週刊・危機管理PLUS

危機管理のプロの観点から時事ニュースを考察しました。

今、社会的課題への対応の「本気度」が問われている

米は中国の新疆ウイグル自治区での強制労働や人権侵害に関与しないよう警告、綿製品や太陽電池など幅広い業界で強制労働の疑いがあり「加担した企業だけでなく、融資した金融機関も制裁対象になりうる」とした。だが、自由貿易の原則に照らせば、同様の行為が行われている他の国にも同様の対応を取らねば恣意的・不当な差別と見做されかねず、正当性の判断には慎重さが求められる。一方、中国も、中国企業に対する外国の差別的措置に協力することを禁止する「反外国制裁法」などで対抗する。日本の企業は、いずれかの制裁網に抵触する事態に備える必要に迫られているが、このリスクへの対応には、「倫理的消費」やESGLなどの観点を踏まえ、消費者から「選ばれる」ための行動を自ら決定し、社会に問うという「リスクを取る」ことも含まれると認識すべきだ。(芳賀)

陽性者の減少には職域接種再開も含むワクチン接種の加速が重要だ

東京都の新型コロナ陽性者数が連日1000人を超え、一部専門家等はこのままでは2000人を超えると警鐘を鳴らす。厚生労働省のデータを見ると、確かに陽性者数は増えているが、重傷者数は「減少」している。ワクチンには感染予防効果と重傷化防止効果があるが、ワクチン接種が進んだことで重傷者は減少に転じたものと考えられる。ゼロリスクは考えにくい以上、陽性者数のみを強調するのはミスリードを招く。ところで7月14日に全国の陽性者数が3000人を超えた。職域接種の新規受付停止が発表されたのが6月30日。陽性者数は2週間のタイムラグがあるが、新規受付停止から2週間で3000人台になった。相変わらず人流抑制や飲酒禁止等の偏向的な対策を政府は推奨するが、陽性者数の増加はワクチン接種が思うように進まない影響も無視できないことを看過すべきではない。(西尾)

三菱電機検査不正、あらためて考えるリスクベースド・アプローチ

同社は問題を受けて設置した第三者委員会の調査を月内に始め、「今回の調査が膿を出し切る最後のチャンス」と考えているという。品質担当役員は「システムと企業風土の両面での対策が必要」としている。検査データを恣意的に扱える、たとえば「検査データを紙に記録してPC等でデータ入力する」など不正の「機会」は、神戸製鋼の検査不正とそっくりだ。品質管理部門が長年の不正を「見抜けなかった」とするコメントは、にわかには信じ難い。生産への影響を考慮した予告監査では見抜けないだろう。優先度の判断基準を設け、それに基づいてリスク抽出する「リスクベースド・アプローチ」がコンプライアンスの実効性を高める。発生頻度や損害が大きくなる過去事例、主力事業、消費者の信頼を裏切るものなどに加えて、他社の不祥事もリスクの優先順位は高い。(伊藤)

出典:日経新聞7/7付朝刊

富士山噴火に備えたBCPが必要だ

今年3月、富士山噴火のハザードマップが17年ぶりに更新された。以前は降灰のみとされていた神奈川県内に溶岩流到達の可能性が新たに指摘されるなど、噴火の影響がより広範囲に及ぶことが明らかになった。神奈川県西部の山北町では噴火から33時間後、相模原市緑区でも227時間後にそれぞれ溶岩流の到達が予想されている。東京でも降灰により甚大な被害が予想されており、最悪の場合、偏西風により火山灰は3時間で都内に到達。新宿区で10cm、三鷹市では20cm弱の降灰が予想されるという。富士山はいうまでもなく日本を代表する活火山。過去にはおよそ100年周期で噴火してきたものが、最近300年間は沈黙を保っている。1707年の宝永地震(南海トラフ地震)では、その49日後に宝永噴火が発生するなど、地震と噴火の関係性も深い。関東圏の企業ではBCPの見直しが必要だ。(大越)

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