30秒で読める危機管理コラム

危機管理のプロの観点から時事ニュースを考察しました。

金融犯罪対策の深化が急務だ~すべての事業者は「自分事」として捉えてほしい

金融犯罪被害が深刻だ。その対策は、SNS対策、トクリュウ対策、「犯罪インフラ」対策、AML/CFTなど多岐にわたるが、当事者は金融機関に限らない。例えば、犯罪インフラにもなりうる携帯電話やSIMカードの本人確認実務などは、もはや銀行口座開設に準じたレベル感だ。一般事業者にとっても金融犯罪を「自分事」として受け止めてほしい。犯罪組織も、トクリュウが「闇のエコシステム」を機能させているほか、暗号資産やステーブルコインを悪用したマネロンなど、犯罪者の「匿名化」、犯罪自体の「匿名化」が顕著だ。今後、AIや生成AIなど技術やデジタル化のさらなる高度化、犯罪のグローバル化やオンライン空間への拡大の状況に対し、従来の手法に囚われない、柔軟な対策が求められることになる。すべての事業者の連携、官民挙げた金融犯罪対策の深化が急務だ。(芳賀)

公益通報者保護法に絡む危機対応の限界とコンプライアンスポリシーの重要性

国分太一氏によるコンプライアンス違反があったとして日本テレビ社長が記者会見を行ったが、プライバシーを理由に具体的な内容には言及しなかった。先般の公益通報者保護法の改正で、通報者の特定につながる情報を漏洩した場合、従事者には罰則が科されることになった為、有名タレントが絡むだけに、通報者保護の観点から具体的な回答を控えざるを得ないことはやむを得ない判断だが、それであれば記者会見までする必要があったのか。自社幹部や社員が絡んでいないのであれば、猶更リリースで十分だ。フジテレビの二の舞を避けたいという意図があったかもしれないが、コンプライアンスや記者会見は日和見で行うものではない。コンプライアンスしかり、危機対応しかり、自社としてのポリシー・判断基準を持ちそれに基づき判断・対応していくことが重要だ。(西尾)

金権政治にそろそろ終止符を

先般の都議選で自民党は過去最低の21議席に留まり、都民ファーストが第一党となった。来る参院選でも自民党の苦戦は避けられまい。この問題の本質は、“政治とカネ”に帰着する。特に政治資金収支報告書に不記載の政党支部への企業・団体からの献金やパーティー券の購入などの裏ガネ問題がずっと尾を引いている。このような状況で国民の理解など得られるはずもない。ただ、これには献金する企業側の責任も重い。特定政党への政治献金や族議員の存在は、各企業が高唱するCSRやSDGsと果たして整合性が取れているのか。サステナビリティ報告書の開示では不十分だ。今年3月、経済同友会は『政治資金の徹底した透明化を』との提言を公表した。経済団体としての英断である。内部留保の減額含め経団連の決断が俟たれる。さらに全有権者に投票権行使の義務がある。(石原)

待ったなしの食糧安全保障

「令和の米騒動」は “JA悪玉論”や“流通目詰まり論”が原因ではなく、全くの筋違いだ。もちろん元凶は減反政策に外ならない。本年4月から施行された「食料供給困難事態対策法」でも農家への支援は明文化されていない。日本の食料自給率は、カロリーベースで38%とされ、100%輸入に頼る肥料原料を加えると、実質自給率は22%にまで低下する。戦後日本は米国の余剰生産物を受け入れ、自給率はどんどん低下した。自動車などの輸出で稼げば良いとの政策を進めた。同一構図が現在のトランプ関税への対応にも見られる。日本の農業は欧米諸国に比べ、過保護だとの意見もあるが、各国の補助金額を見ても決してそんなことはない。話題の備蓄米にしても、日本の備蓄量は1.5か月分で中国の18分の1しかなく、安全保障としての予算額も国防と食料では桁違いなのだ。(石原)

トカラ列島地震、さらに長期化する恐れ

先週も本稿で取り上げたトカラ列島地震。6月21日の発生から2週間経過した今でもその活動はやむ気配がない。21日から十島村では震度1以上の揺れを7日午前5時までに1581回観測。震度3以上の地震は90回を超え、震度6弱を1回、震度5弱以上も複数回観測され、6日から7日にかけても最大震度5強観測する地震が相次いで2回発生している。政府の地震調査委員会は4日、震度6弱の地震を受けて臨時会を開き「活動の収束時期を特定することは難しい」との見解を示すとともに「当分の間、同程度の地震に注意が必要」とした。同委員会の平田委員長は「マグマによる活動が地震を起きやすくしているのではないか」と述べ、活動がさらに長期化する恐れがあるとして地震への備えを呼びかける。企業も、地震の警戒レベルを検討する段階にあるだろう。(大越)

相手のタイプに応じた教え方が、早期戦力化のカギ?

転職や異動等で、未経験の業務に携わったり、他者から業務を引き継いだりすることがある。その際、懇切丁寧だがタスク中心で、全体の流れが把握できないマニュアルや教え方を受けて四苦八苦している人がいる。教える側は一つ一つ丁寧に教えており、ミスばかりの相手に「教えた通りにできない」「何度教えても覚えられない」と不満を募らせる。教えられる側は、全体像を把握できないまま細かな手順に振り回され、何がわからないかもわからないまま、ひたすら丸暗記しようとして失敗する。逆もしかりで、教える側と教わる側の捉え方や考え方のタイプが違うと、キャッチアップに支障が出るように感じる。自分にとっての最適が相手にとっても最適とは限らない。互いの違いを意識し、相手に合わせた教え方ができれば、もっと効率よく人を活用できるだろうに。(吉原)

公益通報を理由とした不利益取扱いは、解雇・懲戒だけではない

今年の通常国会で成立した改正公益通報者保護法では、公益通報を理由として解雇・懲戒をした者に対する罰則が新設された。この点だけ見ると、国が不利益取扱いとして想定しているのは、解雇・懲戒だけに思えてしまうかもしれない。しかし、現行法下の「公益通報者保護法に基づく指針(令和3年内閣府告示第118号)の解説」では、降格、不利益な配転、昇進・昇格における不利益な取扱い、事実上の嫌がらせ等が不利益取扱いとして例示されている。法改正について議論した公益通報者保護制度検討会の報告書においても、「不利益な配置転換や嫌がらせ等を罰則対象とすることについては、(中略)今後、引き続き対応を検討すべき」とされ、法定指針に不利益取扱いとして例示することが示唆されているため、“今回は”罰則の対象から見送られたに過ぎないのだ。(安藤(未))

▼消費者庁「公益通報者保護法の一部を改正する法律(概要)」
※今年の通常国会で成立した令和7年改正法の概要です。

▼消費者庁「公益通報者保護法に基づく指針(令和3年内閣府告示第118号)の解説」(令和3年10月)
※不利益取扱いの例示は13ページにございます。

▼公益通報者保護制度検討会「公益通報者保護制度検討会 報告書 -制度の実効性向上による国民生活の安心と安全の確保に向けて-」
※不利益な取扱いの抑止(罰則の対象)については19~23ページ、不利益な取扱いの範囲の明確化は30ページにございます。

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