週刊・危機管理PLUS

危機管理のプロの観点から時事ニュースを考察しました。

犯罪インフラ化が摘発リスクを高める

警察庁は容疑者側のSNSをAIで解析し、人物の相関図を作成する捜査システムを導入、解析と精査を繰り返して犯罪組織の「可視化」を目指すという。SNSの犯罪インフラ化が深刻な中、SNSの犯罪摘発インフラ化を歓迎したい。同様に、匿名性の高い通信アプリ「テレグラム」も万全ではない。解析による文章の解読、通信自体の記録と防犯カメラ等との併用で、その限界が突破できるケースもある。さらに、暗号資産ビットコインも、当初はその匿名性の高さから犯罪インフラ化が深刻化したが、最近では、KYCやAML/CFT規制を受け容れ、技術的基盤のブロックチェーンを解析することで犯罪対策に貢献し始めた。技術革新の恩恵は生活インフラと犯罪インフラの双方に等しくもたらされる。犯罪インフラ化が進むほど、他ならぬその技術が摘発リスクを高める。その循環に期待したい。(芳賀)

▼SNS解析システム導入へ AI捜査で人物相関図作成(日本経済新聞電子版 5/31配信)

アスリートのメディア対応姿勢

女子テニス世界2位の大阪なおみ選手が、全仏オープンで記者会見に応じない意向を明らかにした。「アスリートの心の健康状態が無視されている」等と訴えている。テニスツアーは、大会中に選手にファンサービスやメディア対応などの義務を課している。プロは、ファン、スポンサー、メディアに支えられているという発想がある。対比的に思い起こされるのは、平昌五輪フィギュアスケートでの羽生選手の発言だ。「メディアを通しての自分の言葉であらためて覚悟する」とのコメントは、メディアを尊重しつつ、避けられない関係をむしろ、利用すらしている。メディアと対峙する経験の差かも知れない。スポーツの発展にメディアの力は必要だ。アスリートはメディアを理解し、メディアと接触する時間を自分にとって有益な時間と受け止める姿勢が必要ではないか。(伊藤)

防災基本計画にコロナ対策を明記

前回に引き続き国の防災基本計画の修正について書く。避難情報の修正に次いで大きく修正されたのが、避難所におけるコロナ対策だ。避難者の健康管理、避難所の衛生管理や適切な空間の確保など感染症対策の徹底や、感染症対策に配慮した避難所開設とその運営訓練のほか、マスク、消毒液、パーティションなどの感染症対策に必要な物資の備蓄の促進が明記された。また、災害時に自宅療養をしている場合も想定し、平常時からの自宅療養者の住所確認や、自宅療養者の避難の確保に向けた具体的な情報提供方法なども検討に入った。支援する側の応援職員についても健康管理やマスク着用の徹底、適切な執務空間の確保などを要請している。本稿でも指摘しているように企業の帰宅困難者対策の多くは避難所運営そのものだ。法律の改正に合わせ、BCPも見直してほしい。(大越)

▼防災基本計画[令和3年5月25日中央防災会議決定] 概要

従業員のスムーズなワクチン接種に向けて

従業員のワクチン接種や副反応発生時に特別休暇の付与を表明する企業が相次いでいる。特別休暇は、従業員に安心してワクチン接種を受けさせるための一つの策ではあるが、これが全てではない。ギリギリの人数で運営している店舗等では、従業員の急な休みへの対応も難しい。ならばあらかじめ、急な休みに対応できる体制を整えておかなければ、たとえ賃金が満額出ても結局休めないし、ワクチン接種を尻込みする人も出るだろう。近隣店舗で人員を融通し合ったり、本社から応援を出したりすることも考えられるが、即戦力となるには、教育も慣れも必要だ。有給休暇の消化もままならない職場なら、無理して特別休暇の制度を整えるより、確実に安心して休める人員体制の整備が急務だ。対外的なアピールよりも、真に自社の従業員のためになる施策を考えてほしい。(吉原)

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