30秒で読める危機管理コラム

危機管理のプロの観点から時事ニュースを考察しました。

相手には「別の当たり前が存在する」~社会的包摂と多文化共生とテロ対策

イスラム教の文化ブルカが多くの国でイスラム過激派の象徴として規制強化の対象となっている。だがそれは、宗教の自由や表現の自由など自由民主主義が勝ち取ってきた大切な価値観の自己否定に他ならない。あわせてテロの脅威との比較考量の議論が尽くされていないことも問題だ。一方、ベルギー同時テロ5年の式典でデクロー首相は、「コロナ危機が人間のつながりの大切さを思い出させた」、「この人間性が恐怖や憎しみの破壊的な力への最善の答えだ」と強調した。人心・国土の荒廃、貧困や社会不安の増大がテロを生む土壌となることは歴史が証明しているが、コロナ禍で人間のつながりがあらためて見直される中、社会から誰一人取り残されない「社会的包摂」がテロの防波堤となること、「多文化共生」を模索することの重要性を今一度認識すべきだろう。(芳賀)

ランサムウェア被害の経路

昨年の大手ゲームメーカーへのランサムウェアを用いた不正アクセスは、米国の現地法人に設置していた旧型のVPN装置が標的になっていたことが報告された。もともと、通信障害が発生した場合に備え、旧型VPN装置が予備機として残置されており、これにはファイヤーウォール等のセキュリティ対策はとられていたものの、システム内を常時監視する対策は導入準備中だったとしている。攻撃者からすれば複雑に絡み合ったシステムの中からひとつでも脆弱な箇所を見つければよく、一度内部に忍び込んで認証・信頼された状態であれば、後の振る舞いには手が出ない。攻撃者にとって有利な状況を拡げないために、目が行き届いていない機器の存在と不備の放置を把握し、優先的に対応をとるべき機器の特定と防御すべき範囲を明確にすることの重要性を思い知らされる。(佐藤)

人的資源管理(human resource management:HRM)領域のビッグデータ・AIと経営理論の補完関係

革新的な技術進歩により、従来にないHRM領域へのビックデータ解析やAI技術の浸透する未来像がある。多くの企業が取集するだけだった人事データ、その活用が急速に浸透しつつある。Googleは社内の人材をすべてデータ分析し、最適な採用面接回数、質問内容、女性社員活躍を推進する方法、優秀な社員の定着率向上、中間管理職の貢献度の計測方法、高齢化への対応方法など、すべてデータ解析により決めている。一見すると人の関与、すなわちHRMから経営理論を不要にする印象もある。逆にこのHRMの未来で経営理論の必要性は高まるはずだ。AIは分析結果対して「なぜ」なのかを説明してくれない。人事担当者が経営理論に基づき、データの分析結果の「なぜ」に説明を与え、周囲にも納得性を与えられるはずだ。HRM領域のビッグデータ・AIと経営理論補完関係が期待される。(伊藤)

熊本地震から5年。今後も警戒を

2016年の熊本地震から5年が経過した。4月14日と16日に震度7が発生したほか、震度6強が2回、震度6弱が3回、震度5弱以上は3日間で10回以上観測されるという活発な余震活動を記録した。同年はその後も猛烈な梅雨前線が九州を襲い、熊本県では1時間降雨量が最高で150mmを記録したほか、阿蘇山の噴火も発生。まさに複合災害の様相を呈していた。今年に入り、当時崩落した阿蘇大橋の再開や熊本城の復旧など明るいニュースもあるものの、先日気になるニュースが入ってきた。東北大学らの研究チームによると、震度7を観測した益城町に隣接する御船町では、熊本地震を引き起こしたとされる断層の横ずれが地震発生後1年間で20cm拡大し、その後も広がりを続け現在でも道路に亀裂が入るなどの被害が発生しているという。今後も引き続き監視と警戒が必要だ。(大越)

Back to Top