2025年04月28日号
【もくじ】―――――――――――――――――――
テロの脅威に無関心のままでよいのか
政府が公表した2024年の孤独・孤立の実態調査では、孤独感が「ある」等と答えた人は4割ほどで、コロナ禍で自殺や経済的困窮がみられた時期と大きく変わらなかったという。孤立・孤独は、組織に属さず過激化する「ローン・オフェンダー」を生む土壌だ。さらに、地下鉄サリン事件の記憶が風化する中、化学テロや生物テロ、核物質テロに対する危機意識の低さから誤った行動がとられ、被害の拡大を招くことになる。また、米で深刻化する医療用麻薬「フェンタニル」は、露当局が過去テロ鎮圧に使用され、120人以上の人質が死亡した。もはや「大量破壊兵器」だが、入手がしやすく規制は十分ではない。銃や爆弾が自作でき、AIや生成AIが新たな兵器を生み出し、誰でもSNSやダークウェブで兵器が簡単に入手できる世界。そんな危険地帯に生きているとの自覚はあるか。(芳賀)
JR福知山線脱線事故の教訓
2005年4月25日に発生したJR福知山線脱線事故から20年が経過した。乗客106人と運転士が死亡し、562人が重軽傷を負った未曽有の大事故は、同時にその後の企業の安全管理や不祥事対応の在り方を大きく変えるものとなった。当時、大規模事故の究明は捜査機関や国の事故調査委員会に任せるのが通例で、被害者の遺族は関われなかった。しかし企業の責任を追及するだけでは、被害者と加害者が対立するだけだと考えた遺族らは、JR西に働きかけ「安全フォローアップ会議」を設置。両者の目標を「安全」にしぼり、事故調が問題視した「日勤教育」や過密ダイヤについて組織的、構造的に分析した。本事故を契機に、加害企業には損害賠償だけではなく、原因に関わる組織的要因の分析が求められるようになった。全ての企業の危機管理担当者が学ばなければいけない教訓だ。(大越)
通勤電車で被害に遭う恐怖、加害者になる恐怖
新生活を始める人が多い月だからか、4月の電車通勤はヒヤヒヤの連続だ。駅の階段にて、一列分しかない通路を急ぐ人が連なって降りようとする中、自分の前の人がスマホを見ながらのんびり降りて行く。後ろは殺気立ち、突き飛ばされそうで、突き飛ばしそうで、恐怖を感じる。電車に乗り込んだ途端に、奥へ詰めずにその場で立ち止まる人がいる。自分は何とか避けられても、後から駆け込んだ人に激突され、前の人を押すことになる。電車内のドア横の隙間スペースを安全地帯と勘違いしている人がいる。そこに人がいることで乗降者の通路が極端に狭くなり、押し合いが発生するのだが、自分はのんびりスマホをいじっている。周囲に配慮しない行為は、直接的に他者を傷つけなくても、他者を加害者にしてしまうリスクがある。スマホではなく、周囲を見てほしい。(吉原)
亡くなった人の権利をどう守る?AIを悪用した権利侵害を防ぐには?
24日、「人工知能関連技術の研究開発及び活用の推進に関する法律案」が衆議院で可決され、参議院に送られた。AIを悪用してわいせつな画像や動画を作り出す「性的ディープフェイク」への対策等を求める付帯決議がついている。また、ここでは氏名は伏せるが、すでに亡くなった歌手の私的な写真を入れたCDの販売について、各方面から批判の声が上がっている。死者には法的に人格権の保障がないため、プライバシー権や肖像権がないのだが、今後、(歌手の件とは直接関係ないが)AIによって死者の生前の画像を加工した「性的ディープフェイク」も生まれる可能性も高い。リベンジポルノ防止法では、私的な性的画像の記録を不特定多数の人に提供する行為が犯罪となるが、今後はAI対策とリンクさせる必要があるだろう。死者の尊厳は、私たち生者が守るしかない。(安藤(未))