30秒で読める危機管理コラム

危機管理のプロの観点から時事ニュースを考察しました。

トクリュウ・シフト~暴力団もトクリュウも同時にたたけ

警察庁の新たな組織態勢が動き出した。従来の「突き上げ捜査」による暴力団対策のあり方をベースとしながらも、トクリュウの実態にあわせ捜査態勢を見直し、正に「『人』の周囲を調べ、『カネ』の流れを追う」(捜査幹部)というあり方でトクリュウ壊滅に総力をつぎ込む「トクリュウ・シフト」だ。今後、暴力団の中核部分は「任侠団体」として残りつつ、周辺部分は「時に暴力団の向こうを張り、時に暴力団と共存する」存在のトクリュウなどと溶け合いながら「犯罪組織」の要素を色濃くしていく「二極化」が進むだろう。組織改編でトクリュウ壊滅を期す警察は「トクリュウだけをたたいても、暴力団は新たな手先を探して生き延びる。暴力団とトクリュウは同時にたたく」と意気込む。今後の暴力団のあり方やトクリュウとの関係性を踏まえればその通りだ。(芳賀)

南海トラフ地震発生確率「60~90%程度以上」または「20~50%」に

政府の地震調査委員会は9月26日、南海トラフ地震の発生確率についてこれまでの「今後30年以内に80%程度」という数字を見直し、今後は「60~90%程度以上」または「20~50%」と併記する。これまでの「80%程度」は江戸時代に発生した2回の南海トラフ地震を基に算出していた「時間予測モデル」が使用されてきた。しかし当時の文献も解釈が分かれるものがあり、「水増し」が指摘されてきた。調査委はこの指摘を受け、計測値の不確かさを考慮できる新たな計算手法を取り込み「60~90%程度以上」という誤差を伴った数字に更新した。また、他地域の地震に使う別モデル(BPTモデル)で計算した「20~50%」も、主な確率として併記する。いずれにせよ、高い確率で近い将来南海トラフ地震が発生することに間違いはない。これまでと変わらず、緊張感をもって備えたい。(大越)

▼「南海トラフの地震活動の長期評価(第二版一部改訂)」(地震調査研究推進本部)

メリハリのない「厳しさ」が、重大事故を招いていないだろうか

「命にかかわる仕事だから、日頃からの厳しい統制が必要だ」という言葉をよく聞くが、安全が軽視されていたかのような事故のニュースは度々流れてくる。たまたま気の緩んだ人がいたのか?その職場が特殊だったのか?世代の移り変わりで「職人の技」が失われたのか?「安全」は最も重要な事項として教育すべきだろうし、自身も身を引き締めるべきはずなのに、最も重要なことが伝わっていない気がする。もしかして、「命にかかわる仕事」を言い訳に、「厳しい統制」という名のハラスメントが起きていないだろうか?本来自由で良いはずの「気持ち」や「価値観」を無理に統制しようとすれば、自身の心を守ろうと、「聞き流す力」が身に付いてしまう。メリハリを失い、「全てに服従」を求めることで、逆に全体が緩んでしまうなら、なんと恐ろしいことだろう。(吉原)

「改正法が施行される前なので対策していない」との言い訳は通用しない

カスハラ対策の義務化を盛り込んだ労働施策総合推進法、求職者等に対するセクハラ(就活等セクハラ)対策の義務化を盛り込んだ男女雇用機会均等法の改正法が、今年の6月に公布された。ただ、現行法下の厚生労働省指針では、いずれも事業主が行うことが望ましい取り組みだ。特に、「性的な言動」の定義においては、行為者について「取引先等の他の事業主又はその雇用する労働者、顧客、患者又はその家族、学校における生徒等もなり得る」との記述がある。そもそも、企業には、労働契約法上の安全配慮義務があるし、国連の「ビジネスと人権に関する指導原則」では、国家のみならず、企業も人権尊重の責任を担う主体とされている。今、カスハラや就活等セクハラが発生した場合、「改正法が施行される前なので対策していない」との言い訳は通用しない。(安藤(未))

▼厚生労働省「令和7年の労働施策の総合的な推進並びに労働者の雇用の安定及び職業生活の充実等に関する法律(労働施策総合推進法)等の一部改正について」

▼厚生労働大臣「事業主が職場における優越的な関係を背景とした言動に起因する問題に関して雇用管理上講ずべき措置等についての指針(令和2年厚生労働省告示第5号)」

▼外務省「ビジネスと人権とは?ビジネスと人権に関する指導原則」

Back to Top