週刊・危機管理PLUS

危機管理のプロの観点から時事ニュースを考察しました。

反社会的勢力とは何か~吉本興業は社会の要請を見誤るな

「特殊詐欺グループ」は明らかに「反社会的な集団」だが、果たして「反社会的勢力」なのか。実は、暴力団等と特殊詐欺グループの関係は一様ではなく、「特殊知能暴力集団等」や「共生者」の定義に明確に当てはまるとは限らない実態がある。だが、重要なことは、特殊詐欺グループを反社会的勢力とみなすことに社会が「問題ない」と判断していることだ。反社会的勢力の捉え方にはあいまいな部分も多いが、現時点の「常識」が判断基準であり、それは社会の変化とともに変わる(厳しくなる)ものだ。反社リスクには、「レピュテーション・リスク」に直結して個人や企業の生殺与奪の権利を握られるという恐さがあり、社会の要請を見誤らないことが肝だ。芸人らの認識の甘さが招いた事態とはいえ、吉本の認識や対応が社会の要請に適うものかが問われている。(芳賀)

社会全体でのカスハラ対策の推進には、該当行為の類型化・明確化が重要

厚生労働省社会保障審議会・医療部会において、医師の働き方に関する議論の中で、医師法の「応召義務」に関し、患者の迷惑行為に対する診察拒否は「正当な事由」に当たるとする研究成果が報告された。従来、時間外診察要求や診察内容や診察に関係のない事項への執拗なクレーム、誹謗中傷等に、医師が対応を強いられ、医師の疲弊や長時間労働に繋がっていた。当社ではカスハラ等の不当要求は、時間的なロスや精神的ロスを生むことを指摘してきたが、部会も時間的なロスが注目された形だ。極めて妥当で賢明な見解といえる。カスハラ行為は犯罪に当たるような理不尽なものが少なくない。該当行為を類型化・明確化することが重要で、それにより、法規制や民事不介入を理由にされてきた警察介入も容易になる。このような取組が一層加速することを期待したい。(西尾)

繰り返される暗号資産流出、問われる利便性と安全性

暗号資産(仮想通貨)交換業者の「ビットポイントジャパン」は、約35億円分の暗号資産が不正に流出したと発表した。これまでの流出事件と同様、利用者の利便性が一定程度確保できるホットウォレットの脆弱性が原因とされているが、暗号資産の分散管理や保管に使用する「暗号鍵」も適切に管理されていたのかなど、運用上の問題があるのかシステム上の瑕疵なのかを早急に検証する必要がある。また、大半の暗号資産流出事件では犯人の特定や流出資産の回収ができていない状況であり、今後も莫大な資金が犯罪者の手に渡り続けていることは見逃すことはできない。今後、利用者の利便性をある程度犠牲にしてでもセキュリティを強化しいくことが求められ、最重要課題である流出リスクにどう対処していくのか行政や業界全体での課題の共有、取り組みが急がれる。(佐藤)

京アニ火災を特異な事件だと思ってはいけない

放火事件として平成以降最悪の犠牲者を出した京都アニメーション火災。犯人の身勝手で卑劣な行動は許されることはないが、気になるのは同社の防災・防火体制だ。筆者はBCPの基本は5S活動(整理・整頓・清掃・清潔・しつけ)だと考えている。倉庫に不要な資料が山積みになっていたら備蓄はできないし、非常口の前に障害物があれば万が一のときに多くの人が避難することもできない。取材で数々のBCPに取り組む企業を取材したが、熱心な会社はどんな小さな企業でも江戸時代の庶民の長屋のように清潔でこざっぱりとした職場作りを実践していた。今回の事件では、屋上の扉は未施錠だったにもかかわらず、多くの人が折り重なるように亡くなっていたという。今回の事件を、企業は特異な事件として片付けず、自社の防災体制を見直すきっかけの1つとして欲しい。(大越)

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