週刊・危機管理PLUS

危機管理のプロの観点から時事ニュースを考察しました。

技術革新のもつ二面性

中国の「監視国家」化が進む。中国共産党の利益に反する行動をネット上だけでなく幅広く追跡・統制を徹底するため、AI、顔認識、ビッグデータといった最新のテクノロジーの活用が本格化し実用化段階にある。それは、国内外の関連産業の成長を加速させる一方で、個人のプライバシー侵害の拡大を巡る懸念も高めている。言い換えれば、中国においては、技術革新は、「犯罪抑止インフラ」としての本来あるべき側面と、その目的が「個人の監視」のためという「犯罪インフラ」という相反する側面を同時に有することになる。日本においては、軍事用と民生用の両方に利用できる技術「デュアルユース」の問題が学術界を揺るがしているが、世界のIT企業も、自らの理念と中国市場へのスタンスの狭間で同様のジレンマを抱える。そして、その闇は更に深まる一方だ。(芳賀)

日本年金機構の杜撰な委託先管理、自社は大丈夫か

日本年金機構がデータ入力を委託した会社が契約に反して業務を再委託していた問題では、別の会社でも再委託が見つかり、委託先選定基準の甘さをはじめ業務上の都合が優先された実態があらためて浮き彫りになった。マイナンバー流出のリスクを含め、再委託先からの個人データの流通や不正なアクセスを可能とする踏み台となっていなかったどうかの検証を徹底する必要がある。そもそも数千万人分のデータ処理が委託先で可能だったのか、最初から無理のある契約だったと言わざるを得ない。情報管理体制や十分な作業要員がいるかなどをチェックして精査すれば、再委託してしまう可能性を予想することはできたはずだ。日本年金機構の問題はこれを他山の石として、自社の委託する業務内容や監査の実効性、管理監督体制が適切かどうか厳しく見直すべきだろう。(佐藤)

国立市、画期的条例にみる「ダイバーシティの本質」──カムアウトしなくても快適な場づくりとは

今月1日に国立市が施行した条例「国立市女性と男性及び多様な性の平等参画を推進する条例」が注目を集めている。この条例では国内で初めて「他人の性自認や性的指向を第三者が無断で暴露すること(=アウティング)の禁止」が明記された。アウティングは、きわめて私的な領域の暴露であり、単なるプライバシー侵害を超えたダメージを与えかねない。たとえば平成27年には、同級生からアウティングされた一橋大学の生徒が自死するなど、いまだ性的少数者への差別が根強い日本においては、セクシャリティの表明自体が大きなリスクをともなう形だ。事業者の性的少数者対応においても「表明しなければ保護されない」一面的な制度設計ではなく、「表明しなくても皆が快適に働ける」環境整備が望まれよう。その意味で、当該条例の定めは大いに参考となるはずだ。(山岡)

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