週刊・危機管理PLUS

危機管理のプロの観点から時事ニュースを考察しました。

コンプライアンスの本質~野村HD情報漏えい問題から学ぶ

金融庁は、「法令等諸規則に違反する行為ではないものの、(略)資本市場の公正性・公平性に対する信頼性を著しく損ないかねない行為」と指摘。さらに、平成24年の増資インサイダー事案との類似性を指摘し、「本件行為が発生し、本件行為に気付き得た社員がいたにもかかわらず、疑問や是正の声が挙がることなく、結果的にそれが看過されていた」、「社員に対する意識調査において、コンプライアンスを法令遵守に限定して捉え、本件行為について問題ないと評価する意見も一部ではあるものの確認されている」ことから、コンプライアンス態勢が不十分と厳しく指弾した。もはやコンプライアンスは、「受け身」は許されず、「声を上げない」不作為も厳しく問題視されるなど、組織を成す一人ひとりの「自立・自律」的な行動の質が問われるところまできている。(芳賀)

東京五輪チケット詐欺にご注意

多数の申し込みがあった東京五輪のチケット抽選で、大会組織委員会は6月20日、申込者全員にメールとサイトで抽選結果を通知するとしている。この際、当選と誤認させて代金を振り込ませる偽メールや、「tokyo2020」の単語を組み合わせたそれらしいURLの偽サイトが出てくることが予想される。そもそも正式なメールにはURLは貼られない運用なので、URLの記載がある時点で不正なサイトへ誘導するための偽物だ。また、電話でチケットを売りつけるケースもあり、「各地域割り当て」「転売」「関係者専用チケット」を誘い文句に、代金を騙し取られる可能性がある。組織委員会は、「通知は手紙や電話では一切行わない」としており、そういった勧誘は100%詐欺だと考えたほうがよい。この時期、イベントに便乗した詐欺が横行するため、注意と確認を怠らないようにしたい。(佐藤)

パワーハラスメント防止関連法案成立、企業の対応すべき課題は多い

同法は働きやすい環境を整える狙いで、企業に相談窓口の設置や発生後の対策を求め、悪質な場合は社名を公表する。ただし、罰則付きの規程は見送られた。厚労省は年内にもどのような行為がパワハラにあたるのかの指針を示すという。法制化は自然の流れだが、パワハラ防止には課題も多い。「優越的な関係を背景とした言動」をパワハラと定義しており、業務上の必要な指導との区別が難しい。すでに管理職が萎縮して必要な指導をし切れていないとの不作為も聞く。従来よりも一層、業務に対する動機付けとフィードバックなど丁寧なコミュニケーションが求められ、管理職への研修による認識の更新も必要だろう。一方、発生後の対応にも実効性が求められる。相談窓口の信頼性やヒアリングを含む調査手法、公平なジャッジなど各対応フェーズの機能強化が必須だ。(伊藤)

「ここにいてはダメ」。江戸川区の英断

今年5月下旬に江戸川区が公表した水害ハザードマップが、賛否両論を巻き起こしている。表紙には堂々と「ここにいてはダメです」と書かれており、区外への避難を促した。台風や大雨で荒川の堤防が決壊すれば江東5区ほとんどすべての地区が水没し、250万人が浸水するといわれる。住民には早くも動揺が見られるというが、対策は難しいものではない。現在は降水確率がかなりの精度で的中するので、同区では2日前に自主避難を呼びかけ、1日前に避難勧告を発表するとしている。発表されたら、雨が激しくなる前に区外の親戚や友人の家に「避難」するのが最も望ましい。知人がいない場合は、近隣自治体が開設する避難所に逃げるのもいいだろう。大事なことは「逃げないリスク」を正しく理解することだ。水害対策を率直に住民に訴えた同区に、賛辞を贈りたい。(大越)

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