30秒で読める危機管理コラム

危機管理のプロの観点から時事ニュースを考察しました。

2021年10月25日号

内部通報制度の限界と可能性~三菱電機調査報告書から考える

報告書は、「製作所・工場あって、会社なし」として「自らが帰属する組織を守るのは人の本能といって良い。家族を守り、友人を守るのは、人がそこに強い帰属意識を持つからである」「『言ったもん負け』という言葉に表れているように、問題を報告したとしても、その解決が現場に丸投げされるのであれば、現場は、解決が困難な問題であればあるほど報告を躊躇うことになる。解決策を準備できなければ、製品の製造停止や事業からの撤退、拠点の廃止といった事態にも至りかねないからである。三菱電機が、会社として現場を全面的にサポートして解決策を考え出してくれるという信頼感がなければ、現場が問題を報告することは難しい」と指摘する。これが内部通報制度の限界だ。だが、その信頼感の醸成には、日々の真摯な運用の積み重ねもまた不可欠なのだ。(芳賀)

▼三菱電機 調査報告書

「できない」と認めることも防災の第一歩

昨年の令和2年7月豪雨災害で25人が亡くなった熊本県球磨村。同村が今年6月に策定した地域防災計画が話題だ。災害の検証結果から「これまでの役場が主導的に防災対策を強化するという方向性を根本的に見直し、村民が『自らの命は自ら守る』意識を持って、村民自らの判断で避難行動をとり、役場はそれを全力で支援するという村民主体の取り組み強化により、防災意識の高い球磨村を構築する」と明記。村民が留意すべき事項のなかでも、「役場が一人ひとりの状況に応じた避難情報を提供する事は不可能である。自然の脅威が間近に迫っているとき、役場が一人ひとりを助けに行くことは出来ない」「役場は万能ではない。村民の命を役場に委ねてはならない」など、役場の率直な想いを述べている。できないことを「できない」と認めることも、防災の第一歩だ。(大越)

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