週刊・危機管理PLUS

危機管理のプロの観点から時事ニュースを考察しました。

「しなやかさ」を獲得せよ~アフター・コロナに向けて

今、世界はコロナ禍の脅威に晒されている。その脅威は、身体的な脅威にとどまらず、人間の心理の深い部分にまで影響を及ぼしているほか、社会・経済のあり方を根底から覆すような悪魔的な破壊力を持っている。そして、今、人類は、そのような自然の脅威を相手に叡智の限りを尽くして立ち向かっている。だが、犯罪組織は、この未曾有のコロナ禍でさえ「稼ぎの場」と捉え、私たちをあざ笑っている。否、あざ笑うどころか、不安や恐怖、混乱の中にいる私たちの心理を巧みに突いた新たな手口を次々と繰り出しながら、大きく稼いでいるのだ。犯罪組織が変化に適応する中、対峙する私たちの意識やビジネスモデルは、外生的ショックに柔軟かつ迅速に対応する「しなやかさ」を獲得できているだろうか。今、アフター・コロナに向けた変化もまた、問われている。(芳賀)

「令和」の時代も変わらない国民気質~お上(かみ)の「空気」に流される行動は今も

新型コロナウイルス感染症の緊急事態宣言に絡み、大阪府知事は、自粛せずに営業を続けるパチンコ店の実名公表を行った。特措法では公表義務はあるものの、知事の言動は、「自粛しない奴は晒し者」的な感じがした。他の自治体も続いたが、この実名公表処置がクレーマーを跋扈させ、カスハラを助長することを看過すべきではない。自粛はあくまで事業者や個人の判断。自粛派と継続派がいる中で、継続側を見せしめ的に実名公表し、自粛派の肩を持てば、本当の敵はウイルスなのに、ここぞとばかりに自粛派が継続派のバッシングや妨害を始める。勘違いした自警団的輩も出現する。「空気」や自己の価値観のみを振りかざし、異論を排除するカスハラが更に過激化する。県を跨いでの移動自粛も同じこと。昔から変わらない国民気質を踏まえた賢明な公表を求めたい。(西尾)

テレワークの点検と対策を

コロナウイルスの感染拡大によって、テレワークの普及が進んできたが、セキュリティの構築などが整わないまま導入に踏み切った企業も多く、サイバー攻撃の標的となる危険に晒されている。攻撃者からすれば、対策が不十分(未実施)なところは、狙いやすいターゲットが増えた状態だ。テレワークでの業務にあたっては、どのデバイスが使用可能なのか、どのクラウドサービスを利用するのか、ルールや脅威をどのように周知するのか、曖昧にしたり、個人任せにしたりするのではなく、組織全体で情報セキュリティ体制やルールを見直すことが肝心だ。働き方や働く場所の在り方が大きく変わり、テレワークがコロナ収束後のニューノーマルになろうとしているが、現時点での課題や問題点を洗い出し、教育も含めたセキュリティ対策をあらためて点検しておきたい。(佐藤)

コロナで問われる企業の持続可能性、変革により新たな企業価値を

新型コロナの対応で企業がとった対応が注目されている。セブンイレブンは加盟店への支援策として、最大500万円の緊急融資制度と売上高の減収率に応じて最低10万円の支援金を支給する。ユニリーバは取引先の資金繰り支援や収入補償に加えて、医療機関に約120億円相当の衛生製品を寄付する。これらの動きは、持続可能性を意識した経営といえよう。コロナは需要と供給が同時に消える危機だ。これほど持続可能性が重く問われるときはない。今必要なのは、コロナ後の未来を見据えた変革だろう。通常、変革は既存の知の組み合わせで起こるが、それには限界がある。現在の知識の範囲外にある知を探索して組み合わせることが必要だ。徹底的に深堀し、何度も活用して磨きこみ収益化する知の深化と、知の探索をバランスさせることで持続可能性のある変革につながる。(伊藤)

日本の災害対策も「ニューノーマル」への進化が急務

新型コロナウイルスによるロックダウンを6月まで延長したフィリピンを週末、台風第1号が襲った。数万人が避難したが、避難所でのソーシャルディスタンスが問題となった。この問題は、すし詰め状態が常態化している日本の避難所にそのまま当てはまる問題だ。登山家の野口健氏は熊本地震における避難所の状態を目撃し、「日本の避難所はソマリア難民キャンプ以下」と評した。難民キャンプには国際的な人道基準である「スフィア基準」が適用されており、「シェルター(避難所)」の居住空間は最低限一人当たり3.5平方メートル。適切なプライバシーと安全が確保され、天井までの高さは最低でも2メートルであることが条件とされている。基準は言うまでもなく現地の厳しい感染症対策の意味合いも強い。日本の災害対策も「ニューノーマル」への進化が急務だ。(大越)

スーパーシティ法案の可決は拙速過ぎないか

新型コロナ禍の騒動の中で、どさくさ紛れと揶揄された検察庁法の改正案は、今国会での成立を見送られるようだ。しかし、その陰に隠れるようにスーパーシティ法案が可決された。この法案は、国家戦略特区構想を引き継ぎ、発展させるものとされているが問題点が多い。まず国家戦略特区と同様、本当に地域経済の活性化や地元住民への利益還元に繋がるのか、一部の外資系や大手企業への利益誘導にしかならないのではとの懸念である。これでは現下の格差や分断を助長しかねない。それ以上に問題なのは、個人情報保護や消費者保護がしっかり担保されるかどうかだ。AIやビックデータによる膨大な個人情報の収集と街中に設置された顔認証監視カメラの導入は監視社会を彷彿とさせる。コロナによる自宅待機を余儀なくされる今だからこそ、国民的議論が必須である。(石原)

感染警戒レベルも段階的なリスクレベル設計で

緊急事態宣言が39県で解除された。安倍総理は会見で、「終息」と言っていたが、決してそうではない。「緊急事態宣言」が「解除」されたと言うと、「もう緊急事態ではない」との印象を与えてしまうが、リスクレベルは、WHOの終息宣言もなく、政府対策本部も解散されておらず、未だ「フェーズ6:パンデミック期」であることは変わらない。気象予報的に言えば、「警報」が「注意報」に変わったにすぎず、引き続き警戒は必要だ。リスクレベルに関しては、気象庁の場合、特別警報、警報、注意報(雨のケース)、大津波警報、津波警報、津波注意報(津波)等を使い分けており、災害医療で使われるトリアージタグでも、黒・赤・黄色・緑で表示される。白か黒かではなく、段階的にリスクレベルを表せる工夫が必要だ。(西尾)

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