30秒で読める危機管理コラム

危機管理のプロの観点から時事ニュースを考察しました。

「極端な企業風土の劣化」に呆れてモノが言えない

いわき信用組合が不正融資による資金流用などを繰り返していた問題で、同信組が設置した第三者委員会は「我が国の金融機関の歴史を見ても類例をみないほどに悪質な事案」とその悪質な体制を痛烈に批判した。半年超に及んだ調査は、信組側の非協力的な態度に遅延を余儀なくされたほか、「会社にいたければ黙っているように」「言われたとおりやればいい」などと圧力をかけられたケースや、「意図的なPCの破壊・処分」「組織的な虚偽供述」など耳を疑うような調査妨害もあったという。同信組の「大きな不祥事案を内部に抱えながら、地方創生に資する取り組みを積極的に行う『オモテ』と『裏』の二面性を持つ特異な金融機関だったといえます」のコメントもどこか他人事だ。公的資金を受け入れ震災からの復興を後押しすべき最後の「砦」は無残にも瓦解した。(芳賀)

▼いわき信用組合 不祥事に関する第三者委員会調査結果の公表について

事例から考える危機対応~フジテレビ案件におけるN氏側の危機対応について

フジテレビ問題、第三者委員会の報告書に対して中居氏側の代理人が反論を展開して情報開示を求めている。第三者委員会報告書に対して反論が出るのは異例だが、第三者委員会にこのような形で反論するほど被害者女性に対する二次加害にもつながりかねない上、自分たちの論理・都合でしつこく何度も回答要求を繰り返す代理人らの行為は、カスタマーハラスメントにも該当しかねない。このような点を考慮すると、場外乱闘のようなやり方ではなく、中居氏自ら記者会見を行うなど、国民に対して、自身の性加害の考え方等も含めて説明責任を果たすべきだ。代理人らはWHOの性加害の定義を使うことへの反論もしているが、ハラスメントの観点で考えれば、不当ともいえないことを考えれば、猶更世間の視点での説明・質疑対応が不可欠だ。賢明な危機対応とは言い難い。(西尾)

災害対策基本法改正。関連死を防ぐために

参議院本会議で5月28日、災害対策基本法など災害に関連する改正法律案が可決された。改正により、避難所だけでなく在宅避難や自家用車で車中泊する人にも福祉サービスが届くよう、自治体に努力義務を課す。熊本地震や能登半島地震では、災害で直接亡くなる「直接死」よりも災害後の避難生活のストレスなどにより亡くなる「関連死」が大きく上回ったことが課題となった。また、ボランティアなどの災害支援団体を事前に登録する制度も創設。市町村が登録団体に被災者の個人情報を提供できるようにするほか、炊き出しなどをした登録団体に自治体から実費を支払えるようにする。東日本大震災では、個人情報保護法により被災者の情報を支援者に渡すことができず、支援が滞ったケースが散見された。自治体は、今回の法改正の内容をしっかり把握してほしい。(大越)

▼災害対策基本法等の一部を改正する法律案の概要(内閣府防災)

部分最適の総和が全体最適になるとは限らない

マルチタスクは効率が悪いという話をよく耳にする。1つの作業に深く集中する時間が減るため、情報や考えを整理してアウトプットするような業務では、当然効率は下がるだろう。シングルタスクで進められるなら、それに越したことはない。しかし、担当役割が明確で一人で完結できるような仕事は、さほど多くないのではないか?他のメンバーやお客様とスケジュールを調整したり、問い合わせに対応したりすることも重要な仕事であろう。自分がマルチタスクで対応すれば、自分の割り当て業務の効率は下がる。だが決めたい日程がすぐに決まり、知りたいことがすぐにわかれば、メンバーやお客様のタスクは円滑に進む。誰かのマルチタスクは、他の誰かのシングルタスクの進行に貢献しているのではないか。部分最適の総和が全体最適になるとは限らないだろうに。(吉原)

自社の商品やサービスを愛しつつ、仲間も愛せれば、なお良い

日本を代表する某企業は、昨年度決算で営業収益が過去最高であり、今年度は米国の関税政策の影響等で減益が見込まれるが、業界内のリーダーの地位を維持するだろう。様々な要因はあるとは思うが、会長と社長はレーシングライセンスを有し、車好きで有名だ。「仕事は仕事。趣味は趣味」と切り分ける生き方を否定するつもりはないが、いざという時に力を発揮するには、自社の製品を愛することかもしれない。(比較対象として私は分不相応だが)私自身も仕事が楽しくて徹夜も厭わないという経験がある。とは言え、それはそれで労務上問題がある。リーダーシップ論のうちPM理論、マネジリアルグリッド理論等では、簡単に言うと、仕事と人(仲間)の両方をバランスよく志向すべきとされている。少なくともリーダーは何を愛しているか考えてみてはいかがか。(安藤(未))

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