30秒で読める危機管理コラム

危機管理のプロの観点から時事ニュースを考察しました。

暴力団離脱者支援~意志ある者には道を開くべきだ

工藤会による一連の一般人襲撃事件の控訴審が福岡地裁で始まった。工藤会側は野村被告の死刑回避ただ1点に重点を置いた戦術だ。だが、一審の死刑判決によって「工藤会の鉄の結束」はより顕著に弱まったと言ってよい。引退を表明しても戻る場所は既にないのかもしれない。だからこそ今、暴力団離脱者支援が重要だ。企業のリスク管理の観点からはいまだ厳しい取り組みだが、社会がそれを受け容れる機運が醸成されれば意味合いも変わってくるはずだ。暴排の結果、匿名・流動型犯罪グループが肥大するのは誤りだ。本人の脱退の意志が強固であることが大前提だが、組織との関係が完全に絶たれ、その身分が何らかの形で保証され、社会がそれに寛容となる状況が整えば、風向きは変わる。意志なき者は排除していく必要があるが、意志ある者には道を開くべきだ。(芳賀)

これは「PRの自殺」だ

世間を賑わす大手芸能事務所の事件。その関連で我が目を疑うような出来事が発生した。事務所から記者会見の運営を委託されたPR会社が、会見に出席した記者のNGリストを作成し、一部の記者を指名しなかった。TVがリストの実物をカメラで写しており、その存在が確実視されたことで「八百長会見ではないか」と事態が炎上。事務所側はすぐさま声明を発表し、関与を否定した。PR会社は「会見の円滑な運営準備のため」と作成したことを認め、謝罪文をリリースした。PRに携わるものとして、絶対に許されない行為であることはいうまでもない。本来、クライアント側がどれだけ嫌がっても、公平・公正を理念に正しい情報開示の在り方を指南するのがPR会社の責務だ。今回の出来事は「PRの自殺」ともいえる罪深い行為で、同じPRに携わるものとして深い憤りを感じる。(大越)

雛型や部分への意見に惑わされず、自社を適切に把握することが全体最適につながる

「〇〇規程の雛型はないか?」「汎用的な△△マニュアルが欲しい」等、雛型のリクエストは多々あるが、安易な雛型の提供には抵抗がある。最適は、業種や組織体制、ビジネスモデルによって異なるからだ。大きな事件があると、TVには様々な筋の専門家が登場する。求められるのは、切り出されたある一事象に対する、その道の専門家としての意見。しかし事件は複合的な要因や関係者が絡まりあって生じるものであり、当事者でさえ慎重に情報を集め分析しなければ、全貌の把握は難しい。切り取られた一面しか見なければ、いくら専門家でも「その点に限定した」意見しか言えない。部分への意見はもっともでも、全体に当てはまるかは別問題だ。規程づくりも不祥事対応も、部分最適の寄せ集めではなく、まずは自社の特性をよく理解し、全体最適を模索すべきだ。(吉原)

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