週刊・危機管理PLUS

危機管理のプロの観点から時事ニュースを考察しました。

日大アメフト部問題を考える 1

日大アメフト部員による関学大学選手への悪質タックル問題、日大の危機対応には大きな失策があった。遅きに失した謝罪、監督の初期会見時の言い間違いや説明回避、大学側の対応のまずさから当事者の学生による謝罪会見を誘発したこと、その後も、広報課による文書での監督の発言と矛盾する説明、司会者による横暴に近い記者会見の仕切り、解釈の問題との言葉遊び等、恥の上塗りを繰り返した。日大には、危機管理学部とスポーツ科学部がある。危機管理学部では危機管理を、スポーツ科学部では人間性豊かな指導者のあり方や競技スポーツのあり方を教えている「はず」である。危機管理は理屈ではできない。木机感利(木を見て森を見ず、机上の空論、感情論、私利私欲)になってはいけない。危機管理教育する側の「危機管理」への意識改革を強く提言したい。(西尾)

日大アメフト部問題を考える 2

関東学生アメフト連盟の規律委員会が、危険タックルの問題で、内田前監督と井上前 コーチの除名や資格剥奪の処分を検討しているという。この問題では危険タックルの指示について選手と前監督側の主張に隔たりがある。ただし、試合後の前監督へのインタビューで、危険タックルを容認するような発言が報道された。指示があったと取られても仕方ないだろう。この背景には、閉鎖的空間における独裁的な勝利至上主義があったのではないか。大学の部活動は、実質的に大学は管理していない。また、指導者の大半がOBで監督が師弟関係のコーチで脇を固めることも少なくない。そうなると組織の常識には沿うが社会の常識からは乖離する破壊的同調をもたらす。スポーツガバナンスを機能させるには、外部のチェックを入れ、社会の常識に沿うような建設的逸脱が必要だ。(伊藤)

日大アメフト部問題を考える 3

今回の日大問題は多層的なリスクが表象され、末端の一番弱い部分(宮川選手)から表出したといえる。その権力機構・構造においては上部から下部にいくにつれて、責任のしわ寄せのプレッシャーが掛かる。所謂、トカゲの尻尾切りであり、これはある意味日本社会の反映であり、また学習や教訓を受容しない組織の病理現象でもある。マンモス大学グループの歪な権力構造・その閉鎖性と強権体質・固定的な上下関係・少子化の中での強いスポーツ種目への過度の依存性・古き悪しき運動部文化などから危機管理や記者会見のあり方に至るまで、リスクの多段階構造をなしているものである。今回は宮川選手の試合後のスポーツマンシップに同調・応援する声が大半を占め、一筋の光明が射している。企業組織も含め、異論を封殺しない柔軟性ある文化への転換が急がれる。(石原)

緊急事態対応に必要なトップの素養

高層階にいる人ほどよりリスクが高い決断をする傾向があるとの研究結果を、マイアミ大学の研究チームが発表した。人は自分がいる場所の高さによって、選択の内容が左右されるとのことだが、個人的に注目したのは、高さが意識と行動に影響する可能性があることを実験の参加者たちに教えると、こうした傾向は現れなかったという点だ。つまり、人は状況に左右されやすいと同時に影響を修正することもできるのであり、冷静さを保ち、適切な知識を持つことで合理的な決断ができることが示唆されている。また、人は、危機的状況に陥ると、「正常性バイアス」や「確証バイアス」という心理的メカニズムの陥穽に嵌ることも知られている。日頃から自らの弱さを知り知識と訓練を重ね、緊急事態でも真価を発揮できる素地を養うことが組織のトップには求められよう。(芳賀)

中堅社員でもSNS炎上、どう防ぐのか──NHKディレクター「しばき隊」疑惑

NHKの中堅職員が匿名でSNSを運用し、暴力性の高い党派運動に加担していた疑惑が明らかとなった。当該職員は党派的かつ過激な書き込みだけでなく、当該党派による直接行動にも参加していたと見られるが、いずれの行為も「政治活動の自由(憲法21条)」のもとにある。しかしながら、NHKの服務準則には職務専念義務と信用失墜行為の禁止が定められており、当該職員の諸行為が就業中でないか、信用失墜行為の有無が焦点となろう。SNSの浸透と拡散を経たいま、従業員のネット上の言動が事業者に及ぼすリスクは小さくない。事業者においては、(1)SNSの個人利用にかかるガイドラインを定め、(2)これについての誓約を取り付けつつ、(3)ガイドラインにかかる違反行為を就業規則で処罰できるようにする、(4)これらを反復的に周知・教育するなど、抑止策をはかる必要がある。(山岡)

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