2025年10月27日号
若者に正しい情報をどう伝えるか、社会全体で考えるべきだ
関西の私立4大学(関西、関西学院、同志社、立命館)が新入生を対象にウェブ上で定期的に実施している「薬物に関する意識調査」の2025年度の集計結果を公表した。薬物使用に拒否・反対の回答が大半を占めたが、「1回なら」「他人に迷惑をかけないなら」使用を許容する回答が7.6%、入手可能とする回答も7.6%あった。「薬物の使用や購入を誘われたり、勧められたりすることが過去にあったか」では、「購入を勧められた」が0.5%、「使用を誘われた」が0.9%、「無理やり使わされた」が0.2%あった。また、「手に入る」と回答した理由(複数選択可)は「SNSやインターネット」「友人・知人が入手方法を知っている」などが上位となった。若者への大麻蔓延の実態が垣間見える数字だ。正しい情報をどう伝えるか、啓発活動の量・質両面から更なる工夫が必要だろう。(芳賀)
公益通報が絡むなら日本テレビの対応は適切
国分太一氏の代理人が、日弁連に対して同人の人権侵害を申し立てた。弁護士は、「当時の日本テレビの対応は誤り」と指摘した。何をか言わんやだ。法律の専門家であれば、公益通報者保護法で、内部通報を扱う公益通報者業務対応従事者が通報者の特定に繋がる情報を漏洩した場合、刑事罰を科せられることを知っているはずだ。具体的な行為を言ってしまえば、相手は国分太一氏だけに、通報者が特定されてしまうだけではなく、自社の従事者まで刑事罰のリスクに晒す。日本テレビとしては自社の従業員を守るのは当たり前だ。具体的な行為を言えない以上、「コンプライアンス違反」としか言いようがないのだ。弁護士は、認識違いも甚だしい。カスハラ事案への対応は、フジテレビ案件しかり、まだまだ世間の理解が遅れている。日弁連の対応、見解に注目したい。(西尾)
テレビ局におけるカスハラ事案は特殊案件にあらず~他山の石とせよ
国分太一氏の代理人が、日弁連に対して同人の人権侵害を申し立てた。同人が日本テレビの関係者に対して行ったカスハラに関して、具体的な内容を説明されず、コンプライアンス違反とのみ説明され、謝罪の機会もないという趣旨だ。法人間のカスハラ事案については、カスハラ認定された当人は、被害者の人権や尊厳を毀損しておきながら、自らがカスハラ認定されたことに対して人権侵害だの、契約違反だのと抗議するケースが多い。一般企業の場合に置き換えても、加害者当人が所属する会社としては、自社社員のコンプライアンス違反の認定は、自社のレピュテーションにも関わる以上、抗議する可能が高い。企業危機管理の観点からは被害者所属企業は、このような抗議に反論できる実務運用(カスハラ認定の合理性担保)と、危機管理広報体制の整備が重要だ。(西尾)
津波とラフカディオ・ハーン
11月5日は津波防災の日。1854年に発生し『稲村の火』のモデルになった安政南海地震の発生した日に因んだものだ。同作については本稿で何度も取り上げたので内容については割愛するが、同作を執筆したのが『怪談』などで有名なラフカディオ・ハーン(小泉八雲)であることはあまり知られていない。ハーンはギリシャ生まれ。後に米国に渡り新聞記者となるが、当時の万国博覧会で日本に興味を持ち1890年に来日。『稲村の火』(原題:A Living God)は1896年に発生した明治三陸沖地震の被害に衝撃を受けた同氏が、江戸時代のこの物語を知って感銘を受け、一気に書き上げたという。実はハーンという人は幼少からキリスト教嫌いで、主人公の濱口梧陵が生きながら神とあがめられたことに興味を持ったという説もある。秋の夜長にゆっくり原書に当たってみるのもよいだろう。(大越)
研修は指摘の場ではなく、「望ましさ」を統一する場ではないか
ハラスメント防止研修の真の目的が、特定の個人への指導であることが時々ある。「研修で気付きを得て行動が変わればよい」と言われれば、「どんな言動が不適切で、どうするのが望ましいか」を示し、時間があれば「望ましい言動」をワークで練習する。望ましい言動を取れるようレクチャーすれば、ワークであからさまに不適切な言動が出ることはまずないため…事前打合せで「望ましくない言動をはっきり指摘してほしい」と要望されると困ってしまう。研修は「望ましさ」を統一する場。研修を行うことで、「今の言動は研修で望ましくないと言っていましたよ」「こうすると良いと研修で学びましたよね」と日常の指導をしやすくはできるが、注意指導は不適切な言動が発生した現場で行うものだ。研修を指摘の場にし、研修自体をハラスメントにしてはいけない。(吉原)
「ちゃん付け」だけが直ちにハラスメントであると認定されるわけではない~キーワードだけが独り歩きしないように~
「『ちゃん付け』がセクハラになる」とテレビやネット上で話題になっている。佐川急便の営業所に勤めていた女性が元同僚の男性に慰謝料の支払いを求めた裁判で、今月23日、東京地裁が職場で「ちゃん付け」も含めて「許容される限度を超えた違法なハラスメント」と認定し、慰謝料の支払いを命じたからだ。報道によると、当該女性は「ちゃん付け」で呼ばれただけでなく、「かわいい」「体形良いよね」と容姿についても言われ、うつ病と診断され、退職した。東京地裁は、あくまで一連の言動をハラスメントだと判断したので、「ちゃん付け」をしたから直ちにハラスメントになると言っているわけではない。女性がうつ病と診断され退職に至ったことも考慮要素だったのだろう。キーワードにフォーカスして戦々恐々とせず、事案の全体像を把握することが肝要だ。(安藤(未))
▼日本経済新聞『職場で「ちゃん付け」や容姿言及の元同僚、セクハラで22万円賠償命令』(2025/10/24 0:12)
▼ANNnewsCH『職場“ちゃん付け”もセクハラ 元同僚に“慰謝料22万円”【スーパーJチャンネル】(2025年10月24日)』
※音声が流れます。ご注意ください。


