週刊・危機管理PLUS

危機管理のプロの観点から時事ニュースを考察しました。

暴力団離脱者支援を巡る動向と今後の課題

暴排の徹底と表裏一体の関係にある暴力団離脱者支援が本格化している。偽装離脱のリスクや社会的不適合者が多いなどの課題はあるが、行き過ぎたキャンセルカルチャーによって社会的に排除された者を温かく受容し、その立ち直りを支援するのが「社会的包摂」の本旨であり、「誰一人取り残されない」社会の実現を掲げる以上、今や企業が取り組むべき課題の一つと認識すべきだ。一方、反社リスク対応が企業の自立的・自律的なリスク管理事項である以上、離脱者支援に積極的に取組む企業もあれば、慎重な姿勢を崩さない企業もあるのは当然のことだ。ただ、後者であっても、前者の立場をとる企業の活動や本人の更生の努力を妨げてはならず、むしろ積極的に「理解」に努めることが大事だ。離脱者支援は緒に就いたばかりだが、この流れを確実なものとしたい。(芳賀)

厚労省カスタマーハラスメント対策マニュアルの評価と課題②

2022年2月25日、厚生労働省から「カスタマーハラスメント対策企業マニュアル」が公表された。前回に引き続き、同マニュアルの問題点と活用していく上での課題について言及する。同マニュアル記載の対応要領を見ると、「状況に応じて、弁護士への相談や警察への通報等を検討する」という記述が散見される。しかし、これでは、現場で、「状況に応じて」ってどういう時だよ、という疑問が出てきてしまう。現場は「どういう時に」を知りたいのに、「状況に応じて」では何ら役に立たない。ただでさえ警察は民事不介入の原則があり、積極的な介入は難しい。だからこそ、どういう時に、どのようにして警察通報するか、どうすれば事件化しやすいかを記載しておく必要がある。各企業で現場対応マニュアルを作成する場合は、この点を明確に記載しておく必要がある。(西尾)

知床観光船事故に見る組織罰の必要性

知床観光船事故から2週間が経過した。乗客乗員26人のうち14人の死亡が確認され、いまだ12人の行方が不明だ。ご遺族の方には謹んで哀悼の意を表したい。現在、海上保安庁や民間のサルベージ会社などにより沈没した船体の調査を開始しているが、引き上げについてはさらに日数を要する見通しだ。安全を軽視したずさんな経営の在り方が次々と発覚する一方で、事故の全容が明らかになるのは更なる年月が必要であろうことは想像に難くない。福知山線脱線事故や軽井沢スキーバス転落事故など、民間事業者による痛ましい大規模事故が発生するたびに注目されるのが、組織罰の必要性だ。現行の法制度では刑法の処罰対象は個人だけであり、企業などの組織を罰することはできない。組織の罪をだれがどのように裁くのか。まずは経営者に抑止力となる法整備が急務だ。(大越)

真の顧客本位が健全な利益につながる

ある年の夏休み。旅行先での最大の楽しみは、観光ボートに乗ることだった。ウキウキで事前予約し、ホームページを眺めて楽しみにしていたのだが、前日に受けたのは欠航の知らせ。高い波が予想されるということで、どうにもならず、非常にがっかりしつつも納得したことを覚えている。しかし、海が荒れても欠航が「当り前」ではない運行会社が存在していたことがショックだ。命を守るための判断をすれば、たとえ残念がる客がいようが欠航は欠航。結果的には旅行中の別日程でボートには乗れたのだが、乗れなかったとしても、いつかそれも良い思い出になっただろう。観光客を真に喜ばせるのは「無理に船を出すこと」ではない。経営者が真に儲ける手段は「目の前の運賃を逃さないこと」ではない。真の「顧客本位」が、健全な利益と素敵な思い出につながる。(吉原)

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