30秒で読める危機管理コラム

危機管理のプロの観点から時事ニュースを考察しました。

「悪い連中が変わるなら我々も変わっていかないといけない」(警察幹部)

トクリュウの首謀者摘発に向け、警察庁と警視庁は、10月にそれぞれ組織改編を行い、抜本的に対策を強化すると発表した。警察庁に司令塔となる「情報分析室(仮称)」を設置。捜査の主力を担う警視庁の対策本部に46道府県警から捜査員200人を出向させ、全国警察が一体となって捜査にあたるという。秘匿性の高い通信アプリなどが壁となり、逮捕した実行役から中枢に迫る「突き上げ捜査」の限界が露呈する中、まず首謀者を検挙し、上位から組織の全容を解明する新たな捜査の仕組みが急務だ。国境を越え、サイバー空間でも暗躍するトクリュウの「ビジネスモデル」は今や世界標準。「今後も形を変えて犯罪を続ける集団は現れる。警察は柔軟に対応する必要があり、今回の態勢強化は今後の試金石になる」(警察幹部)との強い危機感と覚悟こそ今必要なものだ。(芳賀)

民間の災害対応車両を登録開始へ。

政府は6月1日から、民間のキッチンカーやトイレカーなどの災害時に活用できる機能を備えた車両を「災害対応車両」として事前に登録する制度を開始する。災害救助法に基づき、活動経費に国庫を充足する。所有する個人や企業が災害での活動実績などを記して国に申請。車の機能など条件を満たせば登録され、全国の自治体が閲覧できる車両のデータベースを構築することで、迅速な派遣につなげるという。熊本地震では、被災後に自家用車で寝泊まりすることでエコノミー症候群を発症した被災者もいた一方で、災害時のキャンピングカーの利便性が注目された。南海トラフ地震では太平洋沿岸に広域にわたる被災が予想される。1台でも多くの災害対応車両が活躍できる土壌を整えることが急務だ。企業も災害時に活用できる自社の車両を登録してはいかがだろうか。(大越)

「法制化されたから」ではなく、「必要だから」

労働安全衛生規則の改正・施行により6月1日から職場における熱中症対策が強化される。これにより事業主は、熱中症らしき作業者が発生した際の報告体制を整備し、熱中症の悪化防止のためにすべき内容や手順を事業場ごとに定め、それらを周知することが義務付けられる。熱中症予防や初期対応は命を守る行動だ。これだけ注意喚起され、スマホがあればすぐ対処法も調べられる現代なら、対応は普通に、当然にできることではなかろうか。命を守る行動は、法令で義務化されなければできないだろうか?責任の所在を明確にする意味はあろう。だが就活等セクハラやカスハラ対策等も同様に、個人への被害・影響が重大で、企業にとって大きなリスクになるならば、法制化されずとも積極的に対処すべきだ。義務の有無でなく、「必要だから」で動ける組織でありたい。(吉原)

誰にとっての義務か~義務教育を例に~

フリースクールは「一般に、不登校の子供に対し、学習活動、教育相談、体験活動などの活動を行っている民間の施設」だが、子供の個性を伸ばそうと、正規の小学校に一度も通わせずにフリースクールに通う「積極的不登校」を選択する保護者がいるそうだ。保護者には、学校教育法第16条によって、子に9年間の普通教育を受けさせる義務がある。「義務教育」は、保護者の義務なのだ。正規の学校と調整のうえ、フリースクールも正規の学校で出席扱いになるなら問題ないようだが、そうでない場合、保護者が学校教育法に違反したことになる。労働基準法や公益通報者保護法も、ほとんどの条文で事業者(使用者)に義務を課しており、労働者には義務がない。事業者(使用者)の義務を履行するためには、法令の内容を労働者との契約に落とし込んでおく必要がある。(安藤(未))

▼毎日新聞『小学校へ一度も通わずフリースクールへ 「積極的不登校」という選択』(2025/3/23 14:00)

▼テレ朝POST『“積極的不登校”が法律違反になるケースも!スタジオでも賛否分かれる ニューストリビアを池上彰が解説』(2025/5/24)

▼文部科学省「フリースクール・不登校に対する取組」

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