱以上の地震についても、平常時と比べると依然として発生しやすい状況にあるという。1月1日16時以降、震度1以上を観測した地震は1675回。(震度7:1回 震度6弱:2回 震度5強:8回 震度5弱:7回 震度4:48回 震度3:168回 震度2:429回 震度1:1012回)。引き続き、地震への警戒を継続して欲しい。(大越)

ヒアリングの限界を意識し、適切な対応を!

例えば「上司にサービス残業を強要された」と内部通報があった場合。何を言われたか、どう強要されたかを通報者から丁寧に聴き、周囲の人に強要の事実を確認して、その強要がパワハラに該当するかを審議するのも、通報への対応には違いない。しかしそれが最適だろうか。ヒアリングで聴けるのは「事実そのもの」ではなく、「事実をその人がどう認識したか」であり、実際にサービス残業が発生していたか否かはデータを確認しなければわからない。また伝えたいことを正確に言語化することは難しく、発した言葉が真の訴えを隠してしまうこともある。表面的な訴えはサービス残業の「強要」でも、「サービス残業せざるを得ない環境の改善」が望みなら、パワハラ云々の議論ばかりでは、真の再発防止に至らない。ヒアリングの限界を理解し、対応を検討すべきだ。(吉原)

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