30秒で読める危機管理コラム

危機管理のプロの観点から時事ニュースを考察しました。

キャンセルカルチャーは社会の総意ではないはずだ

「法律上の犯罪ではないが倫理的に許されないこと」について、「現在の行為だけでなく過去に遡って追及される」事例が相次ぐ。過去の過ちが一生許されず、更生や立ち直りの機会さえ与えない「一発アウト」の社会の風潮は、再犯防止や暴力団離脱者支援とも通底する課題だ。更生の困難さや偽装離脱の実態をふまえ、企業が「高リスク」と見做し実務上慎重を期すことはあっても、真に更生しようとする者まで一律に排除するあり方は「行き過ぎ」だろう。さらに「元暴アウトロー」(廣末登氏)が社会不安の増大要因となっている点も看過できない。「行き過ぎ」たキャンセルカルチャーは「誰ひとり取り残されない」社会の実現と相反するものだ。困難な問題から目を背け、綺麗ごとばかりの底の浅い取組みに堕することのないよう、真摯に向き合うべき時がきた。(芳賀)

管理職に求められるリーダーシップ

管理職には管理能力、プレーヤーとしての能力、リーダーシップが必要だ。だが、実際にはプレーヤーとしての能力、管理能力が一定水準を満たせば、昇格・登用しているのではないか。また管理職研修はコンプライアンスなどに留まり、リーダーシップに関するものは多くはない。結果、リーダーシップのない管理職が大量発生する。にもかかわらず、組織の管理職は成果目標が問われ、その結果、無謀な方法に頼ってしまう。自身のプレーヤーとしての成功体験を押し付けたり、部下や納入業者など弱い立場の人を叩いて成果を出そうとしたりする。最悪のケースは、不正に手を染める。不確実性の高い環境では、「明確にビジョンを掲げて組織の仕事の魅力を部下に伝え、部下を啓蒙し、新しいことを奨励し、部下の学習や成長を重視するリーダー」が結果を出している。(伊藤)

地球村に安全地帯はない

8月11日以降、全国的に続く記録的な豪雨。いまだその被害の全貌が明らかになっていない本日23日現在、台風12号が東シナ海を北上し、本州付近に前線が停滞する影響で大気が非常に不安定になっている。引き続き警戒を怠らないようにしたい。実は水害多発傾向は日本だけのものではない。中国では近年毎年のように水害で数百人規模の死者が発生しているほか、今年7月にはドイツ西部に豪雨が降り注ぎ洪水が発生。183人もの犠牲を出した。過去59年間で最悪という今回のモンスター水害に対し、メルケル首相は「気候変動が原因」と断定し、対策を誓う。8月18日には米ノースカロライナ州で豪雨と竜巻により35人が安否不明だ。米ニューヨークタイムスは「気候変動により地球村に安全地帯はない」と警鐘を鳴らす。今後も必ず水害は発生すると考え、対策が必要だ。(大越)

ハラスメント加害者の半数は自覚なし。上位職者ほど周りが注意できないことにも自覚が必要だ

オリンピック選手の金メダルを市長が噛んだことで、市に9500件超の苦情が寄せられた。謝罪会見を行ったが、その態度に反省が見えないとさらなる苦情を呼んだ。本人は「フレンドリーだった。若い人を和ませようとした。」と悪びれない。ハラスメント加害者の5割程度は自覚がないというデータがある。権限を持つ相手に、拒否や反対の声を上げることは想像以上に難しい。権限を持つ側がそれを自覚し、受け手に考慮した言動をとることが肝要だ。「相手は嫌がっていなかった」は理由にならない。嫌がっていないのではなく、嫌がる態度を出せないだけの可能性が高いからだ。権限を持つ方はご自身の言動に日頃からご注意を頂ければと思う。例えば「ちょっとした性的冗談は場が和む」と思っていたり、部下を「おまえ、こいつ」などと言っている方は注意が必要だ。(加倉井)

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