30秒で読める危機管理コラム

危機管理のプロの観点から時事ニュースを考察しました。

AML/CFTやKYC実務の限界を乗り越えよ

米財務省の金融犯罪取締ネットワーク「FinCEN」に寄せられた「疑わしい取引」が、2017年までの20年間で総額約2兆ドルにのぼった。世界の主要金融機関の口座からペーパーカンパニーに送金された事例のほか、ゆうちょ銀行の複数の事例も含まれる。AML/CFTの観点から厳格化が進む口座開設手続きにおいて、在留外国人の「口座難民」解消の一助となってきた同行の利便性が悪用された形だ。また、国内事業者が中国企業との取引において個人口座に送金していた事例など約40の企業・個人の不審な取引も報告されている。RegTechの活用など検知能力の向上は著しいが、高度化・複雑化しているものの、実は犯罪の手口の本質はそれほど大きく変わっていないはずだ。現状のAML/CFTやKYCが機能していない実態が明らかとなった以上、検知だけでない、予測・予防の高度化・精緻化もまた急務だ。(芳賀)

「最適」とは本質的に流動的なものだ

サイバーセキュリティや反社リスクなど、外部からの攻撃リスクにおいては、攻撃側に防御側と比べて非対称な優位性がある。菅内閣は行政のデジタル化に絡め、サイバーセキュリティ対策の強化として「ゼロトラスト」の導入を検討している。外部からの侵入を強固な守りで防御する「境界型」発想から、「不正侵入はあり得る」との前提で対策を講じると発想を転換するものだ。さらに、従来の受動的な対策の限界という点では、事後的対応中心・脆弱性対策中心から、脅威情報の共有・活用による「予測的防御」を図る「積極的サイバー防御」の発想への転換も必要だ。また、相対的にセキュリティ対策レベルが脆弱な中小企業を踏み台にした攻撃等が顕著となる中、自社だけなくサプライチェーン全体の強度をいかに高めるかの発想も重要となる。慢心こそ最大の敵だ。(芳賀)

相次ぐ不正送金、安全性に意識はあったのか

ドコモ口座から端を発した各種キャッシュレス決済サービスの不正送金等の問題は、ゆうちょ・地銀を含む銀行口座、さらにはオンライン証券の不正アクセス、デビットカードと広がりを見せている。ただ、これらは昨日今日に起きたことではなく、類似の騒動は2018年のPaypay、2019年の7payなど、これまでにも多く起こっている。事案の全容はまだ判明していないが、原因として「本人確認が甘かった」「二要素認証を採り入れていなかった」ことがどのような結果をもたらすのか、多くの教訓がある。利便性や利用者拡大のボトルネックになるからといって安易にセキュリティを妥協するべきではない。犯罪者にとって、これからも都合の良い市場にならないよう、決済・金銭を扱うサービス・事業者として、あらためて安全対策をしっかり点検し、安全性を確保する責任がある。(佐藤)

独占禁止法(独禁法)違反の恐れ 公正取引委員会(公取委)、コンビニ24時間営業の強制に警告

公取委は本部が加盟店に24時間営業を強制することは独禁法違反の恐れがあると明確にした。出店、仕入れ、価格設定等へのけん制にもなる。加盟店との関係の綻びは、フランチャイジングの優位性の揺らぎが背景にあろう。その源泉は、チェーンオペレーションがもたらす規模の経済性と分業の利益から構成されている。大量仕入れからもたらされる経済性とマス・マーケティング力、仕入れ機能と販売機能の分業による効率的な機能遂行だ。オーナーのフランチャイジング購入の最大の利点は、成功の仕組みをそのまま使用する利権にある。ただ、契約締結が成功ではない。鍵はマニュアルに記載不可能な暗黙知やフランチャイザー自身も気づいていない無自覚の学習にある。その習得を容易にする仕組みによる支援も重要だ。制限される自由と支援のバランスが試される。(伊藤)

キャリア形成に求められる能力とは 日経ウーマノミクス・プロジェクト調査

新型コロナへの対応でテレワークなど働き方がかわり、女性の意識が変化しているという。「働きやすくなった」と回答した割合が7割に達した一方、「転職や副業、起業、学び直しを具体的に考えたり、行動したりした」と回答した人が半数を超えた。通勤などで浮いた時間の使い方で目立ったのは、資格取得やスキル向上を図る動きだ。コロナ禍で価値観が一変したと感じた人が少なくないことも背景にあろう。キャリアを棚卸したうえで、知識の取得やスキルの向上に取り組むことには賛成だ。ただし、資格は知識とその応用が一定の水準に達していることの証明でしかない。仕事を通じた結果の積み重ねが実力となる。ときには、相手(顧客)にとって耳障りな話をすることもあり、反発や抵抗勢力に対する説得力も必要だ。本当に必要な能力は仕事のなかで磨かれる。(伊藤)

熊本豪雨を我がこととして

熊本学園大学高林教授のメッセージから。熊本豪雨から2カ月半。被災者の健康状態が悪化している。家屋被害は9千件以上、避難所には500世帯の約1千人。ホテル避難は4500世帯の1万人以上に上るとみられる。避難所では体重減少、菓子パンや揚げ物の多い弁当による栄養の偏り、足腰が弱ったり認知機能が低下したりするなどの兆候が見られるという。在宅避難者も風呂やキッチンが使えず、カセットコンロによる調理が主流だ。子どもや高齢者の不調ももちろんだが、働き盛りの30代から50代も心身ともに疲労がピークに来ている。発災からしばらく休んでいたため、今ではなかなか仕事が休めないことに加え、仕事や家族の世話のほかに生活再建の莫大な手続きに追われている。現地に何が支援できるか考えるとともに、未来の自分の姿として我がことと考えたい。(大越)

重大な情報には一拍おいて

9月18日、「新型コロナウイルスは空気を介して感染しうる/米CDCが確認」との通信社電が届いた。CDC(米国疾病対策予防センター)はいうまでもなく世界最高水準の感染症研究機関であり、その情報としての価値は高い。だが、水分を含むために飛ぶ距離が限られる飛沫感染と、空気中を浮遊し遠くまで飛沫核を運ぶ空気感染では対応の仕方が大きく異なる。具体的には、結核やはしか、水ぼうそうは空気感染することが知られている。筆者は「何かの誤解では」として様子を見ることに決めた。結果として21日、「米CDC、エアロゾル感染警告を撤回『草案を誤掲載』」とロイター電が報じられた。リスクコミュにケーションにとって情報分析は生命線だ。重大な情報になればなるほど、その評価はいつもより一拍おいて、冷静に対応したい。(大越)

一体いつまで“危機”を引き延ばしたいのか

相変わらず、毎日の新型コロナ感染者数が執拗に発表されている。もういい加減に止めるべきだ。東京都でいえば、○日振りに二桁台になった、●日振りに100人、200人超などと空騒ぎをしている。季節性インフルエンザとの比較でいえば、累積感染者数で150~250分の1、同死亡者数では2分の1でしかなく、またともに関連死者数ベースでいけば、7分の1弱にしかならないのだ。感染者数の根拠は相も変わらず、今や全く信頼性を低下させたPCR検査である。TVでもコロナ関連の尺は大分短くなっているが、忘れた頃にどこからかクラスターが発生する。これまたPCR検査の結果であるが、一体その中で何人が重症化しているというのか、その継続報道はない。政府は一日も早く感染症法の扱いを1-2類相当から5類へ格下げするべきだ。全国民にPCR検査をするには33年かかるのだ。(石原)

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