週刊・危機管理PLUS

危機管理のプロの観点から時事ニュースを考察しました。

パナマ文書流出から2年

世界に衝撃を与えた「パナマ文書」が、期待される本来の役割を果たしつつある。同文書に名前があった日本関連の個人や法人について、国税当局が、所得税など総額31億円の申告漏れを指摘、自主的な修正申告も含め40億円弱に上る申告漏れが判明した。一方、国際的な包囲網として、約100の国・地域が参加する「非居住者に係る金融口座情報の自動的交換のための報告制度(CRS)」が2018年までに本格稼働する。だが、タックスヘイブンを巡る問題の本質は、租税回避行為にとどまらず、資金洗浄やテロ資金供与、金融制裁逃れなどの犯罪を助長する「犯罪インフラ」機能にある。国際安全保障の脅威となる北朝鮮等やテロリスト、反社会的勢力などにつながる資金の流れを断ち、犯罪や脅威を抑えこむという視点から、「真の受益者」にかかる資金の流れの解明こそ急務だ。(芳賀)

痕跡を残さないマルウェアが増加の傾向

2017年上半期、世界中の主要ネットワークの被害で目立ったのはランサムウェアだが、現在増えつつある別タイプの感染も脅威として認識する必要がある。ディスクに悪用したファイルなどの痕跡を残さない(ファイルレス)タイプのマルウェアが増加傾向にあり、今後、より深い水面下の攻撃に変わり、被害の認知や犯人の特定がこれまでよりも難しくなる可能性がある。こうしたファイルレスの攻撃に対しては、侵入時の検知や内部活動時の組織内ネットワークの監視など、さまざまな技術と運用体制を組み合わせることで対抗するしかない。日々高度化するサイバーリスクに対し、役職員はこれまで以上に脅威に対して目を向けることに加え、侵入後の疑わしい通信や挙動の分析や攻撃者特有の行動特性を把握するなど、まさに組織全体で監視する体制が求められる。(佐藤)

人手不足で倒産、生産性の向上がポイント

帝国データバンクによると、従業員の離職や採用難を理由とする倒産は2017年上半期に49件となり、前年同期比44%増えた。人手不足が成長の足かせにとどまらず、企業の倒産に直結している。介護従事者の離職が多い老人ホームなどサービス業が15件と最多となったほか、とび職の高齢化などの理由で建設業が13件と続き、この2業種で全体の約6割を占めた。それ以外でも、運輸・通信業などで倒産が急増している。このような深刻な状況は、労働投入量の確保という発想では限界がある。労働集約的な業務を機械化やシステム化によって代替して生産性を高めなければ人手不足倒産はさらに増える。企業経営のリスクは単に避けるだけでは致命傷となりかねない。生産性が上がるならば従来のやり方を見直し、その部分では逆にリスクを取って向かい合う必要があろう。(伊藤)

ますます進化する人工知能(AI)、今後10年の「破壊的な技術」に

米国の調査会社ガートナー社が、デジタル産業の動向予測をまとめた「ハイプサイクル2017」を発表した。今年度は、「人工知能(AI)」「没入型体験(=テクノロジーが人間に適応的に振る舞う利活用のこと)」「デジタル・プラットフォーム」が主要項目として挙げられ、とりわけAIについては「今後10年にわたって破壊的な変化をもたらす」と予測されている。こういったテクノロジーは、ビジネスを広げ価値を高める大きなチャンスであると同時に、雇用の効率化・最適化を迫る可能性がある。テクノロジーに代替される可能性が低いのは(クリエイティブ職やマネジメント職を除けば)単純な肉体労働やホスピタリティ業務であるが、その切り替えは容易ではない。縮小を迎える日本社会において、〝来たるべき変化〟を正しく見据え、手立てを模索する必要がある。(山岡)

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