30秒で読める危機管理コラム

危機管理のプロの観点から時事ニュースを考察しました。

VUCAの時代に企業の持続可能性を高めるために必要なこと

コロナ禍は「パラダイムシフト」とでも言うべき価値の大転換をもたらしたが、実は、コロナ前から見通された「10年後の姿」、10年かけて起こる変化が数カ月の間に急激に引き起こされたものに過ぎない。だが一方で、今、「10年後」に目指すべきものが本当にそうなのか、VUCAの時代の真っ只中にあっては、この先の1年でさえ正確に予測することが難しいのも事実だ。その中で企業が持続可能性を高めるためには、「過去」や「現在」に囚われすぎることも、中長期的な「未来」を明確なビジョンとして固定的に捉えることも危険だ。企業理念など守るべきもの、存在意義を明確にし、研ぎ澄まし、強化しながらも、常に社会の要請を強烈に意識し、「変化」を鋭敏に捉え適応し、自ら「変化」することを厭わない柔軟な、しなやかな組織のあり方を模索し続けるしかない。(芳賀)

一般化するクラウドサービスのリスク管理を

テレワーク等によるビジネススタイルの変革や、利便性などの観点から、企業におけるクラウドサービスの利用が一般的になってきている。一方、サービスのアクセス権の認識不足による意図しない設定の誤りによって、社外からアクセス可能な状態になるケースが多数発生している。いまやクラウドは、通常のオンプレミス(自社運用)より堅牢でセキュアだという認識が一般的だが、設定のミスが不正アクセスの原因となったり、障害で落ちるときもある。クラウドによる障害を見越した企業の事業継続計画も重要であり、リスク管理について改めて考える必要がある。システムや運用をクラウド化することは責任をクラウドに丸投げすることではなく、インフラやサービスが停止した際の責任や影響も考慮し、設定や運用方法などを改めて点検しなければならない。(佐藤)

セブンイレブン、おにぎり消費期限2倍に 食品ロス削減へ

同社は、おにぎりの消費期限を約2倍に延ばす方針を明らかにした。店頭で販売できる時間を現在の約18時間から1日半~2日程度に延ばす。食品ロスの削減が狙いで、2021年3月以降、順次、消費期限の長い商品に切り替えるという。日本の年間食品ロスは約646万トンで、うち事業系が約357万トンを占める。なかでも、米飯、日配品は加工食品に比べて消費期限が短く、廃棄の頻度が高い。小売店の店頭廃棄による食品ロスは、食品メーカーの余剰生産による食品ロスの約3倍と多く、店頭廃棄を削減する効果は高い。容器包装の工夫で鮮度を伸ばす取り組みは、豆腐の無菌充填、切り餅の酸素吸収フィルムなどにみられる。今回のおにぎりも包装内に窒素を入れて鮮度を保つことを検討している。食品ロスを象徴するコンビニが食品ロス削減に貢献すれば、その意義は大きい。(伊藤)

▼農林水産省「食品ロスの削減に向けて~食べものに、もったいないを、もういちど。~」

「あいまいな喪失」とレジリエンス

東日本大震災や米国同時多発テロ事件では、遺体も発見できずに人が亡くなったこと自体を信じることができない人もいまだに多い。人は喪失を拒むのではなく、喪失に向き合う必要がある。ベトナム戦争の行方不明者やテロ被害者らの家族支援に40年以上に取り組む米ミネソタ大学のポーリン・ボス教授は、「あいまいな喪失」理論を提唱。「さよならのない別れ」を余儀なくされた人々をサポートしている。同氏は朝日新聞のインタビューで、コロナ禍において喪失感を抱く人たちに対し「人は、自分がコミュニティーに支えられていることを知った時、よりレジリエンスを発揮できます。観衆の声援が大きいほど、アスリートがより力を出せるのと似ています」と語りかける。東日本大震災から10年。今年は改めてレジリエンスの在り方について、深く考察していきたい。(大越)

1月6日以降の情勢が今後の世界の命運を決する

今週は米大統領選の最終決定を左右する重要な1週間となる。5日にジョージア州上院議員選決選投票があり、6日には連邦議会で選挙人団投票結果の開票がある。ともに結果判明までに紆余曲折は予想されるが、20日の大統領就任式までの流れの大勢が決まる。今回の大統領選に関しては、既に民主党陣営と米主要メディアのほぼ全てがバイデン勝利を確定したと主張、主要SNSはバイデン陣営の不正選挙に絡む投稿を次々と削除、そこには両論併記どころか、報道の自由の欠片もない。ところが直近の世論調査では民主党支持者の中でさえ、不正を疑う米国市民が覚醒、急拡大している。それはトランプ大統領が呼び掛けている6日の首都ワシントンへの集結人数が証明しよう。トランプ側は多くの証拠を既に収集しており、徐々に或いは一気に明らかにしていく構えである。(石原)

厚労省「テレワークガイドライン」改定の方向性

8月より有識者8名により検討されていた「これからのテレワークでの働き方に関する検討会」報告書が12月23日に公表された。特に問題点と方向性が示された項目は、長時間労働対策をしつつ、中抜け等の柔軟な働き方を認めるといった時間管理やつながらない権利の適用、正規雇用と非正規雇用の適用格差の是正、成果のみで評価したり、出社していることが高く評価されたりしない人事評価制度の構築、テレワーク費用負担の明確化、新入社員・中途採用等の人材育成およびITリテラシー教育、テレワーク下での適切な業務マネジメントのための管理職教育、作業環境やメンタルヘルスなどへの安全配慮義務などである。政府は誰でも選択でき、生産性高く働くことをPRし、テレワークを推進する方針だ。年度末までにガイドラインが改定される見通しなので注視が必要だ。(加倉井)

▼テレワーク総合ポータルサイト
▼SPクラブ会員チャンネル 「新型コロナウイルス」オールリスク対策オンライン講座 新型コロナ禍におけるテレワーク導入ガイド~労務管理のポイント~

平時から「捜索・差押」の対応準備を

桜を見る会に係る事件で、前首相は不起訴、公設秘書は略式請求により罰金となった。顛末から①秘書は不拘束②秘書は、書面審理で非公開の略式請求➂その略式請求は、即日に略式命令が発付され、同日に仮納付して終わるという、一般刑事事件では非通常な在庁略式手続きが採られた④前首相の事務所等を捜索したという報道は不見当という事実がある。鑑みると、今回の処分は、特捜部としての落としどころかとも思える。この捜索・差押をなしたかが重要ポイントの1つで、前首相の不起訴処分に対する、検察審査会への不服申立結果にも影響を及ぼすだろう。逆に、元農水大臣等に対する被疑事件では、特捜部は早々に事務所捜索を行った。捜索は様々な意味で「機」となる。企業不祥事が起こった際、機を逸しないよう、平時から、捜索の対応を考えておくべきだ。(中西)

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