30秒で読める危機管理コラム

危機管理のプロの観点から時事ニュースを考察しました。

「競売からの暴排」を徹底的に議論すべきだ

中間試案では、暴力団員や元組員、および彼らが役員を務める法人の買い受けも認めない、競売で入札を申し込む際に暴力団組員や元組員でないことの誓約を求める、虚偽だった場合には罰則を設ける、裁判所は最高額の入札者について、警察に照会して暴力団員や元組員に該当するか判断し、第三者を隠れみのにしていると認められる場合も照会する、などの規制が盛り込まれた。基準を明確にすることは、一方で、共生者等やその意を受けた第三者を競売参加法人の役員として登記して反社会的勢力による実質的な経営支配や経営への関与といった「実態の隠匿」をむしろ容易にしかねない危険性を孕んでいる。さらに、5年基準など反社会的勢力の範囲の狭さも問題だ。中途半端な規制は、むしろ彼らの活動を助長しかねないおそれがあると厳しく認識すべきだろう。(芳賀)

バルセロナテロが示すテロリスクの現状

またしても欧州はテロの脅威に直面した。ISの掃討作戦が最終段階を迎えたと報道される一方で、欧州を舞台とした「テロの日常化」という恐れていた事態が現実のものとなりつつある。ISは、もともと「思想」をキーにネットワークを形成している以上、テロはいつでもどこでも実行可能であり、若者などの流入が途絶えることもなく、「実体」がなくても「実態」は存続し続ける点にその脅威の本質がある。昨年7月、バルセロナ同様、車両テロにより86人が犠牲となった仏ニースの市長は、「(対テロ)戦争には平和のルールでは勝てない」という。平和ボケした日本にとってその言葉の意味がなんと重いことか。テロリスクは、リアルな国境や地理上の「点」のみでの対応はもはや限界だ。国際的な連携、すなわち「面」での対応が急務であり、日本も例外ではない。(芳賀)

たかが「雨」で済ませず、身近にあるリスクとしての対策を

今年は、台風の影響も含めて各地で大雨が降り、都内では8月に入り20日間連続で雨が続いた。先週は2時間で1000発の落雷を観測し、降雹も観測された。極めて気象状況が不安定な今夏は、大凶作に陥りタイ米等の緊急輸入措置が取られた1993年の冷夏と気象状況が似ているとも言われている。気象庁のサイトによると、本年1月から7月の間、アメダスで観測した1時間降水量50ミリ以上の回数は95回、同80ミリ以上は8回で、いずれも年間発生回数も1976年から2016年の長期的変化でも回数が増加している(99%で統計的に有意)。企業の防災対策は地震対策を中心であり、これはこれで重要であるが、上記の気象データをみると水害リスクは増している。予測の難しい地震に比べれば、降雨は兆候が掴み易い。身近に遭遇する「雨」のリスクにも改めて警戒・対策が必要である。(西尾)

青少年のネットトラブル相談内容

一般財団法人インターネット協会は、18歳未満の青少年のためのインターネット・携帯電話等のトラブルに関する相談窓口「東京こどもネット・ケータイヘルプデスク」の相談実績を公開した。相談内容は、架空請求などのトラブル、SNS上での交際(自撮画像の送付強要や拡散など)、投稿した内容の削除方法などが多数を占めた。特に、児童買春や児童ポルノなどの犯罪被害は増加傾向にあり、監視やフィルタリングなど事業者側が自主的に児童被害防止対策を強化するよう働き掛けだけでなく、関係省庁と連携した対策の推進も急務だ。また、ネットの安全教育を児童に自分事として捉えてもらうために、先生や保護者自身が見本となるような姿勢と意識を持つことはもちろん、十分なリスク認識、誤った操作方法や危険な使い方などまで熟知しておくことも重要だろう。(佐藤)

人手不足、成長の重荷に 2016年度(第38回)コンビニエンス・ストア調査

日経MJの同調査で、国内のコンビニエンス・ストアの全店舗の売上は11兆1906億円、伸び率3.1%と前年から2ポイント低下し、7年ぶりに低い水準だった。右肩上がりで成長を続けてきたコンビニエンス・ストア市場は、成長の踊り場を迎えている。特に成長の足かせとなっているのが、人手不足だ。同調査によると経営環境について、1年前と比べて「悪くなった」が43.8%で最も多く、その理由としては「人手不足や人件費の上昇」(87.5%)が最も多かった。各チェーン本部は、本来加盟店がすべき採用や研修といった従業員の確保の支援に乗り出している。生産年齢人口が減少するなかで流動性の高いアルバイトを採用するには、従来の求人による待ちの姿勢では厳しいだろう。SNS、イベントを活用した「ダイレクトリクルーティング」など能動的な取り組みの継続が必要だ。(伊藤)

新入社員研修のあり方を考える

新入社員研修期間中に自殺した若者の遺族が、会社や研修会社等に対し、損害賠償を求めて提訴した。新入社員研修は、これから社会人として働き、会社に利益をもたらす人材を育成するために行うものだ。利益をもたらすどころか、生きることさえできなくなるような研修が、なぜ続けられてきたのだろう。目的を見失うにも程がある。新入社員といえども、生まれてから20余年、泣いたり笑ったりしながらそれぞれの生き方を学び、人格を形成している。厳しい研修を行ったところで、会社にとって都合の良い人格に作り替えられるはずがない。社会人としての基本行動は、本人の理解・納得の上に醸成されるものではないか。たとえ時間や手間はかかっても、個人の人格を尊重し、その上で会社が求める態度・行動を取れるよう、企業は「誠実な研修」を追求すべきだ。(吉原)

今そこにあるICT/IoTリスク、見かけでは判断できず

ある中国製の監視カメラに深刻な脆弱性が認められ、話題を呼んでいる。当該製品は正規の日本法人が販売し、総務省の技術基準適合認定も取得していたが、基本ソフトに脆弱性があり、音声・映像の窃取からカメラの画角変更まで可能だった。小型化・省電力化のために「基本ソフトが焼きこまれた既成のチップ」を搭載するIoT製品は多い(冒頭のカメラもこれにあたる)が、脆弱性が露見した製品以外にも、同じチップを搭載した製品が流通している懸念は払拭できない。価格・機能の両面で優秀な新興国製IoT機器が増えるなか、日本語サポートが限定的でも導入を検討する事業者も増えようが、本稿にあげた「機器本体のセキュリティ」への警戒は必須である。ICTの利活用に際しては導入部門と管理部門が乖離しがちだが、両者が一致した全社的な評価選定が望まれよう。(山岡)

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