30秒で読める危機管理コラム

危機管理のプロの観点から時事ニュースを考察しました。

ギャンブル依存症対策とスポーツ賭博合法化

水原一平氏の違法賭博疑惑で、ギャンブル依存症やスポーツ賭博などが話題となっている。ギャンブル依存症を含む「依存症」は誰でもなり得る「病気」であり、厳罰ではなく適切なケアが必要であること、日本からのオンラインカジノは違法であることがあらためて広く認識されることが期待される。一方、日本はG7で唯一スポーツ賭博を解禁していないが、すでに日本国内で年間20兆円以上にも上るお金がギャンブルに投じられている現実がある。また、すでにプロ野球など日本のスポーツが海外で賭博の対象になり、総額は年間5~6兆円に上るほか、違法なオンラインカジノにより相当の額が海外に流出している。合法化は犯罪組織の資金源への打撃や脱税など違法な資金の流れを透明化するメリットもある。依存症対策や解禁について冷静な議論を始めてよい時期だ。(芳賀)

カスハラ対策強化を契機にリスクマネジメントも見直そう

厚労省によるカスハラ対策企業マニュアルの公開、東京都によるカスハラ防止条例制定の動きなど、行政機関が事業者に対しカスハラ対策を促す動きを受けて、多くの会社で対策の実行、強化の検討が進んでいるとみている。対策を検討するにあたりおすすめしたいことがある。“カスハラ分野だけの対策強化”をめざすのではなく「店舗・事業所運営リスク全般の対策強化」に拡げて検討することだ。店舗等の運営リスクはカスハラだけではない。万引き、落書き、長時間の迷惑駐車など、客による迷惑行為のリスク。障がい者への配慮を適切に実行できていないことによるコンプライアンスリスク、店員による内部不正の放置によるロス拡大のリスク。せっかく対策を講じるなら、この機会に店舗や事業所運営のリスクを改めて洗い出したうえで、検討を進めてはどうだろう。(宮本)

政界不祥事と経済界不祥事の相違点

自民党派閥の政治資金パーティー裏金問題では、トップである岸田総理総裁の責任を問う声は中途半端に終わり、処分も逃れた格好だ。現状の「監査」がどこまで徹底されるかは、全くもって不透明である。そもそも政党交付金は何のために導入されたのか。一方、民間企業の場合はそうはいかない。企業では自らが引き起こした不祥事に関しては言わずもがなだが、パーティー券購入や政治献金が自社の掲げるコンプライアンス方針やESG、SDGs経営に照らして問題がないのか、“社会の眼”から見てどうなのかHPで記載すべきである。株主総会の議題になってもおかしくないし、少なくとも、サスティナビリティ・レポートには、その有無と是非の判断を明確にすべきである。この問題の最大の再発防止策は、パーティー券の不購入・政治献金の廃止であることは間違いない。(石原)

台湾東部地震に学ぶ

台湾東部海域で今月3日に発生したM7.7の大地震について、その後の迅速な復興に注目が集まっている。プライベートを保つことができる間仕切りが引かれた避難所は発災日当日に設置され、野菜の入った弁当や飲み物が届けられた。3日後までには子供たちが遊ぶ場所や、避難者がマッサージを受けるスペースも設けられた。2次被害を防ぐため、倒壊したビルの解体作業は発災当日から開始している。台湾では1999年に大きな地震があり、都市部などで2400人以上の犠牲者を出したが、その時の教訓が生きているという。避難所運営を担当した花蓮市の職員は、「政府もNGOも役割をわかっていたので、迅速に役割分担をして避難所の設置ができた」と話す。能登半島地震とは地理的条件が大きく違うため一概に比較はできないが、この復興のスピード感を我々も目指す必要がある。(大越)

就業規則の改定は、自社の働き方を最適化するチャンス~就業規則改定コンサルに思うこと~

法改正の対応もままならない就業規則を放置してはいけない。しかし自社の規程の何が問題で、どう変更するかを細かく確認・検討することは非常に骨が折れる。いっそ適当な雛型を持ってきて置き換えた方が簡単…と思われがちだが、それで不利益変更を強引に進めたり、他規定との重複や齟齬が生じたり、自社の特性や文化に合わない規程になったりすれば、かえって問題だ。法的には白でも、自社に合わない規程は軽視されがち。会社と従業員の約束事である就業規則が形骸化すれば、労働と賃金が見合わなくなったり、規定に基づかない懲戒が横行したり、逆に規定の不備で懲戒が機能しなくなったりと、職場の秩序は乱れ、労使の信頼関係も崩壊してしまう。就業規則の改定は、自社の文化やビジネスモデルと真摯に向き合う機会として捉え、最適を探るべきと思う。(吉原)

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