30秒で読める危機管理コラム

危機管理のプロの観点から時事ニュースを考察しました。

人間中心のAI社会の実現について理解を深めたい

2024年は世界70カ国・地域以上で大型選挙が行われる「選挙イヤー」だが、SNSを通じて虚偽情報やデマなどを拡散し、世論操作を行う「インフルエンスオペレーション(影響力工作)」に警戒する必要がある。AIの進化によって偽情報が簡単に作られる一方で、サイバー攻撃のように明確な人的被害や物的被害が確認しにくく、表面化しにくい点は脅威だ。私たちは情報リテラシーを向上させる必要があるが、そもそもAI がもたらす社会的リスクの低減を図り、AI のイノベーション及び活用を促進しながら「共存共栄」していく道を模索することが本筋だ。まずは「AI事業者ガイドライン」が掲げる3つの基本理念「人間の尊厳が尊重される社会」「多様な背景を持つ人々が多様な幸せを追求できる社会」「持続可能な社会」の実現に向けてその理念を共有することから始めたい。(芳賀)

▼AI事業者ガイドライン(第1.0版)

能登半島地震における公費解体を円滑に行うために

5月28日、「公費解体・撤去に関する申請手続等の円滑な実施について」という事務連絡が環境省・法務省より公表された。公費解体とは、災害などで建物性が認められなくなった全壊、もしくは半壊した家屋に対し、公費により解体を可能とするもの。これまでは所有者全員の同意が必要で、建物所有者は故人の登記が残っているケースがあったり、複数所有者がいたりした場合に申請手続きが難しくなる場合が多かった。事務連絡では、所有者全員の同意を得なくても公費解体を可能とした。報道によると、地震から5カ月が経過した5月末時点でも1万5614棟の申請のうち、解体撤去が完了したのは346棟とおよそ2%にとどまる。連絡では「思い出の品など必要なものが持ち出されていること」を市町村が確認することも求めている。今後の撤去作業の円滑化に期待したい。(大越)

▼令和6年(2024年)能登半島地震における被災建物の解体・撤去について(石川県)

「どこまでなら言ってよいか」ではない。「どうしたらできるか」だ。

ハラスメント防止研修のご依頼で、「どこまでなら言ってよいかを示してほしい」との要望を受けることが度々ある。上司は指導のつもりでもパワハラだと訴える部下がいたり、パワハラだと言われるのを恐れて指導できなくなっている上司がいたりという状況が想像されるが、「どこまでなら」と言われても、そもそも「パワハラ」は「指導」の延長線上にはないはずだ。した/しなかった「事」を対象とする指導と、「人」を対象にしたハラスメントでは、明らかに次元が異なる。「指導」とは、望ましい方向に導くことであり、「指摘」や「非難」では導けない。「言っていることはもっともだが、言い方が悪い」のではなく、「どのような状態が望ましく、どうしたらそうできるか」を一緒に考え、考えた策を実行に移せるよう、「導く」姿勢が足りないのだと思う。

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