30秒で読める危機管理コラム

危機管理のプロの観点から時事ニュースを考察しました。

「令和3年版警察白書」から見えてくるもの、そして見えないもの

「サプライチェーン」や「人権問題」への対応が急務だ。また、個人的には、東京五輪開会式に関与したクリエーター2人が直前に辞任・解任された問題にも注目している。特に後者では、20年以上前の雑誌や公演での言動が問題視されたが、こうした動きは海外で「キャンセルカルチャー」と呼ばれているという。「法律上の犯罪ではないが倫理的に許されないこと」について、「現在の行為だけでなく過去に遡って追及されること」が特徴だ。だが、いずれも反社リスク対策においては数年前から認識されてきたリスクでもある。「KYCからKYCCへ」「自社の商流における健全性の確保」「後付けリスクと説明責任」など、社会の目線に極めて敏感な反社リスクだからこそ最先端の対応が求められている。実は警察白書に書かれていない部分に「最前線の実務」がある。(芳賀)

人として事業者として「誹謗中傷」を放置してはならない

東京五輪では選手に対する誹謗中傷が問題となった。7月10日付日経新聞は「多数派」を決めるメカニズムに関する論文を取り上げ、「3割程度の意見が全体の世論を左右する」「SNSは民主主義を支える多数決の理想型に近づく可能性を感じさせる一方で、地域や生活様式を超えたつながりやすさゆえに「一部」の意見を「多数」と惑わす遠因にもなる」と指摘した。「多数」に流れる意思決定の危うさや脆さが他人を傷付けている事実を直視すべきだ。また、「ビジネスと人権」に厳しい視線が向けられる中、有名企業のトップが差別的文書を堂々と掲載、複数の企業や自治体が協定等を解消した。国連「ビジネスと人権に関する指導原則」では「取引先で人権侵害があった際は、場合によっては一緒に解決しなければならない」と定めていることにあらためて着目したい。(芳賀)

▼日本経済新聞 多数決は幻か 世論力学で判明「SNSは3割が決める」

大麻摘発、過去最多に 若年層で拡大

警察庁によると全国で昨年1年間に大麻事件で摘発したのは5260人で4年連続最多を更新した。昨年の4570人から15.0%の増加だ。10~30代が83.8%を占めるなど若年層の摘発が目立つ。摘発を平成25年から比較すると20歳未満が11.0倍となり、全体が3.3倍となるなか突出して増加している。若年層の初犯率の高さも大麻の特徴だ。大麻乱用者を対象にした調査では、初めて使用した経緯は「誘われて」が最も多い。その際に「大麻は覚せい剤と違って、依存症にならない、薬として使われているくらいだから体にもよい」といった誤った情報が後押しする。SNS等インターネットでの違法情報・有害情報の排除と正しい知識への啓発が必要だ。また、大麻栽培も232人、押収量も9,893本と大幅に増えており「大麻自給率」の高まりを警戒すべきだろう。供給・流通量を減らす対策も求められる。(伊藤)

雨がおさまっても十分に注意を

停滞する前線により、11日から降り続けている西日本を中心とした豪雨。長崎県、佐賀県、福岡県、広島県の4県で最大級の大雨特別警報「緊急安全確保」がだされた。16日朝現在でも九州や広島などで予断を許さない状況が続いている。引き続き警戒を強めて欲しい。今回の大雨の特徴は、いうまでもなくその莫大な雨量だ。佐賀県嬉野市では3日間の総雨量が1000ミリというとてつもない数字を記録した。8月1カ月に降る降雨量の約3.6倍で、年間雨量の40%にあたる雨がわずか3日間強で降ったことになる。これらは長年災害研究をしている身としても聞いたことがない数字だ。長雨の恐ろしさは土が多くの水を含むことにより、警戒が解かれた後のほんのわずかな雨でも土砂災害が発生する可能性があることだ。雨がおさまっても十分に注意して行動していただきたい。(大越)

▼参考情報:土砂災害から身を守る3つのポイント(政府広報オンライン)
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