30秒で読める危機管理コラム

危機管理のプロの観点から時事ニュースを考察しました。

上場企業として失格だ~個人の問題に矮小化してはならない

上場企業のトップとしてあるまじき行為だ。暴力団との密接交際を隠して上場、投資家や社会を欺き、直近までその関係を継続していた事実は重い。創業者との関係遮断のためになりふり構わない対応を見せた会社も、もっと早く手を打てたはずだ。本件では、あらためて内部統制の限界は人であることを痛感させられた。交際費の使用状況や反社チェックの実効性など、適切なリスクセンスやチェック機能があればと思わせる。だがそれが改善につながったかは疑問だ。取締役の相互監視義務も適切ではなかったし、社内全体が創業者に物を言えない統制環境は深刻だった。さらに内部通報窓口も機能せず、見て見ぬふりが蔓延した組織は、暴排条例に基づく勧告を受けるまで自らを正すことができなかった。外圧でしか自浄作用を働かすことができない企業に、未来はない。(芳賀)

構造的要因に深く切り込むべきだ~学生スポーツと薬物問題、連帯責任

日大アメフト部の大麻問題では「連帯責任」にも焦点が当たった。同大は「部員1名による薬物単純所持という個人犯罪。個人の問題を部全体に連帯責任として負わせることは、競技に真剣に取り組んできた多くの学生の努力を無に帰することになり、学生の成長を第一に願う教育機関として最善の措置ではない」と判断。一方、関東学生アメリカンフットボール連盟は、「逮捕された部員以外の部関係者全員が違法薬物に潔白であると保証できない」「再発防止策の提示ならびにその実施がなされていない」「部関係者の責任の所在が明らかでない」などとして、現状では試合に出場させることはできないと判断した。本件に限らず、「濃密な人間関係」が犯罪を誘発する構造的要因であるにもかかわらず、問題を放置すれば次の犯罪を生むだけだ。「今ではない」はずだ。(芳賀)

水害に遭われた方は「まずは落ち着いて」

7月初頭の大雨から先日の台風7号まで、様々な水害が日本列島を襲った。亡くなった方には哀悼の意を表するとともに、現地の一刻も早い復旧・復興をお祈りしたい。本稿でも何度か指摘しているように、水害被害は地震よりも大量の廃棄物が発生し、復興には時間がかかると言われている。信頼できるボランティア集団である全国連絡組織「震災がつなぐ全国ネットワーク」は2011年から『水害にあったときに~浸水被害からの生活再建の手引き~』という冊子を作成しており、HPでダウンロードできる。冒頭では「まずは落ち着いて」と述べ、「今後の生活再建までの見通しをたてる」ことを推奨している。水害に遭った家屋は床下を十分に乾燥させる必要があり、それだけで1カ月以上かかることもある。「まずは落ち着いて」今後のことをじっくり考えていただきたい。(大越)

▼『水害にあったときに~浸水被害からの生活再建の手引き~』(震災がつなぐ全国ネットワーク)

社内の会話に見る「心理的安全性」

「この文章のここが…」「いや、これくらいは違和感ないと思うけど。あなたはどうしたいの?」「ここにこの数字があるので、こっちはこうした方が…」「あぁなるほどね。じゃあそうするか。」社内で聞こえてきた、ベテラン男性と若手女性の会話だ。親子ほど年の離れた二人だが、若い彼女は遠慮なく意見を言い、ベテランの彼はその意見にしっかり耳を傾けている。これが「心理的安全性」ではないか。「自分の方が責められているみたいで、安全じゃないよ」とベテラン男性は笑うが、彼女がここまで言えるのは、意見を聴いた上で判断してもらえる、言っても怒鳴られたりいじめられたりしないと、彼を信頼しているからだろう。彼もまた、彼女の懸命さを認めているから聴けるのだろう。互いに人として敬意を払うことが、心理的安全性の礎となるのだと思う。(吉原)

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