30秒で読める危機管理コラム

危機管理のプロの観点から時事ニュースを考察しました。

シンギュラリティは近い~AIと人間のかかわり方が問われる1年だ

AI研究の功績で2024年のノーベル物理学賞を受賞したヒントン博士は「5年以内にAIが人知を超える」と警告する。警察庁による複数の生成AIサービスを使った実験では、ランサムウェアなど数種類のウイルスを作成し、海外の研究でも、オンラインゲームで勝つために仲間の人間を裏切ったり、視覚障害者のふりをして見知らぬ人の助けを借りたりといった行動を見せた。AIは単なる従順で便利な道具ではなく、しばしば目的遂行のために自立的・自律的に嘘をつく。意識を持たないAIは人間の振るまいから人を欺く術を学び巧妙化していく。つまりAIは人間の美醜や性を写す鏡なのだ。一方、AIの自立・自律の獲得は、人間が人間であるための要素を奪いかねない危うさを孕む。AIが獲得した悪質性や偽善に正しく向き合うには、人間こそが善性や叡智を磨いていくしかない。(芳賀)

カスハラ防止条例が適用される事業者の範囲とは

昨年12月19日、東京都がカスタマーハラスメント(カスハラ)防止条例のガイドラインを公表。カスハラの行為類型や顧客、就業者、事業者それぞれの責務などについて、具体的な解説と例示が出された。その中で今回、紹介したいのは、条例が適用される事業者の範囲。“東京都に本社を持つ会社だけが対象だ”という解釈は誤解である。ガイドラインでは「都内に本社がある企業、都外に本社があるが都内に支店等がある企業」としている。つまり本社が都でなくとも事業を行っている実態があれば適用になる。都外に本社を置く企業は留意すべきだ。2025年は都条例の施行に加え、労働施策総合推進法改正案も国会に提出予定。事業者の措置が法律で義務化される見込みである。今年も引き続きコンプライアンス面からのカスハラ対策強化を皆様に検討、実行いただきたい。(宮本)

▼カスタマーハラスメントの防止に関する指針 東京都

▼女性活躍の更なる推進及び職場におけるハラスメント防止対策の強化について 厚生労働省

復興と「関係人口」

今年1月1日、能登半島地震から1年を迎えた。改めて亡くなられた人のご冥福と現地の復旧・復興が一日でも早く進むよう、お祈り申し上げたい。現地のことを調べているうちに「関係人口」というキーワードを見つけた。震災による人口減は多くの自治体にとって近い将来の姿であることはよくいわれることだが、石川県は「創造的復興」の中で「復興プロセスを活かした関係人口の拡大」を最重要点課題と位置付けた。災害後にいくらインフラが復旧しても、そこに全ての人が戻ってくることはあり得ない。また、いくら外部からの定住を促したとしても、一度災害が発生した場所に多くの人が集まることも考えにくい。「定住」でも「流動(観光)」でもない、緩やかな「関係人口の拡大」が重要であるとする。非常に興味深い動きなので、次回の本稿でも考察したい。(大越)

「ただ…だけ」では治まらない「不具合」のリスク

年末が近づく頃、くるぶしに500円玉大の謎のふくらみを発見。ネットで調べると、おそらく滑液包炎と思われ、痛みがなければ様子見でよさそうだったのだが…時は年末、医者も休みになるし、場所的に足も動かしにくく、モヤモヤしたまま年を越すのも嫌で、迷った末に受診した。診断結果は案の定、滑液包炎。医者は面倒くさそうに「ただ水が溜まっているだけ」「放っておけばいい」と言うが、こちらはなんだか気持ちが悪い。医学的には「ただ水が溜まっているだけ」でも、私にとっては不安とストレスの塊だ。組織の問題も同じかもしれない。「法的には問題ない」「ハラスメントとまでは言えない」としても、現に困っている人がいる以上、組織上の不具合は解消されない。「ただ…だけ」で終わらせず、小さな不具合の解消に向けて、今年も精進したいと思う。(吉原)

今年の通常国会では、危機管理上の重要な改正法案が審議される予定

①公益通報者保護法では、通報者に対する報復を目的として解雇や懲戒処分を行った事業者に刑事罰を科し、解雇や懲戒処分を不服として通報者が民事裁判に訴えた場合は通報との関係を立証する責任を事業者側に負わせることが盛り込まれる予定だ。②個人情報保護法の改正案の目玉の一つが、個人情報保護法違反に対する制裁としての課徴金制度だ。第三者提供規制に違反して対価を得た場合や、安全管理措置義務に違反して大規模な(1,000人規模の)漏洩が発生した場合が対象になる予定だ。③労働施策総合推進法では、事業者にカスタマーハラスメント防止対策を義務付ける予定だ。昨今では自治体の条例においてカスタマーハラスメント防止が謳われるようになっているが、法改正となれば日本全国の話になる。詳細については、以下のリンク先を確認してほしい。(安藤(未))

▼消費者庁「公益通報者保護制度検討会」

▼個人情報保護委員会「個人情報保護法のいわゆる3年ごと見直しに関する検討会」

▼厚生労働省「労働政策審議会 (雇用環境・均等分科会))

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