30秒で読める危機管理コラム

危機管理のプロの観点から時事ニュースを考察しました。

緊急事態に乗じた犯罪組織の跋扈を許してはならない(2)

新型コロナ感染が拡大する中、欧州諸国の医療・研究機関へのサイバー攻撃が相次ぐ。治療薬として特例承認された米の「レムデジビル」製造会社もターゲットとなった。卑劣なのは、感染者を治療する病院やワクチンの研究所がサイバー攻撃で機能が停止するなどの被害を受ければ、コロナ禍の収束が遅れる恐れがあり、金銭を支払ってでもコンピューターの復元を選ばざるを得ない状況が突かれている点だ。国内でも、事業者や消費者の不安や窮状につけ込むような休業店舗への窃盗事件や詐欺事案が多発、新型コロナウイルスに効くとうたって健康食品や薬を不正に販売する事例や違法広告が後を絶たない。イラクでは治安部隊が外出禁止令などのコロナ対策に追われるなど、混乱に乗じてイスラム国の復活が現実味を帯びている。コロナ禍は犯罪組織との闘いでもある。(芳賀)

緊急事態宣言~今後の運用に関して

緊急事態宣言が5月31日まで延長された。なぜ延長に至ったか。それは宣言の発出が遅れた為だ。総理は当初、人との接触の8割削減を打ち出した。8割「に」ではなく、8割「も」である。8割「に」では効果は限定的だが、そもそも8割「も」削減という数値目標自体に無理がある。指数関数的に感染者が増えていくことや、感染者の数値は最大で二週間前に感染した人の後追いであることを考えれば、もっと早い段階で判断・対処しなければならない。未知の健康リスクがある以上、環境リスクに関する「予防原則」の考え方に立ち先手の対策が必要だ。緊急事態宣言は国民の行動抑制に罰則等の直接的な強制力がないことは確かであるが、パチンコ店の実名公表事例を見ても、間接的な強制の意味も持つ。強制力の有無というプロパガンダに惑わされないことが重要だ。(西尾)

新型コロナウイルス、「給付金詐欺」に注意を

国民1人に一律10万円を支給する「特別定額給付金」に絡み、給付手続きの指示を装った詐欺被害の多発が懸念される。ウイルスに関連した見知らぬ相手からのメールやメッセージ、電話や訪問は、詐欺だと疑ったほうがよい。特に高齢者が電話で騙されることも多いため、家族から「留守番電話機能を使い、ナンバーディスプレイで番号を表示させて知らない電話には出ないこと、ウイルス関連の話だったら必ず家族に連絡をすること」をしっかり伝えてあげてほしい。金銭や個人情報の提供などがからむ場合は一人で判断せず、家族や会社、警察、消費者ホットラインなどに相談することが大切だ。関連する詐欺情報は国民生活センターや警視庁、消費者庁、厚生労働省、総務省で随時更新・告知している。備えの一つとして、詐欺の手口や被害事例を事前に確認しよう。(佐藤)


国民生活センター「新型コロナウイルス給付金関連消費者ホットライン」の受付状況(第1報)-通帳やマイナンバーなどは、絶対に教えない!渡さない!」

警視庁「新型コロナウイルス感染症に便乗した詐欺に注意」

消費者庁「新型コロナウイルス感染症の拡大に対応する際に消費者として御注意いただきたいこと」

コロナ「巣ごもり消費」で移動スーパー展開拡大 イトーヨーカ堂(ヨーカ堂)、とくし丸業務提携

ヨーカ堂は、トラックによる移動販売を全国展開するとくし丸と業務提携した。外出自粛が続くなか、高齢者などの需要の受け皿になるとみている。ヨーカ堂の食料品などをとくし丸の軽トラックに積み消費者の自宅を直接訪問して販売する。配送料として1商品ごとに販売価格に10円上乗せする。ヨーカ堂はアスクルと提携した宅配サービス「IYフレッシュ」を2019年11月で終了した。生鮮宅配事業は、物流費の上昇に加えて雨の日に需要が集中するという構造が業務の平準化の障害となるなどから、採算は厳しい。これまでのとくし丸の主な利用客は70代、80代の「買い物難民」といわれる方々だ。社会のインフラとしてみた場合、ネットスーパーと移動販売の欠点を補完しあっているともみて取れる。提携の相乗効果発揮には、コロナ後まで見通した戦略が必要になる。(伊藤)

短期戦か長期戦か。強化か緩和か

政府は4日、緊急事態宣言の5月末までの延長を正式に公表するとともに、「新しい生活様式」による事実上の自粛緩和措置を打ち出した。しかし、感染者数の増加傾向は予断を許さない状況だ。現在の外出自粛と休業要請の結果、感染者の再生産数(1人の感染者が生む新たな感染者数)は緊急事態宣言前に比べ0.7から0.5に減少したが、この再生産数をさらに0.3以下にもっていくには、5月末までの1カ月は緩和よりもさらなる強化が必要となる。一方で、国民のストレスは限界に近いところまで達しており、短期戦よりも自粛緩和による長期戦を求める声があることも事実。最も望ましいのは、自粛は強化しつつも経済支援やメンタルケアにより国民の心理的不安を取り除くことだが、それには官民一体となった取り組みが不可欠だ。企業危機管理も新たな局面を迎えている。(大越)

守るべきは省益ではなく、国民の命

新型コロナウイルスの感染が疑われる人が専門の医療機関を受診する目安について、厚生労働省は8日、発熱やせきなどの軽い風邪症状が続く場合にはすぐに専門機関に相談できるように変更。従来の「37.5度以上」という体温表示の一文を削除した。先日、PCR検査を受けられなかった男性が自宅で死亡した件などを受けての明確な方針転換だが、混乱したのは医療現場だ。加藤厚労大臣は記者会見の中で「これまでも37.5度はあくまで『目安』であった」とし、「何度も通達の中で『あくまで目安』と書いていた」と、医療現場への責任転嫁ととれるような発言を繰り返した。この時期のコミュニケーションエラー、特に全体統括者が現場に責任を転嫁するような発言は、緊急事態宣言のあり方そのものを揺るがしかねない。守るべきは国民の命であって、省益ではないのだ。(大越)

何はなくても免疫力の向上が必須だ

新型コロナウイルスにビタミンDが効力を発揮することが、多く報告されている。これは免疫力の向上に繋がるのだ。しかし、ビタミンDを体内に多く獲得するのは日光に浴びることが欠かせない。家に閉じこもって、不安やストレスを溜めることは逆に免疫力を低下させてしまうのだ。3密を避けることが繰り返し叫ばれるのだが、槍玉に挙げられるパチンコ店や普通の居酒屋、或いは満員電車でクラスター感染が発生したとのニュースはほとんど聞かない。埼玉アリーナで開催されたK-1は6000人以上の観客を集めたが、その中から何人が感染したのだろうか。感染経路不明者はいつまで不明なのだろうか。家に閉じこもって、免疫力を低下させた家族同士が感染するなら、心身ともに元気で日を浴びたいものだ。経済格差を拡大させるだけの“ニューノーマル”なら要らない。(石原)

統計調査の国際比較ができない

五輪中止後に緊急事態宣言が出され、今回それが延長されたが、中国からの渡航者を入国禁止にするのも、ダイヤモンドプリンセス号内での感染拡大防止にも日本は失敗したと言える。直近で報道された、23カ国・地域の人々を対象に各国指導者の新型コロナウイルス対応の評価を問う国際比較調査で日本が最下位なのである。それでも日々公表される感染者数・死者数に一喜一憂している。国際比較で言えば、日本は決してオーバーシュートとは言えない。PCR検査数が圧倒的に少ないのは、如何ともしがたいが、PCR検査は万全ではなく、擬陽性や偽陰性と判断するだけでなく、新型コロナウイルス以外の病症にも反応する。また感染者数イコール患者数でもない。さらに米や伊では、合併症で亡くなった人をコロナ死にカウントしている。これでは真の比較などしようがない。(石原)

危機管理の原則を踏み外すな

危機管理の基本は、“最悪の想定”と“素早い初動対応”にあることはよく知られているが、さらにもう二つある。一つは、あくまでも正確な情報・データが要求されるということだ。当初は若干不確実な情報であっても、その後最新の正確な情報が時系列で入ってくる。それ故、フレキシブルな軌道修正もまた素早くできるということになる。但し、この“その後の情報”の中には、不正確情報やフェイクが混在し、間違った形でインフォデミックとして蔓延してしまう。そこでもう一つ重要な基本が加味される。それがメディア報道も含めた、広義での情報リテラシーである。現下のコロナ危機に関して言えば、安易な同調圧力に屈せず、無責任なイジメに加担せず、決してパニックに陥らないことである。“正しく恐れる”とは“正しく安心する”ことと表裏一体である。(石原)

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